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朝のニュース番組で映画の告知の仕事を終えた光さんは、いったんホテルに戻ると言った。司の予定が開いていたら誘ってみようかな、と呟きながらスマホを開き、メールを打ってから、仕事の資料を広げる。今度のファッションショーで着る衣装の資料だ。
そんな後部座席の彼女をルームミラーで確かめ、俺は車をホテルのロータリーにいれた。SPが運転を変わり、今日はもう帰っていい、と告げて、俺は光さんと共にホテルに入った。
部屋について、明日の予定を確認し、彼女の荷物を片付けた時、光さんの電話が鳴った。
「あ…一也さんだ。」
嬉しそうに頬を綻ばせる彼女。俺はちらりと腕時計を確認する。向こうは今、深夜の1時ごろだけど…どうかしたんだろうか。
「もしもし?」
嬉々として電話に出た光さんは、しばらく耳を澄まして、怪訝そうに眉根を寄せた。
「一也さん?もしもし…」
もう一度呼びかけて、スマホを耳から離して画面を確認し、また耳に当てる。
「何か話してるけど、よく聴こえない。」
間違えてかけちゃったのかな?と俺に首を傾げる光さん。しかしまたスマホを耳に当てると、にわかに顔を強張らせて唇を開いた。
「……。」
その表情がどんどん青ざめていくのを見て、俺の胸に不安が過ぎる。
「どうされたんですか。」
「……。」
「光さん。」
名前を呼ぶと、彼女の青い瞳が俺を見た。そしてそれは瞬いて、みるみるうちに涙が溢れ、俺が息をのんだと同時に、彼女は震える手からスマホを床に落とした。
――ゴトン、と床にスマホが叩きつけられる。画面はまだ通話中だ。
俺はそれを拾い上げ、崩れ落ちるように床に座り込む彼女を支えながら、スマホを耳に当ててみた。
『…私も…愛してる。』
『……。』
『これからも…こうして会ってくれる…?』
『……。……あぁ…。』
光さんの肩が震え、俺は電話を切って彼女を支えた。
「ここでは体が冷えます。こちらへ」
呆然と涙を流す彼女をソファへ座らせ、ハンカチを手渡す。
「……。」
なんて声をかけたらいいか、わからない。だけど、御幸一也に対して怒りを覚えながらも、違和感を拭いきれずにいた。相手の女は誰なんだ?なぜ、こんな形で電話をかけたのか?
「仕事をキャンセルして、自宅へ帰られますか?」
「……。」
光さんは愕然としながらも、ゆっくりと考えた様子で、小さく首を横に振った。
「…何か俺にできることはありませんか。」
不器用な言葉が歯がゆい。光さんは唇を震わせて、頬を涙で濡らしながら、憔悴した様子で呟いた。
「……司に…会いたい」
「…連絡してみます。」
***
牧瀬司はただ事ではない様子を悟ると二つ返事で「すぐに行く」と言った。そしてその言葉通り、電話を切って30分ほどで、婚約者の車でホテルに乗りつけた。
部屋のドアが叩かれ、俺がドアを開けると、心配そうな牧瀬司と光臣がいて、親友の姿を見るや否や、光さんは彼女に抱き着いた。
「光臣はここにいて。」
「ああ。」
牧瀬司に頷いた光臣は、俺に目配せをして、女二人を部屋に残し一緒にホテルの廊下に出た。
「なにがあったんだ?」
従弟として心配なのはわかるが、簡単に人に話していいものではないことはわかっていた。俺が目を伏せると、光臣はそれを察した様子で、まあいい、と頷いた。
***
「光臣。」
しばらくして、牧瀬司が部屋から出てきた。
「私、今日は光の傍にいるから…」
「わかった。また連絡してくれ。迎えに来るよ。」
「ありがとう。」
「…光の様子は?」
「…かなり参ってる。でも、まだそうと決まったわけじゃないからって…」
「そうと決まったわけじゃないって?」
「……。…御幸さんが…幼馴染の女の人と、その…」
「不倫か?」
「だ、だから決まったわけじゃないって…。」
幼馴染?あの女が?声だけでそれがわかったということは、光さんも会ったことがある相手なのだろうか。
「とにかく光もまだ冷静になれないから落ち着くまで待ってほしいって。」
「…そうだな。」
「で、ちょっと倉持さんに電話してくるから、二人ともここにいて。」
「え?なぜあいつに?」
「その女の人のこと、私知らないんだもん。光の話では、倉持さんは会ったことがあるらしいから、どんな人なのかだけでも…。御幸さんに電話しても出ないし。」
「電話したのか…」
