【速報】倉持、そしてアメリカへ…

001:倉持が休暇で渡米した模様

002:目的は言わなくてもわかるな?

003:やっぱり御幸光が諦められなくて木崎えみと破局したのかぁ…

004:一般人なら余裕で通報されてるだろこれ

005:御幸光もまんざらでもないのかな

006:旦那の元チームメイトだから扱いに困ってる説

007:すっぱり切り捨ててもいいと思うけどなぁ

008:今回は御幸家じゃなくホテルに滞在という闇

009:>008 御幸一也と会ってるみたいだけどな

010:こいつらの関係ほんと気になる お互いのことどう思ってんだろ

011:>010 言うほど気になるか?

012:そろそろ倉持は目を覚ませ

013:まあでも御幸光レベルの美女は数人の男と結婚しても誰も文句言わねえだろ 美男美女は多夫多妻できるように法律改正するべき

014:確かに御幸光レベルの美女を一人の男が独占するのはもったいねぇよな

015:しかも普通美女は男をとっかえひっかえしてるもんなのに御幸光は旦那としかセックスしたことないのは確実なんだぞ、これは許されない

016:>015 言うほど確実か?

017:御幸夫婦の出会いは御幸光が高1の夏…可能性はあるな

018:別れてた時期に他の男と寝てるかもよ

019:>018 御幸光は堅物で異性のアプローチは総スルーすることで有名

020:一時期レズ説すら出てたよな まだ10代の頃

021:監督すら連絡先交換できないらしいな 全部マネージャーを通すらしい

022:マジ?そんなんできんの?

023:>022 御幸光レベルならな

024:事務所の看板女優だったから社長が全力で守ってたっぽいな

025:倉持は連絡先知ってんのかな

026:知ってたらこんなに付き纏うかよ

027:>026 連絡先すら知らないのに付き纏う方がヤバイんだよなぁ…




「よお」
「……。」

御幸が店内に入ってきて、俺を見てうんざりした顔を隠しもせずに、ため息交じりに俺の向かい側に座った。

「…なーんでまたアメリカに来てんのかね…」
「ただの休暇の旅行だっつの。」
「どーだか…」

ったくどいつもこいつも…、と御幸はぶつぶつ文句を言い、メニューを開いた。

「今日光は?」
「周防とジム行ってるよ」
「ふーん…」

とりあえず一人ではないことに安心し、俺もメニューを開いた。適当な軽食を注文し、料理が揃うと、それを摘まみながら話し始めた。

「で…どうすんの?」
「は?」
「なんとか王国のことだよ」
「…アンクレー王国な。光の意思を尊重するつもりだけど、光は行くつもりはないってさ。」
「…まぁ、そうだよな」
「何、がっかり?」
「何も言ってねぇだろ」

そもそもそんな話、未だに現実味が薄すぎて…。
光も御幸もその業界では大成功していて、そう簡単に捨てるわけにはいかないキャリアもあるわけだし…。

「で、お前いつまでこっちにいんの?」
「オフの間はいるつもりだけど」
「さっさと帰れよ…」
「あ?俺の勝手だろうが」

先日も光たちのマンションに光の祖父が行ったらしいと光臣から聞いて、光が心配だった。それ以外にも…御幸と武藤さんの疑念は、俺の中ではまだ晴れていない。晴らすわけにいかない。

――ピリリリリリ

御幸のスマホが鳴った。御幸は俺に断るよう一瞥してから、ポケットの中のスマホを取り出し…そして硬直して青ざめた。

「誰?」
「……。」

震えたように見えた指先で、応答ボタンか拒否ボタンかを迷うように見つめ、考え込む御幸。

「おいって。誰だよ?」
「……。…な」
「な?」
「…尚ちゃん…」

はあ?と顔を思いきりゆがめた俺に、御幸は申し訳もなくバツが悪そうにただただ恐縮した。

「テメェまだ連絡とってんのか!?」
「違うって!チームの関係者だから拒否もできねーしさ…、」
「だからってなんでオフの日まで電話かけてくんだよ!」
「知らないって!こんなの初めてだし…」

疑わしく御幸を睨む。本当…光にチクってやろうか。

「で…どうすんだよ」
「……。」

御幸は息を飲んで…応答ボタンを押した。マジかよコイツ、と思ったけど、あえて俺の前で通話をして、後ろめたいことがないことを証明したかったのかもしれない。

「…はい、御幸ですが」
「一也君!?」

武藤さんの声は俺にも聞こえるほど大きく、取り乱して震えていた。

「ど…どうかした?」
「……。お願い…会って話したいことがあって…。」

えっ、と歪んだ顔で俺を見上げる御幸。やめとけ、と顔を横に振る俺。

「この電話じゃ…駄目?」
「大切なことなの…」
「でも…その…、さ。やっぱ二人で会うのはまずいっつーか…」

煮え切らねーなぁ…。ダメ!無理!今ここで言え!で済む話なのに。中途半端に優しい顔しやがって。

「じゃあ…光さんも呼んでもいいから」
「え……。」

それはそれでまずいだろう。御幸、どーすんだろ…、と他人事のように考えていると、ふと、御幸が俺を見ていることに気が付いた。…まさか。

「…それより、倉持同席させてくれる?」
「は!?おいテメッ…」
「…倉持さん?……。…えぇ…いいわよ。」

…なんで俺を巻き込むんだよ…!!!

