目が覚めて、アイマスクを取って、俺はしばらく放心していた。
昨夜見た夢が生々しく脳裏によみがえり、下着の中の不快感にじっとりと汗をかく。

「御幸先輩?どうしたんですか?」

木村が寝ぼけ眼で着替えながら、まだベッドから出られずにいる俺を振り返った。

「ちょ…ちょっと腹が痛くて」
「え?大丈夫ですか?俺監督に伝えましょうか?」
「いや、へーき、便所行ってくるわ」
「そうですか…?」

大丈夫かー?と3年からも心配されながら、俺は部屋を出てトイレへ駆け込んだ。
下着の処理をしてこっそり部屋に戻り、洗濯籠の下の方に洗った下着を押し込んで、同室の二人が出ていったタイミングで急いで着替えをした。なんとか集合には間に合いそうだ。

それにしても……今朝の夢……。
玉城とセッ……クス、してる夢を見てしまうとは……。

超ドエロかった…玉城…。
あんな夢見ちまって、今日玉城の顔見辛ぇよ…。



***



「あっ!こんにちはー!」

昼時、倉持と学食へ行くと、聞きなれた声がした。
振り向くと牧瀬と玉城が立っていた。

「おー、おつかれー」
「ここあいてます〜?」
「おー、とっといてやるよ」

倉持が自分のジャケットを二人分の席に広げておくと、牧瀬は「ありがとうございまーす!」と笑って、玉城と二人で昼飯を買いに行った。それから数分で二人は戻ってきて、牧瀬は倉持の隣に、玉城はその向かい側、俺の隣にやってきた。
つい、ガタン、と椅子を少し遠ざけてしまい、しまった、と思う。玉城は不思議そうに一瞬俺を見て、気にしていない様子で隣に座った。

「学食珍しいじゃん」
「えへ〜今日わたしお弁当食べちゃってぇ〜」
「女子で早弁とか初めて聞いたわ」
「先輩方はいつも学食なんですかぁ?」
「学食だったり、購買のパンだったり、いろいろだな」
「へ〜〜」

牧瀬と倉持はいつもの調子で盛り上がり始めた。玉城は俺の隣で黙々とオムライス定食を食べている。
そのなかにある、太めのソーセージをフォークでさし、玉城の口が咥えたのを見て、俺はとっさに目をそらした。

「なんか今日御幸先輩静かすぎませ〜ん?」
「今日コイツおかしいんだよ。寝坊してきたし」
「え〜寝坊!?」
「寝坊はしてない。」
「じゃなんで今日集合遅かったんだよ」
「うっさいな〜遅刻してないんだからいいじゃん」
「な?なんか隠してんだよ。怪しいだろ?」
「怪しいですね〜!」
「ほっといてくださーい」

「…あ!!」

ガチャン、と牧瀬が急に箸を置いた。

「なんだよ」
「光ヤバい!田村が来た!」
「え?」
「後ろ向いちゃダメ!」

玉城は牧瀬の指示に従って正面を向いたまま硬直した。

「…誰?田村って」

倉持が小声で尋ねると、牧瀬も声を潜めた。

「先週光に告ってきた隣のクラスの男子です。もーしつこくって」
「えぇ?」
「…けど別にこんなとこで何かしてくるわけ…」

「玉城さん」

俺が言いかけたとき、背後から無遠慮で高圧的な声が降りかかった。振り返って見上げると、長身でガタイのいいこわもての男が俺たちを見下ろしていた。
おそるおそる振り返った玉城に、田村は揶揄するように言った。

「相変わらず男を弄んでんな〜…スゴイね」
「……。」

玉城の顔が不愉快そうにゆがみ、牧瀬が机をたたいて立ち上がった。

「ちょっと!いいかげんにしてよフラれたからって!いつまでもねちねち…」
「そーだよテメェふざけてんじゃねーぞ」

倉持まで火がついたらしく、田村をにらみつけた。

「俺の後輩に何か用かよ」
「……。」
「あ?何とか言えよ」

倉持のすごみにひるんだらしい田村が一瞬口ごもった。

「や…やっぱりな。こーやって先輩までだまして、弄んで」
「は?弄ばれてなんかいねーよ」
「ダセーんだよお前!ひっこんでろ」

俺と倉持に言い返されて、田村はすごすごと引き下がった。

 


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