「いや気まずいねん!」
「急になんやねん」
 今日も今日とて閉店作業を手伝っている時だった。前は特に無言時間を気にしていなかったが、先日の一件があってから若干気まずい。このまま時間を過ごすのが耐えられず、ついつっこんでしまった。
「何で最近の私のシフトはラストまでが多いん……」
「閉店作業覚えたいし夜多めに入れてや! って先月のお前が言うたからや」
「そうや……先月の私のバカ……」
 大体一ヶ月前にはシフトは固まるが、その時はこんなことになるとは思っていなかったので仕方がない。夜は余った材料で即席まかないを作ってもらえるのでなんだかお得だな、と思っていたはずなのに何故こんなことに。
「治が変なことするからやん!」
「はは」
「何笑っとんねん。冷静に考えてみ? 同級生のちんちん見たあと顔合わすの気まずいやろ」
「おっぱいも触ったしな」
「私が帰ったあと自家発電したん?」
「めっちゃしたけど、あんまそういうこと聞かんで?」
「ないしょ♡とかで濁しといてや、なんで答えんねん」
「ないしょ♡」
「遅いねん」
「いや今のは苗字が悪いやろ」
 せやな、今のは私が悪いかもしれん。でもちょっと気になっとったんやもん。そんで普通に答える方もどうかと思うで。
「そんで今日も俺のおっぱい見とったよな?」
「なんで分かったん」
「そりゃ気付くやろ」
 私としては控えていた気持ちだったが、目線で追ってしまうのは止まらず、しかもしっかりバレていたらしい。
「ええおっぱいなんやもん……」
「触る?」
「触らん……」
「何で」
「気まずいやん」
「今更やない? ほら」
 触りたいんやろ、とおっぱいを差し出される。そんな誘惑には負けん。
「この前おっぱいで顔挟んでくれたから顔埋めてもええよ」
「何でそんなこと言うん」
「ほい、ぎゅ〜」
「ああ〜〜〜〜」
 私が葛藤している間に胸板プレスが始まっていた。触った時は柔らかいと思ったが、顔を埋めるには固い。
「……ファンデつくかもしれんで」
「洗濯するしええよ」
 唯一の懸念を述べたが別にいいらしい。じゃあもういいか。顔で乳を堪能する機会を楽しむべく両手を背中に回してすうっと息を吸った。
「…………治臭がする」
「すまん、汗くさい?」
「くさいとかやなくて治臭は治臭なんよ」
「え〜、わからん」
 くさいわけではないが、めちゃくちゃいいにおいというわけでもない、でもなんだか癖になるにおいだ。何のにおいとも言えんよなあ、とスンスンかいでいると、さすがの治も恥ずかしくなったのか「あんま嗅ぐなや」と離された。
「なあ、2階行こ」
「……変なことせん?」
「せんよ」
 ほんまかいな。そう思ったものの、置いてくで、と言われると何故か一緒に階段を登ってしまう。部屋に入ったところで治が振り返って私の手を取った。エスコートにしても今更すぎん? 階段もう終わったで。
「なに?」
「ん?」
「ん? やなくて」
 この手の理由を聞いてんねん、と治を見上げた時だった。思っていたより治の顔は近くにあって、なに、と声を出す前に治が「なあ」と口を開く。
「なんや口寂しない?」
 この前聞いたのと同じセリフだ。前は何て言って断ったんやったっけ。頭を真っ白にする私に「ええよな?」と治が首を傾げる。あかん、と言う前に手を握っていない方の手のひらが後頭部に添えられた。もう絶対逃がす気ないやん。観念して目を瞑るとフ、と笑う気配がした。あれ、私からかわれとるんかな、と目を開けようとすると、それより先に唇が触れた。ちゅっ、と軽く音を立てて離れていくので、恐る恐る目を開けると、満足げに笑う治と目が合った。
「な、なに」
「フッフ、今日着いてきたの見て絶対したろ思ってん。前回断られたリベンジや」
「なんでこんなとこで負けず嫌い発揮しとんねん」
 もういややこいつ! 前回出来んかったから今回リベンジしたろ、やないねん!
「苗字が着いて来るんやもん」
 そんで人のせいにするしな。
「変なことせんて言ったやん」
「キスは変なことやないやん?」
「次の日気まず! てなるのは全部変なことや」
「もう今更やん」
 ほいおかわり、と言わんばかりにまたキスされた。
「……治は何で自ら気まずくしてくるん」
 もうキスされないように両手で口元をガードして話す。
「……単純な疑問なんやけど、逆に苗字は何したら照れんの?」
「えっ、照れさせたかったん?」
 私のことを照れさせたくてこんな暴挙を……? まさか私のことが好き……? と思ったところで、ニコッと笑う治の顔を見て絶対に違うやつやな、と確信した。
「おい、正直に話さんと私のことが好きって解釈するで」
「ん〜、照れさせたかったっちゅうか別に俺のこと好きなわけやないのに良いようにされとるから、どこまでさせてくれるんやろ、と思って色々試しとる感じやな」
「最悪の実験すぎるやろ」
 さすが人でなし宮侑の片割れだった。私は宮侑氏の方とは全く関わりがないが、噂には事欠かない男だったため、人でなしエピソードは何件か耳にしたことがある。
 私が割と治にされるがままなのは先におっぱい見たのもおっぱい触ったのも私やしな、という部分があるからで、その対価として許せる部分で受け入れてきただけなのだ。それをこいつ、私のセクハラ罪悪感につけ込みやがって!
