008
「「あ」」
学校から一番近い、夜のコンビニ。俺と信二が先輩からの指令のメモを片手に並んで歩いてくると、コンビニから買い物袋を提げた玉城が出てきて、足を止めた。
「…あ、そっか。東条って寮に入ってるんだっけ…」
俺と信二のラフな格好を見て、玉城は納得したように呟いた。
「ああ、うん。玉城は?こんな時間まで一人で何してんの?」
「演劇部の練習で遅くなって…。あと、中に司もいる。」
玉城が視線をやった先には、確かにアイスを選んでいる牧瀬の姿があった。玉城は先に会計を済ませて出てきたらしい。ともかく、一人じゃないなら良かった。…という言葉はしまっておいて、袋からアイスソフトクリームを取り出して蓋を捨てにゴミ箱へ向かう玉城を眺める。
「…信二、どしたの?」
「…えっ!?いや別に…」
やけに静かだなと思って、信二を見ると、どうみても玉城に見惚れていて、つい気付かないふりをして邪魔をしてしまう。咄嗟の言葉だった。俺、性格悪いかな。
玉城はアイスを舐めながら、じっと歩道の方を見つめている。…何かあったかな?そう不思議に思って視線の先をたどろうとする前に、玉城が急に駆け寄ってきた。何だ、と聞くよりも先に、玉城が俺の腕に細い腕を絡ませる。
「ちょっとごめん。」
「えっ……!?な……、…え!?」
言葉が出ない俺、かっこ悪い。や、柔らかい。温かい。良いにおいがする…!でもどうして急に腕なんか組んで…。
そう思って混乱する頭を上げると、二人組の男が小声で落胆する声を呟き、踵を返して去って行った。あいつら…玉城に声かけようとしてたのか。つまり、俺、玉城の彼氏役として……。
「ごめんね、なんでもない。ありがと。」
玉城は淡白にそう言うと、あっさり腕を離して離れた。
バサッ、という音が響いた。
振り返ると、歩道に立ち尽くす御幸先輩。…と倉持先輩。
御幸先輩の足元には財布が落ちている。この人すごいわかりやすいな…意外…。
御幸先輩はすぐに我に返って、慌てて財布を拾う。それからへらりと笑顔を作って俺たちの元へやってきた。
「よ…よぉ、お前らも来てたのか…」
「は…はい…お疲れ様です…。」
「…ッス…」
俺と信二が頭を下げると、御幸先輩の視線は玉城に向く。玉城はアイスを舐めながらちらりと先輩らを見上げる。
「…こんばんは。」
それはとても素っ気ない声だった。いつものことだけど。
「御幸先輩、よく物を落としますね。」
「へ?」
「この間も渡り廊下で…」
「だァ――ッ!ちょっと待て!待った!その話はいいから!」
す、すげえ…あの御幸先輩が取り乱してる。
「え?ってか、何?お前らって付き合ってんの?」
落ち着こうとしたんだろう。御幸先輩は矛先を俺に向けてきた。いや、と首を振りかける俺に、玉城はあの笑顔を向ける。
「御幸先輩に関係あります?」
ちょ…またそんな誤解を生むような言い方を!嬉しいけど!嬉しいけど…複雑…!だってここには、倉持先輩もいるし…ってうわ、睨んでる、めっちゃ睨んでるよ倉持先輩…!!やばい、寮に帰るのがこええ…。
信二をちらりと見上げると…こっちはこっちで悔しそうな顔で睨んでるよ…俺、大丈夫かな…。
…いやいやいや!っていうか、御幸先輩もこんなわかりやすい挑発にはさすがに引っかからな……うわあああ固まってる!わかりやすく固まってるよこの人!
俺はこの中で唯一平静を保っている人物…玉城を見る。どうすんだよこれ…って、玉城めちゃくちゃ楽しそうな顔になってるし…なんだかんだ、御幸先輩に悪戯してるときが一番楽しそうなんだよな、玉城って…。
「あっ…」
小さな声が響いて、全員が振り返った。そこにいたのは、女バスの軍団。先頭を歩いていた先輩の一人が、ぽっと頬を赤らめてこちらを見ている。…ん?っていうかあの人、今日玉城とバスケの試合をしてた…真壁先輩?
