『ミユキ、遅い!』
『サッカーは下手くそだね』
「おい!バカにしてんのはなんとなくわかるんだからな。」

キャッキャと笑いながらサッカーボールを追いかける少年たち。いつも野球を教わりに来る彼らが、今日はこれをしよう!と、サッカーボールを持ってきたのだ。

『ミユキ、なんでいつもひとりなの?』
『恋人いないの?』
『デートしないの?』
「俺はもう結婚してるっつの。」
『ケッコン?』
「あーと…結婚ってイタリア語でなんて言うんだ?」

『彼にはとても美しい妻がいるんだよ。』

傍にいた使用人の男が朗らかに笑いながらイタリア語で何かを言った。少年たちはなんだか疑わし気に俺を見上げている。な、なんだ…?

「なんて言ったんですか?」
「彼には妻がいる、と。」
「…それでその目かよ、お前ら。」

俺の言葉がなんとなくわかったのだろう、少年たちはまたケラケラと笑い始めた。完全に馬鹿にされてんな、俺。

「…っと、もうこんな時間か。」

気が付けば夕方の5時を過ぎるころ。彼らも気が付いたようにボールを拾い上げる。

『じゃあねミユキ!』
『また明日遊んであげるよ!!』
「はいはい、明日も来るわけね…気を付けて帰れよー。」

少年たちがわっと駆け出して庭を出て行くと、辺りは急に静かになる。なんだかんだ、子供と遊ぶのは体力を使う。体がなまらなくていいけど…疲れるな、これ。

「お食事の用意をいたしましょうか?」
「あ…そうっすね、光に聞いてみてから…」
「奥様は、御幸様の都合に合わせる、と仰っておりました。」
「え…?」
「ここのところは体調がよろしいようで、よくお部屋の窓から御幸様が子供たちと遊ばれているのを見ておられますから。」
「え……。」

み…見てたのか。でも…そんなこと光は、何も言ってなかったよな?子供を亡くして、子供の話題を避けているのをなんとなく感じたし、今は子供を見るのはつらいだろうと思っていた。あいつはなにかと、自分を責めるし…。
俺が近所の子供たちと遊んでるのも…嫌なのかもしれない。…嫌、というか、見てて辛いんじゃないだろうか。俺は…光に酷いことを…

「御幸様?」
「あ…。…すみません。ちょっと、光のとこ行ってきます。」
「かしこまりました。食事のご用意は、もう少しお待ちいたしましょう。」
「すみません。」

俺は駆けだして、屋敷に飛び込んだ。
階段を駆け上がり、部屋のドアの前に立つと、こっそりと息を整える。光…どんな気持ちで、俺を見ていたんだろう。辛い思いをさせてたなら…なんとか、償いたい。俺…無神経、だったよな。光走らないと思っていたとはいえ…。やっぱり、ずっと彼女の傍に居るべきだった。部屋を追い出されたとしても…。

コンコン、とノックをすると、返事はなかった。少し間をおいて、そっとドアを開ける。光は、窓辺の椅子に座って窓の外を眺めていた。ちょうど、庭のひらけた場所が見えるところ。俺がさっきまで、子供たちと遊んでいたところ…。

「…光。」

声をかけながらドアを後ろ手に閉める。光はゆっくりを振り向いて、立ち上がって、俺の前に歩いてきた。そして手を伸ばし、俺の背中に腕を回し、ぎゅっと抱き着いてくる。まるで寂しがるように。俺は彼女の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめ返した。最近はよくこうして抱き合う。光は、俺が離れない限り、ずっと俺に抱き着いてくる。心細そうに、悲しそうに。

「俺さ…」
「……。」
「明日からは、一緒にここにいるよ。」

そう囁くと、光は少しして、ゆっくりと身を離して俺を見上げた。

「…あの子たちは?」
「やっぱ…見てたんだ。」
「……。」
「…嫌じゃなかった?」
「……。」

光は少し瞳に涙をにじませた。でも、しっかりと俺を見上げたまま言った。

「…嫌じゃないよ。」
「……。」
「確かに…まだ、小さい子を見るのは…つらい。」
「うん…」
「でも…目を逸らしたくないの。」
「……。」
「子供を持つこと…恐れたくない。」
「…そっか。」

彼女の髪を撫で、微笑む。そうだよ…光は強い。誰かを恨んだりなんて、しない。

「それに…」
「ん?」
「…昔のこと、思い出してたの」
「昔のこと?」

光はちょっと頬を染め、目を逸らす。な…なんだ?

