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それは急に訪れた
3限と4限の間の休み時間、賑やかな教室内が一瞬大きくどよめく
何事かと視線を上げると、教室のドアに見覚えのある姿が見えた

「研磨くん、黒尾先輩来たみたいだよ?」
「え…?クロが?」

後ろの席の研磨くんに声を掛けると、少し不思議そうに首を傾げていた
研磨くんは3年の黒尾先輩と幼馴染で、同じバレー部に所属している
黒尾先輩は、部活の連絡事項を伝えるためにこれまでも何度か研磨くんのところを訪れることがあった
今回もその類だろうと思っていると、予想だにしていない名前が先輩の口から発された

「ねぇ、牧野さんっているかな?」
「「!?」」

思わず研磨くんの顔を見ると、彼も大きく目を見開いてこちらを見ていた
黒尾先輩が、私に用事…?!
思い当たることは何一つとしてない
何なら接点もないに等しい
ただ、私と研磨くんが2年連続で同じクラスになったことで、廊下ですれ違った際に会釈する程度には顔見知りになっている
本当にそれだけだ

親切にもこちらを指差しながら私の存在を伝えている女子の指先を追った黒尾先輩と、目が合う
瞬間、先輩はにっこりと微笑んだ

「…ゆりあさん、イヤならはっきり断った方がいいよ」
「え?」
「前に言ってたんだ。クロはたぶん、」
「やぁやぁ、牧野さんだよね?」

研磨くんの言葉を遮るように朗らかな声が降ってきた
見上げると、こちらを見てにこやかに…だが、どこか裏のありそうな笑みを浮かべている黒尾先輩がいた
名前を呼ばれたので一応頷きはしたが、驚きがまだ抜けないのか声は出せそうにない
そんな私の様子を見かねたのか研磨くんが口を開いた

「…クロ、ゆりあさんが上見て話すのしんどいから座れば?」
「お、悪いな!」

研磨くんに促されるようにして私の隣の席に腰を掛けた先輩は”さてと、”と前置きをしてこちらに体を向けた

「いちおう自己紹介な。俺は3年の黒尾。研磨と同じバレー部で、主将やってます」
「あ、はい!えっと…2年の牧野ゆりあです、部活は入ってないです」
「お!やっぱり!」
「…やっぱり?」
「あー、ごめん、こっちの話!」

不思議なところに食いつかれて首を傾げると、先輩はすまなそうに片手で謝った
そうしつつも先輩はどこか嬉しそうに”そっかそっか…”と頷いている
どういうことなのか状況が読めず、研磨くんに視線を送るが気まずそうに眼を逸らされてしまった
と、ふいに黒尾先輩がこちらに少し身を乗り出した

「んじゃあ提案なんだけどさ、」
「は、はい!」
「牧野さん、男子バレー部のマネージャーやらない?」
「は………え?」

何を言われたのか一瞬理解ができなかった
マネージャー?何の?男バレ?私が??

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