まだ信じられない。暗い部屋の中――コートを脱いで俺を振り返る玉城さん。
どうやってここまで帰って来たのか――これは夢なのか、現実なのか。

俺は彼女に歩み寄り、手を引いてベッドまで連れて行って…そこに組み敷いた。

「…本当にいいのか?」

俺の問いに、強い眼で頷く彼女。俺は唇を舐め、つばを飲み込み…彼女の服を捲り上げる。彼女は抵抗もせず腕を上げて、服はあっけなく脱ぎ捨てられた。淡い青の下着があらわれる。写真集でしか見たことのない…いや、それよりももっと胸の奥を抉る光景。

「…どうしたんですか?」

玉城さんの手が俺の頬を撫でる。

「やっぱり…嫌になりました?」

そう自嘲的に笑う彼女に、俺はキスをした。唇を吸い、舐め、彼女の吐息を飲み込む。泣きそうになった――いや、泣いていた。唇を離した俺の、濡れた目じりを見て、玉城さんは慈愛に満ちた目で微笑って、頬に添えた手の親指で俺の涙を拭った。

「なんで泣くんですか…」
「わかんねえけど…」
「……。」
「……嬉しくて」

はあ、と息を吐くと、それは思いのほか深かった。

「やっと……届いた」

胸に触れるのを戸惑った手で、彼女の頬を撫でる。柔らかくて、あたたかい。ずっとこんなふうに触れたかった。彼女ははにかんで俺を見ている。
俺も服を脱いで、また彼女に覆いかぶさる。戸惑い固まる俺の手を、玉城さんは絡めとって、自身の胸へ導いた。おそるおそる、そこに触れる。それは想像していたよりもずっと柔らかくて、優しくて、滑らかで…。俺はまた唾をのむ。
森田の嫌な記憶など、もう消し飛んでしまうほどに、玉城さんの体は綺麗で…魅惑的だった。

「…待って、」

不意に玉城さんが身を起こして、俺は不安に駆られた。やっぱり嫌だって、言うんじゃないかって…御幸のもとに帰ってしまうんじゃないかって…。だけど玉城さんは起き上がると、自分の背中に手を回した。

「下着…外します」
「あ…、あぁ…。」

俺が戸惑っている間に、ブラジャーが玉城さんの白い膝の上に落ちる。…現れた白い大きな胸に、俺は釘付けになる。すげぇ…綺麗だ。

「…倉持さん。」

少し微笑んで、俺の手を取る玉城さん。

「…触って。」

ごくり、とまた俺の喉が鳴る。少しずつ彼女を押し倒して、胸に触れる。柔らかな感触を堪能して、思わず息が荒げる。玉城さんは恥ずかしそうに、じっと俺の好きなようにさせてくれている――が、あまり感じてはいないようだ。
おかしいな…確かAVではこんな風に胸を揉んで…あ、もしかしてココの方がイイとか…?
俺は指で胸の蕾を転がしてみる。するとそれまで黙っていた玉城さんの口から、一瞬甘い吐息がこぼれた。…ここ、感じるのか。続けて弾いてみる。玉城さんは眉を寄せ、悩まし気に目を瞑る。

「…はっ…、…ぁ…」

小さく声が漏れた。…感じてくれてる。俺で…ちゃんと。
俺は蕾に舌を這わせ、咥える。口の中で転がすと、彼女の体はピクンと跳ねた。

「あっ……んん…」

ここ…玉城さん、弱いのかな。御幸にもこんなふうに…されてるんだろうか。
いや、今はそんなこと考えるな。せっかく彼女が俺に、体を許してくれたんだ。
ふと、玉城さんがもじもじと足を閉じ、腰をくねらせたことに気付く。その煽情的な動きに、俺は思わずそこに手を伸ばした。下着の上から足の間に指を沿わせると、玉城さんは少しだけ足を開いた。柔らかな感触に驚きながら、溝を這うように指をなでおろす。すると…湿った布の感触を指の腹に感じた。…濡れてる。
彼女の下着に手をかける。一瞬だけ…玉城さんは躊躇するように足を閉じた。ここまできて、やっぱり嫌なんて…聞きたくない。手で足を撫でると、従うように開いた。下着を脱がす。銀色の糸が伸び、消えるように切れた。そこに手を這わせると、思った以上に蜜が溢れていた。玉城さんはうるんだ目で俺を見て、目を閉じた。
…御幸を想像してるのか?そう考えて、胸が痛くなった。どうしたら…彼女の中の御幸を消せる?どうしたら彼女の一番になれる?どうして…俺じゃダメなんだ?
こんなに好きなのに…

蜜にまみれる花弁をなぞり、入口を探す。…どこだ?ぬるぬるして、手探りだし…よくわからねぇ…どうなってんだ…?

