027
「ちょっと…、先輩!」
廊下の途中で、光が俺の腕を振り払い、立ち止る。
「何するつもりですか?」
「決まってんだろ…お前にこんなことして…ぜってー許せねぇ…」
「…どうして?わたしのこと避けてたくせに…」
「…だからだよ!」
俺たちを追いかけてきた倉持と牧瀬が顔を見合わせ、立ち止る。
「偶然聞いたんだよ。2年の女子が陰口叩いてんの…俺と付き合ってることがバレたら、お前に迷惑がかかると思って…」
「……。」
光はしばらく黙って、落ち着いた様子で呟いた。
「……なんだ…」
そう呟くと、光はにっこりとほほ笑んだ…けれど、俺は思わず顔が引きつる。…光の目が笑っていないからだ。
「だったら最初からそう言ってください。心配して損しました。」
「え…でもお前、実際に嫌がらせが…」
「こんなの…何でもないです。御幸先輩は手を出さないでください。」
「何言ってんだよ、もとはと言えば俺が原因で」
「…言い方を替えます。自分でやり返さないと気が済まないので先輩は手を出さないでください。」
「え…」
「それに、もう手は打ってありますから。」
え?
牧瀬と倉持はまた顔を見合わせる。
「…とにかく、良かったです。先輩が私を避ける理由がわかって…」
「…ごめん。」
「もう避けたりしないでくださいね。…嫌がらせより、そっちのほうが、辛いです」
「…うん。本当に、ごめん」
今度こそにっこりとほほ笑んだ光の顔を見て安堵する。よかった、許してもらえたようだ。
「じゃあ私、教室に戻ります。」
光はそう言って、倉持にもあいさつし、俺に向き直る。
「さよなら。彼女募集中の御幸先輩。」
…え?
……あ!!
「ちょっ…待て、違うって!」
慌てて呼びとめるが、光は牧瀬を引っ張ってさっさと行ってしまう。廊下に取り残された俺は、思う存分、倉持に笑われるのだった。
***
「光いる?」
2年の教室のドアを開けて声をかけると、教室中の視線を浴びた。…覚悟してはいたが、居心地わりぃ…。
教室の真ん中あたりの席に、光はいた。何人かの女子生徒たちとお喋りをしていたらしく、席の周りには牧瀬を含む2,3人の女子が集まっていて、皆目を丸くして俺を見ている。
構わず教室に踏み込み、光の席まで歩いて行く。
「アレ…3年の御幸先輩だよね?」
「野球部の人でしょ?雑誌に載ってた」
「えー結構イケメンじゃない?」
野次馬の噂話に気付かないふりをしながら光の前まで来ると、光は戸惑ったように俺を見上げた。
「…あのさ」
「…はい?」
「今日俺、携帯寮に忘れたから。何かあったら倉持にメールして。」
光はぽかん、とした。それもそうだろう、普段、学校にいる間にメールなんて、めったにしたことないし。
「えっと…それでわざわざ?」
そう問う光を前に照れくさくなったとき、聞き慣れた声が教室に響き渡った。
「なっ……御幸先輩!!?な、なぜここに!!!」
「あー、うるせーのが来た」
教室の入り口で固まる沢村を見る。後ろには降谷と金丸も驚いた顔で立っている。そういや、こいつらも同じクラスだったか。
「うおおお玉城無事か!?御幸先輩に変なことされてないか!?」
「おい…どういう意味だよ」
こいつなりの冗談なのだろうが、沢村が駆け寄って光の両肩を掴んでいるのを見るのはあまり気分が良くない。
「困りますよお客さん!!うちのクラスの子はお触り禁止っすよ!!」
「触ってんのはテメーだよ」
「…っく!つか、何でここにいるんすか!!」
「何でって…」
いいよな?というように光を見ると、光は驚いたように俺を見つめ返してくる。
「俺ら付き合ってるから。」
教室が静まり返った。言ってやった。もうどうにでもなれだ。
沢村は青くなったり赤くなったりして口をパクパクさせ、俺と光を交互に見る。
「なっ…なん…だと…?」
「御幸先輩!!」
ガタン、と大きく椅子を鳴らして立ち上がったのは牧瀬だ。
「よくぞ…よくぞ言ってくれました。私がどれほどこの日を待ちわびたか…」
「何キャラだよ」
「この間は本当に失礼しました!すみませんでした!」
「あ…、いや、それはもーいいから…」
野次馬の視線が痛い。俺は牧瀬に顔を上げさせて、沢村に向き直る。
「つーわけだから、ほら、そこどけ。邪魔すんな。」
「ぐっ…!」
沢村は悔しそうにしながら退散した。沢村の影から現れた光は、少し顔を赤くして俺を見上げ、不機嫌そうに、しかしどこかまんざらでもなさそうに視線を逸らした。
廊下の途中で、光が俺の腕を振り払い、立ち止る。
「何するつもりですか?」
「決まってんだろ…お前にこんなことして…ぜってー許せねぇ…」
「…どうして?わたしのこと避けてたくせに…」
「…だからだよ!」
俺たちを追いかけてきた倉持と牧瀬が顔を見合わせ、立ち止る。
「偶然聞いたんだよ。2年の女子が陰口叩いてんの…俺と付き合ってることがバレたら、お前に迷惑がかかると思って…」
「……。」
光はしばらく黙って、落ち着いた様子で呟いた。
「……なんだ…」
そう呟くと、光はにっこりとほほ笑んだ…けれど、俺は思わず顔が引きつる。…光の目が笑っていないからだ。
「だったら最初からそう言ってください。心配して損しました。」
「え…でもお前、実際に嫌がらせが…」
「こんなの…何でもないです。御幸先輩は手を出さないでください。」
「何言ってんだよ、もとはと言えば俺が原因で」
「…言い方を替えます。自分でやり返さないと気が済まないので先輩は手を出さないでください。」
「え…」
「それに、もう手は打ってありますから。」
え?
