「むふふ」
こっそり開いたマジカメの投稿を見て思わずにやけてしまった。
開いているのは趣味でやっている女装アカウントだ。一人を除いて未だに学校のやつらには言っていないが特に隠しているわけでもない。普段校舎でこのアカウントは開かないのだが、昨日アップした写真の反応が気になったのでこうして人気の無い場所まで来てスマホを片手にニヤついている。
やっぱ肌露出が増えるといいね数は増えるな。でも露出が多い時はあくまで健康的な感じで撮って、あんまり変なファンが沸かないようにしないと……。
「楽しそうですね」
「うわあっ!」
誰もいないと思っていたのに背後から声をかけられて飛び上がってしまった。
振り向くまでもなくジェイドくんだ。きっと俺がこそこそ移動しているのに気付いて着いてきたのだろう。顔だけ向けると案の定ニコニコしたジェイドくんがいた。
「何でいるの?」
「ルネくんが人気のない方に行くのが見えたので気になって後を追いかけてしまいました」
「……じゃあもっと早く声かけてよね」
俺が一人でニヤついているのをしっかり確認する前に!
「マジカメのチェックですか?」
「そう、昨日の」
ジェイドくんはこの学校で唯一俺の女装アカウントを知っている人間だ。俺から教えたわけでもないが何故か知っていた。一年の時に「そういえばルネさんは女装が趣味なんですか? いえ、マジカメの写真が見事なものだったので」と言われたので特に隠すこともせず「どの俺が好み?」と返したのが始まりだ。そういえば俺とジェイドくんが芝居がかったやりとりをするようになったのはこの頃からかもしれない。以来、意外とマメにチェックしていて感想をくれるので結構ありがたい。
「ああ、昨日は珍しくミニスカートを履いていましたね」
「……どうだった?」
「とても素敵でしたよ」
「ジェイドくんはいっつもそれだからな〜」
大体いつも今回も素敵でしたよ、と声を掛けてくれる。嬉しいんだけどちょっと疑ってしまう。
「おや、いつも本当にそう思っているんですよ?」
「本当〜?」
「ええ。僕達人魚にとって、脚は特別なんですよ。ルネくん、いつも脚は露出しないでしょう? だから今回の写真は特に惹かれてしまいました」
「ドキドキした?」
「はい、ドキドキしました」
いつもの如く全然本心は分からないけど、褒めてくれるので気持ちよく受け取っておこうと思う。
「じゃあジェイドくんのために次もミニスカート履こうかな」
「それは楽しみです、と言いたいところですが、あまり不特定多数の人間に見せるのは感心できませんね」
「……というと?」
「ルネくんが今より人気者になってしまったら寂しいです」
「えっ……」
びっくりした! びっくりした! ジェイドくん、いきなりアクセル踏みすぎだよ!
俺が何も言えないでいるとジェイドくんがふふ、と笑った。
「こういうのがお好きなのでしょう?」
「好きですう……」
ジェイドくんはたまにこうやって俺を喜ばせて楽しんでいる。分かっているのに俺は毎度弄ばれてしまう。いや、好みの男に口説かれる遊びはめちゃくちゃ楽しいんだけど。ジェイドくんいつもフルアクセルっていうか。
「僕も大分ルネくんの好みが分かって来ましたねぇ」
「ねえ〜、これ以上俺をドキドキさせてどうするの? 責任取って!」
「では教室に戻るまで手を繋ぎましょうか?」
「ぎゃー! 瀕死!」
「ふふ」
この確信犯め!
200524
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