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「花城さんって彼氏いるの?」
放課後、クラスメイトの花城さんと駅前のマックでお喋り。入学式の日に初めて見た花城さんの美貌に衝撃を受けて、勇気を出して話しかけたのをきっかけに、私たちはよく一緒に行動するようになった。というか…私が一方的に追いかけてるだけな気もするけど。
「え?」
オレンジジュースを飲んでいた花城さんは目を丸くして瞬き、ちょっと顔を赤くする。
「い、いないよそんなの。」
「ええ!?そんな可愛いのに!?」
「まだ高校生だし」
「えー!?青春真っ盛りでしょ!」
花城さんは苦笑しながらポテトを食む。
「うちのクラスの男子はみんな花城さんのこと好きだと思うなあ〜。」
「何言ってんの…。」
「本当だって!花城さんはクラスでカッコいいと思う人いないの〜?」
困った笑顔で、わからない、と小首をかしげる花城さん。可愛すぎてずっと見てられる。
「ねえ東条くんってちょっとカッコよくない?」
「東条くん?」
「花城さんの隣の席の男子!」
「ええ…?喋ったことないから…。鷹野さん、東条くんが好きなの?」
「違う違う!あたしはもっとこう…金髪碧眼の王子様みたいな人が好みだから!」
「ふうん…?」
窓の外の通行人が花城さんを二度見して歩いていく。そりゃ、こんな綺麗な子がいたらびっくりするよね。
「そういや東条くんって、中学の時有名な選手だったらしいよ!」
「選手?」
「野球の!ほらうちの学校って野球部の強豪校じゃん?」
「そうなんだ…」
「東条くん、寮生らしいしねー。すごいよね、同じ歳で、本気になれることがあってさ」
「……。」
花城さんは少し瞬きをして、ゆっくりと考え込むように唇を結んだ。その顔が深刻そうに見えて、どうしたのかと声をかけようとした時。
コンコン、と隣の窓を誰かが叩いた。
見ると、知らない他校の男子生徒達が花城さんに手を振っていた。
花城さんは目を瞬いて、困惑気味に私を見る。
「あはは。花城さん可愛いから。」
「そんなことないって…。」
花城さんが顔を背けると、男子達はふざけて小突き合いながら去って行った。
「今の制服、稲実だよね。」
「…知らない。そうなの?」
「そ、うちの兄貴も稲実なの。」
「へえ…」
私は、稲実も野球部の強豪校であること、兄貴も一応野球部だけどレギュラーには選ばれていないこと、を花城さんに話した。
花城さんはどんな話でも真剣に耳を傾けてくれて、私はついつい話しすぎてしまう。
「…ねえ!光…って呼んでもいい?」
身を乗り出して花城さんを見つめると、花城さんの目が私を見つめ返し、その顔に微笑みが広がった。
「うん。」
「やった!じゃ、光も私のこと司って呼んでよ!」
「うん、司。」
私たちは照れ臭く笑い合って、そのまま時間を忘れて過ごした。
***
「光、おはよ〜!」
「司、おはよう。」
翌日。呼び捨てで呼び合う私たちを、クラスメイト達が驚いたような、それでいて羨ましそうな視線で見守るのを感じる。
「ジュース買いに行こ!」
「うん。」
そのまま光と教室を出て、一番近くの廊下にある自動販売機へ向かった。
「今日1限なんだっけぇ?」
「英語だよ。」
「あ、そうか…眠くなる〜。」
廊下がひらけてちょっとしたホールのようになっている場に、少しのベンチと自動販売機が置いてある。そこへ辿り着くと、すでに先客がいた。
「お前の同室誰だっけ?」
「木村だよ。」
「ああ、あいつか」
二人組の男子生徒。上靴の色は青…2年生だ。
「今年の一年どうよ?」
「さあな。」
「とか言って、気になってる奴いるんだろ?」
ガコン、と重たい音がして、落ちてきたペットボトルを拾い上げた先輩がこっちを振り返る。1人はメガネのイケメンな先輩。もう1人はちょっと目つきの悪い怖そうな先輩。見た目で判断するのも申し訳ないが、なんだか正反対な2人組だ。
2人はこっちを見るなり目を見張って固まった。…そりゃ、振り向いて光みたいな美女がいたら驚くだろう。2人とも、視線は光に釘付けだ。
「…買わないの?。」
気づいているのかいないのか、光が私の腕をちょっと引いて言った。
「あ、うん、買う買う!」
私は先輩達の横を通り抜け、自販機に近づく。ファンタを買い、振り向くと、歩いてきた光を2人の先輩達は目で追って、何か言いたげにしながらも階段の方へ去っていった。
「…なにニヤニヤしてるの?」
光はアイスティーのボタンを押しながら不思議そうに私を見上げる。
「いや、今の先輩達、光に見惚れてたなーって」
「ええ?…知らない人だよ。」
「そうじゃなくてー!光が可愛いから!」
「もう、そういうのいいから。」
「本当なのに〜。」
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