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「だから今日、ここでお前を倒す!!」


 ビリビリと肌を突き刺す敵意と憎悪。それを打ち消すような青山の叫び声とともに、無数のワープゲートが開き、一斉にヒーローたちが躍り出る。戦いの火蓋が切って落とされた戦場に、名前も仲間たちとともに降り立った。
 心操の個性で青山と彼の両親を操ってオール・フォー・ワンをおびき寄せ、油断しているところに物間が黒霧からコピーしたワープゲートでヒーローたちを召喚させる。そんな塚内やオールマイトたちがたてた作戦は無事上手くいったようで、無数の渦の中から現れたヒーローたちが、オール・フォー・ワン率いる大軍と向かい合った。
 けれど、まだこれはほんの序の口だ。臨戦態勢に入りながらも、ヒーローたちは悟られないように各々の目標に対して散らばっていく。そしてオールマイトの号令と同時に、地中から現れた黒い鉄の檻"トロイア"がヴィランたちを飲み込んで動きを封じたと同時、ヒーローたちは再び現れたワープゲートの中へ、ヴィランたちの入った檻を力の限り押し込んだ。
 無事に敵の主力メンバーの分断が成功し、自分たちもワープゲートをくぐると、ヴィランの攻撃によって破壊されたトロイアの残骸が散らばる奥渡島の浜辺へと名前は着地する。
 狙いはトガヒミコ。当然、お茶子や梅雨も一緒だ。けれどそこには、誰もが予想できなかった人物の姿があった。


「デクくん・・・!?なんで・・・死柄木のとこのハズじゃ・・・!」


 静かな波が飛沫をあげる美しい奥渡島に、お茶子の上擦った声が鳴り響く。悠々と戦場の地に立つトガヒミコのワイヤーの先には、腕を絡め取られた緑谷出久の姿があり、思いもよらない状況に誰もが混乱をしていた。
 彼は作戦の要。死柄木弔を打破できうる一縷の望みといっても過言では無い。そんな緑谷が、トガヒミコによって奥渡島に連れ込まれてしまっていた。このままでは、前提が、作戦が、全て崩れ去ってしまう。
 けれど悠長に息を飲んで状況を整理する間などある訳もなく、すぐさまヴィランからの攻撃が開始される。まだ足先しか水についていないため、ヒレに変化をしていない足を動かしながら、名前は大切な友人の名を高らかに呼んだ。


「フロッピー!!」
「まかせて!!」


 伸びてきた舌に絡め取られた身体が勢いよく投げ飛ばされ、そのまま名前は空高く舞い上がる。真下を見て状況確認をしたが、大人数でワープゲートをくぐってきた影響でまだ味方の陣形が整っていない。体制が整うまでの時間稼ぎが必要だと瞬時に判断した名前は、大きく息を吸い込むと、敵がかたまっている場所へと幻惑の世界へと誘う歌声を降り注がせた。
 歌に聞き惚れるように呆然と立ち尽くすヴィランたちのその先で、声の範囲外にいたトガヒミコがすぐさま動き出す。狙いはやはり緑谷のようで、彼女は嬉々とした表情で彼を追い回し始めた。
 加勢に行こうにも、脳無やダツゴクたちの怒涛の攻撃が始まり安易に近づけない。脳無の技の衝撃波によって梅雨とともに陣形の後方へと吹き飛ばされた名前は、体制を整えながら思考を巡らせた。
 ここから雄英までは200km以上の距離がある。ワープゲートが現れないところをみると、きっとファントムシーフがイレイザーヘッドの個性をコピー中で、切り替えができない状況なのだろう。
 となれば、緑谷は自力で雄英まで戻らなければならない。死柄木との戦闘に備え、力を温存させつつ彼が雄英にたどり着くためには誰が協力すべきか。その答えはもう出ていた。


