026
「じゃあ…また学校で」
朝、マンションを出るときは少し…いや、かなり気まずい。
「うん…」
光は頷いて、様子を窺うように俺を見上げる。
「あの…」
「ん?」
「……ごめん…ね、…昨日…」
…謝られると…ますます情けねぇ。
「い…いいって…」
それ以上何と言ったらいいかわからない。
「…じゃあな。」
「…うん」
ドアが閉まり、エレベーターへ歩き始めて…また、しまった、と思った。今後気まずくならないように…キスくらいしておくんだった。は〜…。振り向いてすでに閉じているドアを見つめ、俺は諦めてエレベーターへ向かった。
***
「……ゆき……」
「……。」
「…みゆ……おい…!」
「……。」
「おい!呼んでんだろ御幸!!」
「…えっ?」
ハッと我に返って、そこが寮の部屋だと思い出した。あぁそっか…さっき寮に帰ってきて、荷物を下ろして椅子に座って…そのまま放心してたんだ、俺。
「あぁ…悪い。何?」
「……。」
倉持は俺を気味悪げに睨むと、紙の束をバサリと俺の机の上に放り投げた。
「提出物。持ってきてやったんだよ」
「あー…サンキュ」
「……で?」
「え?」
倉持が腕を組んで話し込む体制になったから、俺はぎくりとした。
「年明け早々、今度は何の悩み事だよ。」
「え…別に」
「さっきあんだけ魂ぬけてて別にってこたねーだろ!寝正月で腑抜けたかテメェ!」
「あー、うん、そうかも」
「おま…」
チッ、と舌打ちをぶつけ、倉持は踵を返す。
「もういいわ。練習までに切り替えとけよ!」
そのまま乱暴にドアを閉めて部屋を出て行って、俺はちょっと笑いがこみあげた。お前は俺の先輩かよ…、なんて。
さっさと荷解きを済ませてしまおう、と思い直し、バッグを開けようとして…そこのストラップに赤いお守りを見つけた。無病息災…。光がくれたお守り。胸の奥が暖かくなると同時に、昨夜のことを想いだしてちくりと痛む。
…焦りすぎたかな。これをきっかけに、もう2度としたくない!なんてことになったりしたら…。
…どーしよ。
椅子に戻り、携帯を開いた。
こんなこと…誰にも相談できるわけない。よって…調べるしかない。
どうすれば痛くせずできるのか…そもそもどうやってすればいいのか…。
くそ、もっと早く調べておけばよかった。
次いつまたチャンスがあるかわからないけど…。
わからないからこそ…。
ネットを流し見て、ひとつの検索結果に目が留まった。
『処女との初体験で痛くさせないやり方・コツと注意点』
……ふうん…。…見てみるか…。
記事を開くと、ずらりと文章が並んだ。
――処女との初体験で多くの誤解がされているのは、「処女膜を破るのだから出血して当たり前・痛くて当たり前」ということです。そもそも処女膜というのは厳密に言うと蓋のように塞がっているわけではなく、小さな穴が開いている、多くは三日月のような形をしたもので…
……え?
――よって、処女だからと言って挿入時に激しい痛みがあったり、出血したりするのは、ただ乱暴な挿入のせいだったり、女性側の緊張によって十分に膣の準備ができていないために起こることなのです。
…マジで?
