067
「ま……負けた」
がっくりと膝をつき、熱い砂浜に項垂れる。
「御幸テメー何回空振れば気が済むんだよ!!」
「はっはっは…おっかしいな〜」
「降谷お前も力任せに打ちすぎ!!ほぼ場外だし!!」
「……。」
「無視すんなっ!!つーかまともにできてたの俺と東条だけじゃねーか!」
「おーっと御幸チーム仲間割れかぁ!?」
スタッフの面白がるような声。
でもしょうがないよな、あっちはチームワークも相性もいい奴同士が揃ったし、何より…。
…玉城にどうしても目が行って、全然集中できなかった…。あの水着はずるい、ずるいよ玉城。絶対皆玉城に気を取られてたよ。御幸先輩も…。
高校の時からうすうす思ってたし、この間見た写真集で確信したけど…玉城、結構、胸が…あるし。実際目の当たりにすると…刺激が強すぎる。でも、御幸先輩にはもっと…色々、見せてるんだよな。同棲してるくらいなんだから。
「それでは負けた御幸チームの皆さんには、罰ゲームを受けていただきます!」
スタッフの声で我に返り、立ち上がる。案内されたのはビーチから歩いてすぐの場所にある、ドリンクの売店。小さなトラックの露店だけど、結構賑わっている。
「こちら、現地の方から観光客まで幅広く親しまれているスムージーのお店です。じつはここ、とあるメニューが話題を呼んでいまして…」
「…俺、もうなんとなく展開が読めた」
御幸先輩が項垂れて顔を背けた。うん…俺も何となく想像がつく。
「…それがこちら!!現地の新鮮な野菜と超高級珍味をふんだんに使った、ブラウンスムージーです!!」
すでに用意されていた、何ともいえない濁った茶色のスムージーが4つ、運ばれてくる。
「なんだよブラウンスムージーって。聞いたことねーよ。せめてグリーンにしろよ」
「俺の知ってるブラウンじゃない。これはブラウンっつーよりウン…」
「おい倉持それ以上言うな」
ボソボソと言い合う御幸先輩と倉持先輩。
「こちらのスムージー、栄養も満点で、これ1杯でレモン50個分のビタミンCと豆乳コップ20杯分のタンパク質、さらに鉄分やカルシウムも豊富に含まれていますので、皆さんこれを飲んでいただければ、プロ野球選手としてさらなる活躍に期待ができますね!」
「これを飲むくらいならレモンと豆乳を飲みます。」
「うわっなんか臭いもヤベーんだけどこれ…」
顔を顰める先輩たち。俺も目の前に置かれた怪しいスムージーを見つめる。
「なんか怖いな、なぁ降谷…」
そう話しかけながら隣を見ると、降谷は静かに目を閉じていた。
「降谷テメー寝たふりすんな!」
倉持先輩にたたき起こされる降谷。うう…俺も覚悟を決めるか…。
「それではみなさん、ご一緒にお召し上がりください!」
意を決したように一気に飲み干す先輩たちを横目に、俺も怪しいスムージーを口の中に流し込む。味わう前に一気に飲みこもう…!