「パルメイド!離脱を許可する!雄英に向かえ!!デクの力になれ!!」
「はい!!」


 対トガヒミコ戦を指揮するギャングオルカも、同じ答えにたどり着いていた。指示を受け、名前はすぐさまトガヒミコと緑谷たちのいる方角へ駆け出す。
 「援護するわ!」という頼もしい梅雨の声を背中に受けながら、名前は身を屈めて戦いの渦中へと突っ込んだ。無数のワイヤーが縦横無尽に駆け巡る中、名前は一直線に目標に向かいながら、右の手のひらにりんご一つ分ほどの大きさの泡を作り上げ、そっとそれに唇をあてる。
 スターアンドストライプが残してくれた僅かな猶予期間で行った圧縮訓練中に、新たに作り出した攻撃技。成功率はまだ半分だが、今はなりふりかまってなどいられない。
 一刻も早く緑谷を奥渡島から脱出させる隙を作らなければと、激しい攻撃を繰り出し続けるトガヒミコの後ろ手に名前が近づいた次の瞬間、ピリついた殺気とともにトガヒミコの細い腕が振り上げられ、お茶子の肩にナイフの刃先がくい込んだ。


「──っお茶子ちゃん・・・!!」


 同時、名前は背後からトガヒミコの元へ飛び込むと、彼女の耳元で己の両手を勢いよく叩き合わせた。


「バブル・ソング!!」


 手の中に収めていた泡が割れ、中に封じ込めていた名前の歌声がトガヒミコの耳元で反響し、彼女は白目を向いて意識を飛ばす。動きを封じた一瞬の隙を、 名前の背後についてきていた梅雨も見逃さなかった。
 渾身の力で梅雨がトガヒミコの脇腹に蹴りをお見舞いすれば、彼女の身体は勢いよく吹き飛んで行く。けれど無情にもトガヒミコはすぐに意識を取り戻し、むくりと起き上がってきた。やはりたったワンフレーズの歌声を聞かせただけでは、効き目が三秒ともたない。
 名前の一番の得意技である歌は、大人数に一斉攻撃ができる反面、範囲を絞ることが難しく、味方を巻き込むことがデメリットとしてあった。そのため、どうにか単体攻撃ができるようにと、訓練によって進化させた技がこの"バブル・ソング"なのである。
 

「っ──怪我は!?」
「・・・大丈夫、かすり傷」


 デクの問いかけに、眉をしかめながらもお茶子はすくりと立ち上がる。その様子に名前がほっと胸を撫で下ろしていれば、梅雨がトガヒミコをしっかりと視線でいなしながら口を開いた。


「行きなさいデクちゃん。あなたが今すべきは、ここで恋愛話じゃないでしょう。作戦通りにトガヒミコは、接触数の多いウラビティを中心に、私たちで片付けます」


 相手の動きに警戒しながら、梅雨は名前の前に立つ。恐らく、トガヒミコからの攻撃を一手に引き受けるつもりなのだろう。


「デクくん、名前ちゃん、死柄木を──・・・頑張ろう!」


 お茶子の視線が緑谷と名前に向けられたと同時、トガヒミコが立ち上がり、再び戦闘態勢に入った。


「行って!!」


 凛とした声に後押しされて、二人は一斉に戦場から飛び出した。
 水しぶきを上げて駆け抜ける緑谷の横で、名前はすぐに水面深くに潜り込み、足をヒレへとフォルムチェンジさせる。海上では引っ掛ける場所がないため、緑谷は黒鞭を使うことができない。かといって他の技を組み合わせて空中移動するにも、死柄木戦を前に力を使いすぎてしまっては元も子もない。そこで名前の出番というわけだ。
 人魚の個性使用による水中移動の速度は、海洋生物を遥かにしのぎ、恐らく雄英までは全速力で泳げば三十分以内に到着することができるだろう。パラセーリングのように黒鞭で繋げて牽引していけば、きっと彼の力を温存させられるはずだ。


