「クラス、また同じだったね」
始業式からの帰り道、また1年よろしく、と垂れ気味の目尻をこれでもかってくらい下げて真琴が笑う。わたしの好きな表情のひとつが見れて、わたしもつられて顔が緩んだ。
「中学の原先生が言ってたアレ、冗談ぽかったけど案外ホントのことだったりして」
「あー、あの『円滑にクラス運営をしたければ七瀬双子と橘を同じクラスにしておけって小学校からの申し送りがある』ってやつ?」
「そーそれ」
入学早々学校の池に入りそうになるわ、春の遠足で行った滝壺に入るわ、秋の動物園でも冬の水族館でも服を脱ごうとするわ、極め付けは昼休み明けから居なくなったと思ったら勝手にプールで泳いでた。そんな小学校の頃の遙の行動を阻止したり、居なくなった遙を見つけ出していたのは幼なじみでと遙と同じクラスだった真琴と隣のクラスにいた半身のわたし。
学校の大人達は遙のぶっ飛んだ行動を自分達で阻止することを早々に諦めて、小学2年からわたし達3人は同じクラスになった。そしてそれから、遙とわたしは双子の兄妹のくせに違うクラスになったことがない。
それを皮肉るように中学の卒業式の日に担任の原先生に言われたんだ。お前らは同じクラスにしておかないと駄目だって、小学校の先生から言われてたんだよ。話盛ってんだろって思ってたけどガチだったなって。
実際ホントかどうかはわかんないけど、こうも毎年同じクラスだとあり得ない話じゃないのかもしれない。おかげで真琴と同じクラスでいられるから文句はないけど。
「どっちにしろ俺は嬉しいからいいけどね。ハルと#name#と一緒なの」
一瞬、頭の中を読まれたかと思った。顔に熱が集まるのがわかる。冷や冷やしながらわたしの顔を覗き込んで笑う真琴の視線を避けるように海に目を逸らせば、海風がわたしの長く伸びた髪を攫った。
赤くなった顔が隠れてちょうどいい。ぐしゃぐしゃになった髪は熱くなった顔が冷めるまで、時間をかけながら直そうと、そろそろと手を伸ばせば、わたしの指が髪に届く前に上から大きな手が降りてきた。
「ハルと違って、#name#の髪は昔からの細くて柔らかいね」
動かないで。俺の袖のボタンに絡んでるんだ。そう話す真琴の声が今まで以上に近い位置で聞こえて、心臓が大きく音を立てた。
どきどきどきどき。水の中に深く潜ったみたいに自分の心臓の音が耳の奥に響く。苦しいけど幸せで、幸せだけど苦しい。
髪にまで熱が伝わってこの気持ちが真琴にバレてしまうのが怖くて、切ってもいいよと髪を引けば、駄目だよ、なんて優しく遮られる。ああ、ほら、まただ。
遙がいないときの真琴は、いつもよりわたしを甘やかす。だからわたしは、この年代物の恋をいつまでも手放すことができないんだ。
(160314)