212
「光臣の話って何だろうな?」
「うーん…何だろう。」
助手席の光と首をかしげながら、月が顔を出す頃、光臣が住む別宅に車で乗り込んだ。使用人に車と鍵とコートを預け、食堂に通されると、そこにはすでに倉持がいた。
「え…お前も呼ばれたの?」
「おー」
不愛想に返事が返ってくる。倉持は退屈そうに頬杖をついて座っていて、俺はその向かい側に光と並んで座った。倉持も交えての話って…なんだろう。
それにしても…
この間のパーティーのときも、倉持が光を助けてくれたらしいことを知って、内心穏やかではいられない。あーどうしていつもこうなるかな。倉持にカッコつけさせたくねぇのに…くそ、悔しい。
「…なんだよ?」
「…別に」
倉持がそっぽを向き、俺も視線を外す。普段から愛想のないやつだけど…今日はやけに腹が立つ。
「よう、揃ってるな。」
その空気を振り払うように、機嫌のよさそうな光臣の声とともに食堂のドアが開き、光臣と牧瀬が入ってきた。
「あれ、司も来てたんだ?」
「う、うん…」
光が言うと、牧瀬は苦笑いを浮かべる。
全員が席に着き、料理が並ぶと、光臣はワイングラスを手に口を開いた。
「今日は集まってくれてありがとう。」
「やけにかしこまってるけど、話って何?」
「まあ、黙って聞いていてくれ。」
「……。」
なんだよ、もったいつけて…。
「実は、俺たち…」
光臣はちょっと牧瀬を見つめ、俺たちを見渡す。
「俺と司は、結婚を前提に付き合うことにした。」
「……。」
「……えっ?」
言葉を失う倉持と俺。突然立ち上がる光。隣を見上げると、青ざめた顔で口元を手で覆っている。
「み…光臣…」
愕然と立ち尽くし、光臣を睨む光。
「つ、司に何かしたら許さないって言ったでしょ!」
「まだ何もしていないが?」
「……。」
けろりと答える光臣、めちゃくちゃ居心地悪そうに肩を竦めて小さくなる牧瀬。
「本当なの、司!?」
「そ…そんなこと聞かないでよ〜…」
お…おもしれ〜…俺と光が結婚したときの奥村みてー。
「うう…」
光は頭を抱えて席に戻り、へたり込むように座った。
「嘘でしょ…司が…よりによって、光臣と…」
「ちゃ、ちゃんと誠実にしてくれてるよ、大丈夫。」
「当たり前だよ!」
光はステーキ用のナイフを握りしめ、光臣を睨んだ。
「…司を泣かせたら許さないからね…」
「わ…、わかってる…」
両手を上げお手上げのポーズで、光臣は頷いた。
***
「…で、いつからそんな関係になってたんだよ?」
料理を口に運びながら二人に尋ねると、牧瀬が口を開いた。
「実は〜…彼氏が出て行ってから少しして、ちょっと付き纏われるようになっちゃって…、」
「な、なんで言ってくれなかったの!?」
「…光が知ったら殺人事件が起こると思って…」
やべぇ笑いすぎて腹痛ぇ。
「それで、光臣さんが色々助けてくれて、それで、まぁ…そういうことに」
「へ〜、やるなぁ光臣。」
「おい…下心があったみたいに言うな。殺される…」
確かに光が光臣を睨んでる。いやでも、人の恋愛沙汰に首を突っ込むってことは、そういうことだろ?
「光臣は?牧瀬と知り合ってから結構経つけど、その頃から意識してたの?」
「……。」
光臣はちょっと光を警戒しながら答えた。
「…美人だな、とは思っていた」
「へー!」
「なんか面白いな、お前のそういう話」
「からかうな。」
「恥ずかしいんですけど…。」
素直な光臣も、照れている牧瀬も珍しくて、面白い。
「じゃあ牧瀬は社長の妻か〜、玉の輿じゃん。」
へっ、とやさぐれたように鼻で笑う牧瀬。
「…なんだよその顔?」
「簡単に言ってくれますよね…」
「え?」
「家柄のこととか、お付き合いとか、すっごい大変なんですからね!」
「お…、おお…」
確かにそれもそうか。光臣は親が婚約者とか決めるような家だし…。って、それじゃあ牧瀬と付き合ってて大丈夫なのか?
