「一也先輩。」

親善試合が終わり、数日ぶりの学校の昼休み。
校舎裏のこの場所は寮生に出くわしやすいから避けたかったけど、他にいい場所もないから、俺はメールで光を呼び出した。久しぶりに光の顔を見ると、ついつい顔が緩んだ。

「光〜」

真正面からぎゅっと抱きしめると、腕の中で小さな笑い声がした。あ〜…柔らかい…ちょー良いにおい…。
ぎゅー…、としばらく抱きしめて体を離すと、光の顔は少し赤くなっていた。ああ胸が苦しい。

「あ、ねえ、どうだったの?試合…」

顔が赤いのを誤魔化すようにはにかんで、階段に座った光が言う。俺はその隣に座って光を見つめた。

「一敗一分け。」
「そっか。」

驚きも残念そうにもしない光にちょっと拍子抜けした。まあ…去年まではルールもよく知らないくらいだったんだから、こんなものなのかな…、と思っていると、光は続けて尋ねた。

「楽しかった?」

その質問に俺は、胸の奥があたたかくなった。

「すげー楽しかったよ。」

にんまり笑ってそう言うと、光も嬉しそうに微笑んだ。

「今日ね…沢村君たちが謝りに来たよ。」
「え?」
「訳は言えないけどすいやせんでした!だって。ふふふ。面白いねあの二人。」
「あのバカ…」

金丸君たちが必死に止めててね、と楽しそうに話す光。変わったなぁ…としみじみ思う。去年は周り皆が敵かのようにいつも警戒して気を張ってて、東条にばかりくっついてる雛鳥みたいだった。

セミの鳴き声が響く。もうすっかり夏だ。

「あちー…」

手でパタパタと首元を仰ぐと、突然、ぴたりとうなじに冷たいものがくっついた。

「うわ!…何?」

びっくりしたけどすぐに、光がさっき買ったばかりのアイスティーのペットボトルを俺のうなじに当てたのだと気付く。光はいたずらっぽくはにかんで、ふふふと笑った。

「あー…」
「気持ちいい?」
「うん…」

ひんやりじわじわ、うなじから全身に涼しさが染み渡る。

 


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