「コクトーのお嫁さんになりたかったなぁ…」
「…」
「今更小さい時の夢を思い出しちゃった。」
「確かにっ、ちいせぇ頃よく妹と俺の取り合いしてたな。」
「もうこの夢は叶わないんだろうな…」
「何言ってんだ、今がそうじゃねぇか。」
「え…?」
「俺の隣にいて、俺もお前もお互いの事が好き。互いに頼り合って過ごしてる。もう夫婦みてぇなもんじゃねぇか。」
「コクトー………」
「結婚とか一緒に住む家とか何もねぇけど…」
「ううん、そんなのなくても…ただこうやって隣に居続けて迷惑じゃないかなって…思ってたから…」
「迷惑なわけねぇだろ?嫌ならとうの昔から遠ざけてたさ。」
「守ってくれるのはずっと私が弱いし、でも知り合いだからだって…思ってたから…」
「まぁ最初は本当にそれだけだったかもしれねぇ。けどな、今はさくらがいるからこうして立ち続ける事が出来る。」
「…」
「これからも隣で俺を支えてくれるか?」
「うん…それでコクトーが少しでも救われるのなら…」
「俺もお前に誓う、さくらだけは離さない。最期まで守ってやる。」
「私もコクトーに向かって誓う。コクトーから何があっても離れないって。」
「…ありがとうな。」
「こちらこそ、いつもありがとう…」

今にも泣きそうに笑う顔にキスをする。
死んでも死にきれない体なのに、温かさを感じる。
ここに存在していられる理由は怨念だけじゃない。
誰かの為に存在できる。
俺はさくらを守る為に存在していける。
だからこそ、何度責め苦を受け、業火に焼かれようとも立ち上がれる。

「今度、現世に行けたら俺とさくらだけの秘密の挙式を挙げてみるか?」
「ふふ、面白そう。私をお嫁に貰ってくれるの…?」
「あぁ、勿論だ。」
「あれっそれだと夢が叶っちゃうや。」
「地獄で新婚が生まれるだなんて笑っちまうな?」
「そんなの無縁なのにね!」

幸せそうに笑うお前が俺だけの存在証明。