023
「したぁ!!」
テスト期間が終わり、練習も再開…だけど、御幸はまだ練習に合流できない。
その間の主将代理を務めることになったわけだけど――…
正直…しんどい…。
決勝の後の御幸の姿に、こいつどうしちまったんだ、と思ったけど…主将ってこんなにしんどいのかよ。チームを…部内をまとめるのが、こんなに…。
クソッ、あんなやつ…見直したりなんてしねーけどな!!
舌打ちをして、手持ち無沙汰に携帯を開いた。11時か…もう少ししたら沢村を呼び戻しに行くか。
ネットのニュースにはまだ秋大の話題が上っている。東京都私立青道高校優勝――。主に御幸と降谷の話題だけど。
その少し下の芸能ニュース欄には玉城さんの名前があった。何かと注目を浴びている彼女。今や出演しているCMは3本。専属モデルだからほかの雑誌には載らないけど、ネットでは大人気だ。ちょっと名前を検索するだけで、彼女の話題がずらりとヒットする。
つーか、検索欄に玉城光、と入力しただけで検索候補が…
玉城光 可愛い
玉城光 グランプリ
玉城光 高校
玉城光 高校 どこ
玉城光 彼氏
玉城光 胸
……人間って欲深い。
玉城光、というワードだけで検索ボタンを押した。ずらりとヒットする検索結果。ほとんどがネットニュースの記事か匿名掲示板のまとめサイトの記事だ。
玉城光さん 平成クレシェンドCMに起用
【画像】美しすぎる玉城光の画像集
【奇跡の】玉城光とかいう人類史上最高の美少女wwww【美少女】
現役高校生モデルの玉城光さんが可愛いと話題!彼氏は?高校は?胸は何カップ?
モデル・玉城光、PiO新曲MVで“天使の微笑み”披露
こんな子と同じ学校に通ってることがにわかには信じられない。…御幸のヤローは2回フラれたっつってたっけ。よくやるよ…まだ諦めてないっぽいし。つーか俺なんて目も合わせてもらえないんだけど…
…ムカついてきた…。なんで御幸ばっかり。
つか東条と付き合ってるんじゃねーのか?最近話に出てこねえな。秋大は見に来てたけど…最後は東条というより、御幸を見に…
……。
…いやでもフラれてるんだよあいつは。うん。
…ん?
ネットの記事のタイトルに目が留まった。
【画像】玉城光の水着wwwwwwww
……。え?水着の写真…なんて出してんの?マジ?誰も騒いでねーよな…あの子が脱いだらもっと騒ぎになってる気が…。…まぁ俺は見たことあるけど?
妙な優越感を覚えながら記事を開き、スクロールしていく。注目記事と広告の後に、記事本文が現れた。
1:名無しニモ負ケズ
なかった
2:名無しニモ負ケズ
無能
3:名無しニモ負ケズ
無能
……くだらね〜〜。いや…こんな記事開いた俺が一番下らねぇ…。何期待してんだ…ダセェ…。負けた気分…。
携帯を閉じ、ため息をひとつ。なんか…モヤモヤする…。
***
御幸のヤロー…最近昼休みになると姿眩ませやがって!!
おかげでこんなに探し回る羽目に…!見つけたらぶっ殺す!