――ここではまずその誤解を解いていただき、次の項目で処女でも快楽を与えながら「気持ちいい」「幸せ」なセックスをするためのコツと注意点をご紹介します。
……。
俺はそのまま文章を読みふけった。
――初めに言っておきますが、現実のセックス・殊更処女との性行為においては、いわゆるアダルトビデオなどで得た知識を活用することは大きな間違いです。アダルトビデオにありがちな、激しい愛撫や挿入、処女でも簡単に濡れるといったことは絶対にありえませんので、今すぐに忘れてください。
…俺…全然ダメじゃん。
――処女との性行為において最も大切なことは、女性側の緊張を解き、気分を盛り上げてあげることです。具体的には、丁寧な愛撫や優しい言葉かけです。そして決して焦らないこと。不安は女性にも伝わってしまうからです。
愛撫に関しては、大体1〜2時間かけて、ゆっくり丁寧に体全体をほぐしてあげましょう。
い…1〜2時間…!!?そんなに!?愛撫って…何すりゃいいんだよ。
――愛撫の大まかな流れの例としては、まずは抱きしめたり、髪や体を撫でてあげます。そしてキスをしながら、女性側の心の準備が整ってから、胸などの愛撫に移るとよいでしょう。すぐに服は脱がさず、少しずつ進めてあげます。胸の愛撫で誤解されていることは、ただ揉めばいいと思っている男性が多いことです。ただ揉むだけでは女性は気持ちよくも何ともありません。ただし気分を盛り上げるために、胸を優しく撫でたり揉んだりするのは良いでしょう。感じるのは神経が密集している乳輪や乳首部分。ここは指で優しく撫でたり、舌を使って愛撫してあげましょう。女性は初めは刺激に慣れないかもしれませんが、じっくりと愛撫することでだんだんと感じてきます。
ただしくれぐれも、アダルトビデオのように力任せに揉んだり、強く引っ張ったりすることはやめましょう。痛いだけです。
…ただ揉んでたわ…俺…。
力任せとかは…してないつもりだけど…。
――続いて下半身の愛撫についてですが、処女の女性はとくに、女性器を見られるという事に抵抗を感じることが多いです。ですからまずは下着の上から愛撫をしてあげましょう。すぐに直接触れるのではなく、腰回りや脚、太腿などの愛撫から入るとよいでしょう。秘部の付近もじっくりと指で撫でてあげると、濡れやすくなります。コツとしては焦らすことです。十分に濡れていないのに指やペニスを挿入すると当然痛いです。目安としては下着越しにもはっきりと濡れていることがわかること。また、クリトリスへの愛撫で1度はイカせてあげたいところです。一度オーガズムに達することで、膣がペニスを迎えやすくなります。処女でもクリトリスならば十分に感じることができます。クリトリスの位置は女性器の上部。下着越しに場所を特定することは難しいので、女性の反応を窺うか、気持ちいい場所を聞きながら探しましょう。
じゃああれは…全然濡れてなかった…ってこと?
ああ、なんかもう、自己嫌悪で情けない…。
――オーガズムに達したら下着を脱がし、女性器もしっかりと濡れていますが…焦ってはいけません。ペニスを挿入する前に、しっかりと指でほぐしてあげましょう。処女の女性はまだそこになにも挿入したことがないわけですから、ペニスなんて太いものはいきなりは入りません。初めは1本の指で解してあげます。十分に濡れていれば、指1本なら痛みはほぼないでしょう。少し解れてきたら指を増やし、2本の指でも無理なく挿入できるくらいに解れたら、いよいよペニスの挿入です。
…ここまでで1〜2時間?俺…愛撫なんてまともにできてなかったんだな…。
――とはいっても、未開発の処女の場合挿入で感じることはほぼあり得ません。それどころかここまで膣を解しても、まだ痛みがある場合があります。その場合、「ゆっくり優しく」なんてしてはいけません。
…え?
