336
「まーあ!」
「はいはい」
にこにこしてわが子を抱き上げる光。光也が少しずつ喋るようになって、ますます可愛くて仕方がない。
「みっくん〜、パパは?パパ。」
「ぱ?」
「!!聞いた!?今パパって!!」
「いや惜しいけど今のはちげぇだろ」
「いや言ったし。パパって言ったし。」
「面倒くせぇ親父だな」
洋一があきれたように言ったとき、光也が洋一を見上げて言った。
「よおちゃ!」
おっ、と目を丸くする洋一、顔を引きつらせる俺。
「聞いたか〜?パパより先に洋ちゃんって言ったぜ!ヒャハハ」
「嘘だ!何かの間違いだ!」
「ちゃんと言えたもんな〜いい子だな〜光也は〜」
「嘘だあああ!」
「もー、お昼寝の時間だから騒がないで。」
光也をあやして寝かしつけようとする光に言われ、俺も洋一もすみません、と消沈した。
もう慣れたもので、光があやすと、光也はこてんと眠る。光也をベッドに寝かせ、タオルをお腹にかけてやると、早くも熟睡モードに入った。
「本当よく寝るよな〜」
洋一の言う通り、光也はベビーシッターも驚くほどよく寝る子だ。普通初めての子は繊細でなかなか寝付かない子であることが多いんですけどねぇ、と。
「寝る子は育つって言うし、デカくなりそうだな〜パパに似て」
「デブにならなきゃいーけどな」
「遺伝的にタッパは高くなりそうで安心だなぁ〜」
「もう、喧嘩しないの。」
「は〜い」
「クソうぜぇ…」
息子の将来を思うと元野球人としては血が騒ぐ。タッパがあればそれだけで有利だし。最近国の子供たちに教えている野球クラブも形になって来たし、光也が大きくなったら一緒にできたらいいなー、なんて。
でも俺、中学まではチビだったんだよなぁ。
「まーでも、目の色とか髪の色は光に近いけど、顔つきはお前にそっくりだよな」
「お、洋一クンもたまには素直…」
「この小憎たらしい生意気な感じが」
「たまには素直に褒めろ。」
***
光也が離乳を始めた頃。光は光也をベビーシッターに預け、仕事に出ることが多くなった。外交に関する大事な仕事だというだけで、俺と洋一に詳しいことは話してくれないのだが。
俺も洋一もそれぞれの仕事があったし、何より忙しそうな光に水を差すのも憚られて、少しすれ違いを感じる日々が続いていた。
今日も光はほとんど一日中出かけていて、俺は夕方城に帰ってきて洋一と夕食を食べ、少しジョギングをしてから風呂に入り、自室で読書をしていた。
光…遅いな。
今日も俺の部屋で寝る…はず。だけどもしかして…洋一の部屋に行ったのか?
