同級生たちが修学旅行へ行っている間、俺たちはほとんどの授業を自習で過ごしていた。
そして今日の体育の授業は、体育教師も引率で修学旅行へ行っていることもあって1年と合同でやることになり、俺を始めとして倉持たちもみんなテンションが上がっていた。
なぜなら合同でやる1年のクラスが…。


「えーー!なんで倉持先輩たちがいるんですか〜?」

グラウンドに響き渡る牧瀬の声。その隣で玉城も目を丸くしている。
そう、合同でやるクラスが玉城のクラスだから、野郎共のテンションが上がっているのだ。

「今日合同なんだよ」
「合同?」
「2年皆修学旅行行ってるから野球部しか残ってねーの」
「あ〜!なるほど!」

「やっほ〜玉城♡」

倉持と牧瀬がしゃべっているのをよそに玉城に手を振ると、鬱陶しそうに目を細められた。

「なんだその顔!先輩に挨拶しないとは生意気な!」
「うるさいなぁ…」

ふん、とそっぽを向く玉城。ジャージ姿の今、抜群のスタイルが強調されて…。うわ、男がみんな見てる。
今日は合同だから、もちろん1年の男子もいる。というか、1年の男女合同体育に俺らも混ぜてもらう、という形だ。

「はーいじゃあ準備体操終わったら男女ペアでキャッチボールしててー。」

教師もたった二人で大人数を見なければならないからいつもより緩い。俺は倉持と準備体操を終え、周りを見渡した。男女ペアっつったって…1年の女子で声をかけられるのなんて玉城しかいない。

「たーましろ〜。」

ちら、と俺を振り向くそっけない瞳。

「一緒に組んで♡」
「東条〜。」
「ちょっと待てって!お願い頼むから!お前しかいねーんだって!」

東条の方へ行こうとする玉城の手を引き留めた。向こうで東条が苦笑しながら成り行きを見守っている。

「え〜御幸先輩と〜…?」
「玉城は俺がほかの女とキャッチボールしてもいいの?」
「……はあ?」
「俺が!お前以外の女と!組んでもいいっていうのか!?」
「好きにしたら?」
「なっ…お前、俺のことは遊びだったのか…?」
「バカじゃないの。」
「そうやってお前はいつも男を掌で転がすんだから…」
「意味わかんないんですけど。ねー東条組もう〜」
「だから待ってって!お願い俺と組んで!」
「もーしつこいな…」
「そんなこと言ってうれしいくせに。」

ぽっ、と玉城の頬が少し赤くなった。

「あっ、赤くなった!やっぱりお前ちょっと嬉し…」
「違いますから!!!もう東条と組む!!!」
「待って待って待ってゴメンマジで待って!!」

「光〜ボールとグローブ持ってきたよ〜。御幸先輩の分も。はいっ」

ぽん、ぽん、ぽん、と俺と玉城にグローブとボールを押し付ける牧瀬。隣には完全に牧瀬と組む気満々でグローブをはめて準備万端の倉持。

「え!?ちょっと待って、御幸先輩と組むなんて言ってな…」
「お〜〜〜サンキュー牧瀬!!さすが!!」
「ちょっと!!!」
「ホラホラ玉城いくぞ〜!グローブはめろ〜」
「えっ!?ちょっと待っ…」

慌ててグローブをはめた玉城が何とかボールをキャッチした。

「ナイキャ〜。」
「……。」

ひらひら手を振ると、玉城がむっとした顔で投げ返してきた。そんな顔でも球は柔らかく弧を描き、ギリギリ俺の足元に届く。俺はそれをワンバンでキャッチした。

「おし〜〜。もうちょいだな〜。はっはっは」
「……。」
「コエーから睨むな!」

隣を見ると、倉持と牧瀬は野球部のウォーミングアップのような安定したキャッチボールを続けている。さすが牧瀬、軽々と的確に倉持の胸元にボールが飛んでいるし、倉持からのボールのキャッチングもあっさり掴んでいる。さすがとしか言いようがない。

「牧瀬うめぇなぁ」
「え〜ホントですか〜!?うれし〜」
「確かにそこらの1年より上手いぜ。野球部入るか?ヒャハハ」
「私女なんですけど〜」

「おっと」

俺はもう少しで届きそうだった玉城からのボールをまたワンバンでとった。

「おしーおしー。もっと体全体使って!」
「……。」
「光大丈夫〜?」

不機嫌な玉城に牧瀬が声をかけた。

「大丈夫。絶対当てる」
「光それ目的が違う…」
「はっはっはっは!頑張れ〜」
「……。」

ムッとした玉城がボールを振りかぶった。むきになって投げたボールは、ギリギリ地面につかずに俺のミットに収まった。

「お〜よくなってきたじゃん!」
「…!」
「まあ俺のキャッチが上手いってのもあるけど(笑)」
「玉城さん、コイツの顔面に当ててメガネ割ってやれ」
「頑張ります」
「はっはっはっは」
「光頑張れ〜!」
「そーだなぁ、コツを教えてやろう」

俺はボールを構えて見せた。

「こうして…お前はこうやって投げてるけど、これじゃ腕の力しかボールに乗ってない。こうやって重心をかけてボールを押し出すんだよ。」
「……。」
「こう構えて…こう!」

大げさに振りかぶって見せて、投げるときは軽ーく放り投げた。ボールは軽い弧を描いて玉城の胸元に飛んでいき、玉城はミットを構えた。しかしボールはミットの端にぶつかり、玉城の足にぶつかって地面に落ちた。

「あ、わりーわりー」

ちょっと高かったか、と言おうとしたとき、野球部の2年達がどっと集まってきた。

「御幸何玉城さんにボール当ててんだよ!!」
「それでも野球部か!!このノーコン!!」
「玉城さん大丈夫!?」
「玉城さんがかわいそうだろ!!俺と代われヘタクソ!!」

「何だ何だ急に…当ててねーし玉城が取り損ねただけじゃん」
「捕れねーボールを投げる奴が悪いんだよ!!」

いったい何なんだこの騒ぎは。牧瀬は笑い堪えてるし。

 


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