※すべてがねつ造です
※事実と異なる描写が多々あり、ご都合主義気味です


 写真事務所に所属していた時、世話になった芸能事務所の社長からの依頼だった。

「お前、人物撮るの上手かっただろ」

 そう言って依頼されたのは落ち目のグラビアアイドルの着エロ撮影だった。

「せいぜいエロく撮ってやってくれ。無理ならAV堕ちだな」

 渡された宣材写真を見ると確かにかわいらしい顔立ちの、しかしこの華々しい世界でやっていくには少し物足りないような女が写っていた。
 その手の撮影が特別得意なわけでもない自分に依頼するということは、あまり期待されていないのかもしれない。

 スタジオに到着すると、そこにいたのはあの宣材写真で見るより少しだけ幼い顔の女が一人だけだった。普通は他にもスタッフがいるはずだが。

「マネージャー達はどうした?」
「あ、インフルエンザにかかってまして……。今うちの会社、インフルエンザだらけで全然人が足りてないんです。その、メイクさんもインフルエンザで……代わりの人がさっき来て、メイクは済ませてくれたんですけど休みの人の穴埋めで忙しいみたいで……」
「……本当に一人なのか?」
「……はい」

 女が俯いた。
 落ち込んだような表情を見て、自分が今どういう状況に置かれているかを察しているんだろうと思った。こんな調子ではとても良い写真など撮れそうにない。

「分かった。少し準備をしてくるから着替えて待っていてくれ。構図などは一任すると言われているが、何かアイデアがあったら遠慮なく言ってくれ」
「分かりました」


***


 さて。スタッフが一人もいないとなると照明の具合や構図を考えるところまですべて自分一人でやらなければならないだろう。割に合わない仕事だな、と思いながらも部屋の片隅で一人、所在なさげに座る彼女を見るとどうにしかして魅力的に撮ってやりたいとも思う。

「あまり緊張しないでいい」
「は、はい」
「ポーズの指定はするが、嫌だと思ったらはっきり断ってくれて構わない。無理強いをするつもりはない」
「はい、分かりました」

 固い。表情も、何もかも。どうしたものか、と思うがこういう声掛けが自分は不得手だということが分かっていた。……努力はするが、撮影中になんとか緊張が解けることを祈ろう。それで駄目ならそれはその時に考える。
 彼女が着ている水着は生地が薄く面積も少ない、ほぼ紐のようなビキニだ。

「水着はスタイリストが?」
「あ、いえ。スタイリストさんを雇うお金がもったいないからこの中から自分で選べと社長が……」
「……なるほど」

 自分で、と言われてこれを選ぶあたり彼女の焦りが伝わる。
 カメラのテストも兼ねて数枚、まずは好きなポーズを取らせてみる。壁にもたれかかり、軽く体をねじったもの。胸を両腕で強調したもの。……悪くはないが、どうにも弱い。この水着を着ている時点で、エロさはあるのだが、表情が固いからかどうにもそそられるものではない。

「……下から胸を持ち上げるようにしてみてくれ」
「はい」
「ああ、いいぞ、その調子だ」

 小さな水着から、胸が零れ落ちそうになっている。後で紐を調節して、もう少し食い込ませてみてもいいかもしれない。しかし今は緊張を解すほうが先だ。

「自分で胸を触れるか?」
「こう、ですか?」
「ああ、上手だ」

 自分の胸を揉む姿はぎこちない。初めて会うカメラマンの男と二人なのだから無理もない。彼女の頬が少しだけ紅潮している。
 壁際でのポーズを何枚か撮り、そろそろ違うポーズをさせてみようと思った。

「そのまましゃがんでみるか」
「はい」
「もう少し、脚を開けるか?」
「……」

 彼女が迷うような素振りを見せた。確かに、この水着では角度によっては見えてしまうかもしれない。もう少しライトなポーズを続けてもらった方が良かったか。

「すまん、やっぱり」
「いえ! やります!」

 ガバ、と彼女が勢いよく脚を開いた。自分で処理したのだろうか、陰毛の剃り跡が生々しい。
 頬が紅潮している。さっきよりはよっぽど、そそられる表情だった。


***


「少し休憩にしよう」
「はい。あ、私、飲物買ってきたんです」

 お茶かコーヒーぐらいしかなくてすみません、と彼女は言った。ケータリングすら自分で用意するとは余程の人手不足か、それとも事務所に見捨てられているのか。撮影を続けているうちに妙な情のようなものが沸いてしまったので、少し自分も寂しい気持ちになる。彼女はこのまま、底まで堕ちていくのだろうか。

