光のマンションに着くと、光は制服姿で俺を出迎えた。
昨日と同じく一緒にテスト勉強を始める。だけど、昨日ほど集中はできなかった。…昨日のことが頭の中をよぎって。

今日も昨日と同じ流れにできたら…もしかしたら今日は、最後まで……。

ちゃっかり期待して忍ばせてきた小箱を思い浮かべる。光も…今日も普通の雰囲気だし。嫌そうな感じとか、拒否る感じはないし…。

…いやいや、まずはテスト勉。赤点とったら追試…主将でそれはまずい。

邪な思いを何とか振り払って、ようやく日が暮れた。

「ん……。」

光がペンを置き、手を組んで上に伸ばし、ゆっくりと伸びをした。
突き出される胸の形…袖口から覗く白い二の腕…細くて柔らかそうな身体…。
俺はこっそりと生唾を飲む。

「ふぅ…。」

光は息を吐き、腕を下ろした。
それから邪気のないまなざしで俺を見る。

「明日の範囲、終わった?」
「ん、あぁ、うん」

俺は曖昧に返事をして、教科書を閉じた。

「…そういえば現国の片岡先生って、野球部の監督なんだよね?」
「あぁ…そうだよ。」
「片岡先生、怖いってホント?」
「ホントも何も、見た目があの通りじゃん。」
「えー、でも、片岡先生優しいじゃん。」
「あ〜…そう…羨ましいぜ」

それは光が野球部の男じゃないから…。言っても信じないかな。
遠い目をする俺を光は訝し気に見つめている。

「英語の高島先生も野球部なんだよね?」
「あぁ。俺を青道に誘ったのもれ…高島先生。」
「れ?」
「いやなんでも。」

礼ちゃん、なんて呼んだら光の信用を損ねる気がして、なんとなく避けてしまった。

「そうなんだ…高島先生に…。」
「…何?」
「ん…前に成宮さんが、一也先輩を稲実に誘ったけど、青道に行くからって断られたって愚痴ってたから」
「……。」
「成宮さんより高島先生を選んだんだ〜って思って」
「ちょ…変な言い方するなよ。」
「ふふ、冗談だよ」

俺、からかわれてんのかな〜…。

「環…クラスの友達がね」
「? うん」
「御幸先輩のことカッコいいって」
「…あ そう」
「でもね、きっと将来はプロ野球選手になって、美人なお姉さんの女子アナかモデルと結婚するんだ〜って言ってた。」
「…俺それどういう反応すればいいの?」
「うーん…どう思う?」

なんだこれ?俺試されてる?

「…半分当たってるかな。」
「え?」
「プロ野球選手になって、美人なモデルと結婚する。」
「……。」

光を見つめて言うと、光は急に机に突っ伏した。

「光?」
「……ふふふ」

笑ってる…。

「何笑ってんだよ。」
「んふふふ…」

光は顔を上げ、ちょっと赤い顔ではにかみながら俺を上目遣いで見つめた。

「…先輩っていつも…」
「…何?」
「…優しすぎて…信じられない」
「おい、信用しろ、そこは。」
「……。」

光ははにかみながら、ちょっと困ったように目を伏せた。言われたことをホイホイ手放しで信じて、それだけで喜んでくれる単純な人間ではないのだ。きっと行動で示さないと…光は心から信じてはくれない。
だけど俺はまだ高校生。今は時間が経って、行動を起こせる年齢になるまでひたすら彼女の傍に寄り添うことしか…できない。

「光。」

手を伸ばし、光の手と絡める。

「……。」

光はそれだけで顔を赤くして俯いた。
緊張してる顔…。昨日のこと、考えてんのかな。

ちょっと身を乗り出して、光を抱きしめた。強張る華奢な体…。あ〜…早くもう少し慣れてくれないかな。せめて、脱ぐまではスムーズに行けるくらい…。

だけど腕の中で強張る細い体を感じると、さすがになにもできない…。

ぽんぽん、と背中を叩いて体を離すと、光は少し不思議そうに俺を見た。

「…何?その目は」
「え…。…ううん」

光ははぐらかすように言って立ち上がった。

「お…お茶、持ってくるね」

そう言って小走りに廊下のキッチンへと向かう光。…逃げられた?

