暫くの間風の音しか聞こえなくなる。

「あの…」
「は…はい…」
「今日、咄嗟に腕を引っ張ってすみませんでした…」
「い、いえ…おかげで助かりました。本当にありがとうございます。」
「その……」

珍しく緊張した面持ちで話かけるタイウィンさまのせいで、こちらまで緊張してしまう。

「昔のように呼んでほしい…」
「…!」

敬語じゃない。
そのことに驚き、また昔のことを言われたことに焦る。

「え…えっと…」
「だめか…?」
「だめじゃ……ない…です……」
「…顔が赤い。」

手を握られて、寂しげに問いかけられたら、誰だって恥ずかしくなるに決まってる…

「……た、タウだって顔赤いよ…」
「…ふふ……」

ほんのり頬を染めて微笑むタウ。
月明かりに照らされて、銀色の髪が輝いている。

「さくら……好きだよ。」
「っ…!!」

まっすぐに見つめられる。
空色の瞳に吸い込まれそうになる。

「私も……タウのこと…好き…」

勇気を出して答えると、そっと抱きしめられる。

「…ずっと傍で守らせてほしい。」
「……はい…っ…」

背中に手を回して応える。
私から抱きしめたこと…ないかも…

「いつもさくらの事は大切に思っていた…シュネル様だけでなく、さくらの事も守ると。」
「…」
「補佐として雇われたのは私がシュネル様に頼んだから…」
「…!」
「祝いに何でも贈ると言われた時、真っ先にさくらの事が頭に過ぎった…離れたくはなかった…」
「………」
「あの時も咄嗟に腕を伸ばして…気づいたら抱き寄せていた…本当に怖かった…!」
「……タウ…っ……私も…私も寂しかったの…でもあの日…手紙がきてっ!嬉しかった…!」
「……さくら…私と、結婚してください。」
「喜んで…っ!」

お互い涙ぐみながら見つめ合う。
私、とても幸せ…
ずっと、ずっと好きな人。
憧れの目標でいて、かけがえのない人。

涙を流しながらも笑う彼女はとても美しくて。
勇気を出して想いを伝えて良かったと心から思う。
一人、小さな体ながらずっと私を支えてくれていた。
喜びも悲しみも分かち合い、辛い時もどんな時も一緒にいた大切な人。
ずっと君を守る。
シュネル様が見つかった時は、挙式を挙げよう。
これは二人だけの約束だ。