【速報】歌手・御幸光、一夜限りの復活

001:アメリカで御幸光のコンサート開催決定!!!!!!

002:今年のクリスマスか…行くか

003:行きたいけど海外かよ…

004:アメリカで需要あるの?

005:>004 需要しかない

006:御幸光はハリウッドでオペラ披露して絶賛されてたからな

007:本当に何でもできるなぁ…

008:視力を失ってどうなることかと思ってたから安心した。見に行かなきゃ

009:ファンの前に出るのは実質これが最後になるのかもな…

010:約1年後なのにもうA席埋まってるじゃん!!

011:倉持が介助してるってマ?

012:>011 マジだぞ『【朗報】倉持、御幸家に滞在中』

013:倉持第二王子ガチであるかもな

014:もうここまで貫いたら誰も文句ねーわ

015:>014 あるぞ

016:でもここまでできるのはちょっと尊敬すらする。御幸もあきらめてんじゃねーかな

017:諦めとかの問題かよ。他の男に介助させて御幸は何してんだ

018:>017 御幸はメジャーリーガーで忙しいんだろ

019:>018 倉持も一応プロ野球選手なんですがそれは…

020:>019 一応wwwwww

021:明らか露出減って自宅療養中ってニュースの後に倉持が出てきてこの発表だもんな。御幸光が倉持に救われてる説あると思うは




「うっし。忘れもんねーか?」
「えっと…。」

光は手探りでバッグの中身を確かめ、頷いた。

「よしじゃあ行くか。御幸ィ行ってくるぜ」
「…気を付けて」

今日は御幸は練習がある。周防は仕事の調整で飛び回っているから、今日の光のボイストレーニングには俺が送迎することになった。今までは周防が何とか仕事のしわ寄せをしてこなしていたらしく、意外と感謝された。

「…行ってきます。」
「うん。また夜な」

御幸は光を抱き寄せ、ぽんぽんと頭を撫でて見送った。朝から見せつけやがって。
光は俺に掴まって駐車場まで降りた。光を助手席に乗せ、運転席に座り、俺はエンジンをかけた。事前に周防に聞いていたボイストレーニングの教室は、ここから車で約20分ほどで着く。

「……。」

窓の外を…と言っても何も見えていない光は、窓の方に顔を向けたまま黙っていて、その横顔は景色を眺めているようにしか見えなくて、俺は胸が痛んだ。突然目が見えなくなるなんて…しかも何の前兆もなく。辛ぇよな…
車が右折すると、ちょうど上り始めた朝陽が真正面に来て、俺はサングラスをかけた。その時何気なく光を見ると、光が一瞬目を細めたように見えてドキリとして、だけど、まさかな、と思い直した。見えてるわけない…、検査で、全く光が見えない『全盲』だと結果が出たのに。

「……。」

だけど光が不意に目を擦って、瞬きをして前を確かめるように見て、まさか、という思いが強くなった。

「…光?どうかしたか?」

何か見える…とか、眩しいのがわかる…とか、そういう答えを少し期待した。

「……。…なんでもない。」

しかし光はそう呟いて、シートに背を持たれなおした。
…気のせいか。だけど…。…いつかは治る、はず…。
…きっと。



***



光をマンションに送り届けると、御幸はまだ帰っていなかった。
光をソファに座らせ、ソファの背にかけられていた毛布を肩にかけてやった。

「なんか飲むか?」
「え…?」
「コーヒーくらいならできるぜ。」

光は柔らかく笑って、うん、と言った。

「台所借りるぞ〜…えっとコーヒーコーヒー」

前に来た時と何ら変わっていない棚からコーヒー豆を取出し、挽いてコーヒーメーカーにセットする。御幸はドリッパーとやらで淹れたりもするけど、俺はそこまでコーヒーにこだわりはなく正直よくわからないから、機械を使わせてもらう。
ものの数分でコーヒーが出来上がり、俺はそれをマグカップに注いで砂糖とミルクと一緒に運んだ。
光のコーヒーにはミルクを、俺のコーヒーには砂糖を入れ、光の手を取る。

「はい。熱いから気をつけろよ」
「ありがとう…」

光の手にマグカップをもたせて、俺を見ない青い瞳を見つめる。…本当に綺麗な目。ずっと、宝石みたいだって思ってた。もうこの目に見つめられることが無いなんて…そんなこと、ないよな?
絶対に良くなる…。…絶対。だって、光みたいな子が、こんな理不尽をこうむるわけないんだ。なにかの間違いだ…。

