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「光さ〜ん…」
「……何?」

う……。
風呂から上がって、ベッドで雑誌を読む光をそれとなく誘ってみたけど、警戒心に満ちた目でけん制されてしまった。

「…ダメ?」
「ヤダ。痛いもん」
「……。ちょっとだけ…」
「ちょっとってどこまで?」

…先っちょだけ、とか言う男の気持ちが今ならわかる…。

「…どこまでならいい?」
「いれないならいいよ」
「それじゃ意味ないじゃん!」
「だって痛いんだもん!なんでそんなにしたいの?痛いだけなのに」
「…本当は気持ちいいことなんだよ」
「痛いよ。」
「……。」

…泣きそー。せっかく光が泊まりに来てんのに、手も出せないとか…。
せめて一回でもイカせられてたら…本当は気持ちいいってわかってもらえたのかな。でも、女ってどうやったらイくんだよ…。

「おやすみ。」
「…おやすみ。」

雑誌を閉じてさっさと横になってしまう光。俺はサイドボードの間接照明を消して横になり、くすぶる欲を紛らわせるために今日の試合内容を思い返した。
…明日届くであろうあるモノが、この状況を打破してくれることを願って…。



***



「ただいま。」

翌日試合が終わってマンションに帰ると、なんだかいいにおいが部屋の中に広がっていた。

「おかえり。」
「え…、何か作ってくれてんの?」

光はキッチンにいて、俺のエプロンをつけて料理をしていた。簡単なものだけどね、とはにかむ光。可愛い…。なんか…カンドー…。
鍋には煮物、グリルからは香ばしいにおいが漂ってきて、光は味噌の蓋を開けている。味噌汁か。和食かな。

「うわ〜スゲー嬉しい…。」
「ふふふ。あ、そういえば今日何か届いてたよ。」
「え?あ、あぁ…」

ギクリ。そうだった。ちょっと焦りつつテーブルの上に小さな段ボール箱を見つけて、ほっと胸をなでおろした。開封されてない。納品書にも、『事務用品』とだけ書いてある。

「御幸、ってサインしちゃった。」

えへへとはにかむ光にキュンとして、しかしハッと思い出す。

「え…宅配の人と会って平気だった?」
「マスクと眼鏡して出たから大丈夫だよ。」
「そっか…」

それならよかった。どこから噂が立つかわからないからな。
俺は光の傍に戻って、肩を抱いた。

「…本当に御幸になる?」
「え〜?あはは。」

…結構勇気を振り絞ったのに、笑って流された…。

光は美味しい和食を作ってくれて、俺は感動と共にその味を噛みしめた。光と結婚したら、毎日こういう感じなのかな…。なんて…。
その後風呂に入り、例のごとく、俺は覚悟を決めてベッドへ向かった。光はリビングで柔軟のストレッチをしていて、それが終わるとメールの確認をし始めた。俺はベッドの上に段ボールから取り出した箱を並べ、ちらり、と光の様子を窺う。少しして、光は時計を見上げてスマホを充電器に差し、眠るためにベッドにやってきて、きょとんと俺を見た。

「何してるの?」
「いいから、ちょっとここにおいで。」
「?」

俺は光をベッドの上に座らせて、今日届いたものたちを見せた。

「じゃん。」
「何?これ…」

光は手元の一番小さな箱を手に取り、箱の外側に書いてある文字を読み始めた。

「ローター…女性用?」

きょとんとして、小首をかしげ、次の箱を手に取る。

「バイブ…医療用シリコン使用…。トレーニングか何かに使うの?」

でも女性用?とますます首を傾げる光の手から箱を取り、中身を取り出した。

「使ってみればわかるよ。」
「ふうん…?」

まだわかってない…。なんか…どうしよう。すげえ楽しい。これ使ったら光、どんな顔すんのかな…。

「はい光。」
「何?」
「そこ座って、もうちょいこう…」
「な、何…」

枕を背にあてて光を座らせ、俺はローターを手に取った。さっそくスイッチを入れると、それは見た目とかけ離れた、凶悪な振動音を響かせた。

「えっ…何するの?」

ちょっと不安気に俺を見る光に大丈夫だからと言って、振動する丸い球を持った手を、彼女の足の間に伸ばす。

「ちょ、ちょっと、何…、…ひゃっ」

ローターが下着越しに秘部に当たると、光は驚いたように肩を竦めた。

「や、やだ、何するの…」
「おもちゃを使えば、光も気持ちよくなれると思って」
「おもちゃ…?」
「これ、こういうことするおもちゃなんだよ。『大人の玩具』。」
「……。」

事態を理解した光が、顔を赤くして言葉を失った。俺はローターで光が感じる場所を探った。やっぱクリトリスのあたりかな…?少しローターを上にずらすと、ピク、と足が震えた。

「っ…」

光は身を竦めて口元を押さえ、だんだんと目を閉じて息を荒げた。

「…ふ…。…っ」

感じてる…。動かした方がいいかな、それともこのまま?

