「あー……。」

「………。」

「………はぁ…」

「………。」

「……あーあ……。」

「…ッダアァ!クソ鬱陶しい!なんなんだよさっきから!」
「あ?」

倉持の怒号で気が付いた。自分がうだうだとため息をついてぼやいていたこと…。
麻生たちに見つかりそうになってから、学校で光に会えなくなって…先週スマホを届けに行ったときを最後に全然会えていない。風邪は治ったらしいことは電話で聞いたけど…光に会いたい。手に触れたい。キスしたい。とにかく会いたい。

…まずい。俺、かなり腑抜けてる。

「…ごめん、なんでもない」
「あぁ?なんでもないってお前…」

おかしいだろ、という倉持の声を背に、バットを持って部屋を出た。
こんなに抑えが利かなくなるなんて…やっぱ彼女作るなんて気が早すぎた?強引に告白して付き合い始めたけど…でもそうしなきゃ、誰かにとられると思ったし…手遅れになりそうで。
どうすればいいんだ…光は「自分のために時間を割かないで」と言ってるし、完全に俺の問題。俺の自制力の問題。こんなに自分がダメになるなんて思わなかった。光の為に内緒にしなきゃいけないのに…こんなに会いたい会いたいばっか思ってて、ちゃんとやれんのか?俺。

悶々としながら土手の外れまでやってきて、素振りを始めた。明日から中間テストが始まる。だから、一夜漬けでも最後の詰め込みをしなきゃいけないのに…。ちょっと体を動かして頭をすっきりさせたら帰って勉強しよう。そう言い訳のように頭の中で繰り返し、素振りをした。

…光、今何してるのかな。
って、勉強してるだろ、あいつのことだから…。…いや、仕事かも。
……鳴から電話かかってきてたりして…。

ポケットから携帯を取り出し、開く。着信もメールもない。当たり前だよなと思う気持ちと、ちょっど残念な気持ち…俺ばかり光のことを考えているようで、焦る。そのうち、やっぱり別れよう、ってあっさりと言われてしまう気がして…

――メール受信中。

突然画面が切り替わって、俺は息を飲んだ。
『メールを受信しました』
確認ボタンを押し、メールを開く。そして…思わず口元が緩む。

――
from:光
title:無題
本文:もしかして土手にいる?


顔を上げ、マンションを見る。部屋から見えたのかな…。
俺は返信ではなく、電話をかけた。さほど待たずに、光が出た。

『もしもし。当たり?』
「当たりだよ。」

ふふふ、と笑う声が耳元で響く。

『ねぇ、手振ってみて。』
「やだよ。俺不審者じゃんか」
『いいじゃん、お願い。』

…しょうがないなぁ。
マンションに向かって手を振ると、また小さく笑う声がした。

『ちょっと動いてるの見えた。』
「マジ?」
『私は?見える?』
「わかんねーよ、さすがに。」

だよね、と笑う声。さっきまで悶々としてたのに…俺、もう顔が緩みっぱなし。

「…今何してた?」
『テスト勉強。』
「はは、やっぱり。」
『当たり前でしょ。むしろ先輩は勉強しなくていいの?』
「帰ったらやるよ。」
『ふーん…』
「でも寮だとうるさくて集中できねーんだよな〜」
『光舟?』
「いやあいつは静かすぎるほど静かだけど…他の部屋の騒音がこっちまで響いてくるから」
『騒音?』
「沢村が叱られてる声とか。」

