315
昨日光に噛まれたトコが地味に痛い。特に最後に噛まれた首元は、結構容赦なくやられた…。
ガチャ、とドアが開き、俺が振り向くと、御幸…じゃなかった、一也が一瞬固まって俺を見て、しかしすぐにいつも通りを装って中に入ってきた。
「おはよ。」
「…はよ。」
こいつ…昨日の夜のこと、感づいてる…よな?さすがに。
どう思ってんだか…。でももう今は、俺も光の夫だし…
「光は?」
ぎくりとした。それを俺に聞くのか…ってことはやっぱわかってんだよな、こいつ。
「…風呂入ってからくるって」
「そう」
一也は納得したようにうなずいて、席に着いた。
「つーか、お前ソレさぁ…」
「なんだよ?」
ソレ、と一也は自分の首元を指さして顔をしかめた。俺は俺の首元に貼られたデカい絆創膏のことを言われてるのだと気づき、顔を熱くしてそこを抑えた。
「大げさだろ。自慢か?」
「なっ…いやちげぇよ!」
「キスマークごときに…」
キスマーク。そう思うのか…
「…キスマークじゃねーから」
「え?じゃあ何?」
「…光に噛まれた」
「は?」
ぎょっと目を剥く一也に、俺は首元の絆創膏と手のひらの絆創膏をはがして見せた。
「ほら」
「お前………どーゆープレイしてんだよ」
「俺は普通に…」
「光に過激なことすんなよ」
「俺はされた方だっつの!」
一也は疑いのまなざしで俺をにらんだ。
「お前光のこと噛んだり殴ったりしてねーだろうな」
「しねぇよ!!するわけねーだろ!!」
「じゃあなんでそんなんなってんだよ」
「いきなり!噛まれたんだよ!」
「ハァ〜…?」
「やめてくれっつってもガブガブ噛んでニコニコ楽しそうにして…」
止めるに止められなかった。怒ることすら。いや、べつに実際怒ってはいないけど。
「…甘えてんのかもな」
「え?」
「お前にさ。」
…甘えてる?それで噛むか普通…?
「お前は噛んだり殴ったりしてもいいやって思われてんだよ」
「おい!なんかバカにしてねーか!?つーか殴られてはねーし!!」
ーーガチャ。ドアが開いて、俺も一也もギクリと口をつぐんで振り向いた。
「おはよう。」
いつも通りキレイな光が部屋に入ってきて、俺も一也も見惚れながら挨拶を返した。レースの袖口から除く、白く滑らかな細い腕…こんなキレーな肌に傷なんかつけられるかって…
光はベルを鳴らして朝食の知らせを下の階に伝えた。今頃厨房でメイドたちが朝食をそろえて運び始めているはずだ。
光が席について間もなくして、朝食が運ばれてきた。パンとスープとサラダ、厚切りのベーコン。光はパンを断り代わりにヨーグルト。それと小さなデザート、そしてコーヒー。
朝食を食べ終えると、光は席を立った。
「じゃあまた…夕方に。」
「ああ」
光は公務のため別の城へ行く。一也とキスをして俺を振り返る光に、俺も歩み寄って軽いキスをした。
光が部屋を出ていくと、俺と一也は顔を見合わせた。俺たちは今日からこの城で、様々なことを学ばなければならない。まずはイタリア語、そしてこの国の文化、歴史、マナー…王族としてのふるまい…。
「…行こうぜ」
「ああ」
俺たちは昨日言われていた通り、2階の書斎へ向かうことにした。
***
書斎には周防がいた。
「あれ、イタリア語の先生は?」
「……。」
一也の問いに、周防は恭しいお辞儀を返す。
「僭越ながら私が教鞭を取らせていただきます。」
「え…そうなの?」
「初めは日本語にも通じている者が担当したほうがいいだろうと、イリシア王女殿下が仰られまして。」
「ヒャハハ、ラッキー。英語で説明されても俺全然わかんねーしなー」
「お二人のために厳しくやってくれと光王女殿下から仰せつかっておりますので、精いっぱい頑張ります。」
「……。」
