夕方、御幸と学校近くのコンビニへ行くと、偶然にも奥村と瀬戸がいた。

「よお」
「あ…、お疲れ様です!」
「…。」


からかうように声をかける御幸と、爽やかに挨拶する瀬戸と、猛犬のように威嚇する奥村。いつもの光景だ。

「お前らも立派にパシられてんじゃねーか」

御幸は二人が持つ籠いっぱいのジュースとメモ用紙をニヤニヤと眺める。相変わらず性格悪いな。だから友達ができねーんだよ。
ははは、と笑う瀬戸と、御幸を睨みつける奥村。その睨みさえ、御幸は面白がっているようだけど。

すると、ピロリロリロ、と店の自動ドアが開いたことを告げる電子音が鳴り、俺たちは何気なく振り返り、驚いた。そこにいたのは玉城さんと、哲さんの弟、結城将司だったのだ。

「え!?結城、なんで光先輩と…」

瀬戸が声を上げると、将司は当然のように答える。

「一緒に帰ってるんだ。」
「いや、だから、なんで…」
「そうするように兄貴に言われてる」
「???」

ますます混乱する瀬戸。事情を知っている俺と御幸は何となく目配せをする。

「御幸先輩…どういうつもりですか?」
「え?」

突然、奥村が御幸に突っかかった。

「他の男に自分の恋人を送らせるなんて…自分が彼氏だという自覚がないんですか?」
「お前結構すげえこと言うのな。」
「質問に答えてください。」

御幸は笑いをこらえている。そういう態度がかえって刺激すんだっつーの…と思いつつ、これはさすがに面白すぎるな。

「いろいろあんだよ。お前は知らなくていーの。」
「……!!!」
「つうか俺寮だから、送りたくても送れねーし。」

奥村が御幸にからかわれているのをよそに、玉城さんと将司は各々買うものを選び始めている。…そう。これも最近ではいつもの光景。ことあるごとに、特に玉城さんに関して、奥村が御幸に突っかかるのだ。
玉城さんの親戚で、幼い頃から知っているとは聞いたが、たぶんこいつ、玉城さんのこと好きなんだな…自覚してねーけど。

「じゃ、失礼します。こうちゃん、瀬戸君、またね。」

さっさと買い物を済ませた玉城さんが俺たちに声をかけ、将司と連れ立って店を出ていく。

「あ、光、ちょっと」

そのあとを御幸が追いかけていく。店を出たところで立ち止まった二人。将司は少し離れた場所で待っている。
威勢よく後を追いかける奥村と、籠と奥村を見比べて急いでレジへ行く瀬戸。俺はのんびりと御幸の後を追った。

向かい合って何かを話していた御幸と玉城さん。…かと思えば、突然、玉城さんが御幸の顔面を掴んだ。

「やめてください。」
「え〜、つめてー…」
「正気ですか?」
「だって明日からまた暫く会えねーじゃん」

どうも、御幸がキスをしようとして拒否されたらしい。そりゃそうだ、こんなところで。
奥村も勝ち誇ったような顔で御幸を睨みつけている。

「フ…まるで犬ですね」
「いや、お前に言われたくねーわ」

冷たくあしらわれる御幸を見てご満悦のようだが、二人っきりの時の甘すぎる空気を知っている俺としては、喜びきれない…。まるで別人だったもんなぁ、玉城さん…。クソ…、御幸にしか見せねー姿ってやつか。御幸の奴が余裕でいられるのもわかる気がする。ムカつく。

「じゃあ私たち、帰るので」

玉城さんはあっさりと、御幸と奥村を放置して帰っていく。

「おい光舟〜!会計ほっぽりだして出ていくなよ!」

瀬戸が重たそうな袋を持って店から飛び出してきて奥村に抗議する。が、奥村はどこ吹く風。それよりも御幸を威嚇する方が重要らしい。
御幸の方はというと余裕の顔でそれをあしらっている。
…どうして。
こいつらはどうやって出会って、何をして、両思いになったんだろう。顔は良い二人だけど。でもそれだけじゃない。なんなんだ、あの、信じあっている空気。お互いしか眼中にない態度。…羨ましくないと言えばうそになる。でも…

「御幸」

俺には関係ない。

「行くぞ」
「?…おう」

寮に帰る瀬戸と奥村と別れ、俺たちはコンビニ内に戻る。肉まんとおでんの匂い。今は冬。だからこんな寂しい気持ちになるんだ。絶対に…恋なんかじゃねーよ。

 


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