また光がちょっと笑って、俺もつられて笑う。

『じゃあ…うちで一緒に勉強する?』
「え?」

思わぬ申し出に一瞬思考が止まった。
一緒に勉強…って。…いかがわしい妄想をせずにはいられない…。

『テスト期間中は午前放課だし…ダメ?』
「…いや…、…あー…」

だけど…最近会えてないし…

「…じゃ、そうしようかな…」
『うん。』
「…寮で昼飯食ったら行くわ」
『わかった。』

どんな顔をしているのか…まるでわからない落ち着いた光の声。

『待ってるね。』

でも、待ってる…なんて言われたら、ドキドキせずにはいられない。

『じゃあもう、勉強に戻るから。』
「おう…」
『…また明日。』
「また明日…」

電話が切れ、胸の奥に喜びがあふれてきて――

「…っしゃ」

俺は小さく声を漏らした。



***



1日目のテストを終え、昼食を急いで終えて、俺は勉強道具を持って光のマンションへと向かった。倉持達に怪しまれないよう、バレないうちに抜け出したかったのだ。
インターフォンを鳴らし、エレベーターに乗って3階で降り、303号室のインターフォンを押すと、少し間が空いて、光が出てきた。

「…久しぶり」

そうはにかむ光に、俺も口元を緩めて、久しぶり、と言った。
部屋着らしきTシャツに制服のスカート姿。暑くて上だけ着替えたのかな。そんな何気ないことも可愛い。

微かに甘い香りがする光の部屋へ入ると、すでにテーブルにはノートや参考書が広げられていた。

「座ってて。」

光はそう言って、冷蔵庫からお茶を出し、グラスに注いで持ってきてくれた。ありがとう、と言いながら俺も勉強道具を出す。

「光は明日の教科何?」
「数学と、現国と…英語。先輩は?」
「公民、英語、数学。」

そんなたわいもない話をしながら、思いのほか黙々と勉強が進んだ。静かな部屋に光のシャーペンの音やページをめくる乾いた音が響き、自分でも驚くほど集中できた。集中が途切れたのは、夕暮れ時。光が立ち上がって、部屋の電気をつけた時だった。いつの間にか薄暗くなっていた部屋が一気に明るくなって驚き、俺は時計を見上げた。もう17時近く…3時間以上も経っていた。

「うわ、もうこんな時間?」

驚く俺に微笑む光。

「時間大丈夫?」
「ああ、夕食は7時だから、それまでに帰ればヘーキ。」
「そっか…」

光はテーブルに戻ってきて座ると、ペンを持つでもなく膝を抱えて座った。俺は英単語帳を閉じ、光を見る。

「休憩する?」

もう3時間くらい勉強してたし。こんなに勉強に集中したのは初めてだ。
光はこくんと頷いて、ちょっとお茶を飲んだ。

「そういやさ。」
「?」
「奥村と親戚って言ってたけど…仲良いの?」

光は全寮制のイギリスの学校にいたんだから…親戚と言われてもどの程度の距離感なのかピンとこない。

「うーん…」

光は膝に腕を組んで顎を載せ、呟いた。

「実際最後に会ったのは、私が10歳の時の年末だったけど…」
「……。」
「ときどき…手紙をくれてて」
「手紙?」
「…いつか絶対なんとかするから…大人の言いなりになるな、諦めるなって」
「……。」

あいつ…そんなこという奴なんだ。なんか意外…

「…それって結婚のこと…だよな?」
「うん…」
「……そうなんだ。」
「……。」

やっぱ光のこと好きなのか?あいつ。…まぁ特別ではあるんだろうな、俺に食って掛かってきたくらいだし。

「光…さ、」
「…?」

きょとん、と俺を見るガラス玉みたいにくっきりとした青い瞳。

「あれから…何も言わないけど。大丈夫なのか?」
「……。」

光はちょっと俯き、口を開いた。

「お父さんは…仕事でイギリスに行ったから…あれから会ってない。」
「……。」
「私が逃げたから…婚約者ともめてるんだと思う」
「……それで…どうなるんだ?」
「わからない…けど…徹君…事務所が、色々手を尽くしてくれてるから…」
「…そうか」