――コンコン。
控えめなノックの後、遠慮がちにドアが開いた。
「あ、起きてた?」
光がはにかんで部屋に入ってきて、同時に部屋の中が明るくなったように思って、俺は安堵した。
「おかえり。」
俺は本を閉じて窓辺の椅子から立ち上がる。
「ただいま。ちょっとシャワーだけ浴びてくる。」
だけど光は俺の手をすり抜けてバスルームに入ってしまった。…ちぇっ。
それから20分ほどして、さっぱりした顔の光がバスルームから出てきて、ベッドに上がった。
「あのね、聞いてほしいことがあるの」
光は俺が何か尋ねる前に、嬉しそうに自分から口を開いた。その様子から今日何かいいことがあったのはあきらかで、俺も自然と笑顔を浮かべて、何?と尋ねた。
「前から交渉してたことなんだけど、イタリアの少年野球クラブと提携を結んだの。」
「…えっ?」
「それでね、詳しいことは今後一也さんと洋一さんで向こうの責任者の人と話し合ってもらうことになるんだけど、これでお互いの国に行き来して試合とかできるようになると思うの。この国はずっと閉鎖的で、他国の介入を避けて来たけど、最近は一也さんたちの野球クラブのおかげで子供たちが外国に興味を持ち始めたし、その保護者の間でも子供たちにもっとたくさんの経験をさせてあげたいって動きが強まって来ててね、まずは隣の国のイタリアと友好関係を結ぶことを提案したら、思ったよりたくさんの人が賛成してくれたの。」
「……。」
あまりに大きく物事が動いていたことを知り、俺はしばらくぽかんとしてしまった。それから頬を緩めて光の手をからめとり、組み敷いた。
「そんなすげぇことしてたの?お前」
「…びっくりした?」
「したよ。…惚れ直した」
ふふ、と光の目が細められ、俺はそのままキスをした。唇にも、首筋にも、胸元にも。
光が俺たちの…俺のことを考えて動いてくれてたってことが、すごく嬉しい。
「でも、いきなり観光客の受け入れができるほど、設備も何もないから、まずは野球チームだけの交流で様子見になると思う。」
「うん。」
「それでこの国にいい影響があれば、今後観光客の受け入れもまたできるようになるかもしれないし…」
「うん。」
「…一也さん。」
構わずキスをしていると、光はちょっと笑いながら俺の髪をくしゃくしゃにした。
「何?まだおあずけ?」
「ふふ…、ううん、いいよ…」
光が言い終わるより前に、光の唇を塞いだ。だってしばらくできてなかったし、我慢の限界だったから。
「ん…、」
舌を絡めつつ、慣れた手つきで光の服を脱がしていく。あっという間に露になった豊かな谷間と恍惚とした光の表情。胸に膨らみに手を添えて、いつもみたいに揉もうとすると…
「っ、ちょっと、待って…」
光が俺の手に手を重ね、動きを止めた。
「ちょっと…痛い」
「え?」
そんなに力を入れたつもりはなかったけど…
「胸が…張ってて…」
少し恥ずかしそうにそう告げた光に、ごめん、とキスをして、慎重に胸を撫でた。
出産してから時々、胸が張る、って言ってたっけ…。光也が泣いたりすると、よく言うよな…
母性本能?母乳が出ることと関係がある?なんにしても、女性の身体って神秘的だ。光は特に…俺にとっては。
「ん…。」
胸の愛撫はそこそこにして、秘部を撫で始めた。少し濡れてきている。気持ちいいかな…?光の表情を確認しようとして顔を上げると、光はなんだか物憂げにどこかを見つめていて、どうしたのか聞こうか迷っていると、目が合った。
「…一也さん」
「ん?」
愛撫をやめ、光の顔を真っすぐに見る。何か話したいことがあるようだったから。
「……。」
光は少し口を開きかけ、言うのを躊躇うように少し考えてから、決意したように俺の目を見た。