「治のこと好きって言ったらどうするん」
「えっ、俺のこと好きなん?」
「全っっっ然好きやない」
 ムカついたのでこちらも何とかして驚かせてやろうと思ったが、俺のこと好きなん? がムカつきすぎて全然ダメだった。感情が全て顔に出た私を見て治は爆笑している。
「苗字のそういうとこ、おもろくてええと思うよ」
「嬉しないねん」
「ちなみに好きって言ったらどこまでさせてくれるん?」
「どこまでも何もないねん」
「苗字、好きや。もっかいちゅーしてええ?」
「えっ」
「何絆されそうになっとんねん」
 ぎゅ、と指で両頬をつままれた。治は「も〜、めっちゃチョロいやん、怖」と呆れたような顔をしている。誰がチョロいねん!
「好きって言っとったら多分セックスまでいけるな、ということは分かった」
「さすがにせんし!」
「いや、いける。お前とはせんけど」
「何で私がフラれたみたいになっとるんや」
「俺はお前のこと好きて言わんでどこまでいけるか試したくなった」
「えっ、まだこの謎駆け引き続くん?」
「当たり前やろ」
 もうここまでぶっちゃけたらこんな不健全な関係もなくなるのかと思っていたのに!?
「逆に苗字は俺にしたいことしてほしいことないん?」
「え〜、したいことだと治の前立腺開発とかかな」
「ん〜、それは付き合ってない状態では厳しい」
「えっ、付き合ってたらいけるん!?」
「まあ検討はする」
 あまりにもムカつくから絶対にオーケーしないことを言ってみたが、付き合っている子の要望は叶えたいタイプらしい。意外や。
「はえ〜、勉強しとくわ」
「え? 俺と付き合う気なん?」
「いや、絶対ひと泡吹かせたいから付き合うことなく治にええよって言わせたる」
「おもろすぎるんやけど」
 治は私の宣言を聞いてヒーヒー言いながら笑っている。こいつ私のことナメすぎやろ。
「そんで? 名前ちゃんは今日何してくれんの?」
「んっ?」
 そんな話やったっけ?
 私が頭にハテナを浮かべている間にソファベッドに移動した治がぴら、とTシャツをめくった。
「とりあえずおっぱい触ってや」
「それは……抗えん……」
 こんなことをしているから付け込まれるのでは? と思うが、そこにいいおっぱいがあったら揉んでしまうのは仕方がない。よく考えたあと、治に何かしてあげるという話では絶対に無かったよな、と思ったはずなのにおっぱいには吸い寄せられてしまう。
「今日は寝転ぶから好きにしてええよ」
 どう触ろう、と思っていると治がソファベッドに寝転んだ。それはそれで困る、と思いつつ、床に座る。今日は何かしらの反撃がしたいので、とりあえず乳首を舐めることにした。
 治の乳首は反応が良いので、少し撫でるだけですぐに勃ち上がる。突起を避けて乳輪を舐めると、期待するようにおっぱいがぴくぴくしている。
 もう片方も指で焦らしていると「焦らすん好きやなあ」と言われた。
「ふふん、もう触って欲しくてそんなこと言うんや?」
 両乳首はピン、と勃っていて、舌と指を使って突起をかすめると「んう、」と声が漏れでた。
 乳首責めはこれがええんよな、と満たされるのを感じつつ、治の望み通り、乳首を構ってやる。軽く歯を立てるとぴくん、と筋肉が動く。多分ええんやろな、強くされるの好き言うとったし。ちら、と表情を見ても良さそうなので問題なしやな、と唾液でぬるぬるになった乳首を扱いてやると「あかん……」と治が顔を覆った。だいぶええみたいやな。
「噛まれんのも好きやね?」
「ん、好き」
「声もエッチになってきたやんな」
「気持ちええんやもん。苗字のおっぱいも触ってええの?」
「えっ、あかんよ」
 ブラのホックを外されたことを思い出し、外されないように距離を取る。ふと治の股間を見ると膨らんでいて、ついでに私のいたずら心も膨らんだ。
「よいしょ」
「ん!?」
「はは、もうちんちん硬いな」
 勃起したちんちんの上にまたがり、ずりずり動くと「や、それはあかんやん」と治が慌てる。気分ええ〜。
「心配せんでも、射精まで手伝う気はないで」
 ピタ、と動きを止めると、治の方がもどかしげな顔をしている。
 ここにきてふと考える。お前とセックスする気はないって、よく考えたらめっちゃ失礼やない? セックスする気はないけど性欲解消したいからおっぱいは触るってなんやねん。じゃあセックスまでしろや。
 そう思うものの、私も治とセックスする気はないねんな。今後気まずいし。でもムカつくからぎゃふんとは言わせたい。
「治クン、腰揺れてエッチやな」
「誰かさんが上乗るからや」
 治は苦虫を噛み潰したような顔をしている。あ〜、気分ええ。
「治が動くならもうちょっと付き合ってやってもええけど?」
「フッフ、俺が動いたら名前ちゃんの方がエッチしたなってまうけどええの?」
 さっきまで私の乳首責めで良くなっていた癖に、フィールドがちんちんに移ったからか治は強気だった。誰が名前ちゃんや。
「はあ〜!? なんやその自信! やってみろや!」
「言うといてアレやけど、煽りがいありすぎやろ」
 下からグ、と押され、マジで俺が動いてええの? と治は笑っている。なんか、自分で動く分には気にして無かったけど、まあまあ感触が生々しいな? でも、こっちにもプライドっちゅうもんがあるやんか?
「腹立つから絶対治からセックスしたいて言わせたるわ、そんで断んねん」
「楽しみやな〜」
 治が「そんな状況になったらまず苗字は断れんと思うで」と言うので、絶対に負けん、と決意を固めるのだった。


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Lilca