1月3日――。

人のまばらな駅に降り立つと、俺は改札を出てすぐにコンビニに入った。
手に取ったのは、無糖のホットティー、ガム、野球の情報誌…そして、初めて手に取る小箱。
はっきりそうだと決まったわけじゃないけど…。いや多分そうだろ。家に呼ぶ…しかも泊まっていい、なんて…その気がなきゃ…。

よし…。

緊張を孕んでレジへ行き、店員の顔を見れないまま会計を済ませ、逃げるようにコンビニを出た。…しばらくここ来れない。

そのまま足早にロータリーを抜けて、学校方面への道を歩く。ビルが少なくなってきて、土手が見えてきて…橋を渡り、花屋の向かいのマンションに着いた。303号室を呼び出すと、すぐに自動ドアが開く。エレベーターに乗ると、もう緊張は絶頂で、沢村じゃないけど…必死で深呼吸した。

303号室…。

インターフォンを鳴らすと、ややあって、ドアが開く。
光と目が合った。

「…あけましておめでとう。」
「あけましておめでとう。」

そう言ってはにかんで、光はドアを大きく開けた。
ニットのワンピースにタイツ。髪は緩く編み込んでまとめられてて…あぁ、なんでこいつこんなに可愛いんだろう。

「荷物、奥に置いて。」
「あぁ…お邪魔します」

やばい、なんか泊まるのがリアルになってきて…動揺が。
部屋の中は相変わらず、すっきりと片付いている。キッチンとバスルームとトイレ以外はワンルーム。だから、ベッドも当然ひとつなわけで…。
…いや!ソファもあるから!焦んな俺…!

「じゃあ、行こう?」
「…おう」

コートを着てマフラーを巻きながら光が振り向いた。
玄関へ戻って、靴を履いて、部屋を出て…鍵を閉める光の背中を見つめて、しまった、と思う。部屋にいるうちに…キス、すればよかった。そう思いつくと、ますます後悔が滲んで…

「…行こ。」

そうぶっきらぼうに言って、光の手を握った。

「…うん」

光は俺の手を握り返した。手を繋いで歩く…なんて、恥ずかしいと思ってたけど。でも…触れていたい。離したくない…。


***


懸念していた人混みは、拍子抜けするほどまばらだった。
もう3日だからだろうか、昼も過ぎた微妙な時間だからだろうか、とくに有名でもない小さな神社だからだろうか、とにかく人が少なくて安堵した。俺たちは手水を済ませて石段を上がった。
ガランガランと鐘の乾いた音が響く。光が真剣な顔で何かを祈るのを横目に、俺も手を合わせた。

野球のこと…親父のこと…そして光のこと。
全てを胸に過らせて、どうか、と前置きをして、行く先が良い未来であることを願う。

顔を上げると、光もちょうど祈り終えたように顔を上げて俺を見た。

「あ、お守り買いたい。」

光が呟いて、繋いだ手を引っ張った。はいはい、とついて行って、一緒に箱を覗き込む。

「何のお守り買うの?」
「何がいいかな…。」

決まってないのかよ。なのにそんなに真剣に選んで…。変な奴…

「ん〜…」

必勝祈願、と書かれたお守りにちょっと手を伸ばしかけたところで、またひっこめる。

「…やっぱりこっち。」

そう言って光が手に取ったのは、無病息災のお守りだった。

「500円です。」

紙袋に包んでそう言う巫女さんに、光は500円玉を手渡した。

「ありがとうございます。」

紙袋を受け取り、光は嬉しそうに、それを俺に差し出した。

「はい、先輩。」
「…え?俺?」

ふふ、とちょっと照れたように笑う光。…俺の為に選んでたの?あんなに真剣に?