「こんな時に…聞くことじゃないかもしれないけど…」
「…何?」
「…私が…洋一さんの子供も産んだら、嫌…?」
「……。」
それは…考えたことはあったこと。
俺は一旦光の上から退き、隣に仰向けになった。
「…そうだな…」
光は寝返りを打って、俺の横顔を見つめる。
「嫌…っていうのとは、少し違うかもしれない。覚悟はしてた…」
「……。」
「だけど…複雑に思うことは…確かだな…」
「……。」
洋一も王配としてこの国に来た以上、国の存続の面では王族の子孫は多いにこしたことはないわけだし、第2王配との子供も祝福されるだろう。光也が生まれた時のように…。
「…一つ、約束して。」
「え…?」
俺は横を向き、光の目を見た。
「…俺と…まだふたりで…ふたりだけで過ごしてた頃のこと…忘れないで。」
「……。」
光の目が潤んで、窓から差し込む月の光が反射して、きらきらしている。
「…忘れるわけない…。」
光がそう呟くと同時に、その目からは涙がぽろぽろあふれ出して、光は俺の胸に抱き着いてきた。俺は胸に伏せて泣く光を抱きしめ、じわりと天井が滲むのを眺めて、少し鼻を啜った。
「はいはい」
にこにこしてわが子を抱き上げる光。光也が少しずつ喋るようになって、ますます可愛くて仕方がない。
「みっくん〜、パパは?パパ。」
「ぱ?」
「!!聞いた!?今パパって!!」
「いや惜しいけど今のはちげぇだろ」
「いや言ったし。パパって言ったし。」
「面倒くせぇ親父だな」
洋一があきれたように言ったとき、光也が洋一を見上げて言った。
「よおちゃ!」
おっ、と目を丸くする洋一、顔を引きつらせる俺。
「聞いたか〜?パパより先に洋ちゃんって言ったぜ!ヒャハハ」
「嘘だ!何かの間違いだ!」
「ちゃんと言えたもんな〜いい子だな〜光也は〜」
「嘘だあああ!」
「もー、お昼寝の時間だから騒がないで。」
光也をあやして寝かしつけようとする光に言われ、俺も洋一もすみません、と消沈した。
もう慣れたもので、光があやすと、光也はこてんと眠る。光也をベッドに寝かせ、タオルをお腹にかけてやると、早くも熟睡モードに入った。
「本当よく寝るよな〜」
洋一の言う通り、光也はベビーシッターも驚くほどよく寝る子だ。普通初めての子は繊細でなかなか寝付かない子であることが多いんですけどねぇ、と。
「寝る子は育つって言うし、デカくなりそうだな〜パパに似て」
「デブにならなきゃいーけどな」
「遺伝的にタッパは高くなりそうで安心だなぁ〜」
「もう、喧嘩しないの。」
「は〜い」
「クソうぜぇ…」
息子の将来を思うと元野球人としては血が騒ぐ。タッパがあればそれだけで有利だし。最近国の子供たちに教えている野球クラブも形になって来たし、光也が大きくなったら一緒にできたらいいなー、なんて。
でも俺、中学まではチビだったんだよなぁ。
「まーでも、目の色とか髪の色は光に近いけど、顔つきはお前にそっくりだよな」
「お、洋一クンもたまには素直…」
「この小憎たらしい生意気な感じが」
「たまには素直に褒めろ。」
***
光也が離乳を始めた頃。光は光也をベビーシッターに預け、仕事に出ることが多くなった。外交に関する大事な仕事だというだけで、俺と洋一に詳しいことは話してくれないのだが。
俺も洋一もそれぞれの仕事があったし、何より忙しそうな光に水を差すのも憚られて、少しすれ違いを感じる日々が続いていた。
今日も光はほとんど一日中出かけていて、俺は夕方城に帰ってきて洋一と夕食を食べ、少しジョギングをしてから風呂に入り、自室で読書をしていた。
光…遅いな。
今日も俺の部屋で寝る…はず。だけどもしかして…洋一の部屋に行ったのか?