――それはただ痛みを長引かせるだけだからです。ガムテープを剥がすとき、ゆっくりと剥がすより、一気に剥がしてしまった方が痛みは一瞬で済みますね?それと同じで、挿入が進んでいる間はずっと痛みが続いている状態です。コツとしては、膣入り口にペニスをあてがったら、約8割ほどを一気に挿入します。挿入してからも、すぐに動いてはいけません。挿入したまま動かず、女性にキスをしたり胸に愛撫をしたりして、気持ちを落ち着かせ、快楽を思い出させてあげましょう。動かすのは十分に女性が落ち着いてから。動いてもいいか?と確認してあげましょう。
……なるほど…な。
携帯を閉じ、深く息を吐く。よくわかった…次こそは…ちゃんと…。
……。
…とりあえずトイレ行ってこよう。
***
始業式――。
「御幸?どこ行く…」
「ちょっと用あるから先行ってて!」
呼びとめる倉持に背を向けて、俺は教室を飛び出した。
とにかく…気まずくなる前に光と話を…。
「玉城いる?」
1Aの前で人を捕まえてそう訊くと、A組の奴であろうその男は、ちょっと迷ったように顔をひきつらせた。
「え…玉城さん…ですか…」
あ…そういや、野次馬除けで団結してるんだっけ…このクラス。
「今はちょっと…」
「あ〜、田島君!その人は大丈夫だよ〜!」
突然明るい声が響いて、田島、と呼ばれたその男子生徒は不思議そうに振り向いた。
「御幸せんぱ〜い!あけましておめでとうございます!今年もカッコいいですね!」
「う…卯月。」
よお…、とあいさつしながら、いやでもこいつ、結構いいとこあるんだよな、と思い直す。今だって助けてくれたし。
「光〜〜!いとしの…」
「こら!」
ぺちん、と卯月の頭を小突いた鷹野。た…助かった。
「内緒って言ったでしょ!」
「あ〜、そうだっけ?」
「何?真…」
頭を擦る卯月の元に、光がやって来た。光は俺に気付き、あ…、と表情を固める。や…やばい。すでにちょっと気まずさが漂ってる。
「ちょっと…話せる?」
「…うん」
…よかった。
ふたりで着かず離れずの距離で歩いて、いつもの場所…校舎裏の非常階段にやって来た。人がいない場所と言えばここだ。
そこに着くなり俺は光を振り返った。
「…ご、ごめん。」
「え…?」
「なんか…無理やり…」
「……。」
光はきょとんとして、顔を赤くして俯いた。
「先輩のせいじゃ…。」
いや…俺のせいなんだよ。
「けど…無理させたから」
「……。」
「痛かった…よな。」
「……。」
「…もう…したくない?」
光は目を伏せ、戸惑うように唇を引き結んだ。
「し…たくない…とか…よく、わかんなくて…」
「……。」
「…でも…」
「……。」
「その…せ、先輩の…こと……好きだから…」
「…っ…」
「触ったり…キス…したり…するのは」
「……。」
「…う 嬉しかった…し」
…言葉が…出てこない…。光が可愛すぎて…愛おしすぎて。同時に自分がどれだけ邪だったか…胸が痛むけど。
「…でも…」
光は躊躇いがちに言葉をつづけた。
「まだ……怖い…かも」
「……。」
…だよな〜…。
「…痛くしてごめん。」
「いえ…」
「俺も初めてで…よく知らなくて」
「……。」
とにかく…ここは正直に…。
「俺はやっぱり男だから…したいけど…」
「……。」
「無理にするつもりはないし、光が嫌ならしない。」
「……。」
「それより…これがきっかけで、気まずくなったりしたら嫌だと思って」
「……。」
「…大丈夫?」
黙り込んでいる光の様子を窺うと、光は赤い顔のまま俺を見上げ、こくこくと小さく頷いた。…ほんとかなぁ。
「…光のこと好きだし…大切にしたいから」
「……。」
「まずは仲直りしたいんだけど…」
「……。」
「いい?」
…こくん。光が頷いたのを確認して、俺は彼女に歩み寄り、手を取った。
「…キスしていい?」
「…うん」
了承を確認してから、唇を重ねる。まだぎこちない…、やっぱ、まだ早かったのかも。
唇を離し、光の頭を撫でた。
「少しずつ…やっていこう」
そう言うと、光はやっと安堵したように微笑んで、頷いた。
そこへ予鈴が鳴って、やべ、と顔を顰める。
「じゃ…俺部活だから…」
急に焦る俺を、光はおかしそうに見つめて頷いた。その笑顔がやっぱ可愛くて…
「…そこまで」
そう呟いて、光の手を引いた。
「……。」
校舎の角まで…。手を繋いで歩く。小さな、柔らかな手…。離したくない。
「やべ〜正月で一気に太ったわ」
「今日練習キツイよな〜」
! ヤベッ…
ぱっと手を離した直後、校舎の角から現れる麻生たち…。
「……御幸?」
「何してんの?」
じろじろと不審そうに俺を見る麻生たちの目が、はっと見開く。
「……。」
俺のすぐ横を、光は無関係を装った澄ました顔で、足早に追い越していった。
「……。」
「…え…玉城さんと一緒に?」
「ここで何を…?」
「…いや知らないけど?たまたま通りかかったんだろ」
「……。」
「……。」
疑いのまなざし…。やべぇ、さすがにバレたか?