「…ありがとう」

…嬉しすぎるって…こんなの…。

「じゃあ行こ…」
「待て!俺も買うから」
「え?」
「交換しよう、交換」

え〜?と顔を赤くする光。にこにこと微笑ましそうに俺たちを見る巫女さん。
俺は良縁祈願のお守りを買い、光に渡した。光は不思議そうにお守りを取り出す。

「良縁祈願?」
「うん。」

ちらり、と俺を見上げる光。

「…一也先輩がいるのに?」
「……。」

…かっ…可愛すぎかよ。

「良縁ってのは…友達とか周りの人とか、全部含まれてんだよ。」
「そうなの?」
「お前はもういい友達に恵まれてるけど…これからもずっと続くように、っていうか」
「……。」
「あと、悪い縁が切れるように、とかな。」
「…そうなんだ。」

光は呟いて、俺を見上げてほほ笑んだ。

「ありがとう。」

その笑顔を、ずっと守って行けるように…。
俺たちの縁が、ずっと繋がっていますように。


***


神社を出て、立ち止まる。

「このあとどうする?」

訊こうと思っていたことを光に聞かれた。…マンション戻ろう…とは俺からは言い辛いし。つーかそれじゃ、がっつきすぎ…。

「…あ。」

ふと、光が俺の向こう側に視線を移して声を上げた。振り向くと…ジャージ姿で走ってくる一人の男。あれは…

「え、哲さん…?」

哲さんは足を緩めて俺たちの前で立ち止まった。そういや…哲さん家って学校のすぐそばなんだよな。やべえ…光と一緒にいるとこ、よりによって野球部の人に見られた…。顔を引きつらせる俺に、哲さんはいつも通りの笑顔を向ける。

「御幸じゃないか。あけましておめでとう。」
「…おめでとうございます。」

観念してそう返すと、哲さんは光に視線を移す。

「玉城も、あけましておめでとう。」
「あけましておめでとうございます。」

…ん?光が普通に笑顔で返事した…。

「デートか?」
「!?」

付き合ってることバレてる…!?…のか、この人の場合天然で冗談として言ってるのか…判断に困る…。

「哲さん、あの…」
「なんだ?」
「…一応…あんま広まるとまずいっていうか…」
「そうか。安心しろ、誰にも言わないぞ。」
「……。」

ほんとかよ…。

「良かったな。」

哲さんはそう言って、光に微笑みを向けた。光はちょっと顔を赤くして、微笑み返す。…え、仲良いの?

「じゃあな。」
「あ…はい!お疲れ様です」

哲さんはそのまま颯爽と走って行った。あの人正月から走り込んでるのかよ…やっぱこういうとこ、あの人らしいな。

「…哲さんのこと知ってるの?」

その姿が見えなくなってから光に尋ねると、無垢な笑顔でうんと頷いた。

「野球部の応援に行ったとき、何度か球場で会ったの。」
「ふうん…」

それにしては…打ち解けていたような…。
俺なんてまともに話してもらえるまで、何か月もかかったはずなんだけど…。

「ねえ、それで…どうする?このあと」
「あ…おう、どうするか…」

どっか行く…つっても、正月はどこも開いてないし。けど、マンション戻ろうぜ、なんて言ったら最低だろ、俺。

「どこもお店開いてないし、マンション戻る?」
「……え」
「何もないけど…」
「い、いいよ、全然、それで」

じゃあ行こう、と手を引いて歩きだす光。
…わかってんのかな…状況。


***


マンションに戻ってきて、光は紅茶と、ココットに入れた林檎のコンポートを出してくれた。

「作ったの?これ」
「うん。」

照れ臭そうに頷いて、光はテレビの横の棚に向かう。
クッキー焼いてくれたりしたし…料理好きなのかな。

「すげえ。美味い」
「よかった。」

光ははにかんで、棚の前にしゃがんで何かを探している。
…光が隣に座ったら…えーと…どうしよう。キスくらいはしてもいいかな。もうしてるんだし。その先のことは、その時の雰囲気次第で…。…だけど、一晩一緒に過ごすのに、我慢できるのか?俺…。
光…もしかしてやっぱり嫌になって、なかなか俺の傍に来ないんじゃ…。