結局、俺にできることなんてない。ただの高校生だし…事情もよくわからないことだらけだし…。
だけど、これだけは言える。

「まだ何もできない俺が言うのも勝手だけどさ…」
「…?」
「…そいつと結婚しないで。」

手を握って真っすぐに目を見て言うと、光は顔を赤くして、少し涙ぐんだ。
俺は身を乗り出して、光を抱きしめた。ゆっくりと遠慮がちに手が背中に回り、俺を抱きとめる。やっと触れられた…もっと触れたいのに、時間も余裕もない。
光の髪を撫でながら、むくむくとくすぐったい靄が腹の底から沸き上がるのを感じる。
なんか…つけこむみたいでちょっと気が咎めるけど…。
でも大切にしたい気持ちに嘘はないから…。

抱きしめている細い体を少し離し、光の顔を見つめた。脳内では読み漁った付け焼刃の知識が駆け巡る。
まずは安心させる…。軽いボディタッチやキスから…。
頬に手を添え、光の反応を見ながら、ゆっくりとキスをする。軽いキスを何度かした後、今度は舌を使って…。光はぎこちなくそれに応えてきた。ここまでは…学校でも時々していた。

「……。」

光…可愛い。よく考えると…光とこんなことしてんのって、なんだか変な感じだ。出会った頃のことを思いだすと、なおさらそう感じる。だけど…すげー嬉しい…。
舌を絡ませ、光の身体の力が少しぬけてきたところで手を繋ぎ、ゆっくりとベッドに押し倒す。繋いでいる手を上に上げて抑え、袖口に覗く二の腕の裏を唇でくすぐると、光はちょっと戸惑うように俺を見つめたけど、されるがままになった。腕、頬、首筋…唇でそこを撫でながら、時々舐める。ああ…何で光って、どこもかしこもこんなに柔らかくていいにおいがするんだろう。やばい、とまんない…。

「…一也せんぱ…い」

ちょっと不安をにじませて俺を見つめる光。…ダメかな。

「…しないよ。」
「え…?」
「でも、怖くないように…ちょっとずつ慣らそう。」
「……。」
「いい?」

そう尋ねると、光は少し迷ってから、唇を引き結んで頷いた。
その唇に柔らかくキスをして開かせ、ゆっくりと舌を絡ませる。終わりも目的もない、ただの触れ合いみたいに。

キスを続けながら手を滑らせ、首筋から鎖骨、そして胸の上を軽く撫でた。そして腰に回し、また胸へ…胸の周りを撫でながら、光の身体の緊張が解けるのを待つ。まだ服は脱がさずに…すぐに胸を揉みしだくのもダメ。俺の独りよがりじゃない…光が感じているところを見たい。

…はぁ…

光がわずかに深く呼吸した。それだけで小さな喜びが胸をよぎる。快楽…まではまだいってないのかもしれないけど、こんなふうに息を乱すのは、前の時にはなかったことだ。

少し目を伏せて、頬を火照らせて吐息を乱す光。いつも涼しい顔をしているのに、今は少し余裕がなくて…

「…可愛い」

気付けばそう囁いていて、光が驚いたように一瞬俺を見上げ、恥ずかしそうに顔を背けた。その白い首筋に唇で触れ、手のひらで胸を包んだ。柔らかな感触を手のひらで感じながら、光の吐息を耳元で感じる。
前の時より断然、そっちの気になってる…よな?
だって、こんなに息が荒くなってる。

――裸を見せることに抵抗があるので、まずは脱がさずに手を服の中に入れて愛撫を――

付け焼刃の知識を思い起こしながら、手を腰に滑らせ、ちょっと捲れたTシャツの裾から、緊張しながらその中へと手を滑り込ませた。

「…っ…」

ちょっと体をこわばらせた光は、それでもやめてとは言わず、手を頭上に投げ出した無防備な格好のまま俺の手を受け入れる。俺にこんなことされてもいいと思ってるんだ…。そう思うとすごく興奮する。
驚くほどすべすべの柔らかな肌の上を滑って、わき腹からいよいよ胸を覆う下着に触れる。ざらざらした布の感触。丸い形のそれを手のひらにおさめ、やわやわと揉みながら首筋にキスを繰り返す。