「…あ〜腹減った!お先〜」
「絶対怪しい…」
「な…」
「でもまさか…な」
ぎくり…。…まあこうなったらしらを切りとおすしかない。
俺は気に留めないふりをして、寮へと急いだ。
***
「なあ!今日の昼あそこで何してたんだよ!」
「やっぱ玉城さんと一緒にいたんだろ?」
「……。」
やっぱ無理があったか…。
夕食の時間、麻生たちがしつこく質問攻めするおかげで、倉持やゾノまでも嗅ぎつけて詰め寄ってきた。
「なんやと!?ホンマか御幸!!」
「前もそこで玉城さんと一緒にいたよなァ?お前…」
「やっぱ付き合ってんの!?」
「え!?キャップに彼女!?」
「玉城さんと…!?」
「マジ?」
あ〜〜…1年にまで広まって…
こうなったらもう…仕方ない…。
「…そーだよ!一緒にいたよ」
「!!!」
俺が声を上げると、食堂は水を打ったように静まり返った。
「…付き合ってんのか!?」
身を乗り出す倉持。息を飲む他の面々。
「…付き合ってねーよ。」
「じゃあなんで…」
「俺が呼び出したんだよ。」
「は…?」
「…告ったの!」
あぁもう自棄だ。どうにでもなれ。
「…はああぁぁ!?」
「そ、それで!?」
「付き合ってねーつってんだから察せよ!フラれたんだよ!」
「えぇぇマジ!?」
「何度目だよ!」
「3度目だよ悪ぃか!ほっとけ!」
どんぶりのご飯を掻き込んで、俺は席を立つ。
「とにかく…そういうわけだから騒ぐなよ!あっちに迷惑かかるから」
「……。」
「……。」
「……。」
あっちに迷惑…、というところで男共はようやく口を噤んだ。
こりゃ…本当のことがバレた日には、めちゃくちゃ面倒くさいことになりそうだな。
ま…しょうがないけど。
あんな可愛い子と…恋人になれたんだから。このくらいなんでもない。
冷たい夜風に吹かれながら、寮の自室に向かった。
あーあ…光に会いてぇな…。
朝、マンションを出るときは少し…いや、かなり気まずい。
「うん…」
光は頷いて、様子を窺うように俺を見上げる。
「あの…」
「ん?」
「……ごめん…ね、…昨日…」
…謝られると…ますます情けねぇ。
「い…いいって…」
それ以上何と言ったらいいかわからない。
「…じゃあな。」
「…うん」
ドアが閉まり、エレベーターへ歩き始めて…また、しまった、と思った。今後気まずくならないように…キスくらいしておくんだった。は〜…。振り向いてすでに閉じているドアを見つめ、俺は諦めてエレベーターへ向かった。
***
「……ゆき……」
「……。」
「…みゆ……おい…!」
「……。」
「おい!呼んでんだろ御幸!!」
「…えっ?」
ハッと我に返って、そこが寮の部屋だと思い出した。あぁそっか…さっき寮に帰ってきて、荷物を下ろして椅子に座って…そのまま放心してたんだ、俺。
「あぁ…悪い。何?」
「……。」
倉持は俺を気味悪げに睨むと、紙の束をバサリと俺の机の上に放り投げた。
「提出物。持ってきてやったんだよ」
「あー…サンキュ」
「……で?」
「え?」
倉持が腕を組んで話し込む体制になったから、俺はぎくりとした。
「年明け早々、今度は何の悩み事だよ。」
「え…別に」
「さっきあんだけ魂ぬけてて別にってこたねーだろ!寝正月で腑抜けたかテメェ!」
「あー、うん、そうかも」
「おま…」
チッ、と舌打ちをぶつけ、倉持は踵を返す。
「もういいわ。練習までに切り替えとけよ!」
そのまま乱暴にドアを閉めて部屋を出て行って、俺はちょっと笑いがこみあげた。お前は俺の先輩かよ…、なんて。
さっさと荷解きを済ませてしまおう、と思い直し、バッグを開けようとして…そこのストラップに赤いお守りを見つけた。無病息災…。光がくれたお守り。胸の奥が暖かくなると同時に、昨夜のことを想いだしてちくりと痛む。
…焦りすぎたかな。これをきっかけに、もう2度としたくない!なんてことになったりしたら…。
…どーしよ。
椅子に戻り、携帯を開いた。
こんなこと…誰にも相談できるわけない。よって…調べるしかない。
どうすれば痛くせずできるのか…そもそもどうやってすればいいのか…。
くそ、もっと早く調べておけばよかった。
次いつまたチャンスがあるかわからないけど…。
わからないからこそ…。
ネットを流し見て、ひとつの検索結果に目が留まった。
『処女との初体験で痛くさせないやり方・コツと注意点』
……ふうん…。…見てみるか…。
記事を開くと、ずらりと文章が並んだ。
――処女との初体験で多くの誤解がされているのは、「処女膜を破るのだから出血して当たり前・痛くて当たり前」ということです。そもそも処女膜というのは厳密に言うと蓋のように塞がっているわけではなく、小さな穴が開いている、多くは三日月のような形をしたもので…
……え?