確かに、周防がやさしく教えてくれるわけねーか…光に言われたならなおさらだ。ニヤニヤからかうように俺を見る一也をひと睨みし、俺は席に着いた。
「ではまずは、基本的な挨拶から…」
***
「やってらんねー!!」
昼食後のわずかな自由時間。俺は一也と中庭の一角でキャッチボールをしながら不満をぶつけた。
「まだ1日目じゃん。」
「気分的には1週間くらい閉じ込められた気分だよ!!」
「そんなに嫌?」
「だって勉強勉強また勉強…午後も何かの勉強だろ!?お前平気なのかよ」
「午後はマナー講座な。俺は結構楽しいけど」
「ウッソだろお前…」
「光が学んできたことだと思うと、俺も学べんのが嬉しいくらいだよ。」
「……。」
目からうろこがポロリと落ちた。そーゆー考え方もあるか…。
いや、でも、なんかコイツに気づかされると悔しい。
「それにこーやって、キャッチボールできたりするし…初めてお前がいてよかったと思ったわ」
「初めてかよ!!つーか俺キャッチボールの相手としての価値しかねーのかよクソヤロォ」
「はっはっはっは」
***
『ただいま。』
夕方帰ってきた光は、ニコニコとイタリア語で声をかけてきた。一也は軽い調子でイタリア語で何かを…多分おかえりとかなんとか言い、俺の発言を待つように振り向いた。
『今日はどうだった?』
天使のようなほほえみで呪文のような言葉を話す光に俺は顔をひきつらせた。
「光…日本語でしゃべってくれ」
『今日からイタリア語で話すって言ったでしょ』
「そ…、いやなに言ってるか全然わかんねーって…」
『そのうち慣れるから何か言ってみて。』
「光ぃぃ…」
一也が腹を抱えて笑い出す。あとで覚えてろアイツ。
『夕食にしよう。待ってて。』
『手伝うよ。』
キッチンに入る光を追って、一也もイタリア語で言いながらキッチンに入っていった。疎外感…。多分、夕飯のことだろうけど。
部屋には俺と周防だけが残り、俺が周防を見ると、周防は目礼するように目を伏せた。
『では私は失礼致します。』
「周防テメーもか!」
ガチャ、とドアが開き、俺が振り向くと、御幸…じゃなかった、一也が一瞬固まって俺を見て、しかしすぐにいつも通りを装って中に入ってきた。
「おはよ。」
「…はよ。」
こいつ…昨日の夜のこと、感づいてる…よな?さすがに。
どう思ってんだか…。でももう今は、俺も光の夫だし…
「光は?」
ぎくりとした。それを俺に聞くのか…ってことはやっぱわかってんだよな、こいつ。
「…風呂入ってからくるって」
「そう」
一也は納得したようにうなずいて、席に着いた。
「つーか、お前ソレさぁ…」
「なんだよ?」
ソレ、と一也は自分の首元を指さして顔をしかめた。俺は俺の首元に貼られたデカい絆創膏のことを言われてるのだと気づき、顔を熱くしてそこを抑えた。
「大げさだろ。自慢か?」
「なっ…いやちげぇよ!」
「キスマークごときに…」
キスマーク。そう思うのか…
「…キスマークじゃねーから」
「え?じゃあ何?」
「…光に噛まれた」
「は?」
ぎょっと目を剥く一也に、俺は首元の絆創膏と手のひらの絆創膏をはがして見せた。
「ほら」
「お前………どーゆープレイしてんだよ」
「俺は普通に…」
「光に過激なことすんなよ」
「俺はされた方だっつの!」
一也は疑いのまなざしで俺をにらんだ。
「お前光のこと噛んだり殴ったりしてねーだろうな」
「しねぇよ!!するわけねーだろ!!」
「じゃあなんでそんなんなってんだよ」
「いきなり!噛まれたんだよ!」
「ハァ〜…?」
「やめてくれっつってもガブガブ噛んでニコニコ楽しそうにして…」
止めるに止められなかった。怒ることすら。いや、べつに実際怒ってはいないけど。
「…甘えてんのかもな」
「え?」
「お前にさ。」
…甘えてる?それで噛むか普通…?