「デク!黒鞭を!!」


 頭の回転が早く、クラスメイトの個性を事細かく調べあげている彼は、名前が自分の後に続いて戦線を離脱した理由をすぐに理解したらしい。伸びてきた黒鞭が己の体にしっかりと巻きついたことを確認すると、名前は頭上に浮遊した緑谷の表情がよく見えるように顔を上に向けた。


「移動はできるだけ私にまかせて力を温存して!全速力で貴方を雄英まで送り届けるから」
「──っありがとう、パルメイド!」
「しっかり捕まってね」


 焦燥感に駆られた彼を安心させるために、名前はいつものように柔らかく微笑む。そして大きく息を吸い込み、緊張から高鳴る心音を落ち着かせると、そのまま勢いよく水中に潜り込んだ。
 青く染まる美しい海の色が、視界一杯に広がる。身体と水を一体化させるように感覚を研ぎ澄ませ、下半身に意識を集中させたと同時、名前はヒレで水を蹴り上げ、一気に加速した。
 大切な人達を守るために、そしてみんなが笑顔でいられる明るい未来を掴み取るために。人魚は全てを賭して、海を駆け抜けたのだった。



 ***


 名前が緑谷を牽引し続けて、すでに二十分は経っただろうか。ただひたすら前だけを見続け、雄英高校のある方角に泳ぎ続ける名前の体に巻きついていた黒鞭が、ふいにぐいっと力強く上に引き上げられる感覚を覚えた。
 もしかすると、イレギュラーが起きたか、敵に遭遇でもしたのか。ヒレを動かし続けながらも、名前は状況確認のために急いで浮上していく。
 水面から顔を出して黒鞭の先を辿っていけば、頭の遥か上の空中に緑谷と数機の戦闘機の姿が見てとれた。あれは恐らく、スターアンドストライプと共にアメリカからやってきた部隊のものだ。緑谷の黒鞭が戦闘機に引っかかっていることから、きっと彼らが雄英までの移動の協力を申し出てくれたのだろう。
 そのまま黒鞭で身体を引き上げられた名前は、ぜぇぜぇと乱れた息をなんとか整えながら、伸ばされた緑谷の手を受け取った。


「ありがとうパルメイド。おかげで体力を温存できたよ」
「っ、ううん、役にたててっ・・・ハァ・・・、良かった」
「僕はこのまま戦闘機を伝って雄英のバリア内に突入する。君は、どうする?」


 問いかけてきた緑谷の言葉に、名前は小さく息を飲む。
 名前の当初の役目は、奥渡島での対トガヒミコ戦であった。本来であれば、今頃お茶子や梅雨とともに全力で脳無やヴィランたちと戦っていたはずである。けれどそれが状況の変化とともに、気がつけば雄英高校の目前までたどり着いていた。
 今から奥渡島に戻るのは、体力を消耗した状態なこともあってさらに時間がかかってしまううえに、戻ったとて使い物になるかどうか微妙なところだろう。
 ギャングオルカから離脱許可も出ている今、自分がどうすべきなのか、そしてどうしたいのか。考える時間など必要なく、名前の中での答えはもうすでに決まっていた。


「もちろん、私も一緒に行かせて」


 対死柄木戦では、ヒーローたちの中でも指折りの火力の高いメンバーが揃っている。その中で自分の個性が役に立つかは分からないし、命の保証はずっと低くなるだろう。
 けれど、幼い頃、爆豪を救ったことで、大嫌いだった自分の個性でも人の役に立ち、誰かを救けることができるのだという喜びを知った。
 そして自分に自信が持てるようになり、飛び込んだ歌の世界では、挫折して己の弱さを知り、前を向いてひたむきに努力する尊さを学んだ。
 その後ヒーローを目指して雄英高校に入学したことで、さらなる成長ができ、かけがえのない仲間たちと大切な人を見つけることが出来た。
 たくさんの仲間たちが命を賭して戦っている最中、自分だけ安全なところでぬくぬくと休むわけにはいかない。最後の最後までヒーローとして駆け抜けたい。様々な人達のかけがえのない場所、家族や友人、そして思い出を、これ以上敵に壊させないためにも──。


