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「やーい、雪女!」

アカデミーの校庭を、まだ幼さの残る生徒たちが歩いていく中で、一人の少年の声が響いた。その呼び名に心当たりのあった少女…雪リッカが振り返ると、思った通り、憎たらしいいたずらな笑顔を浮かべた少年…轟コウライがいた。

「コラーッ!!コウライ!!」

リッカが呆れて黙っていると、その隣から怒声を挙げたのはリッカの大親友、テンテンだった。

「あんたまたリッカにちょっかいかけてんじゃないわよ!謝りなさい!」
「やーだね!だって真っ白でホントに雪女みてーじゃねーか!」
「ほんっとにアンタは救いようのないバカね〜…!!」
「いいよテンテン、ほうっておこう」
「も〜リッカは優しいんだから…」

リッカが親友を宥めてほほ笑む。テンテンは不満げに口を尖らせ、またコウライを振り向いてあっかんべをした。

「好きな子をいじめて気を引くなんて、ダッサ〜い」
「んなっ!!?ち、ちっげぇし!!!」
「きゃははは!いこいこ、リッカ〜」

テンテンに両肩を押されて去っていくリッカを、コウライはバツが悪そうに見つめ、ちぇっ、と呟いた。
…と、そんな自分をニヤニヤと見つめる少年の視線に気づき、コウライはぎくりとした。

「な…なに見てんだテメー!」
「フッ…そんなだから友達いないんだよ、お前は」
「うるせぇクソイブキ!」

コウライが食い掛るのを楽しそうにからかうこの少年は、嵐イブキ。コウライとは家が近所で、アカデミーに入る前からの幼馴染でもある。

「ちょっとコウライ!イブキ君になんて口利いてんのよ!!」
「イブキくーん、こんなバカほっといて行きましょうよ〜」
「ぐっ…!!」

イブキに食い掛るコウライの声を聞きつけ、同級生の女子生徒たちが集まってきて、一斉にコウライを責め始めた。イブキはその端正な顔立ちと優秀な成績で、コウライが僻むほど女子からモテる。
女子に囲まれて去っていくイブキの背中を、コウライは恨めし気に睨みつけた。



***



…時は流れ、リッカたちはアカデミーの卒業を明日に控えた。

「明日は下忍としての班分けの発表だからな。遅刻するなよー。」

担任教師がそう言って解散の合図をすると、生徒たちはいっせいに立ち上がる。

「リッカ〜、帰りにごま団子食べに…」
「り、リッカ!」

リッカに駆け寄るテンテンを遮り、意を決した表情のコウライがリッカに近づいてきた。

「ちょっと、話してぇことがあるんだけど…」

真っ赤な顔をするコウライに、目を瞬いて見つめ返すリッカ。その様子を見て、テンテンはニヤーッと口角を広げた。

「え〜?なぁに〜?もったいつけてぇ〜」
「お…お前には関係ねぇーよ!」
「もしかしてぇー、告白ぅ?」
「なっ……!!」

テンテンの言葉に、コウライはトマトのように真っ赤な顔になって汗をかき始めた。

「きゃははは!わっかりやすぅ〜!!ムリムリ!あんたじゃ釣り合わないって!やめときなー!」
「う…うるせー!!ちっげぇよ!!黙ってろテンテン!!」
「……。」

リッカは苦笑いを浮かべた後、穏やかな態度でコウライを見つめた。

「話って何?」
「えっ…!」

茶化さずに聞いてくれそうなリッカの対応に、コウライはまた頬を染め、頭をかいた。

「え、えっとその、ここじゃなんだから、校舎裏にでも…」
「わかった。ごめんテンテン、ちょっと待ってて」
「はぁ〜い」

テンテンが机に腰かけたのを横目に、リッカとコウライは連れ立って教室を出た。
クラスメイトやほかの生徒たちのにわかな注目に肩をすくめてうつむきながら、コウライは廊下を進んで外へ出る。時々、ちゃんとリッカがついて来ているか振り返りながら、そのたびにリッカが優しく微笑むのに胸を震わせて。
子供の自分が素直になれずに何度もバカなことを言ったのに、この子はそんな自分にこんなにやさしく微笑んでくれるなんて、天使に違いないと。コウライは決意を新たにした。

校舎裏にやってきて、コウライは立ち止まり、リッカを振り返った。
いつも自分が揶揄していた彼女の白い肌は、輝くような美しさで、舞い散る白い桜の花びらの中で神秘的に見えた。
こんなにきれいな女の子にまともに向き合うことができなくて、バカなことばかりした…だけど今日からは男らしくなることに決めた。明日、正式に下忍になって、リッカと班が離れてしまったら…もうなかなか会えなくなるに違いない。同じ班になれるなんてそんな都合のいいこと、あるわけもない。

だから今日、この気持ちを伝えて…

「り…リッカ!」

顔を上げてリッカを見ると、リッカの澄んだ瞳が見つめ返してきて、顔が熱くなる。

「あ、あのさ…」

危うくうつむきそうになるのをこらえて、コウライは声を振り絞った。

「お、俺…リッカのこと…」

ざああ、と春風が吹いて、リッカの艶のある髪をなびかせていく。



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