そう思ったのに、ドロドロブツブツした舌触りに鳥肌が立ち、口の中には苦みと酸味とむせ返るような青臭さが広がった。すぐ隣で倉持先輩が吹き出し、御幸先輩も口を抑えている。何とか喉を通らせた俺も、舌を出して思わずえづいた。
「み、水!!」
「まっっっず…!!!」
阿鼻驚嘆する俺たちを、沢村たちは笑って見ている。くっそー…
「お味の方はいかがでしたか?」
そう言ってカメラを向けるスタッフ。
「人の飲むもんじゃないです。」
「あっ!降谷テメー全然飲んでねーじゃねーか!!いいかげん腹括れ!」
「……。」
「無視すんな!」
一通り騒いだ後、スタッフは締めくくるように声を上げた。
「皆さんお楽しみいただいたようで何よりです。それではこれから、本日宿泊するホテルへご案内します。」
「おーやっとか」
「とりあえず口濯ぎてぇ」
既に疲れている御幸先輩と倉持先輩はにわかに元気を取り戻した。俺も少し休みたい。カメラの前で緊張しっぱなしだし。
「それではみなさん、またレンタカーに乗っていただきますので、くじ引きをお願いします。」
ま…またか!緊張しながら、差し出された紙の束を睨む。こ、今度こそ玉城と…
「光〜、何色?」
紙を引き終ると、真っ先に玉城に色を聞きに行く御幸先輩。
「赤です。」
はにかんで紙を見せる玉城。今回も二人は違う色だったようで、御幸先輩は項垂れる。
「降谷、何色?」
何気なく隣に立っている降谷に声をかける。降谷、なんだかんだ楽しんでるみたいで、よかったな。降谷は俺に紙を見せ、言った。
「赤だよ。」
「…え?」
「あ、降谷君、私と同じだね。じゃあ行こうか?」
「うん。…僕運転してもいい?」
「うん、お願い。」
にこやかに、さわやかに、玉城と降谷は白いレンタカーに向かっていく。こ、今度は降谷か。…いいなあ。
「おい降谷。くれぐれも、くれぐれも安全運転しろよ。いいな?気を付けるんだぞ。」
「…どういう意味ですか」
御幸先輩に両肩を掴まれ凄まれて、降谷はツンと目を逸らす。信用されてないのが不満なんだな。
「大丈夫ですよ御幸先輩、降谷、運転上手いですから」
先程降谷の運転でここまで来た俺の言葉というのもあって、御幸先輩は渋々降谷を離す。
「青は誰?」
気を取り直して声を上げると、あっと声を上げて駆け寄ってきたのは、牧瀬だった。
「私青。よろしくね東条君。」
「うん。牧瀬、運転に自信ある?」
「さっき運転したけど、まあ普通だよ。東条君は?」
「俺、免許取りたてなんだよね…」
「ちょうどいいじゃん、練習しなよ!私助手席で見てて上げるからさ。」
「…うーん、じゃあ、お願いしようかな。せっかくだし」
行こう行こう、と牧瀬は赤いレンタカーに向かう。ほんと良い奴だな、牧瀬って。
「ちっ、今度は沢村かよ。オラさっさと乗れ、行くぞ」
「任せてください倉持先輩!この沢村の腕前をとくと…」
「何してんだテメーは助手席だよ!お前ペーパーだろうが!怖くて乗れるか!!」
「よ、よろしくお願いします、クリス先輩。」
「ああ。…どっちが運転する?」
「あ、じゃあ俺が…」
他のペアも車に乗り込み、スタッフの車に続いて続々と出発した。
***
車の通りは少なく、海岸沿いは見通しもよく、信号もほとんどなくて、右側走行という違和感を除けばとても運転しやすく、楽しい。
「上手いじゃん東条君!」
「そうかな。車が少ないから、運転しやすいってこともあるけど…まだ少し緊張するよ。」
「窓開けてみなよ。潮風気持ちいいよ。」
牧瀬の言う通り窓を少し開けると、あたたかい風が車内を通り抜けていき、気持ちが良くて緊張が少しほぐれた。
「東条君とはさあ」
「ん?」
「1年の時、同じクラスだったね」
「あー、そうだな。」
その頃から牧瀬は目立っていた。入学式間もない頃なのに、クラスの女子はもう牧瀬を中心に仲良くなっていて、クラス委員長に推薦されていたっけ。
「牧瀬は人気者だったよなあ、今もだけど」
「えーなに、人気者って。」
「いつも輪の中心にいてさ、目立ってたじゃん。思えばそういうのって、カリスマ性があるってことじゃないの?牧瀬、芸能界とか向いてるんだな。」
「もうなに急に褒めてるの?やめてよ照れるじゃん。東条君こそ、1年の頃野球部で目立ってたし。中学の頃から有名な選手だったんでしょ?クラスに有名人が来たーって噂になってたよ。」
「俺なんて凡人だよ、青道の野球部に入ってそれを実感した。」
牧瀬は珍しく静かに笑みを浮かべる。
「確かに…今思えば私たち、すごい人たちと高校生活を送ってたんだね。今ではプロ野球選手になった人、たくさんいるもんね。東条君もだけど。すごいなぁ〜。夢に向かって一生懸命で、その夢をかなえて。かっこいいよ。」
「牧瀬こそ。夢を叶えて舞台女優になって、今はドラマとかもいっぱい出てるじゃん。めちゃくちゃすごいと思うけど。」
「いや〜私は自分の夢っていうより…憧れの人を追いかけてきただけだから。」
「え?」
牧瀬の憧れの人?…誰だろう。玉城か?
