俺の幼馴染







おはよ。

俺は切島鋭児郎。

今日も今日とて雄英高校ヒーロー科に通う高校一年生だぜ。

腰に手を当て晴れた空を窓から眺めながら歯を磨く。
今日も演習、テンション上がるぜ。



突然だが俺には大切な幼馴染がいる。
バカだが優しいやつで幸せそうな笑顔はそりゃもう可愛い。
そそっかしくてドジだしなんだかほっとけなくていつもつい心配しすぎちまう。
かなりの鈍感がたまにキズだけど。

あいつも俺のことを「好き」と思っていることは行動でわかる。だが俺の「好き」とあいつの「好き」はちょっと違う。

もう高校生。何年も一緒に過ごしてきたがそろそろ俺も一線を超えたい気持ちはどうしてもある。

さーてどうやって攻めていこうか。



悶々と考えながら歯磨きし終えた頃玄関からバタバタと音が聞こえた。


来たか。噂の本人が。



「鋭児郎!おはよ!学校行こう!!」

「おう・・・なまえ・・・くっ」

「え、なに?上向いてどうしたの?なんかあんの?」



ガチャっとリビングの扉が開いてなまえが顔を出す。

そう、こいつが俺の大好きな幼馴染のなまえだ。

ああ今日も可愛いぜ・・・朝からなまえが拝めて幸せだ。
じ〜んと来ているとつられてなまえも上を向く。何もないのでもちろん何のことだかよくわかっていなかったが気にしていないようだ。



「もういいから早く着替えなよ」
「へいへい」



俺はソファに掛けてあったシャツを取り着替える。


ん?よく考えたらこいつ・・・俺が目の前で着替えても平気なのか。

もっとこう、きゃー!なにここで脱いでんのよー!とかねえの?

「おおー着替え早いねー」とか言ってっし。くそっ。まあね、知ってたわちくしょう。


まあそうは言うがなまえは普通科で学科は違うが同じ高校。
中学とは違い雄英高校は遠いから毎朝一緒に登校する約束だ。

だからこうしていつも近所に住むなまえが俺ん家にやってくる。毎朝優越感を感じているのは内緒だ。

よし、と準備ができたところでなまえと家を出る。



「よっしゃ行くぜェ!!」

「行くぜー!」

「「行って来まーす!!」」



バァンっと玄関の扉を開け外へ駆け抜ける。家の奥から親の「コラー!もっと優しく開けなさーい!」という声で送り出され、さあ出発だ。

よーし今日も頑張りますか!











「やーっとメシだー!ウェーイ!!」

「今日なかなかきつかったなー。午後起きてられっかな」

「おし決めた!俺牛丼!バクゴー何食う!?」

「・・・ハンバーグだな」



ふう。昼休憩いつものように爆豪と上鳴と瀬呂と飯を食いに食堂へ。

今日の演習は疲れたし牛丼!
ぐあーっ滲みるぜ!


ランチラッシュの牛丼を食べていると少し遠くの席がふと目に入った。


なまえだ。




時が止まった気がした。びっくりした。え、なんで・・・お前・・・





「?切島?どした?」

「なになに!?すげー可愛い子でもいた!?」



そこにはなまえが男と二人でご飯を食べているようだった。

ふつふつと怒りだか悲しみだか嫉妬だかなんかいろんな感情が湧き上がってくる。あれ、俺こんな余裕なかったっけ。




「なぁ、あいつ名前なんつったっけ」

「ウエ!?なんでお前怒ってんの?顔こえーぞ?爆豪じゃねんだからよ」

「んだテメェ死ぬか?」

「ギャー!かっちゃんヤメてー!」



「あいつって、あの紫の?確か体育祭で緑谷と戦ってたよな」

「あぁ、心操くんだよ」



「うおっ!緑谷!!!」

「デクテメェ・・・んでお前がここにいんだよ、あぁ?」

「ひぃっ!ご、ご飯食べに来てるだけじゃないか!」



上鳴の頭をがっしり掴んだ爆豪が緑谷に吠える。緑

谷はタッタカターと飯田や轟たちのところへ走って行ってしまった。まだ聞きてえことはあったが教えてくれてありがとよ緑谷。


ったく・・・俺がいない間も楽しそうで何よりじゃねぇかなまえちゃんよぉ・・・。

あー、くそ。さっきまでうまかった牛丼の味がわかんなくなっちまった。

やっぱ俺のもんにしたいよな。
誰にも渡したくない。
嫉妬深くて独占欲の塊だな、俺って。と心の奥底で笑ってしまう。



「で?」

「なんだよ?」

「あいつがなんだっつんだよ」


「あ〜、いや・・・なんとなく」


痛いとこ突くぜ爆豪。

なまえのことはなるべく教えたくない。


だって、少しでも俺だけのなまえでいてほしい。なんて、漢らしくねえこと思っちゃって。


ていうかこいつらに女の子の幼馴染がいるってバレると面倒くさそう。特に上鳴。そこから回る峰田。



「確かに!なんでだ?って隣の女子かわいくね!?」


ゲッ!上鳴がなまえに注目してしまった。あー、あんま見んな見んな。


「本当だ。可愛い」


瀬呂も賛同する。ふん、そうだろう。なまえは可愛いぞ。



「そうかァ?」

「は?爆豪ちゃんと見えてんのか可愛いだろ」

「?なんだお前・・・」



おっと、聞き捨てならずつい口を出してしまったぜ。
ったく爆豪素直じゃねえなぁ。



「心操あいつモテんのかよー!羨ましいなクソー!」


「やめろ。それじゃなまえの方が好きみてぇな言い方」


あ、しまった。


「・・・・?・・・?」

上鳴の顔がアホになって一時停止。



「”なまえ”!?!?!?き、切島くん?な、なぁにぃいいい?お前あんっな可愛い女子と知り合い!?だから見てたの!?え、友達?友達だろ?彼女とか言わねえよな?なァ!?」