真壁先輩の周りにいた先輩たちはサッと距離を取り、真壁先輩を一人にする。まるで御幸先輩と話してこいとでもいうかのように。察した倉持先輩が、立ち尽くしている御幸先輩の背長に軽い蹴りを入れた。え?と、御幸先輩が自分の顔を指さして引きつった笑みを浮かべる。うん、と、倉持先輩は無言でうなずく。
渋々と言った様子で御幸先輩が真壁先輩の元へ行く。俺はちらりと玉城を見る。そして後悔する。なんて顔してるんだ、玉城。そんな…怖い顔。
「御幸君…あの…」
「……なに?」
「ぐ…偶然だね!こんなところで…」
「あ、あぁ…」
ああ、先輩のこんな甘酸っぱいとこ、あんまり見たくない。でも…倉持先輩も信二もガン見だし、玉城はなんかオーラでてるし…俺だけ立ち去るわけにもいかないよなぁ。
「あ、あのさ…よかったら、…」
真壁先輩が顔を真っ赤にして切り出す。ま、まさか、告白…!?こんな公衆の面前で!
「…メールアドレス、教えてくれないかな!?」
「え?…あぁ…」
…なんだ、まぁそうだよな。御幸先輩は少し考えて、ポケットから携帯を取り出した。
「べつにいいけど。」
「え…本当に!?」
真壁先輩は嬉しそうに目を丸くして、急いで携帯を取り出した。アドレス交換をする二人を、玉城は…とてもショックを受けたように、ぼうっと立ち尽くして見ていた。
……そんな顔…、初めて見た。俺の胸まで痛くなる。だって、御幸先輩が他の女子とアドレス交換したくらいで、なんでそんなに、ショック受けるんだよ…。
昼間は、体育館で、自分であんなに煽っていたくせに。本当はやっぱり、御幸先輩のこと――。
御幸先輩は真壁先輩に別れを言って、俺たちの元へ戻ってきた。倉持先輩の無言のキックを喰らいながら、照れ臭そうに携帯を仕舞う。御幸先輩は玉城のことが好きなんだと思ってた。でも真壁先輩も結構美人だし、この人、まんざらでもないのかな。
「うわっ!なんかいっぱいいる!」
コンビニから出てきた牧瀬が声を上げた。玉城はすぐに牧瀬に駆け寄る。
「司、早く帰ろ。」
「え?大丈夫?何か話してたんじゃ…」
「いいの!」
玉城に腕を引っ張られて、困りながら、しかしどこか嬉しそうに歩き、俺たちを振り返る牧瀬。玉城はすっかり拗ねてるな…。
「気を付けて帰れよー。」
御幸先輩が声をかけると、玉城はわかりやすくフンとそっぽを向いた。
「おいなんだよ、態度わりぃなー。」
「……。」
「おい、無視かよ…」
御幸先輩の声に戸惑いが滲んだその時、玉城は立ち止る。
「でれでれ鼻の下伸ばして…みっともないですよ。」
「……はぁ?」
あ…御幸先輩、もしかして、わりとマジで…怒ってる…?
俺たちは、倉持先輩ですら息をのんで、口を噤んだ。その中で玉城は、キッと鋭い目を御幸先輩に向ける。
「いつもは簡単にアドレスなんて教えないくせに…。」
「お前が『アドレスくらい教えてやれ』って言ったんだろーが。」
「いつの話してるんですか。それに、それは真壁先輩のことじゃないし。」
「なんだよ、意味わかんねー。何怒ってんの?」
「別に怒ってません。」
火花が散った…ように見えた。空気がピリピリしている…。玉城と御幸先輩は睨み合っている。美人の凄み顔は迫力があるなぁ…。
「…ねぇ!東条君、何があったの?」
牧瀬がそっと俺らのほうにやってきて、こっそりと聞いた。少し離れた所で睨み合っている玉城と御幸先輩を見ながら、あぁ…、と俺は苦笑いし、顛末を話す。
「つまり…やきもち?」
「うん…そうじゃないかなぁ…。」
ははーん…、と牧瀬は納得したように頷き、腕を組んで傍観の姿勢に入った。完全に他人事だな…。
その時俺は、ふと歩道の方を見て、気が付いた。二人組の男が玉城を見ながらひそひそと話をしている。さっきとは違う奴らだ。まさかとは思うけど、またナンパ野郎か…?
