05 雨の日の憂鬱




ーザーッと音を立て、大粒の雨が外は降っていた。ため息をついて、名前は温かいカフェオレを啜る。食べ掛けのソーセージを一口齧って呟いた。

「仕事行きたくない…。」

天候が悪いと、名前は仕事場へ行くのを嫌がる。「じゃあ行かなければ良いじゃん。」と言ってやりたいのは山々だが、生活が掛かっている手前、そんなことも安易には言えなくなってしまった。名前は、思い出すんだろう。雨の日は決まって、昔のこと。

「…もう金曜日だし。」
「んー」
「今日行けば…土日。」
「んんー…」

名前は伸びをして、キッチンテーブルに突っ伏した。カノンがぴょんとテーブルの上に乗って、名前の様子を伺う。名前は突っ伏したまま、また「んー」と唸った。

「肉じゃが食べたい…。」
「今日、作るから。」
「土日は昼まで寝たい。」
「寝てて良いから。」

俺がそう言うと、名前は「…いってきます。」と力なく呟いて、ふらふら玄関へ向かって行った。俺が傘を渡すと、名前はぎゅっと俺に抱きつく。甘えているサイン。娘のそれと似ている。

「……はい、いってらっしゃい。」

ぽんっと背中を叩いた。名前は無言で頷き、玄関の扉を開けた。

『私、死にたいんです。』

初めて名前と会った時を思い出す。雨が降りしきる中、名前が力なく呟いて、俺は目を真ん丸にさせたんだ。初めて出会って、第一声が『死にたい』だったから、相当名前も病んでいた。そこまで追いつめた会社…と言うよりも、社会は残酷だと思う。

「……今日は、洗濯できない。」

俺が食器を片付けながら、ポツリと呟いて、窓の外を眺めた。六月の雨は酷く降りしきっていた。


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