「…ん…、…。」

あ…。光、自分で腰を…。押し付けるように動かして、よがってる…。
俺はその動きに合わせて、ローターを秘部に押し付けた。

「…っ!あっ…。…あっ、待って…!やっ…!」

びく、びく、と光が震えて、シャツの裾を押さえて何度か痙攣した。息継ぎをするように息を吐き、甘い声を上げて…。
い…、今、イッた…んだよな…!?

「あっ…。は…、…はぁ…。」

肩で息をしながら俺の手を押し返して、光はもじもじと秘部を押さえた。

「気持ちよかった?」
「……。」

まだ戸惑っている表情に、彼女を押し倒してしまいたくなりながらも、ここでちゃんとセックスは気持ちいいことなのだと意識してもらわないと、と自制心を引っ張り出した。

「…初めてイッたな。」
「……。」
「じゃ、次…これ使ってみる?」

恥ずかしさからか涙ぐみながらも、光は俺がバイブを手に取ると、抵抗することなく下着を脱がされた。下着を脱がすとき、つうっ、と蜜が糸を引いて、これは今までで一番じゃないかと唾を飲んだ。

「これは小さめのを買ったから…ほら、俺の指より少し太いくらい。」
「……。」
「これだったら挿れても痛くないと思うから…。」
「え…。い、挿れるの…?」

不安気に俺を見上げた光の頬を撫でる。

「大丈夫だよ、これも使うし」
「…?」

俺はローションを取り、バイブの挿入部にまんべんなく塗り広げた。ぬるぬるした透明の液体に塗れるバイブを、光は緊張した面持ちで見ている。

「指で慣らしてからな。」
「…ん…」

ちょっと身震いして、俺に指を挿れられるのを見つめる光。あぁもう…た、楽しすぎる…。

「痛い?」

ふるふると首を横に振った光に微笑む。あ〜…可愛い…。

「ぬるぬるしてるよ、すごく…。さっきの気持ちよかった?」
「……。」
「中は?気持ちいいところわかる?」
「…わ わかんない…。」
「指…どんな感じ?」
「…へ…変な感じ…。」

ふるっ…、と中が少し震えた。やばいって…理性飛びそう。
俺は指を引き抜き、バイブを近づけた。

「挿れるよ?」
「…ん…。」
「ちょっとキツいかな…。痛い?」
「…ん、ううん」

ずぷぷ、とローションが粘った音を立てて、バイブが飲み込まれていく。

「スイッチ入れるよ。」
「……。」

緊張で息を飲む光の手を取り、深くまで飲み込まれたバイブの、電源ボタンを押し上げた。びくっ、と光が反応した。

「……ぁ…。」

ヴーーーッ、と振動するピンク色の棒を咥えこんだ、蜜に塗れた花弁をヒクヒクと震わせながら、光は甘い声を零した。

「や、ぁ…。ぁ…、っ…。」

ぎゅう、と俺の手を握り返し、足をもじもじさせて、シャツの裾を引っ張って…。俺は片手でシャツのボタンを外し始めた。光は抵抗せず、されるがままになった。白い胸を露出させ、俺はその胸に手を這わせ、ゆっくりと蕾を撫でてみた。

「あっ…。」

さらなる快感に震える光。だんだん目がとろんと閉じてきて、くったりと俺の方にもたれかかる。

「…っ、ん…、」

光は腰をくねらせ、やがて――シャツを押さえていた手を解き、自身が飲み込んだバイブの柄に添えて、くい、と押し付けた。うわ…、自分で…。エロい…。

「は…。」

気持ちいいところに当たっているのか、そのままバイブを抑え、胸を突き出す光。俺はごくりと唾を飲んで、胸元にもたれかかる光のこめかみにキスをして、蕾を撫で続ける。すると光は繋いでいた手を胸元に持ってきて、言った。

「…もっと…。」

…ええぇ!?光…、急にエロくなった…!!いや…、でも…万々歳だ。むしろ最高。可愛い…襲いたい…!!
俺は両手で胸の蕾を撫でながら、光にキスをしたり、首筋を舐めたりした。

「あっ…、あぁっ、あっ…」

光は俺の胸元に顔を埋め、シャツにしがみついて、俺に縋りつくようにしてイッた。ああ…もう…めちゃくちゃに抱きたい…。こんなにうまくいくとは…!

