01 いつもの朝
シャッとカーテンが勢いよく開かれた。射し込んできた陽の光に、私は思わず身を捩る。目を細め、目覚まし時計を横目で見ると、時刻はもう五時半だった。
「……今日、大事なプレゼンあるんじゃないの。」
一松がカーテンを括りながら、私を揺り起こす。もうちょっと、もうちょっとだけ寝てたい。
「……大好きなチャイ、淹れたけど。」
むくりと布団から起き上がると、隣では愛娘がすやすやと寝息をたて、眠っていた。
「笑いながら寝てるね。」
「寝方が名前そっくり。」
「どんな寝方してるの?」
「右手を枕にして、横向きで寝る」
「へー」
「だから、いつも枕が吹っ飛んでる」
「確かに、あんまり使わないかも。枕。」
まだ横で眠る愛娘の髪を撫で、私は布団を片付けてキッチンに向かった。結婚当初の一松の家事スキルには、正直かなり不安を覚えていたけど。今は本人の努力のお陰もあってか、確実に家事のスキルは上がっていると思う。人間には与えられた環境に適応する力というものが少なからずあると思うけど、一松は本当によく頑張ってくれている。娘の保育園のお弁当も、私のお弁当も、朝食も夕食も、洗濯もお掃除も、猫のお世話も。それは丁寧に。
顔を洗い、素早くメイクもしてスーツに身を包むと、やる気が湧いてくる。ニュースを観ながら温かいチャイを啜り、ベーコンエッグをのせたトーストを齧っていると足元にカノンがやってきた。カノンは白猫で、一松と暮らし始めて飼った猫だ。もう暮らし始めて、大分年月が経ったけど、こうして私たちの側で穏やかに寄り添ってくれている。
「カノンもベーコン食べる?」
「名前、ダメ。こいつ今ダイエット中」
「えー」
「もうおばあちゃんだから、あんまりカロリーの高いものはダメ。」
「そっかあ、残念。」
喉を撫でると、ぐるぐるカノンは音を立て眠そうに目を細める。朝食を済ませ、流しに皿を置いて私は玄関へ向かった。
「今日、プレゼンの後に部署で打ち合わせあるから。」
「うん。」
「多分帰るの遅くなるから、よろしくね。夕飯は要ります!」
「うん、わかった。」
「いってきます!」
「いってらっしゃい、頑張って。」
一松が私の背中をトンッと優しく叩いて、私の一日が始まる。鞄を掴んで、勢いよく扉を開いた。今日も長い一日が始まる。それでも、家族がいれば頑張ろうという気持ちが湧いてくる。
今がとても、幸せだと思うから。
一松がいて、愛娘がいて、カノンがいて。信頼できる友達もいて。仕事ではまあいろんなことがあるけれど。でも、やりがいだってある。
私は、とても幸せだ。
会社に着いて、急いで「松野名前」と書かれたネームプレートを首からさげた。大事なプレゼンの準備を朝から入念にしていると、部長が「相変わらず松野さんは真面目だな」と声を掛けてくれた。
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