「分かった。一緒に頑張ろう」


 突き出された緑谷の拳に、名前は決意を込めて力強く己の拳を合わせたのだった。
 その後、名前は緑谷の背に背負われる形で、彼と共に黒鞭で戦闘機を伝い、雄英への道のりを急いだ。凄まじい風圧でヒレについていた水分はすっかり飛ばされたようで、すでに下半身は元の足に戻っている。
 果たして今は一体どんな戦況になっているのか。奥渡島を出てからマンダレイとは通信が途絶えてしまっていたため、何もかもが未知数のこの状況にただただ心音だけが高まっていく。
 そんな最中、空の要塞と化した雄英の姿を二人が視界に捉えた時、ようやく電波が繋がり、緑谷はマンダレイに突入の旨を伝えることが出来た。


「マンダレイ!聞こえますか!?」
『デクくん!?今どこに・・・!?』
「パルメイドとともに、あと二十秒後に雄英に到着します!バリアの解除を!!」
『──っ了解!開けられるのは二秒だけよ!!お願い、みんなを救けて!!』


 悲痛の色を含んだマンダレイの声。味方の旗色が良くないことがひしひしと伝わってきて、手のひらに緊張の汗が滲み出る。
 爆豪は、無事なのだろうか。いや、彼は約束してくれたのだ。負けないと、必ず自分の所に戻ってきてくれると。何度も苦境を乗り越えて戻ってきた強い彼ならばきっと、大丈夫。
 昨日握った爆豪の手のひらの温度を思い出しながら、名前は不安を吹き飛ばすように己を奮い立たせた。
 そして突入までのカウンドダウンの開始とともに、戦闘機から黒鞭を離した緑谷と別れ、彼の背中から飛び降りた名前は、一人空中で両手をかざし突入体制を取る。
 目の前でバリアが解除され、中に滑り込んだと同時、名前は手のひらから大量の泡を放出させる。着地をするために泡を調整しながら体制を整えていれば、黒鞭を使って勢いよく死柄木に突撃し、攻撃を加える緑谷の姿が見えた。
 突然の攻撃に、大きな音をたてて吹き飛び、バリアにぶつかる死柄木の身体。突入が無事に成功したことに安堵していたが、すぐに名前は辺りの異変に気づいた。
 誰の声も、音も、聞こえない。地上に降り立ち、手のひらの雫を払えば、目の前に漂う大量の泡が、ふよふよと空高く登っていく。
 晴れた視界の先には、傷だらけで横たわるヒーローたちの姿。ミルコも、先輩の天喰や波動も、みんなが地面に倒れたままで、誰もぴくりとも動かない。
 想像もしていなかった状況に、名前は唇を震わせながら、辺りを見回す。彼は──爆豪は一体どこにいる。きっと彼のことだ。「来るのが遅い」やら「お前らが来なくても余裕だった」といつものようにふんぞり返って余裕の表情で笑ってくれるはずだ。
 けれど、そんな希望はすぐに打ち砕かれてしまう。背後十メートルほど先で、地面に倒れている爆豪の姿を見つけた時、名前の身体は全てが凍りついてしまったかのように動けなくなってしまった。


「・・・爆豪く、ん?」


 痛みを伴って軋む心音。心の中が崩れていくような感覚が襲い来る。
 よたよたと、何とか足を動かして名前は彼の横に跪く。目は虚ろで生気はなく、爆豪の体や口から大量に出た血が辺り一面を赤く染めあげていた。