そう嫌な予感が過ぎった時、そいつらは軽い足取りで玉城に向かってきた。片手を挙げ、軽い調子で声をかけてくる。
「ねぇ!ひとりでなにしてんの?」
「うわっ、めっちゃ美人!」
性格には数歩離れた所に御幸先輩と、少し遠巻きにだが俺たちもいるのだが…そいつらの目には玉城しか映っていないらしい。玉城は鬱陶しそうにそいつらを睨み上げる。
「触らないでください。」
「うわっ!きっつー!でもさ、こんなとこでこんな時間に一人じゃ危ないよ?」
「そうそう。俺らが送ってあげるよ。家どこ?」
「…っあんたら!」
牧瀬が怒りを滲ませて踏み出した瞬間。御幸先輩が素早く近づいて行って、玉城の腕を掴んだ。そして無言でナンパ野郎どもを睨む。
「あ…、彼氏いたんだ。」
「ご、ごめんね〜…、それじゃ…。」
そそくさとナンパ野郎どもが立ち去ると、腕を掴んだ御幸先輩と、腕を掴まれた玉城が残された。ふたりは見つめ合って…、いや、睨み合っている。
「離してください。」
「はぁ?俺、助けたんですけどー?お礼は?」
「アイス。」
「…は?」
玉城が見た先…足元に落ちたアイスクリームを見て、御幸先輩は言葉に詰まる。
「アイス、落ちたんですけど。お詫びは?」
「…かわいくねーな!」
御幸先輩が言い捨てて腕を離すと、玉城は更にムッとして御幸先輩を睨む。
このふたり…、どこからどうみてもお互い意識してんのに、面倒臭い人たちだな…。
「司!帰ろ!」
「えっ…、で、でも光…」
「早く!」
「うっ、うん…」
牧瀬は情けなく言いなりになって、玉城に引っ張られるようにして帰って行く。
「…倉持、行こうぜ」
「お…、おう」
御幸先輩も御幸先輩で、不機嫌な低い声で言うと、倉持先輩とコンビニに入って行った。あの倉持先輩でさえ抵抗せずに従ってしまうほどの不機嫌オーラ。俺はつい、信二と顔を見合わせた。
あの二人…、どうするんだよ……。
学校から一番近い、夜のコンビニ。俺と信二が先輩からの指令のメモを片手に並んで歩いてくると、コンビニから買い物袋を提げた玉城が出てきて、足を止めた。
「…あ、そっか。東条って寮に入ってるんだっけ…」
俺と信二のラフな格好を見て、玉城は納得したように呟いた。
「ああ、うん。玉城は?こんな時間まで一人で何してんの?」
「演劇部の練習で遅くなって…。あと、中に司もいる。」
玉城が視線をやった先には、確かにアイスを選んでいる牧瀬の姿があった。玉城は先に会計を済ませて出てきたらしい。ともかく、一人じゃないなら良かった。…という言葉はしまっておいて、袋からアイスソフトクリームを取り出して蓋を捨てにゴミ箱へ向かう玉城を眺める。
「…信二、どしたの?」
「…えっ!?いや別に…」
やけに静かだなと思って、信二を見ると、どうみても玉城に見惚れていて、つい気付かないふりをして邪魔をしてしまう。咄嗟の言葉だった。俺、性格悪いかな。
玉城はアイスを舐めながら、じっと歩道の方を見つめている。…何かあったかな?そう不思議に思って視線の先をたどろうとする前に、玉城が急に駆け寄ってきた。何だ、と聞くよりも先に、玉城が俺の腕に細い腕を絡ませる。
「ちょっとごめん。」
「えっ……!?な……、…え!?」
言葉が出ない俺、かっこ悪い。や、柔らかい。温かい。良いにおいがする…!でもどうして急に腕なんか組んで…。
そう思って混乱する頭を上げると、二人組の男が小声で落胆する声を呟き、踵を返して去って行った。あいつら…玉城に声かけようとしてたのか。つまり、俺、玉城の彼氏役として……。
「ごめんね、なんでもない。ありがと。」
玉城は淡白にそう言うと、あっさり腕を離して離れた。
バサッ、という音が響いた。
振り返ると、歩道に立ち尽くす御幸先輩。…と倉持先輩。
御幸先輩の足元には財布が落ちている。この人すごいわかりやすいな…意外…。
御幸先輩はすぐに我に返って、慌てて財布を拾う。それからへらりと笑顔を作って俺たちの元へやってきた。
「よ…よぉ、お前らも来てたのか…」
「は…はい…お疲れ様です…。」
「…ッス…」
俺と信二が頭を下げると、御幸先輩の視線は玉城に向く。玉城はアイスを舐めながらちらりと先輩らを見上げる。