牧瀬と倉持はまた顔を見合わせる。
「…とにかく、良かったです。先輩が私を避ける理由がわかって…」
「…ごめん。」
「もう避けたりしないでくださいね。…嫌がらせより、そっちのほうが、辛いです」
「…うん。本当に、ごめん」
今度こそにっこりとほほ笑んだ光の顔を見て安堵する。よかった、許してもらえたようだ。
「じゃあ私、教室に戻ります。」
光はそう言って、倉持にもあいさつし、俺に向き直る。
「さよなら。彼女募集中の御幸先輩。」
…え?
……あ!!
「ちょっ…待て、違うって!」
慌てて呼びとめるが、光は牧瀬を引っ張ってさっさと行ってしまう。廊下に取り残された俺は、思う存分、倉持に笑われるのだった。
***
「光いる?」
2年の教室のドアを開けて声をかけると、教室中の視線を浴びた。…覚悟してはいたが、居心地わりぃ…。
教室の真ん中あたりの席に、光はいた。何人かの女子生徒たちとお喋りをしていたらしく、席の周りには牧瀬を含む2,3人の女子が集まっていて、皆目を丸くして俺を見ている。
構わず教室に踏み込み、光の席まで歩いて行く。
「アレ…3年の御幸先輩だよね?」
「野球部の人でしょ?雑誌に載ってた」
「えー結構イケメンじゃない?」
野次馬の噂話に気付かないふりをしながら光の前まで来ると、光は戸惑ったように俺を見上げた。
「…あのさ」
「…はい?」
「今日俺、携帯寮に忘れたから。何かあったら倉持にメールして。」
光はぽかん、とした。それもそうだろう、普段、学校にいる間にメールなんて、めったにしたことないし。
「えっと…それでわざわざ?」
そう問う光を前に照れくさくなったとき、聞き慣れた声が教室に響き渡った。
「なっ……御幸先輩!!?な、なぜここに!!!」
「あー、うるせーのが来た」
教室の入り口で固まる沢村を見る。後ろには降谷と金丸も驚いた顔で立っている。そういや、こいつらも同じクラスだったか。
「うおおお玉城無事か!?御幸先輩に変なことされてないか!?」
「おい…どういう意味だよ」
こいつなりの冗談なのだろうが、沢村が駆け寄って光の両肩を掴んでいるのを見るのはあまり気分が良くない。
「困りますよお客さん!!うちのクラスの子はお触り禁止っすよ!!」
「触ってんのはテメーだよ」
「…っく!つか、何でここにいるんすか!!」
「何でって…」
いいよな?というように光を見ると、光は驚いたように俺を見つめ返してくる。
「俺ら付き合ってるから。」
教室が静まり返った。言ってやった。もうどうにでもなれだ。
沢村は青くなったり赤くなったりして口をパクパクさせ、俺と光を交互に見る。
「なっ…なん…だと…?」
「御幸先輩!!」
ガタン、と大きく椅子を鳴らして立ち上がったのは牧瀬だ。
「よくぞ…よくぞ言ってくれました。私がどれほどこの日を待ちわびたか…」
「何キャラだよ」
「この間は本当に失礼しました!すみませんでした!」
「あ…、いや、それはもーいいから…」
野次馬の視線が痛い。俺は牧瀬に顔を上げさせて、沢村に向き直る。
「つーわけだから、ほら、そこどけ。邪魔すんな。」
「ぐっ…!」
沢村は悔しそうにしながら退散した。沢村の影から現れた光は、少し顔を赤くして俺を見上げ、不機嫌そうに、しかしどこかまんざらでもなさそうに視線を逸らした。