職員室…図書室…自習室……どこにもいない。誰に聞いても首をかしげる。あいつ、寮でもよくフラッといなくなるけど…一体どこに隠れてやがる?アイツ本当はマジで狸か何かなんじゃ…
「…あ、ノリ!白州!」
廊下に見慣れた二人の姿を見つけて呼び止めると、二人は足を止めた。
「あぁ倉持…」
「御幸見てねーか?」
「御幸?」
ふたりは顔を見合わせて思い出したように言った。
「さっき中庭の方で見た…よな?」
「ああ…でももう10分くらい前だし、今いるかわかんないけど」
「裏門の方に向かってたから、もしかしたら寮かも。」
「そうか、さんきゅ!」
初めて有力な情報を貰って、俺は渡り廊下に飛び出した。寮ね…忘れもんでもしたのか?さっさととっつかまえてやる。
中庭を抜けて校舎裏に出て、寮の方に行きかけて、ふと足を止める。そうだ、電話すればいいじゃん。寮まで行って居なかったら無駄足だし…最初からこうすればよかった。
携帯を取り出し、御幸に電話をかけた。するとその直後、すぐ近くでヴーーーッヴーーーッ、とバイブレーションの音がして…切れた。
あっちは…非常階段。あいつあんなとこでサボってやがったのか!電話も切りやがって…あのヤロォ…
「おい御幸!!ここにいることはわかってんだよ!!」
非常階段の正面に回って、そこにいた人物を怒鳴りつけて――ぎょっとした。
そこに座っていたのは、参考書を開いている玉城さん。薄いブルーの瞳できょとんと俺を見上げている…。
「…え…、あ……、わ、わりぃ…」
「……。」
玉城さんは何事もなかったかのように参考書に目を戻した。…スルーかよ!!
…けど…着信音は確かにこっちで…。
「…なぁ、御幸知らない?」
「……。」
玉城さんは、ちらり、と俺を見上げた。くっ…超不愛想だけど…やっぱ超可愛い…。
動揺する俺からまた目を逸らし、玉城さんは上の方を見上げた。
「御幸先輩。」
…え?
「ちょ…バラすなよ。」
そこからひょこっと顔を出したのは、苦笑いを浮かべる御幸だった。
…は!?なんで一緒に居んの?
「何?倉持」
御幸は怠そうに頭を掻いて階段を下りてきた。玉城さんは我関せずという顔でまた参考書に目を戻している。
「何じゃねーよ!監督が呼んでんだよ。」
「え〜…、…わかったよ」
御幸は昼寝を邪魔された猫のようにうんざりした顔で言うと、玉城さんを振り返った。
「じゃね。」
「うん」
素っ気ないわりに親密的な挨拶を交わし、歩き出す御幸…。
ど……どうなってやがる……。
こいつ、フラれてるんだよな?しかも2回も…。
「ふあ……。…ねみぃ〜…」
…意味わかんねぇ!!
***
「は!?マジ?」
「御幸と玉城さんが!?」
夜の食堂。声を上げた麻生たちに、ああ、と頷いた。
「多分いつもフラッといなくなった時は一緒にいると思う…」
「付き合ってんのか?」
「いや、御幸はフラれたって言ってたけど」
「……。」
「…許せんな」
「だろ?」
「練習離脱中に彼女作るとかそれでも主将かよ!そんなリーダーについてってたまるか!!」
「裏切者や!!謀反起こすでホンマ」
「御幸の奴…ネットでイケメンとか騒がれてるからっていい気になりがって!!」
「こいつネット見過ぎな!エゴサしてるんだよな!な!」
「うるせえ!」
「ただいま〜…何してんの?」
2年で集まって…、と不思議そうな顔でやってきて、グラスに麦茶を汲む御幸。クリス先輩の所に行ってきた帰りらしい。練習離脱して主将の座を俺に任せてから、すっかり覇気もなくなってのほほんと過ごしている御幸。ほわほわと緩み切った顔を見ていると腹が立ってくる。
「御幸…お前」
「?」
グラスを傾けて麦茶を飲み干し、2杯目を注ぐ御幸。
「玉城さんと付き合ってんのか?」
「……。」