「…光?」

丸まった背中に呼びかけると、光はようやく立ち上がって振り向いた。

「映画見よ、映画!」
「え?あ…うん」

思いのほかニコニコ笑顔でDVDパッケージを見せてくる光に意表を突かれつつ、やっと隣に座った光の、ふわりと香ってくる甘い香りにドキリとする。

「どれ見る?」

並べられたパッケージは3つ。
君に読む物語、ショーシャンクの空に、最強のふたり。

「あ、ホラーもあるよ。」
「いやいいよ…これ見よう。」

適当にひとつ取って、光に手渡した。そう?と、光はDVDをプレーヤーにセットしに行く。
とにかく…隣に座っていてもらわないと、何もできない。光はDVDをセットすると、リモコンを持って戻ってきて、また俺の隣に座った。映画が始まる。チャンスはこれから2時間…。


***


「……。」

エンディングロールが流れる中、ちらり、と隣の光を見る。
光は目尻の涙を拭って、えへへ、とはにかむ。

「何度見ても泣いちゃう…やだな」

可愛いけど…泣かれると手ぇ出せねぇ…。

「はぁ…。」

鼻を啜って、まだ潤む目ではにかんで俺を見上げ、目を擦りながらDVDを取り出す光。
紅茶はとうに飲み干し、デザートも完食。DVDは見終わっちゃったし…普通ならここで、とりあえずキスとか…するもんなんだろうけど…。
光はDVDを仕舞うと、壁掛け時計を見上げた。う…退屈だとか思われてんのかな。けど、何すれば…

「一也先輩。」
「ん?」

光は不意に俺を振り向いて、時計を見上げながら言った。

「あの、お願いがあって…」
「お願い?」
「イギリスの友達に、一也先輩のこと紹介したいんだけど…いい?」

…???

