005
綺麗なものが好き。可愛いものが好き。
名前も顔も背格好も、「かっこいい」とよく言われる私は、あの日――
「玉城光です。」
教室に入ってきた転校生に、衝撃を受けた。
なんて綺麗な女の子なんだろう。
何て柔らかそうな白い肌。なんて澄んで輝く瞳。なんて整った……
「よろしくお願いします。」
……友達になりたい!!
それが、光への第一印象だった。
「玉城さん!音楽室、場所わかんないでしょ?一緒に行こう!」
「玉城さん!家どこ?一緒に帰ろう!」
「玉城さん!音楽聴く?好きなアーティストは?」
「玉城さん!」
光はあまり笑わず、自分から話すことも少ない。でも、自分の意見はしっかりあって、それで――
「……牧瀬さんって、面白いね。」
時々見せてくれる笑顔が、すごく、すごく……綺麗なんだ。
***
チャイムが鳴り、昼休みの時間を告げる。
私がそわそわと廊下や窓を見ていると、それに気づいたクラスメイトがどっと笑い声をあげた。
「司、落ち着きなさすぎ!」
「玉城さんが来るの、待ってるんでしょ?」
そう、今日は光は家の都合でお昼休み頃から学校に来ると言っていた。光のいない午前中は退屈で仕方なくて、私は待ちきれずに廊下に飛び出した。
「司?お昼食べないの?」
「ちょっと玄関見てくる!」
「え!?まじ?ほんと、仲良いよね…」
「仲良いって言うか、司の片思いだね。」
クラスメイトに少し馬鹿にされたような気もするが、そんなことはどうでもいい。軽い足取りで階段を駆け下り、昇降口へ向かう。すると下駄箱の前の所で、きらきら光を纏った女の子がパッと視界に入ってきた。光だ!
「光……」
すぐに駆け付きそうになって、ふと事態に気付く。
光の前に立ちはだかる、5人の背の高い女子たち。2年生だ。それだけじゃない、あれはたしか、女バスの人たちだ。何度か、私に入部の勧誘をしてきたっけ。
「で、あんた御幸君の何なの?」
棘のある低い声。ああ…とても分かりやすい光景。
光はいつもの涼しい顔で先輩たちを見上げている。
「……御幸先輩のことはよく知りません。」
「あぁ!?お前が御幸君のクラスまで会いに来てることはわかってんだよ!!」
「用があったので行きました。いけませんか?」
「……ッハァ!?」
2年生の中心の人、やばそうだな。頭に血が上ってる。
素早く近づいて、光と2年生の間に首を突っ込む。
「先輩、こんにちは!どうしたんですか?」
「は!?…あ、ま、牧…瀬?」
思わぬ人物の登場に面食らった様子で、先輩は矛を収めた。
「…そうだ牧瀬、同じ1年だよね?こいつ、知ってる?」
こいつ、と先輩は顎で光を指す。
「はい。同じクラスです。」
「…あっそう。…こいつ、なんなの?超生意気なんだけど!」
「そうですか?何かあったんですか?」
「……ッッ」
御幸先輩のことは話したくないらしい。まあ、付き合ってるわけでもないしね。後ろめたさは一応、あるんだろう。
「…まぁ何があったにしても、こんなところで揉めてるとやばいですよ。昼休みになったし、人も来るし。何か別のことで白黒つけましょう?」
「別のこと?」
「後輩を恫喝する以外のことですよ。」
「恫喝!?は…、何言ってんの!?私たちは…!」
「でも、周りからはそう見えちゃいますから。ほら、何か勝負とかでもいいですし。負けた方が謝るとか――」
「勝負……。」
先輩の動揺がぴたりと収まる。それから、にやりと悪い笑みを浮かべた。
「……いいよ。勝負しよう。バスケであたしたちに勝ったら許してあげる。」
「……え。」
いやいやそれは…性格悪すぎでしょう…。
青道の女バスは結構強い。野球部ばかりが有名なこの学校だけど、それにひっぱられるようにして、他の運動部も地区予選突破は軽いレベルの部員が揃っている。女バスもその中の一つで、去年のレギュラーチームは全国大会まで行ったほど。そのチームの中の一人が、当時1年生でありながら抜擢された、この先輩…真壁エリカ先輩だ。
「…ちょ、ちょっとそれは…光に勝ち目ないですよ!人数も足りないし…」
「わかった。じゃ、そっちが10点、こっちが20点先に取れたら勝ちでいいよ。それでどう?人は今から集めてきて。」
「……どうする、光?光がいいなら、私は光のチームに入るよ。」
振り返って……息をのんだ。
光は、笑っていた。
「いいですよ。先輩たちが勝ったら…許してあげますよ。」
「…ん!?ちょ…光…」
光が見たことない笑顔…すっごい楽しそうな笑顔してる…!というか、趣旨がかなり変わってるような…。
…光、こう見えてかなりの負けず嫌いだからなぁ…。
「……ッ!!フン!!そんなどす黒い性格してて、チームが集まるといいけどね!」
先輩たちはそう言い残して体育館へ向かった。私は光の手を取る。
「光!あと3人は、私が集めてくる。先に着替えて体育館に行ってて!」
「…わかった。」
私は時計を見上げる。昼休みが終わるまで、あと30分……。
なんかよくわかんない展開だけど、面白い。こういうの嫌いじゃないんだよね……絶対に勝ってみせる!