うーんやっぱ、そういうことに抵抗があんのかな…。…つか俺今日来たのソレ目的だと思われてたらどうしよう。…まぁちょっと期待はあったけど…でも違う。とにかく少しでも時間があるなら一緒に過ごしたいと思ったし――

「…はい」
「あ、さんきゅ…」

光が戻ってきて、アイスティーを前に置いてくれた。
グラスを傾けながら、悶々と考える。
どうすれば、こう、もう少し…そういうことをする抵抗を失くせるのか…。彼女ができれば自然とそういう流れになるもんだと思っていた。まぁでも光は生い立ちも関係してんのかな…あまりにも疎すぎるもんな。やっぱ、気長に待つしかないか……

くい、と腰辺りのシャツが引っ張られて、振り返る。光が顔を赤くして俺の服を摘まんでいた。

「え……。」
「……。」

まただ…。時々こうして、光から触れてくれる。
前は手に触れてきて…その前は頬にキス。きっとそれが、今の光の精一杯。
長い道のりになりそうだなぁ…だけど、これはこれで嬉しい。
どうしたの、って聞きそうになったけど、口を噤んだ。このまま様子を見て、光のペースに合わせよう。

……。
…わき腹がムズムズする。

やっぱ手くらい繋いでも…。そう思い始めた時、光がシャツから手を離して、つっと背中に触れてきた。…我慢我慢…ここはされるがままになって…
平静を装ったまま黙っていると、光は体をもたれて、軽く抱き着いてきた。
きた…。やっと。ようやく。光から抱きついてくれたのなんて…何か月ぶり?俺はじっと耐えてされるがまま抱きしめられた。なんか、人見知りの猫を相手にしてる気分。

脅かさないようにそっと、手を光の背中に回してみる。静かに時間が流れ、言葉を交わさずとも、光の体温を感じて過ごす子の夕暮れの時間が、幸せだなぁ、と思った。
泥まみれで汗を流し、頭をフル回転させて、後輩の面倒を見、様々な問題に直面し…そんな毎日からは乖離した時間。だけど間違いなく、その延長線上にこの幸せはあった。

光が好きだ。こんな不器用な一面も。

「…先輩」
「…ん?」

ぽつりと光が話し始めて、俺は少し緊張した。

「私…、嫌なわけじゃないから…。」
「……。」

え?

「…それ…って…」
「……昨日みたいなこと」

…ドクン、と心臓が跳ねた。え、これ、誘われてる?

「ただ、…怖くて」
「…何が怖いの?」
「…よく知らないから」

つまり…セックスがどういうことをするものなのか、知識として知らないから…怖いってこと、なのか?

「…あと、先輩が…」
「…俺が?」
「……。」

光は体を離し、言い辛そうに俯いた。

「なんか…いつもと……」
「……。」
「…ちがって…」

じわじわ、じんわり、頬を真っ赤に染めていきながら呟く光。

「…それは…たぶん、俺が必死だから」
「え…?」
「…っていうか、光だっていつもと違うから!してるとき…」
「…え?そんなこと…」
「全然違うって。」
「…どう違うの?」
「そりゃ…」

…エロい…じゃなくて!

「…なんか……可愛い」
「……。」
「…いや!いつも可愛いけど!そうじゃなくてなんていうか…」
「……。」
「…とにかく俺も、余裕なんてないから…怖いと言えば俺も怖いよ。緊張するし…」
「…そうなの?」

怖いという言葉に拍子抜けしたように光が呟いた。

「そりゃそうだよ。」

キスするのだって…手を繋ぐのだって緊張する。

「……。」

少し安堵したように口を噤む光。まあ、俺の場合光のそれとは少し違う気もするけど…。
うまくできるか、とか…幻滅されないか、とか…そういうことばっか不安だ。

「…それよりさ。知らないって言ったけど…アレだよな、具体的にどういうことするもんなのか…っていう知識はあるんだよな?」

さすがにそれは、もう高校生だし…な。
一抹の不安を感じながら尋ねると、光はぽつりと呟いた。

「い…、…一応」

…一応??

「あのさー…前から気になってたんだけど…」
「……?」
「あまりにも疎すぎると思うんだけど。今までそういう…ことに触れてこなかったのか?普通はさ、…まぁ女子はどうか知らないけど、ネットとか本とかで…大体の奴は見るじゃん。」
「え?…何を?」
「……。」