――よって、処女だからと言って挿入時に激しい痛みがあったり、出血したりするのは、ただ乱暴な挿入のせいだったり、女性側の緊張によって十分に膣の準備ができていないために起こることなのです。
…マジで?
――ここではまずその誤解を解いていただき、次の項目で処女でも快楽を与えながら「気持ちいい」「幸せ」なセックスをするためのコツと注意点をご紹介します。
……。
俺はそのまま文章を読みふけった。
――初めに言っておきますが、現実のセックス・殊更処女との性行為においては、いわゆるアダルトビデオなどで得た知識を活用することは大きな間違いです。アダルトビデオにありがちな、激しい愛撫や挿入、処女でも簡単に濡れるといったことは絶対にありえませんので、今すぐに忘れてください。
…俺…全然ダメじゃん。
――処女との性行為において最も大切なことは、女性側の緊張を解き、気分を盛り上げてあげることです。具体的には、丁寧な愛撫や優しい言葉かけです。そして決して焦らないこと。不安は女性にも伝わってしまうからです。
愛撫に関しては、大体1〜2時間かけて、ゆっくり丁寧に体全体をほぐしてあげましょう。
い…1〜2時間…!!?そんなに!?愛撫って…何すりゃいいんだよ。
――愛撫の大まかな流れの例としては、まずは抱きしめたり、髪や体を撫でてあげます。そしてキスをしながら、女性側の心の準備が整ってから、胸などの愛撫に移るとよいでしょう。すぐに服は脱がさず、少しずつ進めてあげます。胸の愛撫で誤解されていることは、ただ揉めばいいと思っている男性が多いことです。ただ揉むだけでは女性は気持ちよくも何ともありません。ただし気分を盛り上げるために、胸を優しく撫でたり揉んだりするのは良いでしょう。感じるのは神経が密集している乳輪や乳首部分。ここは指で優しく撫でたり、舌を使って愛撫してあげましょう。女性は初めは刺激に慣れないかもしれませんが、じっくりと愛撫することでだんだんと感じてきます。
ただしくれぐれも、アダルトビデオのように力任せに揉んだり、強く引っ張ったりすることはやめましょう。痛いだけです。
…ただ揉んでたわ…俺…。
力任せとかは…してないつもりだけど…。
――続いて下半身の愛撫についてですが、処女の女性はとくに、女性器を見られるという事に抵抗を感じることが多いです。ですからまずは下着の上から愛撫をしてあげましょう。すぐに直接触れるのではなく、腰回りや脚、太腿などの愛撫から入るとよいでしょう。秘部の付近もじっくりと指で撫でてあげると、濡れやすくなります。コツとしては焦らすことです。十分に濡れていないのに指やペニスを挿入すると当然痛いです。目安としては下着越しにもはっきりと濡れていることがわかること。また、クリトリスへの愛撫で1度はイカせてあげたいところです。一度オーガズムに達することで、膣がペニスを迎えやすくなります。処女でもクリトリスならば十分に感じることができます。クリトリスの位置は女性器の上部。下着越しに場所を特定することは難しいので、女性の反応を窺うか、気持ちいい場所を聞きながら探しましょう。
じゃああれは…全然濡れてなかった…ってこと?