「明日、病院に10時だったよな。」
「うん。」
「じゃ、9時ごろ迎えに来るわ。」
「うん…。」

光がにこにこしていると俺も嬉しい。御幸の気持ちがよくわかる。あの日、光が笑って、泣き出した御幸の気持ちが…。光が辛い顔をして過ごしているのを、あいつは傍で見て何を思っていたのだろう。俺だったら辛すぎる。為す術なく、光の苦しむ姿を見ているしかないなんて。
光は白杖の練習を始めたけど、時々病院に経過の検査をしに行く。検査をするってことは、治る見込みがあるってことだ。そうだよな…?

そうこうしているうちに玄関の鍵が開く音がして、御幸が帰ってきた。光は玄関の方を振り向く。部屋に入ってきた御幸は、俺達を見て笑みともちがう柔らかな顔をした。

「帰ってたんだ。」
「ああ。」
「おかえりなさい。」
「ただいま。」

御幸は光に近づき、頭に撫でるように触れた。視線を交わせない分、御幸が光に触れることが多くなっている気がした。

「じゃ、俺帰るわ。明日は9時ごろ来るから」

俺は立ち上がって荷物を背負う。すると御幸が思いあぐねたように言った。

「…お前今ホテルにいるんだよな。」
「?そうだけど。」

他にどこにいる場所があると言うのか。

「……。」

御幸は迷うように光を見て、少しの間見つめて、やはり決意したように俺を見た。

「…ここに泊まれば?」
「は?」

予想外の提案に、俺だけじゃなく光も目を瞬いた。御幸がそんな事を言うなんて。光に近づくな、ってあんなにうるさかった御幸が…。

「ホテル代もバカになんねーだろ。」
「そりゃ…まあ…」

そうだけど…。

「毎日光の送迎してもらってるし。食事と寝る場所くらい世話してやるよ。」
「…いちいち腹立つ言い方すんな」
「客室使っていいから。ホテルから荷物引き上げて来いよ。」
「……。」

まあ…助かると言えば助かるし、俺は万々歳だけど…。

「……。」

不安げに御幸の声を聴いて黙りこんでいる光を見ると胸にもやがかかる。
…いいのか?本当に…。




***




ホテルをチェックアウトし、荷物を御幸達のマンションに運び入れた。
御幸が作った夕食を3人で食べ、それなりに談笑もして、光が笑うたびに御幸は泣きそうなほどの嬉しさを堪えきれないように唇をかみしめ、俺はそれを見るたびに複雑な気持ちになって…
それを光が気付いてないってのも、なんか…。見ていて辛い。いや、気付かれてもそれはそれで辛いけど…。

「洗いもんするよ。」
「ああ…サンキュ」

御幸と家事を分担協力してるってのも変な気分だけど、悪くはない。俺は食器を台所に運び、スポンジに洗剤をつけた。

「光、風呂入る?」
「あ…、うん…。」

行こう、と光の手をとって寝室に促す御幸。
そーか…風呂も入れてやらなきゃならないのか。……。……羨ましい。




***



翌朝、二人はまだ起きてこず、コーヒーでも淹れておいてやるかと豆を挽いていたら、御幸が光を連れてリビングにやって来た。

「はよ。」
「おはよ。」
「…おはよう。」

俺達の挨拶を聞いて光も俺に気づき、呟く。
御幸はそんな光をソファに座らせ、毛布を肩にかけてやって、寒くないかと聞いた。光が頷き、御幸は暖房をつけて、コーヒーを淹れる俺を一瞥し、朝食を作り始めた。
朝食はパンとスープとオムレツで、光のは食べやすいようにかサンドイッチになっていた。コーヒーと一緒に朝食を食べ、光が支度をするのを待った。

「じゃあ倉持、頼む。」
「ああ。」

着替えてきた光を御幸から預かり、ぽんと頭を撫でた。

「じゃ、行くか。」
「うん…」

御幸の腕を名残惜しげに撫でて離し、光は俺の傍に来た。
御幸はその背中を、今にも引き留めそうな切なげな目で、見送っていた。

 


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