御幸は無言で2杯目の麦茶を飲み干すと、コツン、とグラスを食器返却口に置いて、にやりと笑った。
「なんだそれ?はっはっはっは!お前ら大真面目にそんなこと話してたのかよ。」
「いいから答えろ!今日一緒にいただろ!」
「何ムキになってんの?」
「るせえ!」
こいつはぐらかすつもりか?ますます怪しい…
「付き合ってねーよ!」
「…え?」
かと思えば、御幸はあっさりとそう言った。
「でも今日…」
「俺が一方的に狙ってるだけ!フラれ続けてるよ。」
「……。」
「……。」
こいつ…なんでこんな清々しく暴露してんだ…。
「まーそういうわけだから、安心しろよ童貞諸君!」
「あぁ!!?」
「テメーもだろうが!!」
「死ね!!」
「はっはっはっは!」
ハラいて〜、と笑いながら食堂を出て行く御幸。
その背中を見て、俺はやっぱり、どこかまだモヤモヤと遺恨が残るのだった。
***
「お!玉城ちゃ〜ん」
「……。」
廊下で玉城さんを見かけると、声をかけるのは相変わらず…。ひらひらと手を振る御幸に、玉城さんはちょっと振り向いただけで行ってしまうけど…その表情が前よりも柔らかく感じるのは気のせいだろうか。
「はっはっは!相変わらずつれねぇ〜」
全く堪えてない様子で御幸は笑い飛ばす。
何も変わってないように見えるけど…やっぱり、なにかひっかかる…。
「お前…フラれてんのによくまだそんなふうに絡めるよな…」
「可愛いからつい!」
「…そのうち通報されるぞ、ストーカー」
「はっはっはっ面白ぇ!」
「どこがだよ!」
やっぱこの余裕の表情…実はコッソリ付き合ってる…とか?いや、まさかな…。
だけど…。
「あそこにいんの玉城さんじゃん!」
「マジ!?」
「玉城さ〜ん!」
「可愛い〜!」
ひやかす生徒たちの前を足早で去っていく玉城さん。ああやって声掛けられても、普段は振り向きもしねえんだよな…。御幸が呼ぶと、ちょっと振り向くのに…。
つーか御幸、いつのまに告白なんて…。ちょっと前までは俺と似たような感じで…いや、俺よりも嫌われてる感じだったのに…。
***
『いつか 正夢 君と会えたら
打ち明けてみたい 裏側まで』
響いてきた優しく透き通る歌声に、食堂の喧騒が止む。
『愛は必ず 最後に勝つだろう
そうゆうことにして 生きてゆける』
髪を風になぶられ、甲子園球場を思わせるぼやけた背景を背に、夕暮れの中瞳を輝かせて歌う、玉城さんの横顔。
『あの キラキラの方へ登っていく』
歌いきると微笑んで、スポーツドリンクに赤い唇をつけ、白い喉に流し込む。
『夢から醒めろ。掴むために。プライムライムウォーター。』
メーカー名が映った後、CMが切り替わると、食堂はにわかにまた騒がしくなる。隣の御幸を見ると、たった今箸を動かし始めた。何事もなかったような顔をして。
「玉城さん歌上手くね?」
「ネットで、特技は歌って書かれてたよな。」
「今の歌何?」
「スピッツの『正夢』だろ。」
また玉城さんの話題。ほとんど毎日のことだ。それだけあの子は、存在感がある。
それにしても……。
「……。」
一人黙り込んだまま黙々と白米を食べる御幸を睨んだ。こいつ、学校で本人を見かけると鬱陶しいくらい絡んでいくくせに…こうして周りが玉城さんの話題で盛り上がってるときは、まるで空気のように沈黙する。
やっぱ何か…隠してんだろ…。
テスト期間が終わり、練習も再開…だけど、御幸はまだ練習に合流できない。
その間の主将代理を務めることになったわけだけど――…
正直…しんどい…。
決勝の後の御幸の姿に、こいつどうしちまったんだ、と思ったけど…主将ってこんなにしんどいのかよ。チームを…部内をまとめるのが、こんなに…。
クソッ、あんなやつ…見直したりなんてしねーけどな!!