ああ、なんかもう、自己嫌悪で情けない…。
――オーガズムに達したら下着を脱がし、女性器もしっかりと濡れていますが…焦ってはいけません。ペニスを挿入する前に、しっかりと指でほぐしてあげましょう。処女の女性はまだそこになにも挿入したことがないわけですから、ペニスなんて太いものはいきなりは入りません。初めは1本の指で解してあげます。十分に濡れていれば、指1本なら痛みはほぼないでしょう。少し解れてきたら指を増やし、2本の指でも無理なく挿入できるくらいに解れたら、いよいよペニスの挿入です。
…ここまでで1〜2時間?俺…愛撫なんてまともにできてなかったんだな…。
――とはいっても、未開発の処女の場合挿入で感じることはほぼあり得ません。それどころかここまで膣を解しても、まだ痛みがある場合があります。その場合、「ゆっくり優しく」なんてしてはいけません。
…え?
――それはただ痛みを長引かせるだけだからです。ガムテープを剥がすとき、ゆっくりと剥がすより、一気に剥がしてしまった方が痛みは一瞬で済みますね?それと同じで、挿入が進んでいる間はずっと痛みが続いている状態です。コツとしては、膣入り口にペニスをあてがったら、約8割ほどを一気に挿入します。挿入してからも、すぐに動いてはいけません。挿入したまま動かず、女性にキスをしたり胸に愛撫をしたりして、気持ちを落ち着かせ、快楽を思い出させてあげましょう。動かすのは十分に女性が落ち着いてから。動いてもいいか?と確認してあげましょう。
……なるほど…な。
携帯を閉じ、深く息を吐く。よくわかった…次こそは…ちゃんと…。
……。
…とりあえずトイレ行ってこよう。
***
始業式――。
「御幸?どこ行く…」
「ちょっと用あるから先行ってて!」
呼びとめる倉持に背を向けて、俺は教室を飛び出した。
とにかく…気まずくなる前に光と話を…。
「玉城いる?」
1Aの前で人を捕まえてそう訊くと、A組の奴であろうその男は、ちょっと迷ったように顔をひきつらせた。
「え…玉城さん…ですか…」
あ…そういや、野次馬除けで団結してるんだっけ…このクラス。
「今はちょっと…」
「あ〜、田島君!その人は大丈夫だよ〜!」
突然明るい声が響いて、田島、と呼ばれたその男子生徒は不思議そうに振り向いた。
「御幸せんぱ〜い!あけましておめでとうございます!今年もカッコいいですね!」
「う…卯月。」
よお…、とあいさつしながら、いやでもこいつ、結構いいとこあるんだよな、と思い直す。今だって助けてくれたし。
「光〜〜!いとしの…」
「こら!」
ぺちん、と卯月の頭を小突いた鷹野。た…助かった。
「内緒って言ったでしょ!」
「あ〜、そうだっけ?」
「何?真…」
頭を擦る卯月の元に、光がやって来た。光は俺に気付き、あ…、と表情を固める。や…やばい。すでにちょっと気まずさが漂ってる。
「ちょっと…話せる?」
「…うん」
…よかった。
ふたりで着かず離れずの距離で歩いて、いつもの場所…校舎裏の非常階段にやって来た。人がいない場所と言えばここだ。
そこに着くなり俺は光を振り返った。
「…ご、ごめん。」
「え…?」
「なんか…無理やり…」
「……。」
光はきょとんとして、顔を赤くして俯いた。
「先輩のせいじゃ…。」
いや…俺のせいなんだよ。
「けど…無理させたから」
「……。」
「痛かった…よな。」
「……。」
「…もう…したくない?」
光は目を伏せ、戸惑うように唇を引き結んだ。
「し…たくない…とか…よく、わかんなくて…」
「……。」
「…でも…」
「……。」
「その…せ、先輩の…こと……好きだから…」
「…っ…」
「触ったり…キス…したり…するのは」
「……。」
「…う 嬉しかった…し」
…言葉が…出てこない…。光が可愛すぎて…愛おしすぎて。同時に自分がどれだけ邪だったか…胸が痛むけど。
「…でも…」
