Thanks Clap!
「せーんぱい!」
それは冷たい空気が包む学校の廊下のこと。
あたし達三年の廊下でも、この後輩、切原赤也は躊躇なんて言葉は知らないらしい。
今日も今日とて、昼休みにあたしの姿を探しにきたらしい赤也は、鼻の頭を赤くして大きな声をあげてはあたしめがけて駆け出した。
「赤也……。あのね、何回も言ってると思うけど……大きな声であたしを呼ばないで?」
「え?なんでっすか?いーじゃないっすか、別に。なにか問題でもあります?」
「赤也には問題なくても、あたしにはあるの」
めがけてきて、大体いつも抱きつかれるんだけど。今日は正面から来てくれてたお陰でそれを阻止することはできた。
コイツ、どさくさに紛れて胸揉むんだよね。
本当、手癖が悪い……。実は部活中にソレやって、一度は真田君から叱ってもらったんだけど……それからは手口が巧妙になっていきやがった。
見てないところで触ってくるのは、本当に痴漢のよう。
……ちょっと将来が不安になってきた。
「ねーねー先輩。お昼食いにいきましょ。どうせ一人でしょ?食べんの」
「ぐ……別に一人でもいいじゃん。ていうかなんで赤也とあたしが一緒に食べなきゃなんないのよ」
「俺が一緒に食べたいんだから、いいんすよ!先輩の意見は聞いてませーん」
「アンタね……」
手にしたお弁当を思わず振りかざし、赤也の背中めがけて叩こうとした。
お弁当を手にしてた右手。完全に存在を忘れてたんだけど、この弁当を食べるのはあたしだ。
この際どうでもいい。
振りかざされた右手に気がついたらしい赤也は、獲物を狙うような視線でお弁当を一瞥。
体を後ろに反らし、あたしの振りかざした腕は空を舞った。
「あぁっ?!」
「よっと!」
バランスを崩したあたしは、そのまま前のめりになって倒れそうになったんだけど……。それは赤也の咄嗟に差し出された右腕によって食い止められた。
あたしの全体重が乗ってもビクともしない腕。
そんなことに、生意気な憎めない後輩といえど急に『男の子』を感じて、顔に熱が集中してしまう。
「ごめ……ありがと」
「いーすよ!先輩軽いんで全然大丈夫っす!」
「うん、助かったよ。助かったんだけどさ」
「はい?」
「手……いつまで揉んでるの」
支えられた腕の先。
赤也の掌には、何故かあたしの胸元を捕らえてて、ここぞとばかりにその指が無造作に蠢いている。
「赤也っ!」
「いーじゃないっすか!別に減るもんじゃないし……」
「減る!めっちゃ減る!もう!なんで全然懲りないの?!」
「……なんでっすかねぇ?」
この生意気な後輩は、あたしを惑わすばかりだ。
冬の冷たい廊下。冷えきっていいはずなのに、こんなにも体温が上がるのは誰のせい?
「でも触るのは先輩だけっす!」
「……ばか」
from>>Akaya.K
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