ほらな。

スッゲェ面倒くせえだろ。



「友達・・・っつーか幼馴染」

「…エーーーーー!!!幼馴染ィ!!?!??ズッル!!なんなのお前!!!裏切り者!!」

「へぇ〜!なるほどなー。彼女ではないけど大好きな幼馴染が男とメシ食ってて切島くんはヤキモチ妬いちゃってるってわけねぇー。はいはい了解了解」

「!!!!!」



泣きながら訴えてくる上鳴は放っておいて、ニヤニヤしながら言ってくる瀬呂。バレバレじゃねえか俺!!!




「えーなになに切島結構カワイイとこあんじゃんプププ」

「結構わかりやすいのなー」

「いつ告んだよ」


こ、こいつら・・・・・!!!爆豪まで悪ノリかよ。



「あーっくそ!ちょっと行ってくるわもう!!!上鳴!これ片しといて!こないだオセロ俺が勝ったからその分!」


この空気感を切りたくて、勢いでなまえの所に、行こう。行くしかねえ。黙って見てらんねえし。

とっくにメシは食い終わっていて上鳴に食器の片付けを無理やりこじつけ、ガタッと立ち上がりズンズンとなまえの方へ向かう。後ろからは上鳴の「任せとけー!行ってこーい!」という元気な返事が聞こえてきた。



「なまえ」

「あっ!鋭児郎!」

「・・・・・・」

ちょうどなまえと心操が隣で座っている。間を縫ってやりがいがそうはいかず、なまえの左隣へ座る。

「よぉ。心操クン」

「何?てか誰」

「鋭児郎だよ!私のツレ!」

「おい、ツレとか言うなよ。どこで覚えてきたんだよそんな言葉」

「へぇ。仲良いんだね。みょうじさんと、えいじろうクン」



なーーーーーんかコイツ・・・食えねえやつ。



「「・・・・・・・・・」」

「?そうだよ。え、何?2人知り合い?」

「「全然」」

「ふーん。ねえ鋭児郎もうご飯食べたの?」

「ああ。食い終わった」

「相変わらず早いねえ」

「なまえまだ?早く遊ぼうぜ」

「ふふっ。ねえ心操くん、鋭児郎小学生みたいでしょ。いつも昼休憩に遊ぼうって言ってくるんだよ」

「ホントね。ーーーーじゃあ俺は食べ終わったし、彼氏が来たならそろそろ行くよ」

「彼氏じゃないよーもー!また後でねー!」



心操は含んだ笑いと共にそう言ってなまえに反射し俺に大ダメージを与えてスタスタと消えて行った。心は硬化できねえんだぞ、覚えてろ心操・・・・だが今更こんなもんじゃ俺はへこたれないぜ。



「”後で”って?なんでだよ」

「心操くんは同じクラスだよ」

「はぁ??てか昼に一緒に食べる必要あんのかよ。いつもの友達はどした」



なまえの前だと周りとか見えなくなってて、つい気が緩んで体ごと近いのがわかる。



「友達は・・・っていうか近いよ、鋭児郎!ご飯食べづらいから!」

「じゃあこうな」

「んっ?え、ちょっ・・・?鋭児郎・・・?な、なんっ」



少し距離を開けて、なまえの左手を握る。手もかわいいな。ちっさくて。ってあれ?



「なまえ照れてる?」

「うぇっ・・・あ、いや、え?てて、手・・・!手が・・・!」




え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
めっちゃ照れてる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




なんだか動きがカクカクしていて手を繋いだことに必死に何かを訴えようとしているみたいだ。なんとも思わないかと思ったけど意外な反応だった。



「えいじろ、手・・・なんか大きくなってて、お、男の人って感じするし・・・もうなんなのこれぇえ離してよぉお」

「お前・・・煽ってんの?なにその可愛い反応」

「へっ?な、なに?からかってんの?なんで急に手なんか繋ぐの!」



顔を真っ赤にさせてプンスカしてるし手を離そうと頑張る姿が可愛いでしかない。しかも大きくなっててとかそんなこと言うのかこいつ・・・まさかの収穫もあったし最高な日だ。幼馴染とはいえ用もなく手を繋ぐことなんてない。初めて握った。俺も離されまいと力を入れる。あーめっちゃ好きだ。



「ご、ご飯!食べづらいし、あの、周りに人いっぱいいるよ?」

「人は別に気にしねえけど、まあ飯食えねえならしゃーねーな」


名残惜しくも手を離す。なまえは少し落ち着いたみたいだ。俺がこいつの表情をコロコロ変えてんのかと思うとさっきまで嫉妬してたのが嘘みたいに嬉しくなる。

どんどん攻めていかねえとな。




「俺、なまえのことそろそろ本気出すからな」




もっとなまえと触れ合いたいし





「?え、どゆこと?私のことってなに?」




恋人にならないとわからない、誰も知らないなまえを知りたい。




「そのうちわかるんじゃねー?鈍感も過ぎると苦労するかもな」

「鈍感?苦労?何の話なの?ねえ、鋭児郎!」






これは、俺がなまえをオトすまでの物語だ。