「司は聡明で美しいし、人との縁を広げる才能もある。きっと父も祖父も気にいるさ。」
「……。」
「……。」
さらりと恥ずかしいセリフを吐く光臣に、俺と倉持は閉口した。
***
「司、光臣に何か酷いことされたら…っ」
「だ、大丈夫だってば〜。」
「思いっきり殴るんだよ!?花瓶より彫像のほうがいいからね!枕元に何か武器になるものを…っ」
「こ、怖いって!」
「うう…司ぁ…」
牧瀬に泣きつく光、必死に宥める牧瀬、ちょっとショックを受けた様に遠くからそれを眺める光臣。お、面白すぎる。
「いや〜、光にここまで愛されてるとは…。」
…牧瀬はまんざらでもなさそうだし。だめだこりゃ。
「光、帰るぞ〜」
「司は?」
「い…今はここに泊めてもらってて…」
「え!?う、うそでしょ!?」
「会社の寮遠いんだもん〜…」
「じゃあうちに…!」
「おい…少しは信用してくれ」
光臣はため息をつき、腕を組む。
「それに、別に構わないだろ。もう恋人同士なんだから」
「……!!」
光臣を睨みつけて詰め寄る光は、昔の奥村そのもので…。悪いけど、見ているこっちはちょっと面白い。
「だけど…まだ何かする気はない。約束するよ。」
「…え?」
光臣は牧瀬を見て、牧瀬は目を丸くする。
「俺は今まで不誠実な生き方しか知らなかった。だから、どうすれば君にとって誠実なのか…考える。」
「……。」
あーあ…牧瀬、赤くなっちゃったよ…。
光はその様子を見て少し考えなおしたのか、さきほどよりは優しい目で光臣を睨んだ。
「その言葉…忘れないでね。」
「ああ。」
光臣が頷くと、光は牧瀬の手を取って、見上げた。
「司…」
「う、うん」
「昔の光臣を知ってるから…、どうしても、心配だけど…」
「う…、うん。」
「でも…おめでとう。」
牧瀬は少し照れたようにはにかんで、頷いた。
「ありがとう。」
「うーん…何だろう。」
助手席の光と首をかしげながら、月が顔を出す頃、光臣が住む別宅に車で乗り込んだ。使用人に車と鍵とコートを預け、食堂に通されると、そこにはすでに倉持がいた。
「え…お前も呼ばれたの?」
「おー」
不愛想に返事が返ってくる。倉持は退屈そうに頬杖をついて座っていて、俺はその向かい側に光と並んで座った。倉持も交えての話って…なんだろう。
それにしても…
この間のパーティーのときも、倉持が光を助けてくれたらしいことを知って、内心穏やかではいられない。あーどうしていつもこうなるかな。倉持にカッコつけさせたくねぇのに…くそ、悔しい。
「…なんだよ?」
「…別に」
倉持がそっぽを向き、俺も視線を外す。普段から愛想のないやつだけど…今日はやけに腹が立つ。
「よう、揃ってるな。」
その空気を振り払うように、機嫌のよさそうな光臣の声とともに食堂のドアが開き、光臣と牧瀬が入ってきた。
「あれ、司も来てたんだ?」
「う、うん…」
光が言うと、牧瀬は苦笑いを浮かべる。
全員が席に着き、料理が並ぶと、光臣はワイングラスを手に口を開いた。
「今日は集まってくれてありがとう。」
「やけにかしこまってるけど、話って何?」
「まあ、黙って聞いていてくれ。」
「……。」
なんだよ、もったいつけて…。
「実は、俺たち…」
光臣はちょっと牧瀬を見つめ、俺たちを見渡す。
「俺と司は、結婚を前提に付き合うことにした。」
「……。」
「……えっ?」
言葉を失う倉持と俺。突然立ち上がる光。隣を見上げると、青ざめた顔で口元を手で覆っている。
「み…光臣…」
愕然と立ち尽くし、光臣を睨む光。
「つ、司に何かしたら許さないって言ったでしょ!」
「まだ何もしていないが?」
「……。」
けろりと答える光臣、めちゃくちゃ居心地悪そうに肩を竦めて小さくなる牧瀬。
「本当なの、司!?」
「そ…そんなこと聞かないでよ〜…」
