312
「あれ、玉城?」
今日は土曜日。練習試合の為準備していると、野次馬の群れから少し離れたところに玉城と牧瀬を見つけて駆け寄った。
「あっ御幸先輩だ〜。おつかれさまでーす」
「おう。」
牧瀬は明るく挨拶してくれると言うのに、玉城は鬱陶しそうに俺を睨むだけ。
「お前らなんで今日学校来てんの?」
「委員会の仕事で〜。」
「へー」
「御幸先輩、サボってていいんですか?」
玉城が冷ややかな目を向けて言った。グラウンドでは2軍が練習試合を始めていて、1軍は準備をしながら試合を見守っている。
「俺の出番まだだもん」
「怒られますよ。」
「今日監督いないもーん」
「あとで片岡先生にチクっちゃお」
「それはやめてください」
相手のピッチャーが振りかぶり、ボールを放った。白い球は捕手のグローブの下をくぐり、地面で跳ね返って、捕手の急所にクリーンヒットした。
「うわ…」
思わず顔を歪めて、捕手が蹲って悶えるのを眺める。ピッチャーが申し訳なさそうにマウンドから様子を窺い、バッターボックスにいた金丸が「大丈夫ですか?」と声をかけている。
「すごい痛がってる…」
他人事のように不思議そうに呟く玉城。
「そりゃそうでしょ〜硬球って硬いもん。それに急所にクリティカルヒットだよ?」
「ふうん…。」
牧瀬がそう言うと、玉城はいまいちピンと来ていない顔で相槌を打った。
それにしても捕手はまだ悶えている。ファウルカップしてなかったのかあいつ?そう考えていると、玉城がぽつりとつぶやいた。
「硬球ってお腹に当たっただけであんなになっちゃうんだ…」
え?お腹?
「違うよ光〜!当たったのはお腹じゃなくておち…」
「こら!牧瀬お前一応女子だろ!!」
「え?何?」
全く気にしていない牧瀬のきょとん顔と、全く理解していない玉城のきょとん顔。どうなってんだこいつら…。
「だからぁ、急所だよ。男だけにある急所!」
「……。」
牧瀬は一応配慮してそう言い直し、玉城は少し考えて、やっと理解した様子で、顔を赤くして閉口した。
「…そんなに痛いんだ…」
「女にはわからない痛みだよね〜。」
へ、返答に困る。
「まあ…多分アイツ、ファウルカップしてなかったんだろ」
「ファウルカップ?」
疑問符を浮かべて澄みきった目で俺を見る玉城。
「いやだから…」
「……。」
「…ファウルカップってのは…」
「……。」
「……えーと」
「急所をこう、スポッとガードする奴だよ!ですよね先輩?」
「牧瀬お前、恥じらいはないのか?」
こう、と握りこぶしに手のひらを被せたジェスチャーをしながら牧瀬が言うと、玉城は豆鉄砲を食らったように目を点にして黙り込んだ。
「そ…そうなんだ…」
相手の捕手は一応キャッチャーボックスに戻ったものの、完全に腰が引けていて、おそるおそると間抜けな捕球になってしまい、ボールをポロポロ落とし始めた。
「あーあ、ありゃもう試合になんねーな」
「……。」
俯いた玉城の視線が、ちらり、と奇妙なものを見るように俺のあそこを…
「…玉城のエッチ」
「…はあ!?何が…」
玉城は真っ赤になって顔を背けた。
「御幸先輩はファウルカップつけてるんですかあ?」
「牧瀬それ、セクハラ(笑)」
牧瀬は恥じらいのかけらもなくケラケラ笑い出した。
「お前もーちょっと玉城の清純さを見習った方が良いぞ〜」
「ちょっとどういう意味!!」
「いてっ なんだよ清純って褒めてんじゃん」
「バカにしてる!」
「してねーよいいことじゃん清純って なぁ牧瀬?」
「そうだよ光はそのままでいいの!!」
「きゃっ…や、やめて!」
玉城は牧瀬にもみくちゃに抱きつかれて悲鳴を上げた。そして牧瀬がどさくさに紛れて玉城の胸を揉みしだいて、俺はぎょっと息をのんだ。
