010
朝下駄箱に入っていた、淡いピンク色の便せん。
「えっ!?お前それ…!」
同時にそれを発見した倉持が騒ぎ、注目を浴びる前に俺は素早く便箋をバッグに押し込んだ。
「誰から!」
「知らねぇよ」
「見てみろよ!」
「後でな」
「なんだよ教えろよ!」
「うるさい。」
倉持なんかに話したらその日のうちに野球部中に広まってしまう。
特に亮さんたちに知られたら…。
からかわれるのはごめんだ。
朝礼の後1限の授業が始まり、教師が板書をしているときに、俺は便せんを取り出して中身を読んでみた。
差出人の名前はない。内容は簡潔。
伝えたいことがあるので、今日のお昼休みに校舎裏に来てください。
それだけだ。
まあ、告白だろう。
俺の知ってる人だろうか。こういう手紙をもらうのは初めてではないけど、名前が書いてないのは初めてかもしれない。となると…もしかして、知ってる人?
もやん、と花城の顔が浮かぶ。
いやいやそんなわけねーって…。あんな美人が。
自分で自分に苦笑して、便せんを仕舞った。
授業の内容はあまり、身に入らなかった。
昼休みになり、購買の弁当を食べて、適当に倉持をあしらって、こっそりと校舎裏に向かった。
周りに人の気配はない。呼び出した人物はまだ来ていないらしい。
手持無沙汰に佇んでいると、しばらくして、背後から足音が近づいてきた。少し緊張する。
ゆっくりと振り向いて、俺は、息をのんだ。
「…花城…」
名前を呼ぶと、花城はそこで立ち止まった。
花城は日差しを背に受けて亜麻色の髪が金色に輝き、どこか神秘的な…まるで絵画の天使のようだった。
俺たちはしばらく沈黙していた。花城の顔は赤くなっていて、きっと俺もそうだと思った。
俺を呼び出したのが花城だったなんて。にわかには信じられない。
だって、こんな、花城だったら、誰でも選び放題だろ…。
「…あの…」
花城がぎこちなく口を開いた。
「手紙のこと…ですけど」
「あ…うん」
伝えたいことがある、と書いてあった。でも、もう、この状況ならそんなことは言わなくてもわかる。
俺はだんだん心臓がうるさくなってきて、胸も顔も熱くなるのを必死にこらえた。
「えっと…」
どうする…俺、なんて返事する!?
今まではずっと、誰とも付き合うつもりはないと断ってきた。だけど花城をあっさり振るのは…なんだか、惜しい気がする。俺、花城のことが好きなのか?いや少なくとも気にはなってる…よな。速水にはああ言ったけど、花城のほうから好意を伝えてくれるなんて、付き合わなきゃ嘘だと思う。だけどまさか、本当にこんな状況になるなんて。
現実味がなくて足元がぐらぐらする。
俺…彼女ができるのか?
しかも、こんな美人の?
野球ばかりで自由な時間もほとんどないのに?
花城を悲しませることにならないか?
だけど…。でも…。
あー!どうしたら…!
「…ごめんなさい!」
「…えっ?」
突然深々と頭を下げた花城。困惑する俺を前に、花城はゆっくりと頭を上げる。
「…じゃあ、失礼しま…」
「ちょ、ちょっと待て。」
踵を返したが、呼び止められて気まずそうな顔で振り向く花城。
「…あー、え、そういうこと?」
「…なにがですか?」
「いや…こんなことあるのか…」
俺は急激にこの状況が呑み込めてきた。花城は不思議そうに眼を瞬く。
「花城、もしかして手紙で呼び出された?」
「え?」
花城はきょとんとして、すぐに顔を赤くした。
「あ…。え?あ…!」
そして理解したようにそう呟き、不意にはにかむ。
その笑顔の可愛さと言ったら。呼び出した奴の気持ちもわかるぜ。
「俺も呼び出されてさ。名前も書いてなかったから、一瞬花城かと思ってびっくりしたわ」
「私も、誰からの手紙かわからなくて…」
「すげえ偶然」
「ですね。」
俺たちはひとしきり笑って、ふと気が付いた。
「てか…俺花城に振られたってこと?」
ニヤリと花城を見ると、花城は赤くなったり青くなったりした。
「あ…!あの、ただ私が誰かと付き合うとかは今は考えられないというか…!」
「ハッハッハ、ジョーダンだって笑」
花城、おとなしいイメージだったけど意外とからかいがいがあるかもしれない。
「えっ!?お前それ…!」
同時にそれを発見した倉持が騒ぎ、注目を浴びる前に俺は素早く便箋をバッグに押し込んだ。
「誰から!」
「知らねぇよ」
「見てみろよ!」
「後でな」
「なんだよ教えろよ!」
「うるさい。」
倉持なんかに話したらその日のうちに野球部中に広まってしまう。
特に亮さんたちに知られたら…。
からかわれるのはごめんだ。
朝礼の後1限の授業が始まり、教師が板書をしているときに、俺は便せんを取り出して中身を読んでみた。
差出人の名前はない。内容は簡潔。
伝えたいことがあるので、今日のお昼休みに校舎裏に来てください。
それだけだ。
まあ、告白だろう。
俺の知ってる人だろうか。こういう手紙をもらうのは初めてではないけど、名前が書いてないのは初めてかもしれない。となると…もしかして、知ってる人?
