070
なんだかんだロケは楽しく、今日はあっという間に撮影最終日。南の島で過ごす1週間…こんなに夏をごく普通に楽しんだのは初めてかもしれない。
ホテルの前のプライベートビーチで、撮影の準備が整うのを待つ間、沢村たちは砂浜ではしゃいでいる。それを眺めながら、日陰に座っている光の傍へ歩いて行った。
光は俺に気付くとこちらを見上げ、微笑んだ。
「なんか…こんなふうに遊ぶのって久しぶりで…楽しかったですね」
そう穏やかに呟く光を見て、胸にじわりと喜びが染みた。
「そうだな…」
まるで高校時代に戻ったようだった。毎日あいつらと一緒に過ごして、はしゃいだ1週間。なんだかんだ、来てよかったな。
「すみませーーん。みなさん、集合お願いしまーーす!」
スタッフの準備が整ったようで、俺たちは砂浜に集められた。
カメラが回され、最後の収録が始まる。
「はい!えーではみなさん。本日最終日となりましたが…今回の旅はいかがでしたか?」
いえーい!とか、楽しかった!とか、各々声を上げて拍手でこたえる。
「楽しんでいただけたようで何よりです。それではこれから最後のビッグイベント。スペシャルシークレットゲストをお呼びしたいと思います!」
…ん?そういやそんなのあったな。
「シークレットゲストって…誰?」
倉持が俺を振り返る。
「知らねえよ、シークレットなんだから」
投げやりに答えると、短気な倉持は少し苛立ったように俺を睨む。
「皆さん拍手でお迎えください…こちらの方です!どうぞ!!」
黒のワンボックスカーのドアが開き、一人の金髪の男がおりてくる。そいつはこちらへ向かって歩いて来て、サングラスに手を外して…
「光ちゃーん!!ちょ〜〜〜久しぶりーー!!」
光に駆け寄った。
「め…鳴!?」
「成宮鳴!!」
「成宮…」
騒然とする俺たちを余所に、鳴はご機嫌で光の隣に並んだ。
「今回のスペシャルシークレットゲストはこの方!サウスポーの王子様こと、成宮鳴選手です!」
「いえーーい!」
「……。」
「……。」
「おい!お前らちゃんと拍手で歓迎しろよ!」
わめく鳴に苦笑していると、スタッフがカメラを寄せてきた。
「みなさん、成宮選手とは親しくされてるんですか?」
「されてません」
「ちょっと一也!俺と一也の仲でしょ!?」
「…とっても親しそうですね!それでは本題に移りたいと思います」
スタッフは笑いを取って、カンペを取り出した。
「えー、今回成宮選手は、とある方に伝えたいことがあるそうで…」
「はい!」
元気いっぱいに紙を取り出す鳴。…どうせ、光に告白とか言って、ナンパでもするんだろ。ったく…
鳴は紙を広げ、俺たちの前に進み出て振り向き、口を開く。
「御幸一也!」
「…え、俺?」
「俺は今日、一也にどうしても言いたいことがあって来た!」
「…な、なんだよ」
「まず!どうしてこのロケに俺を誘わなかったのか!」
「……。」
め…めんどくせ〜。
「それから!スマホを替えたらちゃんと新しい番号教えろ!」
「あれ…教えてなかったっけ?」
「ないよ!!もー、一也はいっつもそう!!」
「…なんか、めんどくさい彼女みたいだね」
「ふふ…」
牧瀬がこっそり光に耳打ちし、光は小さく笑う。
「それから!これが一番重要!」
「なんだよ…」
「なに光ちゃんとより戻してんだよっ!!俺、狙ってたのに!!」
な…なんだこいつ…
「……は、はぁ?」
「初めて光ちゃんと出会った時…もう一也と付き合ってたけど…正直、早く別れろって思ってた」
「おいなんか語りだしたんだけどこいつ」
「そのあと光ちゃんが芸能人になってしばらくして、恋人と別れたってニュースになってて…チャンスだと思って…」
「おい…」
「球団の人とか芸能人の知り合いの伝手を駆使して、光ちゃんの連絡先をゲットしたけど…待てど暮らせど返事は来ないし…」
「何してんだお前…」
「光ちゃん!どうして返事くれなかったの!」
「普通に脈なしだからだろ」
呟く俺を鳴は睨みつけるが、光はぽかんと鳴を見つめた。
「え…成宮さんから連絡なんて、来てませんけど」
「え??」
今度は鳴がぽかんと口をあける。そして自分のスマホを取り出すと、画面を光に見せた。