「ひゃ〜〜光、ここは全然清純じゃな〜い…」
「きゃああちょっ…何して…!!」
「…あの…俺もいるんだけど…」
「でもぉ今のうちに堪能しておかないと〜」
「何それ!」
玉城は牧瀬の手から逃れ、胸を抑えて距離をとった。
「だってぇもうすぐ御幸先輩のモノになっちゃうかもしれないし〜…」
「え!?」
「はぁ!?気持ち悪い事言わないで!」
「…気持ち悪いってお前…」
「お、なんだなんだ」
「あの女の子、御幸の彼女か?」
「さすがキャプテン!スゲー美女ゲットしたな〜」
練習試合を見に来ていた近所の野次馬やOB達が騒ぎに気付き、こっちを見て笑い出した。
「いや〜…はっはっは」
「なにが『いや〜』ですか!彼女じゃないし。さっさと練習に戻ったらどうですか?」
「牧瀬、玉城がつめたい…」
「愛情の裏返しですよ〜。」
「ちがう!」
「おい!危ない!」
その声に反応できたのはほとんど無意識だった。振り返って頭上にちらついた白い点の軌道が一瞬で手に取るように分かり、実際、俺は反射的に手を伸ばして、玉城たち目掛けて落ちてきたボールを素手でキャッチした。
「ナイスキャーッチ」
「それ自分で言うのかよ!」
相手のショートに投げ返して突っ込まれ、笑いながらも右手がじんじんと痛んだ。
「いってぇ〜」
「さすが御幸先輩!ありがとうございました〜!」
「……。」
笑う牧瀬の隣でぽかんと俺を見る玉城。
「俺がいてよかっただろ?」
「……。」
しかし調子に乗ってそう言うと、玉城は赤い顔でムッと俺を睨んだ。その膨れた頬を、隣の牧瀬がつんと突いた。
「なーにむっつりしちゃってるの?可愛いな〜光は〜。」
「してないし…」
「御幸先輩にお礼言いなよ〜カッコよかったですって、ホラ」
「…ありがとうございました」
「はっはっは。どういたしまして〜。カッコよかったですは?」
ふん、とそっぽを向く玉城。ほんとおもしれーこいつ。
いやしかし、いてぇ。咄嗟にカッコつけちまった。けど、素手で捕るしかなかったし、しょーがない。
「手、大丈夫ですかぁ?」
「え?あぁ、平気平気。」
「もし必要なら柔らかいものでも揉んで…」
「バカ。」
玉城の胸を指し示した牧瀬の手を、玉城がぺちんと叩き落とした。
さすがの俺も熱くなる顔で苦笑いを浮かべた。
「どーしたらそんなにおっきくなるのぉ?いいなぁ〜」
「うるさい。」
「てか何カップ?」
「ちょっと…!」
俺…こっそりいなくなってもいいかなー…。でもちょっと気になる…。
「だって本当に羨ましいもん〜。男も大きいほうが好きでしょ。先輩もそうですよね?」
「俺に振る?」
さっきから必死に玉城の胸をうっかり見てしまわないように顔をそむけていたのに。
「御幸先輩は絶対巨乳派だと思うなぁ〜。」
「ノーコメントで。」
「え〜なんでですかぁ?」
「玉城初心だからそろそろ下ネタ限界だって…」
「バカ!何それ!」
「はっはっは。顔真っ赤だぞ〜」
「う、うるさい違うもん!御幸先輩が嫌なだけだもん!」
そーかそーかはっはっは、と笑って思わずにやついてしまう口元をごまかしていると、そこへ通りがかった東条と金丸を見つけ、玉城は踵を返して駆けて行った。
「東条!」
「え…玉城?」
きょとんと振り返った東条のそばに駆け寄る玉城。
「聞いて東条、御幸先輩がセクハラしてくる」
「え…?」
「コラコラ…誤解を招くんじゃない!セクハラしてんのは牧瀬だろー」
「私のは愛情表現です!」
「余計タチ悪いわ」
「あんな人たちほっといて行こ!東条!」
「え〜待ってよ光〜」
「おーい東条は部活中だぞ〜」