お…おもしれ〜…俺と光が結婚したときの奥村みてー。
「うう…」
光は頭を抱えて席に戻り、へたり込むように座った。
「嘘でしょ…司が…よりによって、光臣と…」
「ちゃ、ちゃんと誠実にしてくれてるよ、大丈夫。」
「当たり前だよ!」
光はステーキ用のナイフを握りしめ、光臣を睨んだ。
「…司を泣かせたら許さないからね…」
「わ…、わかってる…」
両手を上げお手上げのポーズで、光臣は頷いた。
***
「…で、いつからそんな関係になってたんだよ?」
料理を口に運びながら二人に尋ねると、牧瀬が口を開いた。
「実は〜…彼氏が出て行ってから少しして、ちょっと付き纏われるようになっちゃって…、」
「な、なんで言ってくれなかったの!?」
「…光が知ったら殺人事件が起こると思って…」
やべぇ笑いすぎて腹痛ぇ。
「それで、光臣さんが色々助けてくれて、それで、まぁ…そういうことに」
「へ〜、やるなぁ光臣。」
「おい…下心があったみたいに言うな。殺される…」
確かに光が光臣を睨んでる。いやでも、人の恋愛沙汰に首を突っ込むってことは、そういうことだろ?
「光臣は?牧瀬と知り合ってから結構経つけど、その頃から意識してたの?」
「……。」
光臣はちょっと光を警戒しながら答えた。
「…美人だな、とは思っていた」
「へー!」
「なんか面白いな、お前のそういう話」
「からかうな。」
「恥ずかしいんですけど…。」
素直な光臣も、照れている牧瀬も珍しくて、面白い。
「じゃあ牧瀬は社長の妻か〜、玉の輿じゃん。」
へっ、とやさぐれたように鼻で笑う牧瀬。
「…なんだよその顔?」
「簡単に言ってくれますよね…」
「え?」
「家柄のこととか、お付き合いとか、すっごい大変なんですからね!」
「お…、おお…」
確かにそれもそうか。光臣は親が婚約者とか決めるような家だし…。って、それじゃあ牧瀬と付き合ってて大丈夫なのか?
「司は聡明で美しいし、人との縁を広げる才能もある。きっと父も祖父も気にいるさ。」
「……。」
「……。」
さらりと恥ずかしいセリフを吐く光臣に、俺と倉持は閉口した。
***
「司、光臣に何か酷いことされたら…っ」
「だ、大丈夫だってば〜。」
「思いっきり殴るんだよ!?花瓶より彫像のほうがいいからね!枕元に何か武器になるものを…っ」
「こ、怖いって!」
「うう…司ぁ…」
牧瀬に泣きつく光、必死に宥める牧瀬、ちょっとショックを受けた様に遠くからそれを眺める光臣。お、面白すぎる。
「いや〜、光にここまで愛されてるとは…。」
…牧瀬はまんざらでもなさそうだし。だめだこりゃ。
「光、帰るぞ〜」
「司は?」
「い…今はここに泊めてもらってて…」
「え!?う、うそでしょ!?」
「会社の寮遠いんだもん〜…」
「じゃあうちに…!」
「おい…少しは信用してくれ」
光臣はため息をつき、腕を組む。
「それに、別に構わないだろ。もう恋人同士なんだから」
「……!!」
光臣を睨みつけて詰め寄る光は、昔の奥村そのもので…。悪いけど、見ているこっちはちょっと面白い。
「だけど…まだ何かする気はない。約束するよ。」
「…え?」
光臣は牧瀬を見て、牧瀬は目を丸くする。
「俺は今まで不誠実な生き方しか知らなかった。だから、どうすれば君にとって誠実なのか…考える。」
「……。」
あーあ…牧瀬、赤くなっちゃったよ…。
光はその様子を見て少し考えなおしたのか、さきほどよりは優しい目で光臣を睨んだ。
「その言葉…忘れないでね。」
「ああ。」
光臣が頷くと、光は牧瀬の手を取って、見上げた。
「司…」
「う、うん」
「昔の光臣を知ってるから…、どうしても、心配だけど…」
「う…、うん。」
「でも…おめでとう。」
牧瀬は少し照れたようにはにかんで、頷いた。
「ありがとう。」