「まーまぁー」
「はいはい。」

光也に微笑みかけて、小さなスプーンで離乳食を掬い、光也の小さな口元に寄せる光。
小さな口が精一杯開いて、上手に離乳食を頬張る。

「おお〜」
「上手に食べれるようになっ…」

俺と一也が同時に感心した直後。うべえ、と光也が離乳食を吐き出した。

「あらら…」

光は苦笑して光也の口元を拭き、一也は自分の食器を片付けて歩み寄った。

「俺代わるよ。光もご飯食べて」
「うん、ありがとう」

仲睦まじい二人の様子を、使用人たちは微笑ましそうに見つめ、手は出さない。
育児はできるかぎり夫婦でやりたいという光たちの意思を尊重していて、さらにそんなふたりは国民からも親近感を覚えられ、とても慕われて支持されている。

「いやああーーー!ママぁぁーーー!」

しかし光也は超絶ママっ子で、光が少しでも離れるとこの通り泣き叫ぶ。

「いや〜じゃないだろ光也〜。パパ泣いちゃうぞ〜」
「やあああーー!!」
「ヒャハハ」
「コラ何笑ってんだそこ!」
「一也さん、やっぱり私…」
「いや!光はご飯食べちゃって。パパにも慣れてもらわないと、今後光も光也も大変だろ」

まあ、一也がこの通りやる気満々だから、心配ないだろう。
光も嬉しそうに微笑んで、光也の隣に行ってご飯を食べ始めると、光也はひとまず安心した様子で、しぶしぶ一也の手から離乳食を食べ始めた。

「そーだそーだ上手だな〜光也〜。いい子いい子」

しかし昔はいつも飄々としていて自己中で人の世話なんて焼かなかった一也がひとりの赤ん坊に手を焼いている姿はどことなく可笑しくて笑える。…つっても、俺もそのうち他人事じゃなくなるのかな。光との子供ができたら…。女の子かなー、男の子かなー。どっちにしても、光に似た可愛い子が…。
ぱち、と光と目が合って、ドキリとした。光は微笑んで、食事を続けた。
…けど光也の妊娠の時も、光は結構不安定になって…出産に関しては、光は2度も大変な思いをしているし…。俺に支えることって、できんのかな…。
…いや!弱気になったらダメだろ。俺だって、光が選んでくれた夫なわけで。
それにずっと、光を大切にする気持ちは誰にも負けないと自負してる。一也にだって。

「よし完食〜!えらいぞ光也!」
「いやあああ〜〜〜」
「なんで泣くんだよ!?」



***



【超朗報】アンクレー王国公式インスタ開始!!!!!

001:御幸光キターーーー!!!!!!

002:>>001今はもうアンクレー光だぞ

003:ファッ!?王子誕生しとるやんけ

004:どっちの子だ…?

005:御幸の子らしい

006:御幸そっくりやんけ

007:経産婦とは思えない美しさ

008:御幸光本当に人間?綺麗すぎない?

009:こんな嫁なら確かに2番目でも3番目でもいいから結婚してえ…

010:この美女を10年近く一人占めした男がいるらしい

011:御幸との子が男だったからアンクレー王国はもう安泰なんやな

012:今度は倉持と励んでるんやろなぁ…

013:倉持良かったな

014:倉持は諦めないことの大切さを俺たちに教えてくれた

015:>>014俺も諦めねーわ アンクレー王国第3王子

016:>>016諦めなくても叶わないことはあるんやで

017:世界一の美女で王女で胸デカくてスタイル抜群で頭も良くて優しくて清純、こんないい女他にいる?

018:>>017旦那二人いて清純…?

019:>>018確実に御幸と倉持としか寝てないんだからその辺の女より明らかに清純だろ

020:可愛いから何でもいいわ インスタ始めてくれて感謝



***



「はいチーズ」

パシャー、と一也のスマホがシャッター音を響かせる。最近一也は暇さえあれば光と光也の写真を撮っている。

「は〜〜俺の奥さん可愛い♡」
「キメェ」
「俺の息子も可愛いな〜♡」
「ウゼェ」
「光也の前で汚い言葉遣いはやめろって言っただろ」
「うるせ…さい」
「言い直しても駄目」

喧嘩しないでよー、と、光也をあやす光が向こうから声を掛けてきた。

「それインスタに載せんの?」
「ん〜、そうだな〜」
「つーかなんでインスタ始めたの?」
「せっかく光が野球チームできるようにいろいろしてくれたし、俺もアンクレー王国の知名度を高めようと思って」
「フーン…」

意外とまともな返答だった。暇だしなんとなく〜、とか言うと思ったのに。
光は光也を寝かしつけ、ベッドの天蓋を下げた。ここはお城の中庭で、使用人たちが木漏れ日の下にティーセットとベビーベッドを用意してくれて、俺たちは午後の昼下がりをのんびり過ごしていた。

「ねえ、来週司たちが遊びに来てくれるって。」

光也を寝かしつけた光が俺たちの傍へ来て小声で言った。

「へー。あいつら元気?」
「うん。なんか話したいことがあるんだって。」
「ふーん…?」

牧瀬と光臣は、光也が生まれた少し後に無事結婚式を挙げた。それはそれは盛大な式で、産後間もなかった光は式の後の披露宴を最後までいられなかったことをとても悔やんでいた。
ともかく、今は日本とイタリアを行ったり来たりする生活らしい。

「あ、あと司からのリクエスト」
「何?」
「インスタ、もっと光也を載せてって。」

牧瀬の言いそうなことだ。光が苦笑しながら言って、一也は笑って、しょーがねえなと言った。



***



「ひっかっり〜!!」
「うわ!」

翌週早速やって来た牧瀬は、出迎えた光を見るなり抱き着いた。
その時、おい、と小さく言って、光臣が少し焦ったような顔をしたのが気になったが、牧瀬も光も仲良く笑っているのを見て口を噤んだ光臣に、特に聞きはしなかった。

「もーびっくりした」
「ゴメ〜ン。ねえねえ!光也くんは!?」
「今寝てるよ。」
「あ〜んじゃあ会えないかぁ〜!生で見たかった〜天使くん〜」
「天使くん…」
「そのうち起きるから、そしたら会ってやってくれよ。」

一也が言うと、牧瀬は嬉しそうに頷いた。

「つーか相変わらず騒がしいな、牧瀬」
「もう牧瀬じゃないですう〜」
「あ、そうだった」

俺たちは階段を上って、いつものリビングへ向かった。

「それで話って?」

周防が紅茶を淹れている間、皆でソファに座って、光が切り出した。
司と光臣は顔を見合わせて微笑み、実は、と司が口を開いた。

「…赤ちゃんができました」

えへへ…と照れ臭そうに苦笑した司を、光臣が微笑みながら横目で見つめた。

「え…!おめでとう!」

一番に笑顔でそう言ったのは光だった。

「予定は?」
「来年の夏。安定期に入ってから伝えようと思って」
「うんうん。そっか、じゃあ…」

光はそう言いかけて、はっと口を噤んだ。

「…じゃあ、何?」
「あ、ううん、何でもない。勢い余って口が滑っちゃった。」

光が笑ったのを、皆目を丸くして疑問を抱いたが、光はきっと何かを隠していても、問いただしても絶対に言わないから、誰も追及することはなかった。

「楽しみだね。」
「玉城家の遺伝子が強く出ますように!!」
「…どういうこと?」
「え〜だって光臣とか光に似たら絶対美男美女じゃん!」
「…俺はうちの家族に似たら嫌だな。」
「光臣、重みがあるな…。」

 


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