「……。」

やっぱ揉むだけじゃ気持ちいいわけじゃないんだ…。
光の反応を窺うに、緊張や羞恥心は感じてはいるものの、気持ちいい、という様子はなかった。
少し残念に思うと同時に、前よりも冷静に観察できている自分に感心した。

手を滑らせ、胸全体を軽く撫でつつ、光の吐息が乱れるのを聞く。興奮してるのかな…ムラムラしてるのかな。次はどんなことされるんだろうとか…どこを弄ってほしいとか…考えてんのかな…。

知りたいな…光が考えてること。

手で胸を撫で、ゆっくりと、下着の中に手を侵入させる。

「っ…」

光は恥ずかしそうに手を握りしめ、そっぽをむいている。
ちょっと急ぎすぎかな…。だけど、そろそろ敏感な部分に触れて、「気持ちいい」という意識を芽生えさせたい。

下着の中に手を滑り込ませると、すぐにまだ柔らかな小さな蕾を見つけた。それを指先で優しく撫でる。指先に転がされる蕾が、少しずつ固くなっていく。

「……。」

光はちょっと目を開けて、何か違和感を感じているように瞬きながら唇を舐める。
気持ちいいのかな…まだかな。しばらく愛撫してれば、だんだん感じるようになるって読んだけど…。
蕾は固くなり、俺は指の動きを少し早めた。蕾をくりくりと弄りながら、また首筋に舌を這わせ、キスをする。

「……。」

蕾を…。

「……っ…ん…」

…え?

顔を上げると、光は口元を押さえて真っ赤になっていた。今の声って…光の…声?気持ちいいってこと、だよな?
ぶわっと熱が腹の底に渦巻いた。俺はすぐに指での愛撫を再開した。クリクリクリ、と蕾を撫で続ける。

「…は………。」

息がどんどん荒く…。もぞ、と光は足を縮こませる。感じてる…。光が感じてる。

「…あっ、…待って!いやっ…」

突然光が俺の腕を掴んで起き上がった。スカートをおさえ、俯いて…ちょっと涙ぐんで顔を真っ赤にしている。

「どうした?…気持ちよくなかった?」
「……。」

光は恥ずかしさでいっぱいいっぱいという顔で体を縮こませた。

「光?」
「……や…。」
「どうしたんだよ。」

光はとうとう涙をこぼした。

「…嫌だった?」

ふるふる、と首を横に振る。

「じゃ、怖かった?」

また首を横に振る。じゃあなんなんだ…。途方に暮れた時、光はスカートを握りしめて呟いた。

「……で…」
「ん?」
「……でちゃっ…た」

そう呟いて、顔を真っ赤にして、隠すように背ける光。出ちゃった…って…

「…いい?」

脚を撫で、指先をスカートの中にちょっと入れると、光は慌ててスカートをおさえる。

「き 汚い…から…」
「汚くないって。」
「だ…だめ…」
「大丈夫だから…」

手を絡めとり、その隙にもう片方の手をスカートの中に滑り込ませて…秘部に指先が振れた。そこは下着越しにもわかるほど、ぬるぬるしたものが染み出ていて…俺が手を引き抜き、濡れた指をくっつけて離して、糸を引くその透明な蜜を見た時――光は息を飲んで硬直した。

「気持ちいいってこと…だろ?」

そう尋ねると、光は戸惑いをあらわにして唇を震わせる。何を言うべきかわからない――そんな顔で。

「…もしかして、光さ」
「……?」
「ひとりでしたこととか…ないの?」
「え…?」

光は目を泳がせて、また真っすぐに俺を見つめた。

「…何を…?」

その答えがすべてだ…。

「…あー…なるほどな…」
「え?何が…?」
「いや、なんか色々納得がいった」
「なにそれ?全然わかんないよ…ひとりでなにをするの?」
「だから、オナニーとか。マスターベーション。自慰行為。」
「………。」

