07 回想録



「一松、何その子?」

ぐちゃぐちゃになりながら、背負って連れてきた女の子は酷く痩せていて疲れきっていた。おそ松が俺に問いかけると、俺は「死にたいって言ってたから連れてきた。」と一言。

「えっ…それ、ヤバくない?」
「何が?」
「えっ、ニュースでよく見る過労死とか、仕事のし過ぎで病になりかけてる一歩手前の子じゃない!?」

ぐったりと目を瞑ったままの女の子を、俺は玄関の床に下ろし、とりあえず何か身体を拭くものをおそ松に頼んだ。おそ松は急いであるだけのタオルを俺の前に置くと、俺はその女のスーツを脱がした。

「い、一松!今から何をする気!?」
「はあっ!?全身ぐちゃぐちゃだったら脱がせるしかない…」

俺はそう言いかけて、ピタッと言葉を呑んだ。女の身体は酷く痩せこけていた。更に目にくっきりとした隈。明るい場所でよく女を見ると、それがはっきりと分かる。

「なあ…なんかさ、警察呼んだ方が良くない?」

おそ松が不安そうに俺のことを見るが、俺はこの女の身体を拭き、抱えたまま二階へ上がった。パーカーを着させて、布団の上に寝かせると女は小さく呼吸をして眠っていた。

「なあ、一松…」
「………。」
「この子、大丈夫かな?」

他の兄弟は、丁度出掛けており、居るのは俺とおそ松だけ。ゆっくりと女の手を握ると、余りにも細くて折れそうだったからびっくりした。

「……知らない。」
「え。」
「何か、死に場所探してるから、とりあえず家に連れてきた。」
「猫じゃないんだからさ、一松。でも、とりあえずと言うか大分やばいね、その子。」

事の経緯をおそ松に言うと、おそ松は真剣な眼差しで俺の話を聞いていた。公園でいつも話している猫の様子を見に来たら、この子がいたこと。死にたいと言ってきたこと。話の途中で取り乱して息が出来なくなったこと。

「今は眠ってるね。」
「…うん。」
「そのままにしておこうか。疲れてるみたいだし。」

俺はじっと布団の上に眠るその子を見つめた。こうして見ると、今にも死んでしまうのかとさえ思う。何でか、死んで欲しくなかった。その子を殺したくはなかった。一緒に死に場所を探して、それまで生きたいと思った。

これが名前と俺の最初の出会い。





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