「紹介…って?」
「スカイプで。今、向こうが朝の8時くらいだから、もう起きてると思うの」
「え…」

思わず顔が引きつる。

「俺英語わかんねーけど…」
「私が通訳するよ。」
「そ、そう…」
「いい?」
「…いいけど…」

うへ〜…こういうの苦手だけど…でも光のイギリスの友達…か。ちょっと気になる。

「ありがとう。」

光は微笑んで、ノートパソコンを持ってきた。
電源を入れ、スカイプを起動し、何人かのアカウントを選択して、電話をかける。

「起きてるかな〜…」

どこかわくわくするようにそう呟く光の笑顔が可愛くて、俺もつい頬が緩んだ。

「あ!」

するとさっそく、画面が切り替わって、赤毛の少女が映った。

『Oh!やだ、うそ!光、その人もしかして、あなたの恋人?』

少女は通話が始まるや否や、目を丸くして口元を押さえ、驚いたように興奮気味に喋り出した。

『そうだよ。学校の先輩の、御幸一也先輩。』

頷いてペラペラと英語をしゃべりだす光に少し戸惑う。

「私の恋人?って聞いてるの。」

光ははにかみながら俺にそう説明した。どうも、とちょっと会釈すると、オーマイガ、と少女は笑い出す。

『あなたの恋人とってもキュートじゃない!日本の男の子ってキュートよね。』
「キュートだって。」
「…キュートは聞き取れたけど…俺のこと?それ」

ふふふ、と可笑しそうに笑いながら、光はサンキューと少女に言った。

「この子…アデラは、学校の寮が同室だったの。」
「へー…。」
「あ、クラリスも繋がった!」

画面が分割され、隣に金髪の少女が映った。金髪の少女…クラリスははっと息を飲んで目を丸くしたまましばらく固まって、ワオ、と一言呟いた。

『久しぶり、クラリス。』

光が手を振ると、クラリスは目を瞬いて胸に手を当てる。

『あなたの恋人?』
『うん。一也先輩だよ。』
『幸せそうで安心したわ。お幸せに。』

お幸せに、だって。と光がころころ笑っていると、今度はさらに3人同時に通話がつながった。

『キャーー!ウソ!光が男の子連れてる!』
『そうなの!ついに恋人ができたのよこの子!』
『私たちは10年ぶりに男を見たっていうのに』
『私も日本に行きたいわ〜』

『ちょっと皆、一斉に喋ると何言ってるかわからないよ。』

途端に賑やかになった画面を前に笑いながら俺の腕に掴まる光。

「もうめちゃくちゃ。」

そう笑って、その笑顔はすごく幸せそうで。
やっぱり…いい友達に恵まれてるんだな。

「あ…。」

最後の一人。Hollyと書かれたアイコンが通話中に切り替わり、画面には栗色の髪の、利発そうな少女が映った。

『光!電話待ってたわ。』

手を振って微笑む彼女に、光も笑顔で手を振り返す。

「この子はホリーっていうの。学校で一番、仲良しだった…。」

そう言って、光はまた画面を見る。

『その人が恋人?』
『うん。御幸一也先輩。』
『年上なのね。いいじゃない。』
『……。』
『あなたが選んだってことは、きっと素敵な人ね。幸せそうで良かった。』
『…ありがとうホリー…本当に…試験のこと…』
『あなたが幸せになってくれればチャラよ。』

ひらり、と手を翻したホリーに、画面に映る皆が微笑んだ。光を見ると少し涙ぐんでいて、俺を見上げた。

「ホリーなの…私の為に、試験でわざと…ミスをした子。」
「え…」

歌の試験でわざと咳き込んだっていう、あの…。

「そっか…。」

画面の前で微笑む少女に、俺は心の底から感謝した。
光を日本に送ってくれて…ありがとう、と。


***


夜は近所のファミレスで食事して、マンションに戻ってきて、俺は焦り始めていた。
…まだキスすらしてねーぞ。

「お風呂先に入って。」
「え!?あ…うん」

お風呂、というワードにすら動揺してしまう悲しい男の性。

「脱衣所はここ…タオルはその中にあるの、使っていいから。」
「うん…」
「使ったタオルはそっちのカゴに入れておいて。」

じゃあごゆっくり、と光は奥の部屋に戻って行った。
風呂…。光の部屋の、風呂……。
なんだか甘い香り…シャンプーとかせっけんの香りかな。脱衣所にはヘアスプレーやボディクリームが置いてあるほか、化粧水やよくわからない小瓶もたくさん置いてある。女の子の部屋…だもんな。落ち着かない…服脱ぐの?ここで?
そわそわしながら服を脱ぎ、脱いだものは寮に戻ってから洗うため袋に詰め、浴室に入った。甘い香りが強くなる。見たことのないメーカーのシャンプーにコンディショナーにボディソープ。
えーと…。…風呂入るのにこんなに戸惑うの初めて…。

コンコンコン。突然ドアがノックされて、俺は飛び上がった。

「一也先輩。」
「な、何?」

な、なんだ、脱衣所の外か…。だ、だよな。

「言い忘れたけど、洗面台の下の棚の赤い箱に新しいスポンジがあるから、体洗うときそれ使ってね。」
「わ…わかった。さんきゅ」

…足音が遠ざかった。ほっと胸をなでおろし、脱衣所に戻る。えーと…洗面台の下の棚…。
しゃがみ込んで戸棚を開けると、そこには確かに赤い箱と、他に掃除用洗剤や洗濯洗剤などが入っていて…その片隅にある、見慣れない白いパッケージが目に留まった。
『エフィ スリム【22cm 多い日昼用】』
……あ、これ、生理…の…。
……。
へぇ…22cm…。多い日…昼用…。昼用?朝とか夜は違うの?
パッケージの横には、「羽つき」と書いてある。…羽って何?

…って何漁ってんだ俺。やばいやばい。
我に返って赤い箱を開け、スポンジを取り出した。浴室に戻り、ムラムラと腹の底から沸き上がる熱を感じる。
やっぱ1回抜いとこうかな…。もしそういう雰囲気になったら…俺も初めてだし、もし即…となったらダサいし恥ずかしい。できなかったとしても、一晩我慢するなんて…絶対無理だ。よし、抜いておこう。都合よく風呂場だし…。



***



風呂から上がると、光はソファでテレビを眺めていた。流れているのは他愛もないバラエティ番組。見ている、というより眺めている、という感じの横顔を見る限り、あまり面白くはないらしい。