「…ふふ」

玉城さんが小さく笑った。

「…笑うなよ。しょうがないだろ、俺…」

初めてで、と口にするのは恥ずかしくて、言葉は途切れる。

「ごめんなさい。違うんです、ただ、昔…」

玉城さんは笑いながらそう言いかけて、バツが悪そうに口を閉ざした。
昔…初めてしたときのことでも思い出したのか?御幸と…したときのことを。
…どうして。何をしても俺は…御幸を塗りつぶせないのか?

指を曲げて溝をなぞると、ぬるりと深く入る場所があった。玉城さんは唇を噛んだ。そんな…後悔するような顔、するなよ。確かに…悪いことかもしれないけど…俺はずっと望んでたことなんだ。やっとそれが、叶ったんだ。
彼女の中に指を挿入する。柔らかな熱が、しっかりと、俺の指を締め付け、絡みつく。
御幸しか、許さなかった…御幸以外受け入れたことのない、花弁の中。彼女はどんな気持ちで…俺に体を許したんだろう。
まだ…何も聞いていない。御幸と別れるとも…俺を選ぶとも。

「倉持さん…」

俺の手に、彼女はそっと手を重ねる。

「もう…大丈夫です」
「え…」
「…その……挿れても」

一瞬息が止まった。俺は慌てて息をのんだ。
それからベッド脇のタンスを開け、ゴムを引っ張り出した。慣れない手つきで装着し、彼女のソコへあてがう。
いいよ、というように、彼女は頷いた。それに促されるようにして、俺はゆっくりと腰を沈める。

「ん……」

彼女が吐息を零す。俺は…その表情をじっと眺めていた。俺のモノを咥えこみ、悩ましげに額に汗を浮かべる玉城さんを…。御幸の前でも…そんな顔をしてたのか?御幸しか知らなかった顔なのか?こうなったことを喜ぶべきなのに、嬉しいはずなのに…目の前の玉城さんはどうしようもなく綺麗なのに。
悔しさが、消えない。

奥まで入ったそれを、俺はゆっくりと出し入れする。そのたびに彼女の胸が揺れて、俺は唾を飲む。そっと口を近づけて、胸の蕾を舐めると…彼女は甘く声を漏らす。
だけど…彼女の中は辛いほどに快楽が襲い、俺は息を乱して堪える。こんなすぐ終わったら…ダサすぎるだろ。

「…倉持さん。」

玉城さんが俺の頬を撫でた。

「…我慢、しないで。」

指が耳を撫で、俺の髪に絡みつく。

「んっ…、いつでも…、イッていい、から…」
「……っ」
「…あっ…」

その小さな喘ぎ声を最後に、俺は身を震わせて達した。玉城さんは目を閉じたまま胸で激しく息をして、汗ばんだ肌に手を添える。彼女の中から果てたそれを引き抜く。名残惜し気に糸を引いて光るそれを、俺はどこかむなしく見つめる。
俺…本当に玉城さんを、抱いたんだ…。

まだ息の荒い玉城さんがゆっくりと起き上がった。濡れた赤い唇を見て、俺は誘われるように手を伸ばし、キスをしようと唇を近づけた。…静かに、ゆっくりと、唇が触れる。このキスが受け入れられた瞬間、俺は…彼女を手に入れた、と思った。俺と御幸との間で揺れていた彼女の心が、ついに俺に傾いたと。だから…キスをしながら彼女の手に触れて、指を絡めた。手を繋ぐように。しかし彼女はその手を引いて――唇を離した。

「……。」

暫くの沈黙。どうして…ここまできても、まだ彼女が遠い。

「…はっきり言う。」

俺は彼女の伏せられた瞳を見つめて言った。もう、このあいまいな関係をはっきりさせたかった。

「御幸と別れて、俺と付き合ってくれ。」

彼女がどんな顔をしたのか…こんなの近くで見ているのに、わからなかった。

「私…」

玉城さんは小さな、だけどしっかりとした口調で言った。

「一也さんと別れます。」

息を飲んだ。本当に――言ってるのか?本当に?
じゃあ、つまり俺と――
浮かれそうになった瞬間、彼女は俺をじっと見上げた。

「でも…倉持さんとお付き合いは…しません」

…耳を疑った。

「…なんでだよ」
「私…しばらく一人になりたいんです。」
「……。」
「誰が好きとか…付き合うとか…セックスとか……どうでもいい」
「……。」

なんだよ…それ。こっちはこんなに…必死なのに、

「私…一也さんがいないと…ダメなんです。なにもできない。一也さんは唯一…私の弱いところも全部、愛してくれた人だから」
「……。」
「だから…倉持さん、あなたに愛してもらえて私、本当に…救われた気持ちでした」
「……。」
「だから私…今度は、自分で自分を認められるようになりたい。一也さんや倉持さんがいなくても…大丈夫だって…自分に自信が持てるように」
「……。」

なんで…なんでだよ。
どうして俺から離れていくんだよ。
ずっとそばにいるから…いなくても大丈夫なんて…言うなよ。

「…ごめんなさい。倉持さん……」

せっかく…やっと…こんなに近くに来たのに。
彼女はまたどこかへ、飛び立ってしまう。
風に乗って舞う蝶のように。

 


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