きょとん…という言葉がふさわしい。曇りなき眼で俺を見つめる光に、俺は苦笑した。

「まぁ、いいよそれは。」
「え…?」
「とりあえず…続きしよう。」
「え…ま、待って」

光を押し倒し、また服の中に手を入れて胸に触れる。

「私…下着…が…」
「だから、気持ちよくなるとこうなるんだよ…大丈夫だから、そのまま感じてみて。」
「……。」

自分だってよくわかってないくせに、俺は知ったようなことを言って、また胸の蕾を撫で始めた。

「……。」

「……。」

「……は…」

…やっぱり、ここ、気持ちいんだ。
光の腰がだんだん浮いて…まるで求めるみたいに胸を突き出してくる。

「……っ…ん…。」

やばい…嬉しい。気持ちいいんだ、俺の手で…この愛撫で。
下半身をおさえ、もじもじさせる太腿を撫で始める。するとまるで待っていたかのように、少し足が開く。こうすればよかったんだ…俺は何も知らないで、焦っていた。5か月前…こうできていたら…。なんて、後悔しても遅い。今、光がよがってる…俺の手で。その事実が大事だ。

「……。」

息を荒げ、俺を恍惚とした目で見つめる光。俺は太腿から――下着越しに秘部へと指先を滑らせる。

…濡れてる…。

指に絡みつくぬるぬるとした蜜。こんなに…濡れるんだ、女の子って…。下着越しなのに、びしょびしょ…。その先の形がはっきりとわかるくらいに布が張り付いて…。
溝をゆっくりと撫でながら、光の反応を窺う。目を閉じて震える光が、ちょっと吐息を零す。指先には変わらない柔らかな感触。やっぱりよくわからない…クリトリスの場所…。

「…どこが気持ちいい?」
「…え…?」
「ここ?」

秘部を撫でながら訊くと、光は目を伏せて瞬き、考え込む。…違うっぽいな。

「じゃあ…この辺?」
「……。わかんな…」
「…どう?」

指をゆっくりと動かしながら尋ねると――一瞬唇が震え、息を飲んで…その直後。

「…あっ…もうちょっと…」
「え?」
「…う 上……かも…」

ほんの少し指をずらすと、肩を竦めて体を震わせる光。

「……そこ……。」

震えながらそう呟く光は、どうしようもなく可愛くて…エロくて。
俺はそこを、ゆっくりと優しく指先で撫でた。

「…っ…」

時々息を飲んで腰を震わせる光。
少し指の動きを速め、左右にこすりつけ――

「…っ、ん、…っ」

腰が浮いてきた…。気持ちいいんだ…。

「…あっ、いやっ…怖い…!」

光が俺の腕にしがみついたとき――びくん、びくん――と光の身体が震えた。

「…っあ…、な…なに…?…いま…っ」

息を荒げる光を見て、俺は――

「…あっ、や…一也先輩…!」

思わず覆いかぶさって首筋に強くキスをして、びしょ濡れの下着の中に手を入れた。
今、光…イッた。イッたんだろ、今のって…。オナニーすらしたことがない光が、俺に弄られて…初めてイッた。こんなの…興奮しない方が無理…!!