「高校生の時…。」
「うん…?」
「…窓から、見てたから」
「……?」
「…一也さんの、こと」

そ……。

「……そうだったの?」
「……。」
「え、まじ?…うわ、なんか照れる」
「う、うるさい…」

照れて顔を真っ赤にする光を見て、胸の奥がきゅんと苦しくなる。その勢いのまま彼女を抱きしめると、甘い香りと柔らかな感触に胸の奥が暖かくなる。
光がそんな風に、俺に恋してたなんて…可愛すぎる。あの頃のあの光が…。俺ばかり好きで、振り回されてると思ってたけど…。なんか、すげー嬉しい。

「…食欲は?食事、食べられそうか?」
「うん…」

ぎゅう、と俺を抱きしめるか弱い腕。

「一也さんと、一緒なら…」
「……。」

ああもう…ほんと、なんでこんなに可愛いんだか…。
時々辛らつだけど、甘えん坊モードに入るととことん甘えん坊だ。こんな光は俺しか知らない。さすがの倉持も、こんな風に甘えられたことはないだろう。なんとなく優越感…。

「じゃあ、食事の用意頼んでくるな。」
「うん…。」

体を離し、光の頭を撫でて部屋を出る。なんか、良い調子だな。いい方向に向かってる。最近は光も少しずつ、笑うようになってきたし…。
使用人を見つけて食事の用意を頼むと、はいすぐに、と頷いて厨房へ向かっていった。俺もひとまず部屋に戻る。シャワー浴びたいし。
部屋に戻ると、光はガウンを羽織って椅子に座っていた。俺は浴室に向かいかけた足を彼女の方に向ける。

「どうした?」

じっと携帯を見つめているから、声をかけてみた。なんだか神妙な顔をしていたし。光は俺を見上げると、晴れない表情で言った。

「それが…ずっと、司と連絡が取れなくて…」
「へぇ…」
「ここのところ、何度か電話してみたけど、出ないの。向こうからの連絡もないし…」
「そういや…倉持も牧瀬と連絡が取れないって言ってた。」
「倉持さんが?」
「マスコミに追いかけられて大変なんじゃないかって。」
「……。」

光は暗い表情になる。

「私のせいで…」
「いや、まあ、それは仕方ねえよ。それに、連絡が取れないってことは、あいつなりに何か対策してるんだろ。あいつしっかりしてるし…向こうには倉持もいるし、大丈夫だよ。」
「……。」
「今はお前は自分を優先しろって。牧瀬もそうして欲しいと思うよ。な?」
「……。」

小さく頷きながらも、顔は晴れない光。まあ仕方ないよなー…。

「……あっ」

光が小さく声を上げた。見ると携帯の画面が点灯し、『着信中』の文字の下に『光臣』という名前が表示されている。光は通話ボタンを押し、携帯を耳に当てた。

「…もしもし…。」
『光!?』

隣にいる俺にも、その声がはっきりと聞こえた。光臣にしては高く、はきはきとしたよく通る高い声。

「…司!?」

光は顔を赤くして、だんだんと目に涙を浮かべる。

『うん私!ごめん、ずっと連絡取れなくて…!ちょっと人ごみで、携帯落としちゃって…。』
「ううん…」
『光、無事!?大丈夫!?』
「うん…。」

声に涙が滲んだのを、牧瀬も感じたのだろうか。いくらか落ち着いた優しい声が帰ってきた。

『そっか…よかった〜…。今イタリアなんだよね?』
「うん…。」
『御幸さんは?今一緒にいるの?』
「うん…。」
『はあ〜。ああもう、本当に良かった。』
「…司は?今どこに…」
『あ!そうそう、それね!』

そうだ、どうして光臣の携帯から牧瀬が連絡してくるんだ?

『私、マスコミに目つけられちゃってさ〜。参ってたら、光臣さんが拾ってくれて。で、今光臣さんと郊外の別荘にいるの。』
「え…?」
『あ!ふたりっきりじゃないよ!変な勘違いしないでね!?使用人の人とかいっぱいいるから!』
「……。」