名前も顔も背格好も、「かっこいい」とよく言われる私は、あの日――
「玉城光です。」
教室に入ってきた転校生に、衝撃を受けた。
なんて綺麗な女の子なんだろう。
何て柔らかそうな白い肌。なんて澄んで輝く瞳。なんて整った……
「よろしくお願いします。」
……友達になりたい!!
それが、光への第一印象だった。
「玉城さん!音楽室、場所わかんないでしょ?一緒に行こう!」
「玉城さん!家どこ?一緒に帰ろう!」
「玉城さん!音楽聴く?好きなアーティストは?」
「玉城さん!」
光はあまり笑わず、自分から話すことも少ない。でも、自分の意見はしっかりあって、それで――
「……牧瀬さんって、面白いね。」
時々見せてくれる笑顔が、すごく、すごく……綺麗なんだ。
***
チャイムが鳴り、昼休みの時間を告げる。
私がそわそわと廊下や窓を見ていると、それに気づいたクラスメイトがどっと笑い声をあげた。
「司、落ち着きなさすぎ!」
「玉城さんが来るの、待ってるんでしょ?」
そう、今日は光は家の都合でお昼休み頃から学校に来ると言っていた。光のいない午前中は退屈で仕方なくて、私は待ちきれずに廊下に飛び出した。
「司?お昼食べないの?」
「ちょっと玄関見てくる!」
「え!?まじ?ほんと、仲良いよね…」
「仲良いって言うか、司の片思いだね。」
クラスメイトに少し馬鹿にされたような気もするが、そんなことはどうでもいい。軽い足取りで階段を駆け下り、昇降口へ向かう。すると下駄箱の前の所で、きらきら光を纏った女の子がパッと視界に入ってきた。光だ!
「光……」
すぐに駆け付きそうになって、ふと事態に気付く。
光の前に立ちはだかる、5人の背の高い女子たち。2年生だ。それだけじゃない、あれはたしか、女バスの人たちだ。何度か、私に入部の勧誘をしてきたっけ。
「で、あんた御幸君の何なの?」
棘のある低い声。ああ…とても分かりやすい光景。
光はいつもの涼しい顔で先輩たちを見上げている。
「……御幸先輩のことはよく知りません。」
「あぁ!?お前が御幸君のクラスまで会いに来てることはわかってんだよ!!」
「用があったので行きました。いけませんか?」
「……ッハァ!?」
2年生の中心の人、やばそうだな。頭に血が上ってる。
素早く近づいて、光と2年生の間に首を突っ込む。
「先輩、こんにちは!どうしたんですか?」
「は!?…あ、ま、牧…瀬?」
思わぬ人物の登場に面食らった様子で、先輩は矛を収めた。
「…そうだ牧瀬、同じ1年だよね?こいつ、知ってる?」
こいつ、と先輩は顎で光を指す。
「はい。同じクラスです。」
「…あっそう。…こいつ、なんなの?超生意気なんだけど!」
「そうですか?何かあったんですか?」
「……ッッ」
御幸先輩のことは話したくないらしい。まあ、付き合ってるわけでもないしね。後ろめたさは一応、あるんだろう。
「…まぁ何があったにしても、こんなところで揉めてるとやばいですよ。昼休みになったし、人も来るし。何か別のことで白黒つけましょう?」
「別のこと?」
「後輩を恫喝する以外のことですよ。」
「恫喝!?は…、何言ってんの!?私たちは…!」
「でも、周りからはそう見えちゃいますから。ほら、何か勝負とかでもいいですし。負けた方が謝るとか――」
「勝負……。」
先輩の動揺がぴたりと収まる。それから、にやりと悪い笑みを浮かべた。
「……いいよ。勝負しよう。バスケであたしたちに勝ったら許してあげる。」
「……え。」
いやいやそれは…性格悪すぎでしょう…。
青道の女バスは結構強い。野球部ばかりが有名なこの学校だけど、それにひっぱられるようにして、他の運動部も地区予選突破は軽いレベルの部員が揃っている。女バスもその中の一つで、去年のレギュラーチームは全国大会まで行ったほど。そのチームの中の一人が、当時1年生でありながら抜擢された、この先輩…真壁エリカ先輩だ。
「…ちょ、ちょっとそれは…光に勝ち目ないですよ!人数も足りないし…」
「わかった。じゃ、そっちが10点、こっちが20点先に取れたら勝ちでいいよ。それでどう?人は今から集めてきて。」
「……どうする、光?光がいいなら、私は光のチームに入るよ。」
振り返って……息をのんだ。
光は、笑っていた。
「いいですよ。先輩たちが勝ったら…許してあげますよ。」
「…ん!?ちょ…光…」
光が見たことない笑顔…すっごい楽しそうな笑顔してる…!というか、趣旨がかなり変わってるような…。
…光、こう見えてかなりの負けず嫌いだからなぁ…。
「……ッ!!フン!!そんなどす黒い性格してて、チームが集まるといいけどね!」
先輩たちはそう言い残して体育館へ向かった。私は光の手を取る。
「光!あと3人は、私が集めてくる。先に着替えて体育館に行ってて!」
「…わかった。」
私は時計を見上げる。昼休みが終わるまで、あと30分……。
なんかよくわかんない展開だけど、面白い。こういうの嫌いじゃないんだよね……絶対に勝ってみせる!