「…こんばんは。」
それはとても素っ気ない声だった。いつものことだけど。
「御幸先輩、よく物を落としますね。」
「へ?」
「この間も渡り廊下で…」
「だァ――ッ!ちょっと待て!待った!その話はいいから!」
す、すげえ…あの御幸先輩が取り乱してる。
「え?ってか、何?お前らって付き合ってんの?」
落ち着こうとしたんだろう。御幸先輩は矛先を俺に向けてきた。いや、と首を振りかける俺に、玉城はあの笑顔を向ける。
「御幸先輩に関係あります?」
ちょ…またそんな誤解を生むような言い方を!嬉しいけど!嬉しいけど…複雑…!だってここには、倉持先輩もいるし…ってうわ、睨んでる、めっちゃ睨んでるよ倉持先輩…!!やばい、寮に帰るのがこええ…。
信二をちらりと見上げると…こっちはこっちで悔しそうな顔で睨んでるよ…俺、大丈夫かな…。
…いやいやいや!っていうか、御幸先輩もこんなわかりやすい挑発にはさすがに引っかからな……うわあああ固まってる!わかりやすく固まってるよこの人!
俺はこの中で唯一平静を保っている人物…玉城を見る。どうすんだよこれ…って、玉城めちゃくちゃ楽しそうな顔になってるし…なんだかんだ、御幸先輩に悪戯してるときが一番楽しそうなんだよな、玉城って…。
「あっ…」
小さな声が響いて、全員が振り返った。そこにいたのは、女バスの軍団。先頭を歩いていた先輩の一人が、ぽっと頬を赤らめてこちらを見ている。…ん?っていうかあの人、今日玉城とバスケの試合をしてた…真壁先輩?
真壁先輩の周りにいた先輩たちはサッと距離を取り、真壁先輩を一人にする。まるで御幸先輩と話してこいとでもいうかのように。察した倉持先輩が、立ち尽くしている御幸先輩の背長に軽い蹴りを入れた。え?と、御幸先輩が自分の顔を指さして引きつった笑みを浮かべる。うん、と、倉持先輩は無言でうなずく。
渋々と言った様子で御幸先輩が真壁先輩の元へ行く。俺はちらりと玉城を見る。そして後悔する。なんて顔してるんだ、玉城。そんな…怖い顔。
「御幸君…あの…」
「……なに?」
「ぐ…偶然だね!こんなところで…」
「あ、あぁ…」
ああ、先輩のこんな甘酸っぱいとこ、あんまり見たくない。でも…倉持先輩も信二もガン見だし、玉城はなんかオーラでてるし…俺だけ立ち去るわけにもいかないよなぁ。
「あ、あのさ…よかったら、…」
真壁先輩が顔を真っ赤にして切り出す。ま、まさか、告白…!?こんな公衆の面前で!
「…メールアドレス、教えてくれないかな!?」
「え?…あぁ…」
…なんだ、まぁそうだよな。御幸先輩は少し考えて、ポケットから携帯を取り出した。
「べつにいいけど。」
「え…本当に!?」
真壁先輩は嬉しそうに目を丸くして、急いで携帯を取り出した。アドレス交換をする二人を、玉城は…とてもショックを受けたように、ぼうっと立ち尽くして見ていた。
……そんな顔…、初めて見た。俺の胸まで痛くなる。だって、御幸先輩が他の女子とアドレス交換したくらいで、なんでそんなに、ショック受けるんだよ…。
昼間は、体育館で、自分であんなに煽っていたくせに。本当はやっぱり、御幸先輩のこと――。
御幸先輩は真壁先輩に別れを言って、俺たちの元へ戻ってきた。倉持先輩の無言のキックを喰らいながら、照れ臭そうに携帯を仕舞う。御幸先輩は玉城のことが好きなんだと思ってた。でも真壁先輩も結構美人だし、この人、まんざらでもないのかな。
「うわっ!なんかいっぱいいる!」
コンビニから出てきた牧瀬が声を上げた。玉城はすぐに牧瀬に駆け寄る。
「司、早く帰ろ。」
「え?大丈夫?何か話してたんじゃ…」
「いいの!」
玉城に腕を引っ張られて、困りながら、しかしどこか嬉しそうに歩き、俺たちを振り返る牧瀬。玉城はすっかり拗ねてるな…。
「気を付けて帰れよー。」
御幸先輩が声をかけると、玉城はわかりやすくフンとそっぽを向いた。
「おいなんだよ、態度わりぃなー。」
「……。」
「おい、無視かよ…」
御幸先輩の声に戸惑いが滲んだその時、玉城は立ち止る。
「でれでれ鼻の下伸ばして…みっともないですよ。」
「……はぁ?」
あ…御幸先輩、もしかして、わりとマジで…怒ってる…?