「もともと演劇部に入ったのも、演劇部の3年の先輩に憧れて入ったんだよね。で、高校卒業後はその先輩を追いかけて大学に入って、同じ劇団のオーディションも受けて…。がむしゃらに追いかけて、気が付いたら今。モデルとかドラマの仕事も、光と一緒に居たくて挑戦したのがきっかけだし…私はいつも誰かを追いかけてばかりだよ。自分で道を切り開くなんて、できない。」
「……。」
「だから…光も、東条君たちも皆、めちゃくちゃかっこいいと思う。」
そんなふうに…謙虚だけど真っ直ぐな牧瀬も、十分かっこいいと思うけどな。
「ねえ、それより、東条君って光と何かあったの?」
「へっ!?」
危うく車線をはみ出しそうになって、慌ててハンドルを戻す。
「…な、なんで?」
「…すごい動揺してるけど大丈夫?」
大丈夫じゃないよ。いきなり変な事訊くなよ…!
「だってさあ、東条君と光って、1年の頃仲良かったじゃん。でも今日、全然話してないから…」
「…まあ、2年からクラス離れたし…自然と話す機会も減って、そのまま卒業しちゃったし」
「それは私もでしょ〜?…あ、もしかして高校の時何かあったの?」
「い…いや別に、何もないよ」
牧瀬、鋭すぎて怖い。
「ふーん?話変わるけどさ、東条君なんで今回のロケ来ようと思ったの?」
…俺からしたら、あんまり話変わってない。
「…野球してると、夏に海で遊ぶことなんて、ほとんど機会なくなるし…楽しそうだと思って。ハワイ、一度来てみたかったしね。」
「そーなんだ。あっ、ハワイといえばさあ…」
牧瀬と一緒に居ると会話が途切れることが無い。ドライブを楽しみながら、俺は、せっかく再会した玉城となかなか話せないでいることが、なんとなく胸につかえているのだった。
がっくりと膝をつき、熱い砂浜に項垂れる。
「御幸テメー何回空振れば気が済むんだよ!!」
「はっはっは…おっかしいな〜」
「降谷お前も力任せに打ちすぎ!!ほぼ場外だし!!」
「……。」
「無視すんなっ!!つーかまともにできてたの俺と東条だけじゃねーか!」
「おーっと御幸チーム仲間割れかぁ!?」
スタッフの面白がるような声。
でもしょうがないよな、あっちはチームワークも相性もいい奴同士が揃ったし、何より…。
…玉城にどうしても目が行って、全然集中できなかった…。あの水着はずるい、ずるいよ玉城。絶対皆玉城に気を取られてたよ。御幸先輩も…。
高校の時からうすうす思ってたし、この間見た写真集で確信したけど…玉城、結構、胸が…あるし。実際目の当たりにすると…刺激が強すぎる。でも、御幸先輩にはもっと…色々、見せてるんだよな。同棲してるくらいなんだから。
「それでは負けた御幸チームの皆さんには、罰ゲームを受けていただきます!」
スタッフの声で我に返り、立ち上がる。案内されたのはビーチから歩いてすぐの場所にある、ドリンクの売店。小さなトラックの露店だけど、結構賑わっている。
「こちら、現地の方から観光客まで幅広く親しまれているスムージーのお店です。じつはここ、とあるメニューが話題を呼んでいまして…」
「…俺、もうなんとなく展開が読めた」
御幸先輩が項垂れて顔を背けた。うん…俺も何となく想像がつく。
「…それがこちら!!現地の新鮮な野菜と超高級珍味をふんだんに使った、ブラウンスムージーです!!」
すでに用意されていた、何ともいえない濁った茶色のスムージーが4つ、運ばれてくる。
「なんだよブラウンスムージーって。聞いたことねーよ。せめてグリーンにしろよ」
「俺の知ってるブラウンじゃない。これはブラウンっつーよりウン…」
「おい倉持それ以上言うな」
ボソボソと言い合う御幸先輩と倉持先輩。
「こちらのスムージー、栄養も満点で、これ1杯でレモン50個分のビタミンCと豆乳コップ20杯分のタンパク質、さらに鉄分やカルシウムも豊富に含まれていますので、皆さんこれを飲んでいただければ、プロ野球選手としてさらなる活躍に期待ができますね!」
「これを飲むくらいならレモンと豆乳を飲みます。」
「うわっなんか臭いもヤベーんだけどこれ…」
顔を顰める先輩たち。俺も目の前に置かれた怪しいスムージーを見つめる。
「なんか怖いな、なぁ降谷…」
そう話しかけながら隣を見ると、降谷は静かに目を閉じていた。
「降谷テメー寝たふりすんな!」
倉持先輩にたたき起こされる降谷。うう…俺も覚悟を決めるか…。
「それではみなさん、ご一緒にお召し上がりください!」
意を決したように一気に飲み干す先輩たちを横目に、俺も怪しいスムージーを口の中に流し込む。味わう前に一気に飲みこもう…!