「これ光ちゃんの番号だよね?」
「おいこれテレビだぞ…放送すんのかよコレ」
画面を覗き込む光。
「…いや…違いますけど…」
「えっ!?マジ!?俺騙されたの!?」
ヒャハハと倉持が笑う。俺も笑いそう。
「くっそー騙した奴覚えてろよ!!」
「誰に教わったんだよ…」
「忘れたよそんなの!それより光ちゃん、本当の番号教えて…」
「だめ。」
腕を伸ばして光と鳴の間に立つ。鳴がむっとして俺を睨む。
「なんで!?」
「なんでって…なんで俺が自分の彼女へのナンパを見過ごすと思ってんだよ。」
「ナンパじゃないし!本気だし!」
「余計タチ悪いわ」
「…あっわかった一也不安なんでしょ!!俺に光ちゃんとられると思って!」
「はぁ?…なわけねーだろ」
「じゃあいいじゃん、ちょっと退いててよ。」
鳴は俺を押しのけ、光の前に立った。
「光ちゃん!…光ちゃんは、俺が今まで出会った女の子の中で、昔からずっと…いっちばんキレイで可愛いです!」
「……。」
光は少し顔を赤くして苦笑する。…光、直球に弱いんだよなぁ…。
「こんな人を弄んで楽しむ性悪キャッチャーなんかより、俺の方が絶対毎日楽しませるし…」
「堂々と俺をディスんなよ…」
「だから!お試しでもいいから、俺と付き合ってください!!」
鳴が手を差し出して頭を下げる。光は間をあけず、ぺこりと頭を下げた。
「ごめんなさい。」
「…ええええ!!」
項垂れる鳴、まぁそうだよなぁ、と呟いて苦笑する東条達ギャラリー。
「じゃあ連絡先だけでも教えて!
「鳴しつこい。」
「だから一也は引っ込んでてよ!」
「やだ。」
「成宮さん!成宮さん…」
揉める俺と鳴のもとに、別のスタッフが駆け寄ってきてこっそりと鳴に耳打ちする。
「ハァ!?飛行機の時間!?もう出発なの!?」
「そうです、早くお車に…」
「なんでこんな早い時間でとったのさ!!俺まだ海にも入ってねーんだけど!!」
「現地入りのお時間がありますので…」
「もーー!!タイミング最悪!!」
文句を言いながら引き摺られていく鳴。それをしっかりとおさめるカメラ。
「なんだったんだアイツ…」
思わず呟いて、面白がって小さく噴き出している倉持を睨んだ。
ホテルの前のプライベートビーチで、撮影の準備が整うのを待つ間、沢村たちは砂浜ではしゃいでいる。それを眺めながら、日陰に座っている光の傍へ歩いて行った。
光は俺に気付くとこちらを見上げ、微笑んだ。
「なんか…こんなふうに遊ぶのって久しぶりで…楽しかったですね」
そう穏やかに呟く光を見て、胸にじわりと喜びが染みた。
「そうだな…」
まるで高校時代に戻ったようだった。毎日あいつらと一緒に過ごして、はしゃいだ1週間。なんだかんだ、来てよかったな。
「すみませーーん。みなさん、集合お願いしまーーす!」
スタッフの準備が整ったようで、俺たちは砂浜に集められた。
カメラが回され、最後の収録が始まる。
「はい!えーではみなさん。本日最終日となりましたが…今回の旅はいかがでしたか?」
いえーい!とか、楽しかった!とか、各々声を上げて拍手でこたえる。
「楽しんでいただけたようで何よりです。それではこれから最後のビッグイベント。スペシャルシークレットゲストをお呼びしたいと思います!」
…ん?そういやそんなのあったな。
「シークレットゲストって…誰?」
倉持が俺を振り返る。
「知らねえよ、シークレットなんだから」
投げやりに答えると、短気な倉持は少し苛立ったように俺を睨む。
「皆さん拍手でお迎えください…こちらの方です!どうぞ!!」
黒のワンボックスカーのドアが開き、一人の金髪の男がおりてくる。そいつはこちらへ向かって歩いて来て、サングラスに手を外して…
「光ちゃーん!!ちょ〜〜〜久しぶりーー!!」
光に駆け寄った。
「め…鳴!?」
「成宮鳴!!」
「成宮…」
騒然とする俺たちを余所に、鳴はご機嫌で光の隣に並んだ。
「今回のスペシャルシークレットゲストはこの方!サウスポーの王子様こと、成宮鳴選手です!」
「いえーーい!」
「……。」
「……。」
「おい!お前らちゃんと拍手で歓迎しろよ!」
わめく鳴に苦笑していると、スタッフがカメラを寄せてきた。
