曖昧を差し上げる

奴隷ほど心地のよい立場をレイラは知らない。人攫いに攫われたことは偶然だが人間屋で手錠を嵌められ品物のように競りにかけられては、絶望に伏し涙し嘆く他の商品とは違い情欲的に頬を染め蕩けた顔で微笑んだ。嗜虐と繋がる導火線に火をつける術を心得た女の魔術に司会を含め会場が一斉に息を飲み、そして1人の美女はその時間と空間を瞬く間に支配した。一瞬の静けさが嘘のように男達は身を乗り出し提示価格を跳ね上げていく。

2000万。2200万。3050万。3500万。5000万。6100万。7000万。

────1億5000万。

巨人族でも人魚族でもい人間の女を目眩のする金額で競り落とした男はVIP席でシャボンを被り下品に笑った。世辞にも美しいとは形容しがたいその容貌にレイラは一瞬顔を引き攣らせたが、今後の生活で日常となるであろう暴力を想像すると顔の劣悪など関係なかった。あのシャボンは間違えようもない天竜人であり彼らは人を人とすら見ぬ度を越した傍若無人と名高い。もう自傷行為だけでは満足出来ぬ躰がその時を今か今かと涎を垂らして待ちわびていた。



「わたし、ご主人様に、飼われて、とっても嬉しい。」

女はその言葉で目の前の神が堕ちることを知っていた。知った上でその言葉を選び抜き舌の上で転がした。自分ともう1人競り落とされたレイラと同じ金髪の少女は恐怖に思考もままならない様子でただ地面を見つめては震えている。天竜人にとって自分に酷く肯定的な美女と否定的な美女を天秤にかけ、価値の重さでレイラの方向へそれが傾く瞬間をその場の誰もが悟る。

「お前、生意気だえ。」

脅える少女は自分に向けられた悪意に喉が詰まり呼吸もままならなくなっていく。遂には過呼吸をも引き起こし膝を付く彼女をその飼い主は更に追い詰めるように蹴り飛ばし、何度も爪先で蹴り靴底で踏みにじった。それを羨む女がわたしも蹴って下さいと天竜人の足元に媚びるように縋り付いたとき、彼の奴隷達を含め道の隅で跪いていた群衆は一斉に驚いた。

女にとって飼い主とは公にしてはならないと半ば諦めていた欲を、性癖を、埋めてくれる唯一のパトロン。こんな野外で青空の下数多い他人に囲まれても堂々と凌辱されることを許される。奴隷。耽美な響きを女は次に愛した。

許可なく天竜人に触れたことの罰として下腹部の丁度子宮の真上を踏みにじられレイラは犬のように首輪を付けられた喉を逸らしながら善がった。今までにない反応に踏みつけた当人でさえ目を丸くするも束の間、上機嫌に笑みを浮かべ次に言葉で詰る。淫乱。雌犬。変態。降り注ぐ罵倒の雨を全身に浴びてレイラは遂に喘ぎ始めた。躰を躍らせ腰を揺らし全身で恥辱の波に溺れることがこれ程までに快感であることがレイラの天賦の資質に油を注ぐ。

そんな彼女に感化され火のついた天竜人も黒服から鞭を受け取ると爪先で女を転がすと四つん這いを命じた。出品時の下着姿のまま臀部を突き出した折に白く丸い丘の隙間へ赤の下着が食いこんだ。日に晒されたそこに来る鞭の感覚を悦楽に染まった女の脳は早くと急かすのだ。鞭。夢にまで見た鞭打ち。自尊心の欠片もなく犬のように這いつくばった痴女の尻へ革の鞭が容赦なく振り落とされる。

破裂音にも似た酷い音と理性を喪った女の淫らな悲鳴はほぼ同時であった。恍惚に身を浸し口角から垂れた唾液が顎を伝い地面に染みていく。一度打たれただけでは到底足りぬレイラはみっともなくおかわりを強請った。