あ…光の顔が怖く…。

「…司、光臣そこにいる?」
『え?あ、うん。いるよ、隣に』
「ちょっと、電話代わってもらえる?」
『うん、わかった』

やや間が空いて、低い声が携帯から響いた。

『俺だ。』

…相変わらず偉そうなやつ…。

「光臣…司のことありがとう。」
『当然のことをしたまでだ。彼女にはマスコミが大人しくなるまでここにいていいと伝えてある。』
「そう…。」

光は静かに言葉を続ける。

「…光臣、わかってるよね?」
『え?』
「司に変なことしたら…一生許さないからね」
『え…』

光臣の声が固まった。

『あ、ああ…もちろん。』
「そうだよね。私の友達に手なんて出さないよね。」
『あ…、ああ。』

し…信用ねぇ〜…。いや、でも光臣の自業自得だな。日頃の行いというヤツだ。
光はそれから牧瀬と一言二言会話をして、電話を切った。牧瀬の無事を確かめたからか、また少し気分が晴れたように少し微笑んで俺を見る。

「よかったな。」

頭を撫でると、光は嬉しそうに頬を染めた。

「じゃ、ちょっと風呂入ってくる」
「うん…」

汗まみれのTシャツを脱ぎながらバスルームに入り、服を全て脱ぎ捨て、バスタブにお湯を張りながらシャワーで汗を流す。お湯に浸かると、疲れが一気に溶け出していく気がした。やっぱ、汗で少し冷えてたな。日本より暖かいとはいえ、気を付けないと…。
そんなことを考えながらお湯に浸かっていると、がちゃ、とバスルームのドアが開いて俺は驚愕する。

「な…、え…、光?ど、どした?」

入浴中に普通に入ってきた光に動揺しながら尋ねると、光はその場で服を脱ぎ始めた。

「え…!ちょ、ちょっと、何して…」

動揺する俺をよそに光は服を全て脱ぐと、シャワーを浴び始める。滑らかな肌を伝っていく水滴…。あ…、だめだ、下半身が…

光はシャワーを止め、浴槽に入ってくると、ぎゅっと俺に抱きついてきた。

「…光さん、拷問ですか?」
「えへへへ…」
「笑い事じゃないんだけどな〜…」
「一緒に入りたかったんだもん…」

…可愛い。可愛いけど…。今まで頼んでもしてくれなかったのに、よりによって手を出せないこんな時に叶えてくれなくても…。かえって辛いって。

「……。」
「一也さん?」
「…ん?」
「なんでこっち見ないの?」
「…わかってるだろ」
「ふふふ…」

楽しそうな光の笑い声。ああーやばい。やばいってもう。完全に拷問…

「顔真っ赤。」
「……。」
「かわいい…」
「…お前な、」

このままじゃ俺の立場がない。一応俺、年上なんだぞ。いいようにからかわれてたまるか…

「もう…知らないからな」
「え…?」

細い腕を掴み、降参ポーズのように両側に広げて挙げさせる。曝け出された胸を凝視すると、掴んでいる腕がぐっと抵抗するように動こうとして、だけど微動だにできず光の表情に羞恥が滲む。

「昔から…結構あったよな。」
「な…、なに…?」
「胸。」

かあ、と赤くなる光の顔。高校の時、付き合ってることが周りに知られて、随分下世話なことも言われたっけ。もうヤッたのか、とか。胸は揉んだのか、とか。全部はぐらかしたけど、実際…一番意識していたのは俺だ。付き合うことになってから…、いや、光のことが気になり始めてから、何度も想像した。胸、結構でかそうだな、とか、その感触とか…。キスしてからは、いよいよ、そういうことをするのも時間の問題かと思って、いつも少し期待していた。初めての行為は、思い描いていたようなものではなかったけど…、それでも初めて光の裸を見た時の、あの光景、感触、感動は、今も忘れられない。

「そ…そんなこと…思ってたの?」
「男なら誰だって想像するよ。」
「……。」
「好きな子の裸とかさ…」
「…っ」

ちゅ、と鎖骨にキスをすると、ぴくりと華奢な体が跳ねる。

「ヤるとき、どんな感じなんだろうとか…」
「…一也さんも?」
「当たり前だろ。」
「……。」
「お前で想像してた。初めてするより…キスするよりも前から、ずっと」
「……うそ…」