そう思ったのに、ドロドロブツブツした舌触りに鳥肌が立ち、口の中には苦みと酸味とむせ返るような青臭さが広がった。すぐ隣で倉持先輩が吹き出し、御幸先輩も口を抑えている。何とか喉を通らせた俺も、舌を出して思わずえづいた。
「み、水!!」
「まっっっず…!!!」
阿鼻驚嘆する俺たちを、沢村たちは笑って見ている。くっそー…
「お味の方はいかがでしたか?」
そう言ってカメラを向けるスタッフ。
「人の飲むもんじゃないです。」
「あっ!降谷テメー全然飲んでねーじゃねーか!!いいかげん腹括れ!」
「……。」
「無視すんな!」
一通り騒いだ後、スタッフは締めくくるように声を上げた。
「皆さんお楽しみいただいたようで何よりです。それではこれから、本日宿泊するホテルへご案内します。」
「おーやっとか」
「とりあえず口濯ぎてぇ」
既に疲れている御幸先輩と倉持先輩はにわかに元気を取り戻した。俺も少し休みたい。カメラの前で緊張しっぱなしだし。
「それではみなさん、またレンタカーに乗っていただきますので、くじ引きをお願いします。」
ま…またか!緊張しながら、差し出された紙の束を睨む。こ、今度こそ玉城と…
「光〜、何色?」
紙を引き終ると、真っ先に玉城に色を聞きに行く御幸先輩。
「赤です。」
はにかんで紙を見せる玉城。今回も二人は違う色だったようで、御幸先輩は項垂れる。
「降谷、何色?」
何気なく隣に立っている降谷に声をかける。降谷、なんだかんだ楽しんでるみたいで、よかったな。降谷は俺に紙を見せ、言った。
「赤だよ。」
「…え?」
「あ、降谷君、私と同じだね。じゃあ行こうか?」
「うん。…僕運転してもいい?」
「うん、お願い。」
にこやかに、さわやかに、玉城と降谷は白いレンタカーに向かっていく。こ、今度は降谷か。…いいなあ。
「おい降谷。くれぐれも、くれぐれも安全運転しろよ。いいな?気を付けるんだぞ。」
「…どういう意味ですか」
御幸先輩に両肩を掴まれ凄まれて、降谷はツンと目を逸らす。信用されてないのが不満なんだな。
「大丈夫ですよ御幸先輩、降谷、運転上手いですから」
先程降谷の運転でここまで来た俺の言葉というのもあって、御幸先輩は渋々降谷を離す。
「青は誰?」
気を取り直して声を上げると、あっと声を上げて駆け寄ってきたのは、牧瀬だった。
「私青。よろしくね東条君。」
「うん。牧瀬、運転に自信ある?」
「さっき運転したけど、まあ普通だよ。東条君は?」
「俺、免許取りたてなんだよね…」
「ちょうどいいじゃん、練習しなよ!私助手席で見てて上げるからさ。」
「…うーん、じゃあ、お願いしようかな。せっかくだし」
行こう行こう、と牧瀬は赤いレンタカーに向かう。ほんと良い奴だな、牧瀬って。
「ちっ、今度は沢村かよ。オラさっさと乗れ、行くぞ」
「任せてください倉持先輩!この沢村の腕前をとくと…」
「何してんだテメーは助手席だよ!お前ペーパーだろうが!怖くて乗れるか!!」
「よ、よろしくお願いします、クリス先輩。」
「ああ。…どっちが運転する?」
「あ、じゃあ俺が…」
他のペアも車に乗り込み、スタッフの車に続いて続々と出発した。
***
車の通りは少なく、海岸沿いは見通しもよく、信号もほとんどなくて、右側走行という違和感を除けばとても運転しやすく、楽しい。
「上手いじゃん東条君!」