もやん、と花城の顔が浮かぶ。
いやいやそんなわけねーって…。あんな美人が。
自分で自分に苦笑して、便せんを仕舞った。
授業の内容はあまり、身に入らなかった。
昼休みになり、購買の弁当を食べて、適当に倉持をあしらって、こっそりと校舎裏に向かった。
周りに人の気配はない。呼び出した人物はまだ来ていないらしい。
手持無沙汰に佇んでいると、しばらくして、背後から足音が近づいてきた。少し緊張する。
ゆっくりと振り向いて、俺は、息をのんだ。
「…花城…」
名前を呼ぶと、花城はそこで立ち止まった。
花城は日差しを背に受けて亜麻色の髪が金色に輝き、どこか神秘的な…まるで絵画の天使のようだった。
俺たちはしばらく沈黙していた。花城の顔は赤くなっていて、きっと俺もそうだと思った。
俺を呼び出したのが花城だったなんて。にわかには信じられない。
だって、こんな、花城だったら、誰でも選び放題だろ…。
「…あの…」
花城がぎこちなく口を開いた。
「手紙のこと…ですけど」
「あ…うん」
伝えたいことがある、と書いてあった。でも、もう、この状況ならそんなことは言わなくてもわかる。
俺はだんだん心臓がうるさくなってきて、胸も顔も熱くなるのを必死にこらえた。
「えっと…」
どうする…俺、なんて返事する!?
今まではずっと、誰とも付き合うつもりはないと断ってきた。だけど花城をあっさり振るのは…なんだか、惜しい気がする。俺、花城のことが好きなのか?いや少なくとも気にはなってる…よな。速水にはああ言ったけど、花城のほうから好意を伝えてくれるなんて、付き合わなきゃ嘘だと思う。だけどまさか、本当にこんな状況になるなんて。
現実味がなくて足元がぐらぐらする。
俺…彼女ができるのか?
しかも、こんな美人の?
野球ばかりで自由な時間もほとんどないのに?
花城を悲しませることにならないか?
だけど…。でも…。
あー!どうしたら…!
「…ごめんなさい!」
「…えっ?」
突然深々と頭を下げた花城。困惑する俺を前に、花城はゆっくりと頭を上げる。
「…じゃあ、失礼しま…」
「ちょ、ちょっと待て。」
踵を返したが、呼び止められて気まずそうな顔で振り向く花城。
「…あー、え、そういうこと?」
「…なにがですか?」
「いや…こんなことあるのか…」
俺は急激にこの状況が呑み込めてきた。花城は不思議そうに眼を瞬く。
「花城、もしかして手紙で呼び出された?」
「え?」
花城はきょとんとして、すぐに顔を赤くした。
「あ…。え?あ…!」
そして理解したようにそう呟き、不意にはにかむ。
その笑顔の可愛さと言ったら。呼び出した奴の気持ちもわかるぜ。
「俺も呼び出されてさ。名前も書いてなかったから、一瞬花城かと思ってびっくりしたわ」
「私も、誰からの手紙かわからなくて…」
「すげえ偶然」
「ですね。」
俺たちはひとしきり笑って、ふと気が付いた。
「てか…俺花城に振られたってこと?」
ニヤリと花城を見ると、花城は赤くなったり青くなったりした。
「あ…!あの、ただ私が誰かと付き合うとかは今は考えられないというか…!」
「ハッハッハ、ジョーダンだって笑」
花城、おとなしいイメージだったけど意外とからかいがいがあるかもしれない。