「あ…、私も入ってくる。」
「うん」

俺に気付いた光が立ち上がって、廊下に出て行った。クローゼットを開閉する音の後、脱衣所のドアが閉まる。…光が今…あのドアの向こうで、服を脱いでいる…。…落ち着かない。

「……。」

部屋の中を見渡して、とりあえずソファに座った。
どうしよ…俺ソファで寝るよ、とか申し出るべき?でも…ここまできてキスもせず寝るのはないだろ。ありえない。さすがに光もそう思ってる…はず。だって、キスはもうしたんだから…!
それに明日から部活が始まれば、またしばらくこんな風には会えなくなる。学校では会えるけど、光は仕事も始まるし…。
つまりこれは…本当に本当に、滅多にないチャンス…。

俺はバッグから今朝買った小箱を取り出し、ポケットに突っ込んだ。

それから30分ほどして…脱衣所のドアが開く音がして、心臓が跳ねた。しかし何でもない風を装って携帯をいじっていると、光が部屋にやって来た。
パジャマ姿…。…ノーブラ…っぽい。

「……。」

光は黙ったまま、俺の前を通過して、携帯を充電器に差し、また脱衣所へ戻って行った。…え?
肩透かしを食らった気分の俺の耳に、ドライヤーの音が聞こえてくる。あぁ…髪乾かしに行ったのか。…タイミングが掴めねぇ…。
それから5分ほどして、ドライヤーの音が止み、ややあってまた光が部屋に戻ってくる。…心臓が早まる。

「…もう寝る?」

光はぽつりとそう尋ねてきた。…なんて答えるのが正解なんだ…。
時計を見上げると、時刻は夜の9時過ぎ。いつもなら普通に起きてるけど…

その問いが、本当にそのままの意味なのか…それとも暗に誘ってくれて…いるのか…。
俺には判断がつかない。

「…どこで…」
「……?」
「…寝ればいい?…俺」
「……。」

これでも勇気を振り絞った質問。光は頬に手を当てて、そっとベッドを見て…

「…ソファで寝るなら、毛布貸すけど」
「……。」

がっ…くり。
光はベッドに歩み寄り、毛布に手をかける。え…マジで?本当にこのまま寝るの?

「……。」

俺は意を決して立ち上がり、光の背後に歩み寄った。振り向いた光の、赤い唇を見つめて…光に抵抗の意思がないことを確かめて、キスをした。一瞬触れるだけのキス。もっとしたい…けど、それだけじゃなくて、その先の意思も…知りたい…。
光をベッドに座らせて、俺も座って、またキスをしようと顔を近づける。光は受け入れるように顔を上げる。唇を重ねて、どさくさに手を握る。どこまでしていいのか…わからない。でも、まだ…大丈夫…。

ちょっと肩を押して、寝るように促すと、光はそれに気づいたように仰向けに横たわった。いい…のか?本当に…?
覆いかぶさって、また軽いキスをする。深いキスなんて…やり方がわからない。このあと、どうすればいいのかも…。

胸…触るのはまだ早い?脱がすのが先?いや俺が脱ぐのが先?そもそも…これ、オッケーってこと?
ど…どうすれば…。

わけがわからないまま、またキスをして、最初より少し慣れてきた様子の光と目が合った。…どう思ってんのかな…がっつきすぎでキモイとか思われてないかな…。
光は俺を見つめ、赤い唇で呟いた。

「…キスだけ…?」

その言葉に、一瞬頭が真っ白に…。…やべぇ、理性が吹っ飛ぶところだった…。
これ…、してもいい、ってこと…だよな…!?