俺たちは、倉持先輩ですら息をのんで、口を噤んだ。その中で玉城は、キッと鋭い目を御幸先輩に向ける。
「いつもは簡単にアドレスなんて教えないくせに…。」
「お前が『アドレスくらい教えてやれ』って言ったんだろーが。」
「いつの話してるんですか。それに、それは真壁先輩のことじゃないし。」
「なんだよ、意味わかんねー。何怒ってんの?」
「別に怒ってません。」
火花が散った…ように見えた。空気がピリピリしている…。玉城と御幸先輩は睨み合っている。美人の凄み顔は迫力があるなぁ…。
「…ねぇ!東条君、何があったの?」
牧瀬がそっと俺らのほうにやってきて、こっそりと聞いた。少し離れた所で睨み合っている玉城と御幸先輩を見ながら、あぁ…、と俺は苦笑いし、顛末を話す。
「つまり…やきもち?」
「うん…そうじゃないかなぁ…。」
ははーん…、と牧瀬は納得したように頷き、腕を組んで傍観の姿勢に入った。完全に他人事だな…。
その時俺は、ふと歩道の方を見て、気が付いた。二人組の男が玉城を見ながらひそひそと話をしている。さっきとは違う奴らだ。まさかとは思うけど、またナンパ野郎か…?
そう嫌な予感が過ぎった時、そいつらは軽い足取りで玉城に向かってきた。片手を挙げ、軽い調子で声をかけてくる。
「ねぇ!ひとりでなにしてんの?」
「うわっ、めっちゃ美人!」
性格には数歩離れた所に御幸先輩と、少し遠巻きにだが俺たちもいるのだが…そいつらの目には玉城しか映っていないらしい。玉城は鬱陶しそうにそいつらを睨み上げる。
「触らないでください。」
「うわっ!きっつー!でもさ、こんなとこでこんな時間に一人じゃ危ないよ?」
「そうそう。俺らが送ってあげるよ。家どこ?」
「…っあんたら!」
牧瀬が怒りを滲ませて踏み出した瞬間。御幸先輩が素早く近づいて行って、玉城の腕を掴んだ。そして無言でナンパ野郎どもを睨む。
「あ…、彼氏いたんだ。」
「ご、ごめんね〜…、それじゃ…。」
そそくさとナンパ野郎どもが立ち去ると、腕を掴んだ御幸先輩と、腕を掴まれた玉城が残された。ふたりは見つめ合って…、いや、睨み合っている。
「離してください。」
「はぁ?俺、助けたんですけどー?お礼は?」
「アイス。」
「…は?」
玉城が見た先…足元に落ちたアイスクリームを見て、御幸先輩は言葉に詰まる。
「アイス、落ちたんですけど。お詫びは?」
「…かわいくねーな!」
御幸先輩が言い捨てて腕を離すと、玉城は更にムッとして御幸先輩を睨む。
このふたり…、どこからどうみてもお互い意識してんのに、面倒臭い人たちだな…。
「司!帰ろ!」
「えっ…、で、でも光…」
「早く!」
「うっ、うん…」
牧瀬は情けなく言いなりになって、玉城に引っ張られるようにして帰って行く。
「…倉持、行こうぜ」
「お…、おう」
御幸先輩も御幸先輩で、不機嫌な低い声で言うと、倉持先輩とコンビニに入って行った。あの倉持先輩でさえ抵抗せずに従ってしまうほどの不機嫌オーラ。俺はつい、信二と顔を見合わせた。
あの二人…、どうするんだよ……。