「当たり前じゃん。じゃ、ちょっと電話してくるから」
せかせか歩いて行く牧瀬司を光臣と見送って、俺はつい呟いた。
「お前の婚約者、すごいな…」
「…いい女だろ?」
そんな後部座席の彼女をルームミラーで確かめ、俺は車をホテルのロータリーにいれた。SPが運転を変わり、今日はもう帰っていい、と告げて、俺は光さんと共にホテルに入った。
部屋について、明日の予定を確認し、彼女の荷物を片付けた時、光さんの電話が鳴った。
「あ…一也さんだ。」
嬉しそうに頬を綻ばせる彼女。俺はちらりと腕時計を確認する。向こうは今、深夜の1時ごろだけど…どうかしたんだろうか。
「もしもし?」
嬉々として電話に出た光さんは、しばらく耳を澄まして、怪訝そうに眉根を寄せた。
「一也さん?もしもし…」
もう一度呼びかけて、スマホを耳から離して画面を確認し、また耳に当てる。
「何か話してるけど、よく聴こえない。」
間違えてかけちゃったのかな?と俺に首を傾げる光さん。しかしまたスマホを耳に当てると、にわかに顔を強張らせて唇を開いた。
「……。」
その表情がどんどん青ざめていくのを見て、俺の胸に不安が過ぎる。
「どうされたんですか。」
「……。」
「光さん。」
名前を呼ぶと、彼女の青い瞳が俺を見た。そしてそれは瞬いて、みるみるうちに涙が溢れ、俺が息をのんだと同時に、彼女は震える手からスマホを床に落とした。
――ゴトン、と床にスマホが叩きつけられる。画面はまだ通話中だ。
俺はそれを拾い上げ、崩れ落ちるように床に座り込む彼女を支えながら、スマホを耳に当ててみた。
『…私も…愛してる。』
『……。』
『これからも…こうして会ってくれる…?』
『……。……あぁ…。』
光さんの肩が震え、俺は電話を切って彼女を支えた。
「ここでは体が冷えます。こちらへ」
呆然と涙を流す彼女をソファへ座らせ、ハンカチを手渡す。
「……。」
なんて声をかけたらいいか、わからない。だけど、御幸一也に対して怒りを覚えながらも、違和感を拭いきれずにいた。相手の女は誰なんだ?なぜ、こんな形で電話をかけたのか?
「仕事をキャンセルして、自宅へ帰られますか?」
「……。」
光さんは愕然としながらも、ゆっくりと考えた様子で、小さく首を横に振った。
「…何か俺にできることはありませんか。」
不器用な言葉が歯がゆい。光さんは唇を震わせて、頬を涙で濡らしながら、憔悴した様子で呟いた。
「……司に…会いたい」
「…連絡してみます。」
***
牧瀬司はただ事ではない様子を悟ると二つ返事で「すぐに行く」と言った。そしてその言葉通り、電話を切って30分ほどで、婚約者の車でホテルに乗りつけた。
部屋のドアが叩かれ、俺がドアを開けると、心配そうな牧瀬司と光臣がいて、親友の姿を見るや否や、光さんは彼女に抱き着いた。
「光臣はここにいて。」
「ああ。」
牧瀬司に頷いた光臣は、俺に目配せをして、女二人を部屋に残し一緒にホテルの廊下に出た。
「なにがあったんだ?」
従弟として心配なのはわかるが、簡単に人に話していいものではないことはわかっていた。俺が目を伏せると、光臣はそれを察した様子で、まあいい、と頷いた。
***
「光臣。」
しばらくして、牧瀬司が部屋から出てきた。
「私、今日は光の傍にいるから…」
「わかった。また連絡してくれ。迎えに来るよ。」
「ありがとう。」
「…光の様子は?」
「…かなり参ってる。でも、まだそうと決まったわけじゃないからって…」
「そうと決まったわけじゃないって?」
「……。…御幸さんが…幼馴染の女の人と、その…」
「不倫か?」
「だ、だから決まったわけじゃないって…。」
幼馴染?あの女が?声だけでそれがわかったということは、光さんも会ったことがある相手なのだろうか。
「とにかく光もまだ冷静になれないから落ち着くまで待ってほしいって。」
「…そうだな。」
「で、ちょっと倉持さんに電話してくるから、二人ともここにいて。」
「え?なぜあいつに?」
「その女の人のこと、私知らないんだもん。光の話では、倉持さんは会ったことがあるらしいから、どんな人なのかだけでも…。御幸さんに電話しても出ないし。」
「電話したのか…」
「当たり前じゃん。じゃ、ちょっと電話してくるから」
せかせか歩いて行く牧瀬司を光臣と見送って、俺はつい呟いた。
「お前の婚約者、すごいな…」
「…いい女だろ?」