「事務所に入って長いのか?」
「六年くらいですかね。その間鳴かず飛ばずで、社長からもこれが売れなかったらお前はもうクビかAVか選べ、なんて言われてて……」
「……そうか」
「……アイドルになりたかったんです。グラビアじゃなくて、歌って踊る方の。でも私、歌は結構良い感じなんですけど踊りが本当に下手で」
「そうなのか?」
「……見ます?」
「ああ、興味はある」

 彼女は最近テレビでよく見かけるアイドルグループのヒット曲を歌い始めた。確かに、歌はうまい。しかしダンスの方はテンポに合っていないわ足はもつれそうだわで、本人から聞いた通りの下手さだ。

「あっ」
「おっと」

 案の定、足がもつれた。バランスを崩して倒れそうになるのを支えてやる。

「すいません」
「いや」

 手を離そうとしたところで、水着の紐を引っ張ってしまっていたことに気付いた。しまった、と思ったときにはもう遅く、するりとビキニが解ける。慌てて視線を逸らす。

「すまん、わざとじゃないんだ」
「あっ、いえ、大丈夫です。元々あんまり上手く結べてなくって……。すいません、手を借りてもいいですか?」
「ああ、もちろん」

 胸元を押さえて位置を調節する彼女を見て思い出した。

「少しきつめに結んでも大丈夫か? 肌に食い込ませたものも何枚か撮っておきたい」
「大丈夫です。ジークフリートさんが、抱きたい、と思うような写真にしてください」

 表情は見えないが、耳が赤くなっているのが分かった。勇気を出して言ったのだろう。それに応えるような仕事をしなければ、と思ったのだが。

「あの」
「うん?」
「その、下、なんですけど」

 下、とは。考えていると彼女が俺の手を取った。

「自分で剃ったんですけど、剃り残しとかないか見て欲しくって……」
「そ、れは……」

 鏡を使えばいいのでは、と思ったが彼女がどういう意図でそれを言ったのかが気になった。今回のような仕事が俺の本業ではないのは彼女も分かっているだろう。あの社長に妙なことでも吹き込まれたか。
 何と返そうか迷っているうちにソファに座った彼女が大きく脚を広げた。恥ずかしいのか少しだけ顔を背けている。さっきの撮影のときよりも、よっぽど良い表情をしていた。
 誘われるように彼女のそこに吸い寄せられる。

「触って、確かめてください……」

 彼女の手が、俺の手を取り導いた。剃りたての、ざらざらとした感触だ。それが無性に情欲を掻き立てる。
 紐のような水着を引っ張ると肉が溢れる。脚を広げているおかげで、尻の穴まで見えてしまっている。ここも自分で剃ったのか、と尻の穴の周りをなぞるように触れると彼女の身体が震える。
 いつのまにか蜜が溢れているのに気付いた。見られて、周りを触られただけでこうなってしまうのか。
 思わず彼女を見ると、羞恥に震えるような、それでいて何かを期待するような顔をしている。
 写真を取ろう、と思った。カメラを持って戻ると、彼女は待っていたかのような顔をした。


***


 すっかり服を着込んだ彼女が今日はありがとうございました、と頭を下げた。

「こちらこそ。……売れると良いな」
「……はい」

 じゃあ、気をつけて、と解散しようとしたのだが彼女の声がそれを遮った。

「あ、あの!」
「うん?」
「もう少しお時間ありませんか。その、どこかでお茶でも……」
「うーん、個人的な接触は社長に怒られるんじゃないか?」

 それに、と続ける。

「とてもお茶に誘うような表情じゃないな」

 さっきの余韻が抜けないのか、どうにも違う誘いのように聞こえてしまって困る。彼女はそういうつもりではないのだろうが。そう思っていたのに。

「……なんだ、バレてたんですか」

 そんなことを言うものだから驚いてしまった。

「社長には貴方を誘惑出来たら認めてやってもいい、と言われています」
「何だ、俺をダシにする気だったのか」
「……最初はそのつもりでした」

 彼女は罰が悪そうな顔をした。

「でも、今はそれとは関係無く貴方に抱いて欲しい」

 カメラ越しでない彼女の表情はどうにも鮮やかだった。俺に訴えかける目線が、本気だと伝えている。さて、どう答えたものか。彼女の誘いに乗ってみるのも吝かではないと思っているのだから困る。もし罠だったとして、失う物は何かを考える。あの社長とのコネクションと、そこから回してもらっている仕事だが、何とかなるといえばなる。
 しばらくじっと見つめていると段々彼女の目が潤んでくるのが分かる。

「だ、駄目ですか……」

 気付くと、彼女の手を取っていた。


190405


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