『え…光がまだ帰ってない?』

一也が繰り返すと、執事ははい、と少し緊張した面持ちで頷いた。

「何だって?」
「光たち、まだ帰ってないんだってさ」

…それはおかしい。あの周防なら、速やかに光を城まで連れ帰ってるはずなのに。

『…どこか寄り道してるのかもしれないし、連絡してみますよ。』

一也は緊張した顔の執事を宥めるようにそう言って、俺に行くぞ、と声をかけた。
二人で部屋に戻り、一也は光に電話をかけたけど、しばらく携帯を耳に当てて、小さく首を傾げた。

「出ないな…」
「何かあったんじゃ…」

俺はなんだか胸騒ぎがしてそう言ったけど、一也も神妙な顔になりながらもいや、と首を横に振った。

「まあ…周防が付いてるし、大丈夫だろ」
「そりゃそうだけどよ…電話も出ないなんておかしいだろ」
「また少し待って帰ってこなかったら、もう一回かけてみようぜ」

俺は鼻を鳴らして、なんだか落ち着かないまま、わかったよ、と呟いた。



***



それから1時間近くたっても二人は帰ってこなかった。

「……。」

しばらく電話を鳴らしていた一也は、またため息交じりに首をかしげて携帯を耳から離す。

「出ないのか?」
「ああ…」

さすがに使用人たちも心配そうに俺たちの様子を窺っている。少し前に、何人かの使用人は手分けをして二人を探しに行った。

「…俺も探しに…」

席を立とうとすると、部屋の中が一瞬真っ白になった。驚いて立ち止まったところ、すこし遅れて、ゴロゴロゴロ…と低く唸るような轟音が響いてきた。雷だ。外はいつの間にか、激しい夕立がやってきていた。
…光は…雷が苦手なんだ。
俺はやはり焦って、携帯と上着をひっつかんだ。

「おい…危ないから…」
「だから探しに行くんだよ!絶対何かあっただろ!光に!」
「そうだけど、この天気の中探しに行くのは危険だろ。冷静に考えろよ」
「冷静だよ!テメーこそよく平気でいられるな!!光は雷苦手なんだぞ!!」
「平気なわけねーだろ!」

一也は突然怒鳴り返してきて、俺は少しひるんだ。

「俺だって心配でおかしくなりそうだよ…でも、周防がきっと何とかしてくれてる」
「……。」
「雨が上がったらすぐに探しに行こう。あそこからの帰り道は山道だから…この天気の中入ったら、俺たちが遭難するかもしれない」
「……チッ…」

悔しいけどその通りだ。俺は舌打ちをこぼし、唇をかんで、投げ出すようにソファに座った。

 


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