…マジかよ。

「いやだから…」
「…?」
「…セッ…クス…のこと」
「……。」

光は顔を赤くして、背けた。

「…ない」
「…みたいだな」

すげー貴重なほど純情…。

「皆…知ってるの?」
「大体の奴は知ってるだろうなー…この歳になれば」
「…そう…なんだ…」

光は顔を赤くしたまま腕に顔を埋めた。

「…ごめんなさい」
「いや…謝ることでもないけど」

別にそれならそれで…教える楽しみがあるっていうか…。

「…今まで興味もなかった?」
「……。」

光は顔を上げ、思い出すように言った。

「興味…というか、触れる機会がなかった」
「え?」
「中学校は厳しいカトリックで、禁欲の教えがあったから」
「……。」
「全寮制の女学校で、外に出ることも禁じられてたし…許可されたもの以外は持ち込めないように、毎週荷物検査もあるの」
「うへぇ…」
「学校の図書館には映画を見る部屋もあったけど…閲覧できるラブストーリーはシンデレラだけだった。今考えるとおかしいね。」

光は懐かしむように微笑んでそう言った。厳しい、というわりにはそれを苦にしていた様子はなくて、むしろ楽しい思い出を語るようだった。

「じゃあ…その教えを守ってる…ってこと?」
「ううん。学校にくる子のほとんどはキリスト教徒だけど、そこまで厳しい戒律を守ってる子はほとんどいない。洗礼は受けても信仰はしてない子もいたし…私もそう。ただ、教会の雰囲気とか、讃美歌は好きだった」
「…そうなんだ」

…よかった〜…禁欲とか…俺には無理。

「なるほどな〜…なんか納得がいった」
「……?」
「俗世から離れてたからそういうことに疎いわけだ。」
「俗世…って。」

可笑しそうに笑う光の頬に触れた。柔らかな、絹のような肌触り。

「ほんとに天使みたいだな…」
「……。」

思ったことを素直に口に出すとそうなった。…沢村か、俺は。あいつのバカが少しうつったのかもしれない。
だけど、こんなに身も心も綺麗で、純粋で、どこか現実離れしてて…きっと天使がいたら、こんなふうに神秘的で美しいんだと思う。人の心を掴んで離さないんだと思う。

「……じゃあ、とりあえず怖いのが問題?」
「……。」

話を戻して尋ねると、光はちょっと考え込んだ。

「…あと、恥ずかしい…」

それは慣れるしかないのでは。

「…じゃあ…」
「……?」
「脱いでみる?」

光の顔が赤くなった。

「…えぇ…?何、言ってるの…」
「だって光、俺の裸もまともに見れないじゃん」
「……。」

光は俯いて、舌唇を噛んで――

「…わかった、いいよ…」

そう呟いた。
マジで!?…と言いたくなるのを堪え、平静を装ってネクタイを外す。

「……。」

俺がワイシャツを脱ぐのを、光は息を飲んで見つめている。

「…俺が脱がす?」
「い、いい…」

光は首を振って、俺に背を向けてブラウスのボタンを外し始めた。
靴下を脱ぎ、ベルトを外し、ワイシャツとズボンを脱ぎ捨てて――光がブラウスの袖から腕を引き抜くのを見つめた。淡い青のブラジャーの紐。背中のホックってこうなってるんだ…。
…綺麗な背中。ほんとに羽でも生えてそうなほど。ブラウスが傍らに置かれ、光はゆっくりと靴下を脱いで、スカートのジッパーを下ろす。
…ダメもとで提案したけど…光が服を脱ぐところを見られるなんて…嬉しいような、辛いような…。だってまだ、事には及べなさそうだし…。
光が立ち上がり、するり、とスカートが落ちる。形のいい小さなお尻と白い太ももが露わになり、ごくりと喉が鳴った。光がゆっくりと振り返り、俺は股間を押さえる。

「……。」

光はベッドに腰掛けた。裸になったものの…どうしよう。まともに見れねーじゃん、とか偉そうなことを言っておいて、俺だって今直視したら理性がヤバい。

「…先輩…。」

光に呼ばれ、俺も立ち上がる。

「あ、あぁ…」

そして下着に手をかけると――

「きゃっ…そ、それは脱がなくていい!」

そう慌てて言われた。その光のいっぱいいっぱいな様子に少し可笑しさがこみあげて、俺は少し冷静さを取り戻し、隣に座る。そして光を抱きしめた。直接肌が触れ合い、いつもよりももっと、ドキドキする。

「…こうすれば見えないだろ。」
「……。」

そう言うと、光の身体の力がほんの少しだけほどけた。
光も俺の背中に手を回してきて、しばらく抱き合って――そのままベッドの上に倒れた。抱き合いながら、光は俺の胸に顔を埋め、俺は光の髪を撫でた。すっ…げぇムラムラするけど…これはこれで幸せ。
…あたたかい。

