ジェイドくんに女装を見せると約束した日。同室の子は去年の末に家の都合で自主退学した為、自分一人の城となった自室で完璧に準備を整え待ち構えていた。ジェイドくんのリクエストに応えようと今までの写真を見せながらどういうのがいい? と尋ねると「こういうのがいいです」と意外にもハッキリとした答えが帰ってきた。
 もう着きます、とメッセージが届いたのを確認すると柄にもなく緊張してきた。ノックの音とともに「ルネくん、ジェイドです」と声が聞こえた。どうぞ、と入室を促すと失礼します、とジェイドくんが部屋に入ってきた。面接みたいなやり取りでちょっと面白い。

「鍵はどうします?」
「あ、かけといて」

 カチャ、と音を立てて部屋の鍵がかけたあと、振り返ったジェイドくんの視線が下から上に動くのが分かった。

「写真よりも魅力的に見えますね」
「やだお上手」
「事実ですよ。僕のリクエスト通りにしてくれたんですね」
「せっかくやるなら喜ばせたいからね」
「ふふ、ありがとうございます。写真を撮っても?」
「特別にポーズもリクエストさせてあげましょう」

 ジェイドくんから指定されたポーズはマジカメに上げる写真でよくやっているポーズだった。いつものでいいの? と思っていたら、自然体の表情でお願いします、と難しいことを言われた。

「そう言われると不自然になっちゃうんだよ」
「じゃあキスしましょうか。キスした後のルネくん、いつもかわいいですよ」
「え〜、もっと楽しんでからにして?」

 近寄ってくる様子も無いので特に警戒もしていなかったのだが、ジェイドくんが「いい写真が撮れました」とにっこり笑ったので「見せて」と自分から寄っていく。

「なんでこんな嫌そうな顔してる写真撮ってるの」
「自然な表情だったので」
「もっとかわいい笑顔のやつを撮ってよ〜」
「では、かわいい笑顔のやつはツーショットでお願い出来ますか?」
「いいけどさ」

 自分のスマホを浮遊魔法で浮かせる。インカメにして、タイマーをセットして、角度を調整後、にっこり笑って一枚。よし、かわいく撮れた。

「いつも浮遊魔法で撮ってるんですか?」
「そうだよ〜。この写真はマジカメにはアップ出来ないから後で送ルネ」
「おや、アップしてもいいんですよ?」

 いくら顔がドストレートの男とツーショを撮って浮かれているからと言ってそれは出来ない。身バレに繋がるので同じ学校の人と写った写真は上げたくないのと、もう一つ決定的な理由がある。

「このアカウント、お姉ちゃんも見てるから絶対やだ」
「お姉さんと仲が悪いんですか?」

 ジェイドくんが首を傾げた。

「……仲は良いけど、お姉ちゃんとは男の趣味も女の趣味も怖いくらい被ってるからジェイドくんの写真だけは絶対載せたくない」
「僕、今熱烈に告白されてるんですか?」

 そう聞こえるよね! そうだよね! 聞こえた通りで間違っていないが指摘されるとちょっと恥ずかしい。でもここで恥ずかしいという顔を見せようものならジェイドくんは更に畳み掛けてくるだろう。なのでいつものごっこ遊び作戦だ。

「一目惚れだったっていつも言ってるでしょ〜?」
「ふふ、照れますねぇ」

 二人で笑って一時休戦だ。

「ルネくんのお姉さんはどんな人なんですか?」
「一個上なんだけど、俺を三倍濃縮した感じの人。顔は似てると思う」
「そうなんですか、興味が出てきました」

 えっ、それは困る。姉は姉で絶対アプローチするだろうし。

「え〜、やだなあ。俺だけのジェイドくんで居て?」
「良いですね、ドキッとしました」
「審査員みたいな感想で笑える」
「キスしてもいいですか?」
「最近のジェイドくん、全部それじゃない? キス芸?」

 もう俺の反応なんて出尽くしたんじゃないか、と思ったがまだ飽きないらしい。
 部屋だからか遠慮なしに舌を入れられる。二回目のキスの時はドキドキしたまま終わったので上手い下手なんて分からなかったがジェイドくん、なんだか回数を重ねるごとに上手くなっている気がする。ずっとしゃぶられていると腰が砕けそうになるのだ。
 逃げようとすると軽く頭を固定されるし、時々目を開けるとじっと俺を見る瞳に捕まるのでなるべく目を瞑るようにしている。でもそうすると感覚が生々しくなって腰の辺りがぞわぞわする。
 ジェイドくんの手が脚に触れる。リクエストで今日はミニスカートを履いた。ストッキングを履いているが、手の熱は伝わってくる。

「おっと」

 腰が抜けそうになった俺をジェイドくんが支えた。

「座りましょうか」

 ベッドに座ったら本当にどうにかなってしまいそうだったので床に座った。ジェイドくんは俺を支えながら、もう一度キスをした。

「ん、まだするの……?」
「次、女装したルネくんとはいつできるか分かりませんから」
「女装はいつでもするから、もうやだ」
「すみません、もう少しだけ」

 そう言いながらジェイドくんは俺の許可が出るのを待っている。

「……ちょっとだけね、すぐやめてよ」

 大概俺もジェイドくんに甘いので葛藤の末、許可を出してしまった。

「脚に触るのは?」
「それは絶対だめ」
「絶対ですか?」
「……変になっちゃうからだめ」
「変って? 見せてください」

 ジェイドくんの人より長い舌が絡まると理性が溶かされてしまう。ジェイドくんが脚に触れたのは分かったが、腕を掴むだけでろくに抵抗も出来ない。ジェイドくんの指が肌を滑る度にびくびくと身体が震えた。なんでこんなことに。
 ジェイドくんの手はずっと腿の辺りを彷徨っている。スカートの中には入ってこないけど、そんなとこ触られることなんてないからぞわぞわする。

「ん……っ」

 舌が動く度に声が漏れてしまう。演技じゃないので余計恥ずかしい。舌も指も、よく両方器用に動かせるものだと思っていると指が腿の内側を掠めた。びっくりしてジェイドくんの胸を押すと、ジェイドくんはゆっくりと唇を離してくれた。
 た、助かった。良くない方向に行く流れだったのをなんとか阻止出来たらしい。

「ふふ、ぐずぐずですね」
「ジェイドくんのせいでしょ……」
「僕の手でルネくんが乱れているんだと思うと、いけない気持ちになりそうです」

 いけない気持ちってなんだ。もう十分いけないことをしてるっていうのに。

「ふふ、これ以上すると流石に怒られそうですね」
「うん、怒る」

 俺の脚に置かれているジェイドくんの手をピシッと叩いた。

「嫌いになりました?」
「……まだ好きだよ」
「ふふ、良かった」

 俺が嫌いって言っても全然困らない癖に!

200525


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Lilca