「や…っ待って…!待ってよ…!」

俺の腕を掴んで足を閉じ、光が抵抗して、俺は慌てて手を離した。

「ご…、ごめん!光…ごめん」
「……。」

爆発しそうな理性を何とか押さえつけ、手をあげたまま起き上がる。光も身を起こして、少し呆然としたまま俺を見た。

「いま…。」
「……。」
「……。」
「…イッた…んだと思う、けど」
「…いった?」

…ほんとに何もしらない…のか?ってことは全部、俺が教えないといけない…?…俺も童貞だぞ、荷が重い…けど、他の奴にされるなんて死んでも嫌だ。

「…気持ちよかっただろ?」
「……。」

光は目を瞬いて、おそるおそる、頷く。

「それでいいんだよ。…っていうか…そうなってほしかった。…年明け…したときも。」
「……。」
「俺が下手で…って言うか何も知らなくて。痛い思いさせたから…」
「……。」
「…ちょっと…調べて……どうすれば光が、気持ちよくなれるか…」
「……。」
「……。」
「…私だけ?」
「へ?」

光はうるんだ目で、赤い顔で…俺を見つめた。

「…一也先輩は…気持ちよく…ならないの?」
「……。」
「…えっち…しても…」
「……え?っと…、…ん?」
「…だって…さっきから私ばっかり……。」

スカートを握りしめて恥ずかしそうに俯く光。待って…理性が吹っ飛びそう。

「…ごめん…私…なにもしらなくて…」
「いや…別にそれは…」
「…ほんとは、私も…調べたり、とか…しなきゃいけないのに…」
「いや!しなくていい!」

ぎゅっと手を握りしめてつい身を乗り出すと、光は肩を竦めて目を丸くし、瞬いた。

「光はそのままでいいから。」
「…そ…うなの…?」

今更恥ずかしくなりながら頷く。この初心さは、二度と戻ってこない。知識豊富なエロい光も見てみたいけど…これはこれで…俺好みにできるし…なーんて…。

「…じゃあ」
「え?」
「俺も…してもらってもいい?」
「……。」
「…っていうか…できる?」

前したときは、俺のアレを見てめちゃくちゃ怯えてたけど。
光は唇を舐めて俺を頼るように見上げた。

「…どうすれば…いいの?」

………。…たまんねぇ…。

「じゃ…とりあえず…」

いきなり実物を出すとビビられそうだから…

「…触ってみて。」
「……。」

ベルトを外し、ズボンを脱いで、小さな手を絡めとって、はち切れそうなそこに導いた。ふくらんだそれに、ひかりはおそるおそる、指先で触れて…つっ、と撫でて、手を引っ込める。