それからしばらく、光のこめかみや額にキスをしたり、耳たぶや髪を撫でて…ひたすら光を大切に大切に愛撫した。するとふと、光が顔を上げて――俺をじっと見つめた。
…キスしたい。そう言われた気がして…ゆっくりと顔を近づけると、光は目を閉じた。
唇を重ね、じゃれ合うようなキスをした。長い髪をくしゃくしゃに指に絡ませて、背中から腰にかけてゆっくりと撫でて…

「…外していい?」

ブラジャーのホックを撫でながら耳元で尋ねると、こくん、と小さく頷いた。
手探りで、少し手間取りながらホックを外すと、外れたブラジャーを腕から抜き取って、ベッドの横に置く。そしてまたキスをしながら、柔らかな胸を撫でた。光は俺の肩に手を置いて、恥ずかしさを誤魔化すようにぎこちなくキスに応じる。胸の蕾に触れると、ピクリと細い肩が揺れ、そのまま蕾を転がし続けると、だんだんと胸が突き出され、ピク、ピク、と体が震えた。
ここ、やっぱ気持ちいいんだ…。もう片方の胸にも手を添え、両方の蕾を愛撫し始めた。

「あっ…。」

光の口から声が漏れた。すげぇ感じてる…。可愛い…もっと見たい。

「……。…ん……」

クリクリクリ…蕾を撫で続け、時々指で挟む。

「…っん…っ」

ヤバイ…興奮する。
蕾から指を離し、手のひらで胸全体を、蕾ごとそうっと撫でてみると…

「…ふ……っ」

ビクビクン、と体を震わせ、光は俺にしがみついた。だんだんわかってきた…どうすれば光が感じるのか。
身を起こし、光に跨って、胸元にキスをした。光は恥ずかしそうに口元に手を当てて、目を閉じて感じている。感じてる…俺の愛撫で。可愛い声を漏らして…脚をもじもじさせて、腰をよがらせて。
胸の膨らみを下から舌でなぞり、蕾を舌先で弄ぶ。

「…っ…」

だんだん光に余裕がなくなっていくのを感じて熱に酔いそうになりながら、蕾を口に含んだ。

「あ…。」

光の手が俺の髪に触れ、柔らかく指に絡ませる。それが強請っているようで、蕾を舌で弄りながら、俺は光の太腿に手を伸ばした。柔らかくすべすべな肌。その内側を撫で、少し足が開いて、俺は下に下がって光の脚を開かせた。

「…や…。」

ほんの少しの抵抗で、光は足を開いた。下着に広がる染み…濡れてる。興奮が湧くのを堪え、俺は内腿の傷跡に唇を寄せた。

「……。」

傷痕にキスをする俺を、光は黙って見つめて、少し抵抗していた脚の力が和らいだ。
濡れた下着の上からぬるぬると指を滑らせて、光が震える場所を探し、そこをゆっくりと撫でる。俺を見上げた光の目がとろんと細まって、甘い吐息を聞きながら――そっと下着の中へと手を滑り込ませた。
驚くほど柔らかく、ぬるぬるした花弁を指先で優しく優しく撫で続け、ゆっくりと、少しずつ溶かすように…中指を狭い狭い隙間に滑り込ませていった。

「ん……ぅぅ…」

入ってくる感覚に翻弄されるように声を漏らし、光は俺を見つめる。

「痛い…?」

そう尋ねると、光はちょっと考えて、小さく首を横に振った。
中指を締め付ける感覚…すごくキツイ。こんなところにあんな太いもん、入るわけないのに。俺、理性飛んでた…光のこと、もっと思いやるべきだった。
中指を出し入れするのも精いっぱい。それでも少しずつ少しずつ解していって、緊張した面持ちの光にキスをする。

「痛かったらすぐやめるから…」

そう言うと、光は俺を見上げて、背中に腕を回して抱き着いてきた。

「光…」

いとおしくてつい、名前を呟いた。俺を抱きしめる腕の力が強まった。優しくしてあげたい…俺のことをこんなに信じてくれてるんだから。
そして中指を引き抜き、薬指と揃えて、ゆっくりと二本の指を挿入しようとしたとき――

「っ……」
「い…痛い?」

一瞬顔を顰めて身体を固くした光に慌てる。光は辛そうな顔のまま、首を横に振る。

「…大丈夫…」
「無理するなって…」

それでも首を横に振り続け、俺にしがみつく光。

「……。」

俺はその額にキスをして、髪を撫でながら、指を挿入した。そして、強張る身体を宥めるように首筋を舐めた。

「力抜いて…」
「……。」

深呼吸して精一杯頑張っているのが伝わってくる。
日本の指でなるべく優しく内側を解し、胸や蕾を愛撫した。
強張っていた体が火照り、だんだんと蜜が溢れ始め、俺は指を引き抜く。