「御幸先輩もですよね?」
今日は土曜日。練習試合の為準備していると、野次馬の群れから少し離れたところに玉城と牧瀬を見つけて駆け寄った。
「あっ御幸先輩だ〜。おつかれさまでーす」
「おう。」
牧瀬は明るく挨拶してくれると言うのに、玉城は鬱陶しそうに俺を睨むだけ。
「お前らなんで今日学校来てんの?」
「委員会の仕事で〜。」
「へー」
「御幸先輩、サボってていいんですか?」
玉城が冷ややかな目を向けて言った。グラウンドでは2軍が練習試合を始めていて、1軍は準備をしながら試合を見守っている。
「俺の出番まだだもん」
「怒られますよ。」
「今日監督いないもーん」
「あとで片岡先生にチクっちゃお」
「それはやめてください」
相手のピッチャーが振りかぶり、ボールを放った。白い球は捕手のグローブの下をくぐり、地面で跳ね返って、捕手の急所にクリーンヒットした。
「うわ…」
思わず顔を歪めて、捕手が蹲って悶えるのを眺める。ピッチャーが申し訳なさそうにマウンドから様子を窺い、バッターボックスにいた金丸が「大丈夫ですか?」と声をかけている。
「すごい痛がってる…」
他人事のように不思議そうに呟く玉城。
「そりゃそうでしょ〜硬球って硬いもん。それに急所にクリティカルヒットだよ?」
「ふうん…。」
牧瀬がそう言うと、玉城はいまいちピンと来ていない顔で相槌を打った。
それにしても捕手はまだ悶えている。ファウルカップしてなかったのかあいつ?そう考えていると、玉城がぽつりとつぶやいた。
「硬球ってお腹に当たっただけであんなになっちゃうんだ…」
え?お腹?
「違うよ光〜!当たったのはお腹じゃなくておち…」
「こら!牧瀬お前一応女子だろ!!」
「え?何?」
全く気にしていない牧瀬のきょとん顔と、全く理解していない玉城のきょとん顔。どうなってんだこいつら…。
「だからぁ、急所だよ。男だけにある急所!」
「……。」
牧瀬は一応配慮してそう言い直し、玉城は少し考えて、やっと理解した様子で、顔を赤くして閉口した。
「…そんなに痛いんだ…」
「女にはわからない痛みだよね〜。」
へ、返答に困る。
「まあ…多分アイツ、ファウルカップしてなかったんだろ」
「ファウルカップ?」
疑問符を浮かべて澄みきった目で俺を見る玉城。
「いやだから…」
「……。」
「…ファウルカップってのは…」
「……。」
「……えーと」
「急所をこう、スポッとガードする奴だよ!ですよね先輩?」
「牧瀬お前、恥じらいはないのか?」
こう、と握りこぶしに手のひらを被せたジェスチャーをしながら牧瀬が言うと、玉城は豆鉄砲を食らったように目を点にして黙り込んだ。
「そ…そうなんだ…」
相手の捕手は一応キャッチャーボックスに戻ったものの、完全に腰が引けていて、おそるおそると間抜けな捕球になってしまい、ボールをポロポロ落とし始めた。
「あーあ、ありゃもう試合になんねーな」
「……。」
俯いた玉城の視線が、ちらり、と奇妙なものを見るように俺のあそこを…
「…玉城のエッチ」
「…はあ!?何が…」
玉城は真っ赤になって顔を背けた。
「御幸先輩はファウルカップつけてるんですかあ?」
「牧瀬それ、セクハラ(笑)」
牧瀬は恥じらいのかけらもなくケラケラ笑い出した。
「お前もーちょっと玉城の清純さを見習った方が良いぞ〜」
「ちょっとどういう意味!!」
「いてっ なんだよ清純って褒めてんじゃん」
「バカにしてる!」
「してねーよいいことじゃん清純って なぁ牧瀬?」
「そうだよ光はそのままでいいの!!」
「きゃっ…や、やめて!」
玉城は牧瀬にもみくちゃに抱きつかれて悲鳴を上げた。そして牧瀬がどさくさに紛れて玉城の胸を揉みしだいて、俺はぎょっと息をのんだ。