「爆豪、くん・・・っ」


 血濡れた頬に触れても何も答えてくれない。震えた声とともに溢れ出てきた涙が、とめどなく頬を伝っていく。


「約束した、じゃない・・・絶対、戻ってくるって、っ──次に会う時は・・・気持ちを、聞かせてくれるって・・・」


 彼と初めて出会った幼き頃の大切な思い出と、雄英で共に過ごした日々が走馬灯のように頭を過ぎっていく。
 口が悪くて粗暴で、最初はとても苦手な存在だった。けれど実は色々と不器用なだけで、本当は面倒見がよくていつも助けてもらっていたし、ひたむきに努力を重ね、常に前を向いて走る姿に追いつきたいと思った。そして気がつけば、そんな彼に恋をしていた。


「・・・っ私、まだっ、爆豪くんのこと、名前で呼べてないよ・・・!」


 名前の悲痛な泣き声に呼応するかのように、背後の空気が激しく揺れ、緑谷の叫び声が空間にこだました。怒りと悲しみの感情が、まるで肌を突き刺すように噴出する。
 このままだと緑谷が感情に飲まれて、怒りで我を忘れてしまう。誰もがそう考えた矢先、一筋のきらめく流れ星のように力強い声が、彼を繋ぎ止めた。


「大丈夫だデク!!」


 突如現れたルミリオンが、デクの肩に掴みかかり、彼に必死に語りかける。 


「自分が許せないんだろ!?ああ、分かるぜ。でもそれは敵の思う壷だ!!大丈夫!環たち、まだ息をしてた!今エッジショットが、爆豪くんの救命措置にあたってる!!」


 その声に、名前は弾かれるようにして視線を爆豪の体に向ける。胸元にはするすると動く薄く細い糸が見え、波打つように彼の心臓が上下に動いていることに気がついた。


「彼は絶対に成功させる!その前提で戦ってる!!俺たちはまだ何一つ失っちゃいない!諦めちゃいない!!」


 希望の道筋を示すような光に満ちた声に、名前はぐっと涙を飲み込んだ。
 そう、彼の言うとおり、諦めてはいけない。みんなが繋いだ希望のバトンを、自分も受け取って、繋いでいかなければならないのだ。


「俺たちはヒーローだ・・・!!ヒーローがきれい事並び立てないで、誰が理想を現実にするんだ!?」


 ルミリオンからの問いかけに、空間に満ちていた憎悪の渦が、綺麗に消し飛んでいった。


「ごめんなさい・・・ルミリオン」
「謝るのは勝ってからだヒーロー」


 ドンドンと己の胸に拳をあてて息を整えた緑谷の視線が、名前と爆豪の方へと向けられた。


「真珠さん、かっちゃんを頼んだ」
「・・・うん!」


 力強く頷く名前の声を聞くと、緑谷は再び死柄木と向かい合い、戦闘へと突入していった。
 とにかく今自分が出来ることは、治療の邪魔が入らないように、こちらにきた攻撃をいなす役目をすることだ。そう己の役割を理解した名前は、目元にたまっていた雫を拭い去る。
 するとふいに後ろから気配を感じ、振り返れば、そこには体を引きずりながらこちらに向かってくる傷だらけのベストジーニストの姿があった。


「・・・っ、ベストジーニスト!」


 ぐらつく細長い身体を支えようと立ち上がろうとしたが、大丈夫だと手で制される。ベストジーニストの目は、ただ真っ直ぐに爆豪の姿を捉えていた。


「意識を、呼び戻すために・・・っ声を、かけ続けてやってくれ。紙、原が・・・必ず彼を、助ける。きっと、君の声なら・・・届くはずだ」


 その声に後押しされるようにして、名前は爆豪の手を静かに取り、包み込むように強く握りしめる。
 普通ならば、名を呼び続けることが一般的であろう。けれど、それよりも彼の心に届けたいものがあった。
 大きく息を吸い込むと、名前は世界で一番大切な歌を口ずさむ。
 人魚が若者を想い歌う愛の歌──”真珠の唄”を。




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