光は躊躇いがちに言葉をつづけた。
「まだ……怖い…かも」
「……。」
…だよな〜…。
「…痛くしてごめん。」
「いえ…」
「俺も初めてで…よく知らなくて」
「……。」
とにかく…ここは正直に…。
「俺はやっぱり男だから…したいけど…」
「……。」
「無理にするつもりはないし、光が嫌ならしない。」
「……。」
「それより…これがきっかけで、気まずくなったりしたら嫌だと思って」
「……。」
「…大丈夫?」
黙り込んでいる光の様子を窺うと、光は赤い顔のまま俺を見上げ、こくこくと小さく頷いた。…ほんとかなぁ。
「…光のこと好きだし…大切にしたいから」
「……。」
「まずは仲直りしたいんだけど…」
「……。」
「いい?」
…こくん。光が頷いたのを確認して、俺は彼女に歩み寄り、手を取った。
「…キスしていい?」
「…うん」
了承を確認してから、唇を重ねる。まだぎこちない…、やっぱ、まだ早かったのかも。
唇を離し、光の頭を撫でた。
「少しずつ…やっていこう」
そう言うと、光はやっと安堵したように微笑んで、頷いた。
そこへ予鈴が鳴って、やべ、と顔を顰める。
「じゃ…俺部活だから…」
急に焦る俺を、光はおかしそうに見つめて頷いた。その笑顔がやっぱ可愛くて…
「…そこまで」
そう呟いて、光の手を引いた。
「……。」
校舎の角まで…。手を繋いで歩く。小さな、柔らかな手…。離したくない。
「やべ〜正月で一気に太ったわ」
「今日練習キツイよな〜」
! ヤベッ…
ぱっと手を離した直後、校舎の角から現れる麻生たち…。
「……御幸?」
「何してんの?」
じろじろと不審そうに俺を見る麻生たちの目が、はっと見開く。
「……。」
俺のすぐ横を、光は無関係を装った澄ました顔で、足早に追い越していった。
「……。」
「…え…玉城さんと一緒に?」
「ここで何を…?」
「…いや知らないけど?たまたま通りかかったんだろ」
「……。」
「……。」
疑いのまなざし…。やべぇ、さすがにバレたか?
「…あ〜腹減った!お先〜」
「絶対怪しい…」
「な…」
「でもまさか…な」
ぎくり…。…まあこうなったらしらを切りとおすしかない。
俺は気に留めないふりをして、寮へと急いだ。
***
「なあ!今日の昼あそこで何してたんだよ!」
「やっぱ玉城さんと一緒にいたんだろ?」
「……。」
やっぱ無理があったか…。
夕食の時間、麻生たちがしつこく質問攻めするおかげで、倉持やゾノまでも嗅ぎつけて詰め寄ってきた。
「なんやと!?ホンマか御幸!!」
「前もそこで玉城さんと一緒にいたよなァ?お前…」
「やっぱ付き合ってんの!?」
「え!?キャップに彼女!?」
「玉城さんと…!?」
「マジ?」
あ〜〜…1年にまで広まって…
こうなったらもう…仕方ない…。
「…そーだよ!一緒にいたよ」
「!!!」
俺が声を上げると、食堂は水を打ったように静まり返った。
「…付き合ってんのか!?」
身を乗り出す倉持。息を飲む他の面々。
「…付き合ってねーよ。」
「じゃあなんで…」
「俺が呼び出したんだよ。」
「は…?」
「…告ったの!」
あぁもう自棄だ。どうにでもなれ。
「…はああぁぁ!?」
「そ、それで!?」
「付き合ってねーつってんだから察せよ!フラれたんだよ!」
「えぇぇマジ!?」
「何度目だよ!」
「3度目だよ悪ぃか!ほっとけ!」
どんぶりのご飯を掻き込んで、俺は席を立つ。
「とにかく…そういうわけだから騒ぐなよ!あっちに迷惑かかるから」
「……。」
「……。」
「……。」
あっちに迷惑…、というところで男共はようやく口を噤んだ。
こりゃ…本当のことがバレた日には、めちゃくちゃ面倒くさいことになりそうだな。
ま…しょうがないけど。
あんな可愛い子と…恋人になれたんだから。このくらいなんでもない。
冷たい夜風に吹かれながら、寮の自室に向かった。
あーあ…光に会いてぇな…。