「この先は…また今度にする?」

慌てて終わらせたくない。できるならもっと、時間をかけて…。
だけど光は俺を見つめて、首を横に振った。

「…大丈夫」

俺は、わかった、と呟いて、バッグから小箱を取ってきて、肉棒にゴムを取り付けた。
光のもとに戻って足を開かせると、光は不安そうに潤む目で俺を見つめた。

「…やっぱやめる?」

ふるふる、と首を横に振る光。手を俺に伸ばし、呟く。

「怖いから…抱きしめながら…」

…どうしてこんなに可愛いの、こいつ…。
光に覆いかぶさって、背中に腕を回されて、俺は手探りで肉棒を花弁の入り口へとあてがった。

「大丈夫?」

こくん、と頷く光。

「じゃあ…力抜いてて」

こくん、とまた頷いて、その顔に緊張をにじませる。
そして俺は、慎重に――肉棒をそこへと突き立てた。

「…っ…」

光の呼吸が荒くなる。肉棒が飲み込まれていく――

「っ、いたい…!」

光の悲鳴と同時に、ぎゅっ、と鋭い痛みが背中に走って、俺は動きを止めた。光が痛みのあまり、俺の背中に爪を立てたのだった。

「今…抜くから」

ぽろぽろ涙をこぼす光を宥めながら肉棒を引き抜くと、そこには血が滲んでいた。解すのが甘かったか…光の緊張もあったのかも。上手くいかないな…

「ごめん…また、血…」
「……。」

光は涙をこぼしながらフルフルと首を横に振って、震える声で呟いた。

「…ごめんね…」

光が謝ることじゃない…。

「…初めて同士なんだから…こういうこともあるって。」
「……。」
「俺は光が…しようとしてくれたことが嬉しい。怖いのに」
「……。」
「頑張ってくれて…ありがとな」

頬を撫でると、光はうるむ瞳で俺を見つめた。

「ゆっくりやっていこう。な?」
「……うん…」
「よし」

起き上がって後始末を始めると、俺の背中を見た光があっと声を上げた。

「せ、先輩…背中…」
「え?」
「引っ掻いちゃった…」

ごめんなさい…という光の頭を撫でて、服を拾い上げて渡す。

「いやむしろ、そんなに痛くしてこっちが悪かったなっていうか…」
「……。」
「とにかく…このくらい気にすんな。」
「…でも…」

光は不安そうに俺を見た。

「大丈夫なの…?」
「痛くないし平気だって。赤くなってるだけだろ?」
「そうだけど…」

光は言い辛そうに、呟いた。

「お風呂…大丈夫なの?」
「……あ」

確かに…勘のいい奴は気づくかも…。

「……。…平気平気。」
「……。」

多分…。
それにもう過ぎてしまったことは仕方ない。何とか誤魔化すしかない。
俺はワイシャツを羽織り、ネクタイを拾い上げた。
光もブラウスを着て、スカートをはき、ベッドから降りる。俺がズボンを履いてネクタイを締めていると、後ろからぎゅっと、光が抱き着いてきた。

「どしたの?」

ちょっと笑みを浮かべてそう尋ねると、甘えるように背中に埋まる感触。

「…いつまで…」
「え?」
「かくしてなきゃ…いけないのかな…」
「……。」

ネクタイを結び、きゅ、と締める。

「そうだなー…」
「……。」
「俺が責任をとれるようになるまで…かな」
「え…?」

緩んだ細い腕を掴んでほどかせ、光を振り向いた。そしてそのまま正面から抱きしめる。

「もう少し待っててくれる?」

絶対、見合う男になるから…。
光は俺の背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。



***



「御幸お前…」
「え?」

脱衣所で鉢合わせた倉持が、まじまじと俺を見て呟いてぎくりとした。

「…何?」

咄嗟にタオルを背中に羽織って平静を装うと、倉持はそのタオルを引っ張る。

「背中の傷どうしたんだよ。」
「あ〜そういや自分で引っ掻いたかも!」
「いや…」
「なんだよ脱がすなよ!倉持君のエッチ(笑)」
「あぁ!?」

倉持がブチギレた隙にTシャツを着て、ズボンを履き荷物をまとめて踵を返す。

「じゃ!テスト勉ヤベーから行くわ」
「おい逃げんな…」

訝しむ倉持からさっさと離れ、部屋に逃げ帰った。
ヤバいな〜…深く考えないでくれたらいいけど…。あいつ、意外と勘が働くからな〜…。

 


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