「お前は噛んだり殴ったりしてもいいやって思われてんだよ」
「おい!なんかバカにしてねーか!?つーか殴られてはねーし!!」
ーーガチャ。ドアが開いて、俺も一也もギクリと口をつぐんで振り向いた。
「おはよう。」
いつも通りキレイな光が部屋に入ってきて、俺も一也も見惚れながら挨拶を返した。レースの袖口から除く、白く滑らかな細い腕…こんなキレーな肌に傷なんかつけられるかって…
光はベルを鳴らして朝食の知らせを下の階に伝えた。今頃厨房でメイドたちが朝食をそろえて運び始めているはずだ。
光が席について間もなくして、朝食が運ばれてきた。パンとスープとサラダ、厚切りのベーコン。光はパンを断り代わりにヨーグルト。それと小さなデザート、そしてコーヒー。
朝食を食べ終えると、光は席を立った。
「じゃあまた…夕方に。」
「ああ」
光は公務のため別の城へ行く。一也とキスをして俺を振り返る光に、俺も歩み寄って軽いキスをした。
光が部屋を出ていくと、俺と一也は顔を見合わせた。俺たちは今日からこの城で、様々なことを学ばなければならない。まずはイタリア語、そしてこの国の文化、歴史、マナー…王族としてのふるまい…。
「…行こうぜ」
「ああ」
俺たちは昨日言われていた通り、2階の書斎へ向かうことにした。
***
書斎には周防がいた。
「あれ、イタリア語の先生は?」
「……。」
一也の問いに、周防は恭しいお辞儀を返す。
「僭越ながら私が教鞭を取らせていただきます。」
「え…そうなの?」
「初めは日本語にも通じている者が担当したほうがいいだろうと、イリシア王女殿下が仰られまして。」
「ヒャハハ、ラッキー。英語で説明されても俺全然わかんねーしなー」
「お二人のために厳しくやってくれと光王女殿下から仰せつかっておりますので、精いっぱい頑張ります。」
「……。」
確かに、周防がやさしく教えてくれるわけねーか…光に言われたならなおさらだ。ニヤニヤからかうように俺を見る一也をひと睨みし、俺は席に着いた。
「ではまずは、基本的な挨拶から…」
***
「やってらんねー!!」
昼食後のわずかな自由時間。俺は一也と中庭の一角でキャッチボールをしながら不満をぶつけた。
「まだ1日目じゃん。」
「気分的には1週間くらい閉じ込められた気分だよ!!」
「そんなに嫌?」
「だって勉強勉強また勉強…午後も何かの勉強だろ!?お前平気なのかよ」
「午後はマナー講座な。俺は結構楽しいけど」
「ウッソだろお前…」
「光が学んできたことだと思うと、俺も学べんのが嬉しいくらいだよ。」
「……。」
目からうろこがポロリと落ちた。そーゆー考え方もあるか…。
いや、でも、なんかコイツに気づかされると悔しい。
「それにこーやって、キャッチボールできたりするし…初めてお前がいてよかったと思ったわ」
「初めてかよ!!つーか俺キャッチボールの相手としての価値しかねーのかよクソヤロォ」
「はっはっはっは」
***
『ただいま。』
夕方帰ってきた光は、ニコニコとイタリア語で声をかけてきた。一也は軽い調子でイタリア語で何かを…多分おかえりとかなんとか言い、俺の発言を待つように振り向いた。
『今日はどうだった?』
天使のようなほほえみで呪文のような言葉を話す光に俺は顔をひきつらせた。
「光…日本語でしゃべってくれ」
『今日からイタリア語で話すって言ったでしょ』
「そ…、いやなに言ってるか全然わかんねーって…」
『そのうち慣れるから何か言ってみて。』
「光ぃぃ…」
一也が腹を抱えて笑い出す。あとで覚えてろアイツ。
『夕食にしよう。待ってて。』
『手伝うよ。』
キッチンに入る光を追って、一也もイタリア語で言いながらキッチンに入っていった。疎外感…。多分、夕飯のことだろうけど。
部屋には俺と周防だけが残り、俺が周防を見ると、周防は目礼するように目を伏せた。
『では私は失礼致します。』
「周防テメーもか!」