――コンコン。
控えめなノックの後、遠慮がちにドアが開いた。
「あ、起きてた?」
光がはにかんで部屋に入ってきて、同時に部屋の中が明るくなったように思って、俺は安堵した。
「おかえり。」
俺は本を閉じて窓辺の椅子から立ち上がる。
「ただいま。ちょっとシャワーだけ浴びてくる。」
だけど光は俺の手をすり抜けてバスルームに入ってしまった。…ちぇっ。
それから20分ほどして、さっぱりした顔の光がバスルームから出てきて、ベッドに上がった。
「あのね、聞いてほしいことがあるの」
光は俺が何か尋ねる前に、嬉しそうに自分から口を開いた。その様子から今日何かいいことがあったのはあきらかで、俺も自然と笑顔を浮かべて、何?と尋ねた。
「前から交渉してたことなんだけど、イタリアの少年野球クラブと提携を結んだの。」
「…えっ?」
「それでね、詳しいことは今後一也さんと洋一さんで向こうの責任者の人と話し合ってもらうことになるんだけど、これでお互いの国に行き来して試合とかできるようになると思うの。この国はずっと閉鎖的で、他国の介入を避けて来たけど、最近は一也さんたちの野球クラブのおかげで子供たちが外国に興味を持ち始めたし、その保護者の間でも子供たちにもっとたくさんの経験をさせてあげたいって動きが強まって来ててね、まずは隣の国のイタリアと友好関係を結ぶことを提案したら、思ったよりたくさんの人が賛成してくれたの。」
「……。」
あまりに大きく物事が動いていたことを知り、俺はしばらくぽかんとしてしまった。それから頬を緩めて光の手をからめとり、組み敷いた。
「そんなすげぇことしてたの?お前」
「…びっくりした?」
「したよ。…惚れ直した」
ふふ、と光の目が細められ、俺はそのままキスをした。唇にも、首筋にも、胸元にも。
光が俺たちの…俺のことを考えて動いてくれてたってことが、すごく嬉しい。
「でも、いきなり観光客の受け入れができるほど、設備も何もないから、まずは野球チームだけの交流で様子見になると思う。」
「うん。」
「それでこの国にいい影響があれば、今後観光客の受け入れもまたできるようになるかもしれないし…」
「うん。」
「…一也さん。」
構わずキスをしていると、光はちょっと笑いながら俺の髪をくしゃくしゃにした。
「何?まだおあずけ?」
「ふふ…、ううん、いいよ…」
光が言い終わるより前に、光の唇を塞いだ。だってしばらくできてなかったし、我慢の限界だったから。
「ん…、」
舌を絡めつつ、慣れた手つきで光の服を脱がしていく。あっという間に露になった豊かな谷間と恍惚とした光の表情。胸に膨らみに手を添えて、いつもみたいに揉もうとすると…
「っ、ちょっと、待って…」
光が俺の手に手を重ね、動きを止めた。
「ちょっと…痛い」
「え?」
そんなに力を入れたつもりはなかったけど…
「胸が…張ってて…」
少し恥ずかしそうにそう告げた光に、ごめん、とキスをして、慎重に胸を撫でた。
出産してから時々、胸が張る、って言ってたっけ…。光也が泣いたりすると、よく言うよな…
母性本能?母乳が出ることと関係がある?なんにしても、女性の身体って神秘的だ。光は特に…俺にとっては。
「ん…。」
胸の愛撫はそこそこにして、秘部を撫で始めた。少し濡れてきている。気持ちいいかな…?光の表情を確認しようとして顔を上げると、光はなんだか物憂げにどこかを見つめていて、どうしたのか聞こうか迷っていると、目が合った。
「…一也さん」
「ん?」
愛撫をやめ、光の顔を真っすぐに見る。何か話したいことがあるようだったから。
「……。」
光は少し口を開きかけ、言うのを躊躇うように少し考えてから、決意したように俺の目を見た。
「こんな時に…聞くことじゃないかもしれないけど…」
「…何?」
「…私が…洋一さんの子供も産んだら、嫌…?」
「……。」
それは…考えたことはあったこと。
俺は一旦光の上から退き、隣に仰向けになった。
「…そうだな…」
光は寝返りを打って、俺の横顔を見つめる。
「嫌…っていうのとは、少し違うかもしれない。覚悟はしてた…」
「……。」
「だけど…複雑に思うことは…確かだな…」
「……。」
洋一も王配としてこの国に来た以上、国の存続の面では王族の子孫は多いにこしたことはないわけだし、第2王配との子供も祝福されるだろう。光也が生まれた時のように…。
「…一つ、約束して。」
「え…?」
俺は横を向き、光の目を見た。
「…俺と…まだふたりで…ふたりだけで過ごしてた頃のこと…忘れないで。」
「……。」
光の目が潤んで、窓から差し込む月の光が反射して、きらきらしている。
「…忘れるわけない…。」
光がそう呟くと同時に、その目からは涙がぽろぽろあふれ出して、光は俺の胸に抱き着いてきた。俺は胸に伏せて泣く光を抱きしめ、じわりと天井が滲むのを眺めて、少し鼻を啜った。