ロッカールーム事件以降の俺はファーストキスがあっさり済んだことにちょっぴり腹を立てていた。それもジェイドくんなら完璧にお膳立てしてからでも出来た筈でしょという勝手な怒りである。
その日以降、ジェイドくんにちょっぴり冷たくするという子どもっぽいことをしてしまったわけだが、ジェイドくんに怒ってます? と聞かれた時はちょっと気まずかった。だってこんな自分勝手な理由で怒っているとバレるのは恥でしかない。
嫌だったのか、と聞かれた時はキス自体が嫌なんじゃなくて、と思ったがそれを言うとじゃあ何が嫌だったのかという話になるので嫌じゃないよと言うに留めていたのに。結局ジェイドくんはユニーク魔法という手を使って俺を暴いたわけだ。
あの時のジェイドくんは珍しくあまり余裕が無かった。それが俺が冷たくしたからだっていうのが意外で、ジェイドくんは存外俺のこと友達と思ってくれていたんだなあと驚いた。クラスで過ごすのに都合の良い暇つぶしぐらいに思われているのかと思ってた。
そしてあの日以来ジェイドくんはキスにハマっている。一体何が楽しいのか人目が完全になくなると「ルネくん」と俺の方を見る。最初は少し恥ずかしかったが最近はもう慣れてしまった。はい、と唇を差し出すと「最近はルネくんも慣れてしまいましたね」と残念そうに言われた。
「それだけジェイドくんが頻繁にしてるってことでしょ」
「マンネリってやつですかね」
「そうかもね。たまには俺からしてあげよっか?」
「ふふ、お願いします」
じゃあ屈んで、とネクタイを引っ張る。嫌がるかな、と思いきやジェイドくんはそんなこともなくニコニコしている。
「ん」
たまにジェイドくんがすルネちっこいやつじゃなくてさっと触れるだけのキスをする。ジェイドくんは嬉しそうだ。
「ありがとうございます」
「意外と飽きないね、ジェイドくんも」
てっきりすぐブームは去るかと思っていたのに存外長く続いている。
「僕はごっこ遊びのルネくんしか知らないんだと気付いたので色んなルネくんの表情が知りたいんですよ」
「それで何でキスになるの?」
「僕がキスした時のルネくんを観察するのが好きだからです」
「うわっ、悪趣味だなあ」
ていうか、ジェイドくんはなんでもお見通しの上でのあの対応だと思っていたんだけど違ったのか。
「ごっこ遊びって言ってもそんなに本心とかけ離れたことは言ってないよ」
「いえ、僕はルネくんの男の好みしか知りませんから」
「ぶっ、何それ」
爛れた関係すぎるな、とツボに入ってしまった。
「じゃあ俺がジェイドくんの顔がめちゃくちゃタイプだってことも知ってるんだ?」
「ええ。ルネくんは僕がお願いしたことは大抵聞いてくれますもんね」
そんなに聞いてるかな。駄目なことは駄目って言っている気がするけど。そもそもNGを出すことが少ないと言われればその通りなのだが。
「それを踏まえてルネくんにお願いがあるのですが」
「はい」
「ルネくんの女装、生で見せて頂けませんか?」
「え〜、何する気?」
「変なことはしませんよ。マンネリ打開の為に女装したルネくんにキスするだけです」
「変なことじゃん!」
マンネリ打開っていうか、キスするのをやめたらいいんじゃないかな?
そう思ったがジェイドくんの駄目ですか? に負けて結局週末披露することになった。
200525
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