恥ずかしくてたまらない様子で顔を背ける光のうなじを舐める。

「ほんと。」
「……えっち」
「知ってる。」
「……。」

もう形勢逆転はできないと覚ったか、光は大人しくなって口を噤んだ。俺は彼女の胸元にキスを繰り返し、いよいよ桃色の蕾を舌で撫でる。

「…ぁ…」

光は目を瞑り、快楽に声を漏らす。
手を離し、もう一つの蕾を指先で転がしながら、右手を彼女の秘部に伸ばした――ところで、ぐい、と体を押しのけられた。

「…だめ」
「ええー…なんで?」

完全にする流れだったじゃん…。もう俺、痛いくらい勃ってるんですけど。

「今は…ちょっとしか時間、ないから…」
「…え?」
「…夜、いっぱいしたい」
「……。」

う…うわ、今の録音したいくらいやばい。

「…それは…嬉しいけど」
「……。」
「でも俺もう、限界…」
「……。」

ちらり、と光の視線が俺の下半身に移る。ギンギンに膨れ上がったそれを見て、光は逃げるように目を逸らす。

「おーい、お前のせいなんだぞ。急に風呂入ってきたりするから…」
「…じゃあ、手でしてあげるから」

おっ…、それはそれでいいかも…。
…あ、でも、それより…。

「待って光。前からしてみたかったんだけどさ」
「…?」
「胸でしてくんない?」
「胸…で?」

きょとん、と俺を見上げる二つの無垢な瞳。あー、背徳感ヤバイ。

「そう。ここ来て。」
「……。」

浴槽のふちに腰掛け、足の間に光を座らせる。

「…で、こうして…挟んで」
「えっ…」

ぐい、と両肩を引き寄せて身を屈ませ、大きな胸を持ち上げて俺のそそり立つそれを挟んでみせると、光はかなり動揺した様子で俺を見上げ、顔を赤くした。

「こ…こんなこと…本当にするの…?」
「パイズリっつーんだよ。デカくなきゃできないんだぞ〜。巨乳の特権。」
「……ばか」
「はっはっは…あー、ヤバイ。もうこの光景だけで…」
「……。」
「…光、してくれない?」

光はおずおずと胸を持ち、俺のモノを挟んで一緒にゆっくりと揉み始める。うわー、ヤバイ、エロ過ぎ…。

「…っ、やべ…良すぎ」

挿入とはまた違って、この他に無い柔らかな感触に包まれて、しかも光がしてくれているこの光景…。妄想の数百倍の破壊力。まさか本当にしてもらえる日が来るとは…。

「光、ちょっと…先っぽ舐めて」
「…ん…」

ちろちろと赤い舌が先端をくすぐる。あ、もう…だめだ。

「…っ、でる」
「んっ…」

ぱくり、と小さな口が俺のを咥えこんだ。えっ、と思う間もなく、その中に熱が吐き出される。光はそれを少し吸い上げるようにして、ちゅっ、と口を離し――苦し気に、2,3度飲み込んだ。

「…っけほ」
「えっ…、え!?な、何飲んでんだよ!」
「…飲んだら、男の人は嬉しいって」
「だ…誰がそんなこと吹き込んだ!?」
「事務所のモデル仲間の…」
「……。」

思わず細い両肩を掴んだまま、深くため息を吐く。

「だ、駄目だった…?」

急に不安そうにそう尋ねる光に、胸の奥が熱くなる。

「いや、駄目っつーか…驚いて」
「……?」
「あのな。俺…お前のこと、すげー大事なんだよ。本当に大事。」
「え……。」
「だから無理させたくない。こんな汚いもん飲ませたくないの。わかる?」
「……。」

ぱち、と瞬きをして、光は呟く。

「でも…私は……飲んでみたかったし…」
「……へ?」
「か…一也さんのだったら…汚くない……もん…」
「……。」

ほんっと…こいつは…

「お前は俺を殺す気か」
「え…?」
「もう…なんでそんな可愛いんだよ、お前」
「……。」

顔を赤くして光は黙り込んだ。

「…で、どうだった、飲んでみて」
「……。」

顔を赤くしたまま、光は俺を見上げる。AVとかだと、美味しかった(ハート)とかいうんだろうけど。光はそういう知識がない分、もしそんな風に言われたら、もう俺は…どうにかなってしまう。

「…まずかった」
「……。」

…ま、まあ…そうだよな。現実は…。

「喉に絡みつくし…飲みづらい」
「そりゃ…飲むもんじゃねーからな」
「…でも」

…でも?

「一也さんの…だと思うと…なんか、ドキドキして」
「……。」
「…私…変態かも…」

顔を覆って、指の隙間から困ったように俺を見上げる二つの無垢な瞳。ああもう、これだからこいつは…。

「……あーもう!」
「え…?な、なに?」
「可愛すぎるんだよお前は!」
「な…なにそれ…。」

また顔を赤くする光を、俺はぎゅっと抱きしめた。

 


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