「いや…もっとだよ。もっと。」
「ど…どうやって?」
「…こうして…こういうふうに」

また手を掴んで導いて、手のひらを肉棒に押し当て、上下に擦るよう誘導すると、押し付けられた柔らかな細い手がびくりと強張った。

「え、いやっ…。」

いやっ…て。

「……。」

おそるおそる、ぎこちないけど…光はゆっくりと肉棒を撫で始める。息を飲んで、真っ赤な顔で、恥ずかしそうに、真剣な顔で。光が俺のを触ってる…この光景だけでヤバい。

「……。」

真剣…。手の動きはぎこちないし、物足りないし、イケそうでイケないのがもどかしいけど…可愛い。

「…ちょっとストップ」
「え…?」

手を止めさせ、俺はいよいよ肉棒を取り出した。そそり立つそれを、光は息を飲んで顔を背ける。

「ちゃんと見て、慣れないと。」
「……。」

泳ぐ目でチラチラと見て、顔を真っ赤にして背ける…。可愛すぎ。ほんとに初心なんだよなー…。可愛いけど…ちょっともどかしくなってきた。

「触ってみて、慣れて。」
「え…、て…手で?」

…口でもいいけど…なんて言ったらひっぱたかれるかな。

「…うん、手で。」
「……。」

光はそっと手を伸ばし、おそるおそる肉棒に触れ――そっと掴んだ。そして弱弱しく、にぎにぎと…。…それ、逆にマニアック。

「こう…上下に、してみて」
「…こう…?」
「もっと早く…もうちょい強く」
「……。」

指示を与えると今度は真剣に肉棒をしごき始めた。
あ…やべ…状況に興奮してるのもあるけど、自分の手より断然…柔らかくてすべすべで…気持ちいい。

「…気持ち…いいの?」
「…すげぇいい」
「……。」

赤くなって俯いて、肉棒をしごき続ける光。…その姿に欲情されてんの、気付いてねーのかな…。
暫くして熱がこみあげてきて、俺は光の手に自分の手を重ねた。

「…っ、出る…」
「えっ…?」

光が状況を飲み込めないうちに、手の中にどろりとした白濁液が吐き出された。

「……。」

ぽかん、と自分の手を見つめる光。

「…ごめん、ティッシュある?」
「え?あ、…う、うん」

光はベッドから降り、ティッシュを箱ごと持って戻ってきた。俺はそれで光の手を拭いて、自分の手と肉棒も拭く。厳重にティッシュでくるんでそれをごみ箱に捨てた後、光がどこか呆然として俺の股間を見つめていることに気付いた。

「…何?」
「え…!あ…。なんか…違う…から」
「……。」

ここからか…。

「…あとで教える」
「え?」
「つーか色々知らなさすぎ!俺ドキドキしっぱなしだっての」
「…ご、ごめんね」
「いいんだよそれで!可愛いから」
「は…?」

訝しむ光を抱きしめて、髪を撫でて、ぬくもりを共有する。光も俺に、今までで一番強く、かたく、抱き着いてきた。

「…こんなに誰かを大事にしたいと思ったの、初めてだ」
「……。」

――ドクン、ドクン…
その心音が自分のものなのか、光のものなのか…それもわからなくなっていた。

「絶対大事にするから」
「…うん…」

光は俺を抱きしめる力を強め、肩口に顔を埋める。

「…大好き…」

…へ…。
ひときわ心臓が跳ねて、俺は返事の代わりに咄嗟に、ただ強く光を抱きしめた。俺も、なんて言うのは軽々しい気がして…この気持ちが光に伝わるように、強く強く念じた。

――ピリリリリリ

突如無機質な着信音が響いて、俺たちは体を離した。俺はテーブルの上から携帯をとって、開く。そこに表示された「倉持」という名前と同時に現在の時刻を見てぎくりとした。

「…もしもし」
『もしもしじゃねーよ!今どこだよ!』

倉持の怒号が聞こえたらしく、光も目を丸くした。

「わり…外だわ」
『外ぉ?』
「すぐ戻る!すぐ!」
『夕飯抜きでも知らねーぞ!!ミーテイングまでには戻れよ、いいな!?』
「わかったわかった!じゃあな」

電話を切り、ズボンを履いてベルトをし、光を振り返る。

「ごめん、じゃあ…」
「うん…」
「……。」
「……?どうしたの?」
「ちょっと待て…こっち向いて」

光に横を向かせ、白い首筋を見る。さっき一瞬見えた気がした、首筋にくっきりと落とされた、赤い――

「…うわ…ごめん…」
「え?」
「ここ」
「何?」

鏡見て、と伝えると、クローゼットを開けて全身鏡を覗き込む光。首筋の赤い痕を見て、そこをおさえながら俺を振り返る。

「どこかぶつけたのかな?」
「…いやいやいや違うって」
「え?」
「それ…キスマーク」
「キスマーク…?」

光はもう一度鏡を見る。

「ごめん!どのくらいで治るかわかんねーけど…完全に無意識で…」
「痛くないよ?」
「…そういうことじゃなくて…」
「…何?」
「だから…人が見れば、わかるかもしれないだろ。」
「……?」
「…さっきみたいなこと…したってことがだよ。」
「……。」

はっ、と息を飲んで、じわじわと顔を赤くする光。

「……襟で隠す」
「…そうして。」

ごめんな、ともう一度謝って、荷物をまとめて玄関へ。

「じゃあ…」
「うん…また…。」

また今度、いつ会えるかわからないのに…俺も光も笑顔で、最後にキスもして、別れた。

 


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