「…いいの?」

はやる気持ちを抑え、そう尋ねる。

「……。」

…こくん。真っ赤な顔で、光は頷いた…。

ごくり、と生唾を飲み、俺は光の身体に手を伸ばす。まずは胸…。ついに女子の胸を…揉む…。
そっと手のひらを被せると、何とも言えない柔らかさでその中に収まる塊…。そのまま力を入れて掴んでみると、驚くほど柔らかく、信じられないほど気持ちいい。女の子の胸って、こんな柔らけぇの?ずっと揉んでいたい…。すげぇ…なにこれ…。

「……。」

光は恥ずかしそうに目を逸らし、それでもされるがままになっている。ほんとに…いいんだ…。触っても…。
両手で胸を揉んで、つい興奮状態になってしまっている自分にふと我に返り、急に恥ずかしくなる。やべ…無我夢中で揉んでた。引かれてないかな…どのくらい揉んでた?俺…
取り繕うようにキスをして、ちょっと迷って、光のパジャマのボタンに手をかける。ちょっと震える手で何とか1つはずし、2つ目のボタンも外し、胸元がはだけて柔らかな膨らみが覗き、3つ目に手をかけた時――光が俺の手を掴んだ。

「は…恥ずかしい…から」
「あ…」
「…先輩…先に、脱いで」
「…あ、あぁ」

やっぱやめて、って言われると思った…。俺はシャツを脱ぎ、ちょっと迷って、ズボンも脱いで下着1枚になった。そこの膨らみを見て、光は逃げるように目を逸らす。でも俺がまた覆いかぶさると、ためらいがちに俺を見上げた。

「…筋肉…すごい」
「…はは…まぁね」

俺の胸元に指先で触れて呟く光。くすぐったい。
照れ隠しに茶化して、またボタンを外す作業に戻る。光の…本物の…生の、胸…。ボタンがすべて外れ、俺は襟をゆっくりと捲った…。

…すげえ…綺麗。

2つのなだらかな、男のそれとはかけ離れた、柔らかな曲線を描く白い胸…。薄桃色の蕾をつけたような、真っ白な…。その中心からうっすらと縦に線が入り、柔らかくも引き締まった腹筋とくびれた腰。やっぱ…女の身体って男と全然違う…。こんな細くて…柔らかくて…すべすべで…。同じ人間とは思えない。

ごくり。何度目だろう、生唾をまた飲み込んで、胸に直接触れた。さっきよりももっと、柔らかい感触が直接手のひらに伝わってくる。やばい、もう、下半身が痛い。…さっき抜いたばっかなのに。

もう…いいかな…。下、脱がしても…。
やべえ…これでいいのか…どうすればいいのか全然わからん。

ズボンに手をかけてみると、光は何も言わなかったから、すこしずつそれを脱がした。白い下着が現れ、俺はもう爆発寸前。

「…あ、…まっ…」

ここにきて光が戸惑ったようにちょっと抵抗したけど、それより先に俺の指先が下着越しに秘部に触れた。…すげ…ここも柔らかいんだ、女の子って…。

「……。」

すり…、と指先がそこを撫でると、光は観念したように口を噤み、口元を隠して顔を背けた。
恥ずかしがるその顔…めちゃくちゃ可愛い。学校では笑顔ひとつで皆が大騒ぎするけど…俺は、俺だけはこんな顔も知ってる。俺だけ…。

そんな高揚感に溺れながら、秘部を撫で、彼女の表情を窺う。気持ちいい…のかな?反応ないけど…恥ずかしがるばかりで、何も言わないし…。気持ちい?とか聞いていいのか?

「…気持ちいい?」
「……。」

尋ねてみると、光は顔を真っ赤にして黙り込んだ。

「…よくない?」
「……。」
「……。」
「…よく…わからない…」

わからない…???
どういうこと?
AVでは…女は気持ちよくなると濡れる…らしいけど。濡れるってどういう状態?光は…若干湿ってる?ような感じがしなくもないけど…濡れて…はない、よなぁ…。
…脱がせてみるか?