「みなさん、成宮選手とは親しくされてるんですか?」
「されてません」
「ちょっと一也!俺と一也の仲でしょ!?」
「…とっても親しそうですね!それでは本題に移りたいと思います」
スタッフは笑いを取って、カンペを取り出した。
「えー、今回成宮選手は、とある方に伝えたいことがあるそうで…」
「はい!」
元気いっぱいに紙を取り出す鳴。…どうせ、光に告白とか言って、ナンパでもするんだろ。ったく…
鳴は紙を広げ、俺たちの前に進み出て振り向き、口を開く。
「御幸一也!」
「…え、俺?」
「俺は今日、一也にどうしても言いたいことがあって来た!」
「…な、なんだよ」
「まず!どうしてこのロケに俺を誘わなかったのか!」
「……。」
め…めんどくせ〜。
「それから!スマホを替えたらちゃんと新しい番号教えろ!」
「あれ…教えてなかったっけ?」
「ないよ!!もー、一也はいっつもそう!!」
「…なんか、めんどくさい彼女みたいだね」
「ふふ…」
牧瀬がこっそり光に耳打ちし、光は小さく笑う。
「それから!これが一番重要!」
「なんだよ…」
「なに光ちゃんとより戻してんだよっ!!俺、狙ってたのに!!」
な…なんだこいつ…
「……は、はぁ?」
「初めて光ちゃんと出会った時…もう一也と付き合ってたけど…正直、早く別れろって思ってた」
「おいなんか語りだしたんだけどこいつ」
「そのあと光ちゃんが芸能人になってしばらくして、恋人と別れたってニュースになってて…チャンスだと思って…」
「おい…」
「球団の人とか芸能人の知り合いの伝手を駆使して、光ちゃんの連絡先をゲットしたけど…待てど暮らせど返事は来ないし…」
「何してんだお前…」
「光ちゃん!どうして返事くれなかったの!」
「普通に脈なしだからだろ」
呟く俺を鳴は睨みつけるが、光はぽかんと鳴を見つめた。
「え…成宮さんから連絡なんて、来てませんけど」
「え??」
今度は鳴がぽかんと口をあける。そして自分のスマホを取り出すと、画面を光に見せた。
「これ光ちゃんの番号だよね?」
「おいこれテレビだぞ…放送すんのかよコレ」
画面を覗き込む光。
「…いや…違いますけど…」
「えっ!?マジ!?俺騙されたの!?」
ヒャハハと倉持が笑う。俺も笑いそう。
「くっそー騙した奴覚えてろよ!!」
「誰に教わったんだよ…」
「忘れたよそんなの!それより光ちゃん、本当の番号教えて…」
「だめ。」
腕を伸ばして光と鳴の間に立つ。鳴がむっとして俺を睨む。
「なんで!?」
「なんでって…なんで俺が自分の彼女へのナンパを見過ごすと思ってんだよ。」
「ナンパじゃないし!本気だし!」
「余計タチ悪いわ」
「…あっわかった一也不安なんでしょ!!俺に光ちゃんとられると思って!」
「はぁ?…なわけねーだろ」
「じゃあいいじゃん、ちょっと退いててよ。」
鳴は俺を押しのけ、光の前に立った。
「光ちゃん!…光ちゃんは、俺が今まで出会った女の子の中で、昔からずっと…いっちばんキレイで可愛いです!」
「……。」
光は少し顔を赤くして苦笑する。…光、直球に弱いんだよなぁ…。
「こんな人を弄んで楽しむ性悪キャッチャーなんかより、俺の方が絶対毎日楽しませるし…」
「堂々と俺をディスんなよ…」
「だから!お試しでもいいから、俺と付き合ってください!!」
鳴が手を差し出して頭を下げる。光は間をあけず、ぺこりと頭を下げた。
「ごめんなさい。」
「…ええええ!!」
項垂れる鳴、まぁそうだよなぁ、と呟いて苦笑する東条達ギャラリー。
「じゃあ連絡先だけでも教えて!
「鳴しつこい。」
「だから一也は引っ込んでてよ!」
「やだ。」
「成宮さん!成宮さん…」
揉める俺と鳴のもとに、別のスタッフが駆け寄ってきてこっそりと鳴に耳打ちする。
「ハァ!?飛行機の時間!?もう出発なの!?」
「そうです、早くお車に…」
「なんでこんな早い時間でとったのさ!!俺まだ海にも入ってねーんだけど!!」
「現地入りのお時間がありますので…」
「もーー!!タイミング最悪!!」
文句を言いながら引き摺られていく鳴。それをしっかりとおさめるカメラ。
「なんだったんだアイツ…」
思わず呟いて、面白がって小さく噴き出している倉持を睨んだ。