舌打ちをして、手持ち無沙汰に携帯を開いた。11時か…もう少ししたら沢村を呼び戻しに行くか。
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その少し下の芸能ニュース欄には玉城さんの名前があった。何かと注目を浴びている彼女。今や出演しているCMは3本。専属モデルだからほかの雑誌には載らないけど、ネットでは大人気だ。ちょっと名前を検索するだけで、彼女の話題がずらりとヒットする。
つーか、検索欄に玉城光、と入力しただけで検索候補が…
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……人間って欲深い。
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つか東条と付き合ってるんじゃねーのか?最近話に出てこねえな。秋大は見に来てたけど…最後は東条というより、御幸を見に…
……。
…いやでもフラれてるんだよあいつは。うん。
…ん?
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1:名無しニモ負ケズ
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2:名無しニモ負ケズ
無能
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御幸のヤロー…最近昼休みになると姿眩ませやがって!!
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「…あ、ノリ!白州!」
廊下に見慣れた二人の姿を見つけて呼び止めると、二人は足を止めた。
「あぁ倉持…」
「御幸見てねーか?」
「御幸?」
ふたりは顔を見合わせて思い出したように言った。
「さっき中庭の方で見た…よな?」
「ああ…でももう10分くらい前だし、今いるかわかんないけど」
「裏門の方に向かってたから、もしかしたら寮かも。」
「そうか、さんきゅ!」
初めて有力な情報を貰って、俺は渡り廊下に飛び出した。寮ね…忘れもんでもしたのか?さっさととっつかまえてやる。
中庭を抜けて校舎裏に出て、寮の方に行きかけて、ふと足を止める。そうだ、電話すればいいじゃん。寮まで行って居なかったら無駄足だし…最初からこうすればよかった。
携帯を取り出し、御幸に電話をかけた。するとその直後、すぐ近くでヴーーーッヴーーーッ、とバイブレーションの音がして…切れた。
あっちは…非常階段。あいつあんなとこでサボってやがったのか!電話も切りやがって…あのヤロォ…
「おい御幸!!ここにいることはわかってんだよ!!」
非常階段の正面に回って、そこにいた人物を怒鳴りつけて――ぎょっとした。
そこに座っていたのは、参考書を開いている玉城さん。薄いブルーの瞳できょとんと俺を見上げている…。
「…え…、あ……、わ、わりぃ…」
「……。」
玉城さんは何事もなかったかのように参考書に目を戻した。…スルーかよ!!
…けど…着信音は確かにこっちで…。
「…なぁ、御幸知らない?」
「……。」
玉城さんは、ちらり、と俺を見上げた。くっ…超不愛想だけど…やっぱ超可愛い…。
動揺する俺からまた目を逸らし、玉城さんは上の方を見上げた。
「御幸先輩。」
…え?
「ちょ…バラすなよ。」
そこからひょこっと顔を出したのは、苦笑いを浮かべる御幸だった。
…は!?なんで一緒に居んの?
「何?倉持」
御幸は怠そうに頭を掻いて階段を下りてきた。玉城さんは我関せずという顔でまた参考書に目を戻している。
「何じゃねーよ!監督が呼んでんだよ。」
「え〜…、…わかったよ」
御幸は昼寝を邪魔された猫のようにうんざりした顔で言うと、玉城さんを振り返った。
「じゃね。」
「うん」
素っ気ないわりに親密的な挨拶を交わし、歩き出す御幸…。
ど……どうなってやがる……。
こいつ、フラれてるんだよな?しかも2回も…。
「ふあ……。…ねみぃ〜…」
…意味わかんねぇ!!