「光…どうしたい?」

汗で額に張り付く亜麻色の柔らかな髪を撫でながら訊くと、光は真っ赤な顔で唇を舐めて、潤んだ目で俺を…俺の腰のあたりを見て、そっと手を伸ばして――肉棒に触れてきた。

「っ!?」

その行動と刺激両方に驚いてビクッと竦んだ俺を、ちらりと見上げた光は、さっきからずっと張り裂けそうに主張している肉棒から手を離し…ズボンに手をかけて、ゆっくりとずり降ろした。嘘だろ…光からこんな!?ヤベェ…欲求不満過ぎて夢でも見てんのかな…。

「……。」

光は、はぁ…、と息を飲んで、そそりたつ肉棒をすっかり取り出すと、じいっ、と見つめた。し…羞恥プレイ…?

「…見過ぎ。」
「一也君だって、私のこと…見るじゃん」
「……。」

そりゃ…そうだけど…。

「どうせなら触ってよ。」
「……。」

からかうつもりで言ったのに、光はしばらく肉棒を見つめた後、不意に手を伸ばして指先でそっとなぞってきた。くすぐったくてゾクゾクして、俺はついその手を掴んだ。

「ちょ…、その触り方はアブノーマル…」
「え…?」
「…軽く握って。」

こう、と柔らかな手をそこへ導くと、光は好奇心に満ちた目でうっとりと肉棒を眺めながら、それを握った。

「で、上下にこう…擦るんだけど」
「?」
「…ローション使うか」

俺はローションを光の手のひらに垂らして、それで肉棒を擦るよう教えた。

「こう…?」
「そー…。もうちょっと強くても…。」
「このくらい?」
「……あー…やばい…」

自分のとは全然違う、柔らかくて華奢な手。なにより、光が俺のをしごいてる光景が…。

「なぁ…」

俺の肉棒を見つめる光の髪を撫でて、ついつい強請ってしまう。

「…舐めてくれる?」

光は何も答えず、うっとりした顔で身を乗り出したかと思うと、まるでお預けを食らってアイスクリームを我慢していた子供みたいに…躊躇いなくそれに舌を這わせた。
うわ…、舐められるのって、こんなに…良いんだ…。熱くてぬるぬるして、なんか、手と全然違う…。挿れるのともまたちょっと違って…。
つーか光が、俺のをフェラしてるって…。これ本当に現実かな?

「ん…、甘い…。」

そんなわけない…、と思ったけど、ふとローションの瓶が目に入り、『ストロベリー味』と小さく書いてあるのを見つけて、これか、と思った。そしてさらにその下に書いてある…『媚薬成分入り』という文章を見て、まさか、と光を見る。俺の肉棒を舐めながら、なおもバイブによがっている光…。…もしかしてこれのせい?そういえば、急に積極的になったのって、ローションを塗ったバイブを挿れてから…。
……。…バレたら怒られそう…。

「…ねぇ…、」

光は焦れたように身を起こして俺にしなだれかかってきた。

「もういい…?」

そう訊きながらもじもじして、俺の肉棒を撫でる。…もしかして…

「挿れたいの?」

そう訊くと、光は恥ずかしそうにしながら…こくん、と頷いた。
…マジか…!!り、理性が…!!いや、もう理性何て気にしてられるか!!
俺は光を押し倒し、手探りでバイブを抜き取り、肉棒を挿れようとして――寸前でコンドームをつけていないことを思い出した。慌ててつけて、また光の足の間にもぐりこみ、肉棒を突き立てる。
大丈夫かな…。また痛かったりしたら…。
にわかに不安になりながらも、突き立てた肉棒を、ゆっくりと…花弁の割れ目へ沈みこませた。

「ん……んん…っ」

光は顔を背けて腰を浮かせた。

「…あ…っ」

その甘い声が、彼女が快楽の真っただ中に埋もれていることを表していた。
光が感じてる…俺ので、ちゃんと…。痛がることなく、ちゃんと感じてる…!
嬉しい。それに…可愛い。求めるように俺にしがみつくのも、腰がよがって浮いてしまうのも…。

「あっ…。…きもち……、」

ついにはそんな言葉を零してしまうなんて。ああ、今夜は最高の夜だ。
考えてみたら…媚薬で気分が盛り上がって、いい意味で緊張が解けてリラックスできたから、挿入への恐怖が薄れたおかげかもしれない。

「気持ちいい…?」
「あっ…、あ…、いい…。」
「どこが一番良い?」
「お…、おく…。」
「奥…?」
「あ、ぁ…!」

やべぇ、スゲー興奮する…。光がこんなに乱れるなんて…!

「あぁっ、あっ…」

抱きしめて密着して、息継ぎもままならないまま、俺は理性が崩壊していくのを感じながら、それさえも心地よく思いながら…だんだんと律動を速め、奥を突いた。
体をくっつければくっつけるほど、甘い香りがして、あたまがくらくらして、溺れるみたいに快楽に浸って、光が俺を求めるのをたまらない気持ちで受け止めて、その夜は何度も…何度も光を抱いた。

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