「…わかった。じゃ…そこで。」

御幸は時間と場所を聞き、電話を切った。

「というわけで…ヨロシク」
「ふざけんな!なんで俺が付き合ってやんなきゃなんねーんだよ」
「だって何があるかわかんねーしさ…」
「なっさけねーなぁオイ」

森田の時もこんなことあったし…。やっぱこいつ、女に甘い…。

「いいじゃん、どうせ暇だろ?」
「……。」

言い返せないのがムカつく。



***



すぐにでも話したいという事で、俺たちは武藤さんの自宅アパート近くの公園に場所を移した。御幸のマンションの近くでもあるが、光は今出かけているから却って安全だろう。
店に入ると、武藤さんはすでにベンチに座っていた。俺たちが近づいていくと、武藤さんは気が付いて立ち上がった。その神妙な顔を見て、御幸が緊張を増したのが分かった。

「…話って?」

御幸が尋ねると、武藤さんは俺をちらりと見た。

「…いいの?聞かれても…。」
「どういうこと?」
「……この間の…ことだから…。」

この間のこと…。マンションで、二人で一夜を明かした日のことだろう。

「…コイツは知ってるから。」
「……。」

武藤さんは驚いて俺と御幸の顔を見比べたが、そう、と低く呟いた。

「それで、話って?」
「……。」

再度御幸が促すと、武藤さんは唇を引き結び、意を決したように御幸を上目遣いで見上げた。

「……あのね…。」
「……。」
「先週…から…、……生理が、こないの」

御幸の口から渇いた声がこぼれた。俺はカッとなって御幸の胸ぐらをつかんだ。

「テメェやっぱり…!!」
「……。」

呆然としてされるがままになっている御幸は、焦点が定まらず、俺と目も合わなかった。顔が青ざめ、明らかに動揺している。そりゃそうだ…だってこの状況は…。

「や、やめて!一也君だけじゃない、私も悪いの…」
「当たり前だろーが!!んなことわかってんだよ!!」

武藤尚の被害者面に苛立って怒鳴りつけると、彼女はビクリと肩を竦ませた。

「光に何て言うつもりだよ…」
「……。」
「合わせる顔があんのかよ!!」
「……。」

殴りつけてやりたかったが、死人のような顔をしている御幸を殴ったらそのままぽっくり死んでしまいそうで、乱暴に胸ぐらを突き放すに留めた。

「…本当に…?」

震える声で御幸が聞くと、武藤尚は俺におびえた目を向けながらも、小さく頷いた。

「…検査…したの」
「……。」
「…陽性だった」

御幸は何とか膝をつかないでそこに立っているのがやっとの様子で、ちょっとでも風が吹いたら倒れてしまいそうだった。

「一也君……。」

武藤尚は縋るような目で御幸を見つめる。
責任はとる…、とか、光とは別れる…、とか、そんな言葉を期待しているのが手に取るようにわかって、俺は吐き気がした。

「……光……」

御幸はかすれた声で何とか声を絞り出した。

「光…と、話す…」
「え…?」

武藤尚の顔に疑問が浮かんだ。

「じゃあ…私はどうすればいいの?」
「……。」
「…あなたの子なのよ…?」
「……。」

悲しそうに、あくまで苦しい顔で歯を食いしばる御幸を、武藤尚は愕然として見つめていた。

「私降ろしたくない…。」
「……。」
「責任とるって…、あの子と別れるって言ってよ…!」
「……。」
「ねぇ!!どうして!?どうして私を見てもくれないの!?」

涙をこぼして縋りつく武藤尚に、御幸自身泣き出しそうな顔で俯いていた。胸糞悪い光景だ。縋りつく女も、情けない男も。

「私…、私、嘘吐いてた…」
「…え?」

今度は何を言い出すのかと、武藤尚を見た。武藤尚は自嘲気味に笑って、涙で濡れた顔で御幸を見ている。

「本当は覚えてる。あの夜のこと…。あなたが…。あなたが私を求めてきたのよ。」
「…え?」
「拒む理由はなかった…あなたが好きだったから…。…嬉しかった…。」
「……。」
「証拠もあるわ。」

武藤尚はスマホを操作して、録音データを流した。

『…愛してる…?』

武藤尚の声だ。

『…愛してる……ずっと…。』

…これは御幸の声。

『私も…愛してる…。』
『……。』
『これからも…こうして会ってくれる…?』
『……あぁ…。』

…もしかして、これ…。

「…覚えてないのね。」

武藤尚は泣きながら笑って鼻を啜った。

「……ありえない。」

御幸がぽつりと呟く。この期に及んで何を言ってんだ…、俺ははらわたが煮えくり返るようだった。
だって、今の音声は多分…、光が聞いたっていう、電話の…。

「じゃあ今の録音は何だったんだよ!?」
「わかんねぇよ!!酔ってたし…、でも…あり得ない。だって…」
「……。」
「俺は…、尚…、…武藤さんのことは…そんな風には思ってない」

武藤尚の顔から笑みが消えた。もともと狂ったような表情だったが、より一層絶望の影が強くなった。

「…なんで…」
「……。」
「なんでそんなこと言うの…!?…あなたの子がいるのよ!?」
「…何かの間違いだと思う」
「はっ…?」

武藤尚は涙でぐちゃぐちゃの顔を歪め、ただただ御幸を見つめた。理解できない…信じたくないという顔で。

「私が他の人ともこんなことをしてたっていうの!?」
「……。」
「私のことなんだと思ってるのよ!!ねぇ!!」
「……。」
「何とか言いなさいよ!!!」

武藤尚がめちゃくちゃに振り回す手に殴られながら、御幸は苦々しい顔で、じっと顔を背けていた。

「ごめん…、だけど…、ちょっと…考えさせてほしい…」
「はあ…!?」
「また連絡する。すぐ…必ず連絡するから」
「……。」

わなわなと絶句している武藤尚を置いて、御幸は踵を返した。俺はその後を追った。

「おい…どうするつもりだよ。」

御幸はまだどこか呆然としたまま、呟いた。

「…光に…正直に話す」

 


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