***
「は!?マジ?」
「御幸と玉城さんが!?」
夜の食堂。声を上げた麻生たちに、ああ、と頷いた。
「多分いつもフラッといなくなった時は一緒にいると思う…」
「付き合ってんのか?」
「いや、御幸はフラれたって言ってたけど」
「……。」
「…許せんな」
「だろ?」
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「裏切者や!!謀反起こすでホンマ」
「御幸の奴…ネットでイケメンとか騒がれてるからっていい気になりがって!!」
「こいつネット見過ぎな!エゴサしてるんだよな!な!」
「うるせえ!」
「ただいま〜…何してんの?」
2年で集まって…、と不思議そうな顔でやってきて、グラスに麦茶を汲む御幸。クリス先輩の所に行ってきた帰りらしい。練習離脱して主将の座を俺に任せてから、すっかり覇気もなくなってのほほんと過ごしている御幸。ほわほわと緩み切った顔を見ていると腹が立ってくる。
「御幸…お前」
「?」
グラスを傾けて麦茶を飲み干し、2杯目を注ぐ御幸。
「玉城さんと付き合ってんのか?」
「……。」
御幸は無言で2杯目の麦茶を飲み干すと、コツン、とグラスを食器返却口に置いて、にやりと笑った。
「なんだそれ?はっはっはっは!お前ら大真面目にそんなこと話してたのかよ。」
「いいから答えろ!今日一緒にいただろ!」
「何ムキになってんの?」
「るせえ!」
こいつはぐらかすつもりか?ますます怪しい…
「付き合ってねーよ!」
「…え?」
かと思えば、御幸はあっさりとそう言った。
「でも今日…」
「俺が一方的に狙ってるだけ!フラれ続けてるよ。」
「……。」
「……。」
こいつ…なんでこんな清々しく暴露してんだ…。
「まーそういうわけだから、安心しろよ童貞諸君!」
「あぁ!!?」
「テメーもだろうが!!」
「死ね!!」
「はっはっはっは!」
ハラいて〜、と笑いながら食堂を出て行く御幸。
その背中を見て、俺はやっぱり、どこかまだモヤモヤと遺恨が残るのだった。
***
「お!玉城ちゃ〜ん」
「……。」
廊下で玉城さんを見かけると、声をかけるのは相変わらず…。ひらひらと手を振る御幸に、玉城さんはちょっと振り向いただけで行ってしまうけど…その表情が前よりも柔らかく感じるのは気のせいだろうか。
「はっはっは!相変わらずつれねぇ〜」
全く堪えてない様子で御幸は笑い飛ばす。
何も変わってないように見えるけど…やっぱり、なにかひっかかる…。
「お前…フラれてんのによくまだそんなふうに絡めるよな…」
「可愛いからつい!」
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だけど…。
「あそこにいんの玉城さんじゃん!」
「マジ!?」
「玉城さ〜ん!」
「可愛い〜!」
ひやかす生徒たちの前を足早で去っていく玉城さん。ああやって声掛けられても、普段は振り向きもしねえんだよな…。御幸が呼ぶと、ちょっと振り向くのに…。
つーか御幸、いつのまに告白なんて…。ちょっと前までは俺と似たような感じで…いや、俺よりも嫌われてる感じだったのに…。
***
『いつか 正夢 君と会えたら
打ち明けてみたい 裏側まで』
響いてきた優しく透き通る歌声に、食堂の喧騒が止む。
『愛は必ず 最後に勝つだろう
そうゆうことにして 生きてゆける』
髪を風になぶられ、甲子園球場を思わせるぼやけた背景を背に、夕暮れの中瞳を輝かせて歌う、玉城さんの横顔。
『あの キラキラの方へ登っていく』
歌いきると微笑んで、スポーツドリンクに赤い唇をつけ、白い喉に流し込む。
『夢から醒めろ。掴むために。プライムライムウォーター。』
メーカー名が映った後、CMが切り替わると、食堂はにわかにまた騒がしくなる。隣の御幸を見ると、たった今箸を動かし始めた。何事もなかったような顔をして。
「玉城さん歌上手くね?」
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「今の歌何?」
「スピッツの『正夢』だろ。」
また玉城さんの話題。ほとんど毎日のことだ。それだけあの子は、存在感がある。
それにしても……。
「……。」
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やっぱ何か…隠してんだろ…。