「そうかな。車が少ないから、運転しやすいってこともあるけど…まだ少し緊張するよ。」
「窓開けてみなよ。潮風気持ちいいよ。」
牧瀬の言う通り窓を少し開けると、あたたかい風が車内を通り抜けていき、気持ちが良くて緊張が少しほぐれた。
「東条君とはさあ」
「ん?」
「1年の時、同じクラスだったね」
「あー、そうだな。」
その頃から牧瀬は目立っていた。入学式間もない頃なのに、クラスの女子はもう牧瀬を中心に仲良くなっていて、クラス委員長に推薦されていたっけ。
「牧瀬は人気者だったよなあ、今もだけど」
「えーなに、人気者って。」
「いつも輪の中心にいてさ、目立ってたじゃん。思えばそういうのって、カリスマ性があるってことじゃないの?牧瀬、芸能界とか向いてるんだな。」
「もうなに急に褒めてるの?やめてよ照れるじゃん。東条君こそ、1年の頃野球部で目立ってたし。中学の頃から有名な選手だったんでしょ?クラスに有名人が来たーって噂になってたよ。」
「俺なんて凡人だよ、青道の野球部に入ってそれを実感した。」
牧瀬は珍しく静かに笑みを浮かべる。
「確かに…今思えば私たち、すごい人たちと高校生活を送ってたんだね。今ではプロ野球選手になった人、たくさんいるもんね。東条君もだけど。すごいなぁ〜。夢に向かって一生懸命で、その夢をかなえて。かっこいいよ。」
「牧瀬こそ。夢を叶えて舞台女優になって、今はドラマとかもいっぱい出てるじゃん。めちゃくちゃすごいと思うけど。」
「いや〜私は自分の夢っていうより…憧れの人を追いかけてきただけだから。」
「え?」
牧瀬の憧れの人?…誰だろう。玉城か?
「もともと演劇部に入ったのも、演劇部の3年の先輩に憧れて入ったんだよね。で、高校卒業後はその先輩を追いかけて大学に入って、同じ劇団のオーディションも受けて…。がむしゃらに追いかけて、気が付いたら今。モデルとかドラマの仕事も、光と一緒に居たくて挑戦したのがきっかけだし…私はいつも誰かを追いかけてばかりだよ。自分で道を切り開くなんて、できない。」
「……。」
「だから…光も、東条君たちも皆、めちゃくちゃかっこいいと思う。」
そんなふうに…謙虚だけど真っ直ぐな牧瀬も、十分かっこいいと思うけどな。
「ねえ、それより、東条君って光と何かあったの?」
「へっ!?」
危うく車線をはみ出しそうになって、慌ててハンドルを戻す。
「…な、なんで?」
「…すごい動揺してるけど大丈夫?」
大丈夫じゃないよ。いきなり変な事訊くなよ…!
「だってさあ、東条君と光って、1年の頃仲良かったじゃん。でも今日、全然話してないから…」
「…まあ、2年からクラス離れたし…自然と話す機会も減って、そのまま卒業しちゃったし」
「それは私もでしょ〜?…あ、もしかして高校の時何かあったの?」
「い…いや別に、何もないよ」
牧瀬、鋭すぎて怖い。
「ふーん?話変わるけどさ、東条君なんで今回のロケ来ようと思ったの?」
…俺からしたら、あんまり話変わってない。
「…野球してると、夏に海で遊ぶことなんて、ほとんど機会なくなるし…楽しそうだと思って。ハワイ、一度来てみたかったしね。」
「そーなんだ。あっ、ハワイといえばさあ…」
牧瀬と一緒に居ると会話が途切れることが無い。ドライブを楽しみながら、俺は、せっかく再会した玉城となかなか話せないでいることが、なんとなく胸につかえているのだった。