「…えっ、ま、待って…!」

下着に手をかけると、光は慌てて俺の手をおさえた。

「…は…はずかしい…」
「…じゃあ…俺が先に脱ぐ」
「……。」

起き上がって下着を脱ぐ俺を、光は目を白黒させて見つめる。そして曝け出されたそそり立つ肉棒を一瞬見て、慌てて顔を背けた。…こっちまで恥ずかしい。

「ちょ…逃げないで。」
「だって…、や…、」

ちらり、とまたこっちを見て、顔を真っ赤にして背ける。

「な、なにそれ…」
「……。」

なにそれって…。そんな、不審物みたいに…。

「光。」
「……。」
「…いい?」

宥めるように話しかけ、少し落ち着いた光の下着に手をかける。
今度は覚悟を決めた様に、光は黙って俺の手を受け入れた。下着がずれて…うっすらとした陰毛が見え、そのままずり降ろすと――まっさらで綺麗なY字の曲線が現れた。

ついに…女の…あそこを、見る…。ど、どんななんだろ…。

下着を脚から抜き取り、閉ざされた脚をゆっくりと開かせる。左足の内腿に、あの傷跡が見えた。ちょっと抵抗しながら、光はゆっくりと…俺の前で脚を開いた。

真っ白なそこに、薄桃色の花弁みたいな…。それは息をのむほど綺麗で、じっくりと見たい衝動にかられながら、光の手にそれは阻まれた。

「そ…そんなに見ないで…。」

…見すぎだったか…。がっつかないようにしねーと…でももう、バッキバキで痛いんですけど。
はやく…挿れたい。

花弁に手を伸ばし、指先でなぞった。

「…っ…」

光はただただ恥ずかしさを堪えるように横たわってじっとしている。
…ちょっとだけぬるぬるしたものが指先を濡らす。これが濡れてる…ってこと?で…肝心の挿れる場所はどこに…。

指先でなぞりながら、花弁の割れ目に指先を差し込んだ。穴…がない。いや、ないはずはない。

「……。」

光は息を飲んでされるがままになっている。
割れ目をなぞりながら手探りで弄っていると、思っていたよりも下の方に、少し指が沈む場所があった。…ここかな?ゆっくりと指を差し込んでみると、そこはきつく指を締めつけながらも深く飲み込んでいった。…ここだ…。

「…あ…。」

光が異物感に気付いたように少し足を閉じる。

「…大丈夫?」
「……。」

…こくん。小さく頷いたのを見て、俺は指を引き抜いた。
さっき脱ぎ捨てたズボンを拾い上げ、ポケットから小箱を出す。

「……。」

コンドームを取り出し、装着する俺を、光は不思議そうに見つめていた。
その光に向き直り、足を開かせて肉棒をそこにあてがう。ついに…ついに。

「……。」

不安そうに俺を見上げる光。
大丈夫…一生大切にする。心の中で誓いのようにそう念じて、俺はゆっくりと、肉棒を押し込んだ。やば…先っぽだけで、めちゃくちゃ気持ちい――

「…いっ…」

光が小さく悲鳴を上げ、思わず動きを止める。

「いや…痛い!」

何かヤバそう、咄嗟にそう思って肉棒を引き抜く。その先端には滲んだように血がついていた。

「だ…大丈夫か?」
「……。」

光は顔を覆ったまま、ふるふると首を横に振る。

「…だめ」

だめ…って。…マジ?ここまでしておいて、おあずけ?

「や…でも、最初は痛いもんらしいし…」
「……。」
「…ゆ…ゆっくりするから。」
「……。」

光は起き上がって膝を抱えて座り、少し涙の滲んだ顔で呟いた。

「…無理」
「……。」

そんな…。

「…じゃ…気持ちよかったとことかは?」
「……。」
「そこ触りながらしたら…ちょっとは紛れるかもしれないし」
「……。」

光は唇を噛み、涙を堪えるように不貞腐れる。

「…ない」
「……。」

な…、…ない…。
俺、ヘタクソだったのか…?いやでも、初めてだし…俺も…。

ショックを受ける俺をよそに、光は服を着始めた。

「ちょっ…光…」

その服を脱がすのに、俺がどれだけ苦労したと…。

「…ごめん…。…でも…、……怖い」

光はそう呟いて、さっさと服を着てしまった。
…マジか〜〜…。やばい…立ち直れないかも…。

結局その夜、俺はソファで眠り……朝を迎えた。

 


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