「ひゃ〜〜光、ここは全然清純じゃな〜い…」
「きゃああちょっ…何して…!!」
「…あの…俺もいるんだけど…」
「でもぉ今のうちに堪能しておかないと〜」
「何それ!」
玉城は牧瀬の手から逃れ、胸を抑えて距離をとった。
「だってぇもうすぐ御幸先輩のモノになっちゃうかもしれないし〜…」
「え!?」
「はぁ!?気持ち悪い事言わないで!」
「…気持ち悪いってお前…」
「お、なんだなんだ」
「あの女の子、御幸の彼女か?」
「さすがキャプテン!スゲー美女ゲットしたな〜」
練習試合を見に来ていた近所の野次馬やOB達が騒ぎに気付き、こっちを見て笑い出した。
「いや〜…はっはっは」
「なにが『いや〜』ですか!彼女じゃないし。さっさと練習に戻ったらどうですか?」
「牧瀬、玉城がつめたい…」
「愛情の裏返しですよ〜。」
「ちがう!」
「おい!危ない!」
その声に反応できたのはほとんど無意識だった。振り返って頭上にちらついた白い点の軌道が一瞬で手に取るように分かり、実際、俺は反射的に手を伸ばして、玉城たち目掛けて落ちてきたボールを素手でキャッチした。
「ナイスキャーッチ」
「それ自分で言うのかよ!」
相手のショートに投げ返して突っ込まれ、笑いながらも右手がじんじんと痛んだ。
「いってぇ〜」
「さすが御幸先輩!ありがとうございました〜!」
「……。」
笑う牧瀬の隣でぽかんと俺を見る玉城。
「俺がいてよかっただろ?」
「……。」
しかし調子に乗ってそう言うと、玉城は赤い顔でムッと俺を睨んだ。その膨れた頬を、隣の牧瀬がつんと突いた。
「なーにむっつりしちゃってるの?可愛いな〜光は〜。」
「してないし…」
「御幸先輩にお礼言いなよ〜カッコよかったですって、ホラ」
「…ありがとうございました」
「はっはっは。どういたしまして〜。カッコよかったですは?」
ふん、とそっぽを向く玉城。ほんとおもしれーこいつ。
いやしかし、いてぇ。咄嗟にカッコつけちまった。けど、素手で捕るしかなかったし、しょーがない。
「手、大丈夫ですかぁ?」
「え?あぁ、平気平気。」
「もし必要なら柔らかいものでも揉んで…」
「バカ。」
玉城の胸を指し示した牧瀬の手を、玉城がぺちんと叩き落とした。
さすがの俺も熱くなる顔で苦笑いを浮かべた。
「どーしたらそんなにおっきくなるのぉ?いいなぁ〜」
「うるさい。」
「てか何カップ?」
「ちょっと…!」
俺…こっそりいなくなってもいいかなー…。でもちょっと気になる…。
「だって本当に羨ましいもん〜。男も大きいほうが好きでしょ。先輩もそうですよね?」
「俺に振る?」
さっきから必死に玉城の胸をうっかり見てしまわないように顔をそむけていたのに。
「御幸先輩は絶対巨乳派だと思うなぁ〜。」
「ノーコメントで。」
「え〜なんでですかぁ?」
「玉城初心だからそろそろ下ネタ限界だって…」
「バカ!何それ!」
「はっはっは。顔真っ赤だぞ〜」
「う、うるさい違うもん!御幸先輩が嫌なだけだもん!」
そーかそーかはっはっは、と笑って思わずにやついてしまう口元をごまかしていると、そこへ通りがかった東条と金丸を見つけ、玉城は踵を返して駆けて行った。
「東条!」
「え…玉城?」
きょとんと振り返った東条のそばに駆け寄る玉城。
「聞いて東条、御幸先輩がセクハラしてくる」
「え…?」
「コラコラ…誤解を招くんじゃない!セクハラしてんのは牧瀬だろー」
「私のは愛情表現です!」
「余計タチ悪いわ」
「あんな人たちほっといて行こ!東条!」
「え〜待ってよ光〜」
「おーい東条は部活中だぞ〜」
「御幸先輩もですよね?」