074
仕込みも何もなく二人きりで会えればこっちのもんよね。
ブラウスのボタンを少し開き、谷間をのぞかせる。昨日、胸には反応してたし、色気で押せば落とせそう。
今日は番組でもない、完全プライベートだし。あっちも期待してんじゃないの?
予定より少し遅れて昨日のバーの前に来た。…はぁ?御幸一也まだ来てないじゃん。女の子より遅く来るってどういうこと?
「森田さん。」
苛立つ手前、横から声がかかった。すぐに御幸一也の声だとわかって、私は笑顔で振り返る。
「あっ、こんにちは〜…」
そして目を瞬いた。御幸一也の隣に知らない男がいたからだ。
何…?この人。目つき悪いし、元ヤン?まあよく見ると顔は悪くはない…けど、私のタイプじゃないな。
「…お友達ですか?」
にこやかに御幸一也に尋ねると、御幸一也は目も合わせずスマホを差し出してきた。
「うん。で、これ、スマホです。」
「あっ、すみません。ありがとうございます〜。あーよかったぁ。」
わざと手に触れながらスマホを受け取る。御幸一也は逃げるように手を引っ込める。…硬い男。
「あの…もしよかったら、お礼にお茶でも…」
「いや、いいです。それじゃ。」
…はぁ!?ちょっと待ってよ…
「…あーっ!」
咄嗟に大声を上げると、御幸一也とその友人は驚いて振り返った。
「スマホにつけてたストラップがない!」
「…ストラップ?」
「ウサギのストラップです〜!どうしよう、すっごく大切な物なのに…」
「……。」
御幸一也は友人と顔を見合わせ、自分のバッグの中を確認し始める。
「俺はストラップなんて見てませんけど…」
半ばうんざりした声で言いながらバッグの中を探す御幸一也。当たり前じゃん。ストラップなんてつけてないもん。でもここで逃げられたら困るの。なんとかしてどこかのお店に一緒に…
「絶対に失くしたくない、大切なストラップなんです!なくなったなんて、そんな…」
「……。」
これでも演技力には自信がある。目を潤ませて御幸一也を見ると、彼は困ったようにため息を吐いた。
「…いいかげんにしろよ。」
その時静かに、彼の友人が口を開いた。
「ストラップなんて知らねーって言ってんだろーが。わりーけどこれ以上付き合ってらんねーよ。」
…なに、この男。…ムカつく。
「…あなたにとってはどうでもいいかもしれないけど、私にとっては元カレにもらった大切なものなの!!」
「元カレって、蒼井颯斗?」
「もっ……、……え?」
な…なんで、あんたがその名前を出すの!?
「お前、森田桃だろ?グラビアモデルの。」
「えっ…、私のこと、知ってるの…?」
「牧瀬司と知り合いなんだよ。お前のこと、色々聞いてるから。」
「……。」
なによ…その…私が悪者みたいな言い方…。牧瀬、何言ってんのよ…
「そのストラップも、もし見つかったら牧瀬を通じて届けるから。見つかるかわかんねーけど。」
「……。」
「行くぞ御幸。」
「お…おう」
な…なにそれ…。なにそれ、なにそれ、なにそれ!!!
ムカつく…この男…邪魔なのよ。
男が背を向けたとき、彼のボストンバッグのサイドポケットが目に入る。
「……。」
私はそっと、受け取ったばかりのスマホを、その隙間に滑り込ませた。
ブラウスのボタンを少し開き、谷間をのぞかせる。昨日、胸には反応してたし、色気で押せば落とせそう。
今日は番組でもない、完全プライベートだし。あっちも期待してんじゃないの?
予定より少し遅れて昨日のバーの前に来た。…はぁ?御幸一也まだ来てないじゃん。女の子より遅く来るってどういうこと?
「森田さん。」
苛立つ手前、横から声がかかった。すぐに御幸一也の声だとわかって、私は笑顔で振り返る。
「あっ、こんにちは〜…」
そして目を瞬いた。御幸一也の隣に知らない男がいたからだ。
何…?この人。目つき悪いし、元ヤン?まあよく見ると顔は悪くはない…けど、私のタイプじゃないな。
「…お友達ですか?」
にこやかに御幸一也に尋ねると、御幸一也は目も合わせずスマホを差し出してきた。
「うん。で、これ、スマホです。」
「あっ、すみません。ありがとうございます〜。あーよかったぁ。」
わざと手に触れながらスマホを受け取る。御幸一也は逃げるように手を引っ込める。…硬い男。
「あの…もしよかったら、お礼にお茶でも…」
「いや、いいです。それじゃ。」
…はぁ!?ちょっと待ってよ…
「…あーっ!」
咄嗟に大声を上げると、御幸一也とその友人は驚いて振り返った。
「スマホにつけてたストラップがない!」
「…ストラップ?」
「ウサギのストラップです〜!どうしよう、すっごく大切な物なのに…」
「……。」
御幸一也は友人と顔を見合わせ、自分のバッグの中を確認し始める。
「俺はストラップなんて見てませんけど…」
半ばうんざりした声で言いながらバッグの中を探す御幸一也。当たり前じゃん。ストラップなんてつけてないもん。でもここで逃げられたら困るの。なんとかしてどこかのお店に一緒に…
「絶対に失くしたくない、大切なストラップなんです!なくなったなんて、そんな…」
「……。」
これでも演技力には自信がある。目を潤ませて御幸一也を見ると、彼は困ったようにため息を吐いた。
「…いいかげんにしろよ。」
その時静かに、彼の友人が口を開いた。
「ストラップなんて知らねーって言ってんだろーが。わりーけどこれ以上付き合ってらんねーよ。」
…なに、この男。…ムカつく。
「…あなたにとってはどうでもいいかもしれないけど、私にとっては元カレにもらった大切なものなの!!」
「元カレって、蒼井颯斗?」
「もっ……、……え?」
な…なんで、あんたがその名前を出すの!?
「お前、森田桃だろ?グラビアモデルの。」
「えっ…、私のこと、知ってるの…?」
「牧瀬司と知り合いなんだよ。お前のこと、色々聞いてるから。」
「……。」
なによ…その…私が悪者みたいな言い方…。牧瀬、何言ってんのよ…
「そのストラップも、もし見つかったら牧瀬を通じて届けるから。見つかるかわかんねーけど。」
「……。」
「行くぞ御幸。」
「お…おう」
な…なにそれ…。なにそれ、なにそれ、なにそれ!!!
ムカつく…この男…邪魔なのよ。
男が背を向けたとき、彼のボストンバッグのサイドポケットが目に入る。
「……。」
私はそっと、受け取ったばかりのスマホを、その隙間に滑り込ませた。