※後半半分くらいモブの友人との会話です


 寂しい。寂しい寂しい寂しい。
 クリームパンを頬張るジェイドくんの唇をつい物欲しそうに見てしまう。ジェイドくんはそれに気付いて笑った。

「どうしました? クリームパン、足りませんでした?」
「違うけどぉ……」
「ふふ、では口寂しくなってきましたか?」

 分かっている癖にわざわざ言わせるんだ。悪趣味め。

「……なってきた」
「戻すのをやめます?」
「ううん、やめないけど」
「残念です」

 まさか俺の方が耐えられないなんて。ジェイドくんは平気そうな顔で笑っている。

「俺がうっかりキスしてって言ってもキスしちゃだめだよ」
「ルネくんに言われたらしてしまいますよ、僕は」
「だめ、心を鬼にして」
「分かりました、ルネくんがキスしてって言っても顔を近付けるところでやめます」
「嫌がらせじゃん!」
「それが嫌ならご自分を律してくださいね」
「あっ、なんかこの突き放した感じ久しぶりで嬉しい……」

 最近のジェイドくんはごっこ遊びでも俺に対して好感度が高いような返しばっかりだったりなので久しぶりに突き放されるとちょっと嬉しい。俺は好きな人の塩対応に喜ぶタイプである。

 ジェイドくんと俺は別に四六時中一緒にいる訳でもない。昼ごはんはそれぞれ違う人と食べるし、部活も違うから放課後遊ぶことだって少ない。授業中とか、授業の合間の休み時間とか、一緒にいるのはせいぜいそのくらいなのに。移動教室の合間、人が居ないところでキスされて、時間があったら舌まで入れられて、早く飽きないかなと思っていたのにいつの間にか俺の方が夢中になっているなんて!

「……まさか頻繁にしてたのってそれが目的?」
「どうしました?」

 授業中悶々と考えていた疑問を思わず呟くとジェイドくんがいつものにっこり笑顔で首を傾げた。

「ジェイドぉ、まだぁ? お腹すいた〜」
「フロイド、今行きます。ではルネくん、また午後の授業で」
「うん、またね〜」

 ジェイドくんを迎えに来たフロイドくんにも手を振って、俺も昼ご飯を食べる準備をするか、といつも一緒にお昼を食べている同じポムフィオーレの友人のクラスへと向かった。
 今日は食堂にしようと決めて食堂に行くとジェイドくん、フロイドくん、アズールくんの三人が固まっているのを発見した。ジェイドくんも気付いたようで笑いかけてくれたので俺も手を振り返しておいた。三人とは少し離れたテーブルに座る。

「何?」
「ジェイドくん」

 オクタヴィネルの三人が固まって座るゾーンを指すと友人は「ああ」と納得したようだった。

「前から思っていたけど、ルネはジェイドのこと見つけるのが上手いよね」
「そう? 上手いとかあるの?」
「ジェイドもフロイドも目立つけど、僕は君ほどパッと見つけられない」
「まあ見つけるのが上手かったところでなんだって話だけどね」
「そうだね」

 見つけるのが上手いとか、初めて言われた。そう離れた席ではないジェイドくんを見ると、きのこパスタを口に運んでいるところだった。ちょうど口を開いたところで、それをじっくり眺めた後、慌てて視線を戻した。キスをやめた日からジェイドくんの口元ばかり見てしまう。これは良くない。

「物欲しそうな顔してどうした? 僕のチキン食べるか?」

 友人は優しいので、俺がお腹を空かせていると思ったらしい。ビュッフェ形式なのでお腹が空いているなら自分で取りに行けという話だが、どうにも居心地が悪くて「……貰おうかな」と言う。自分の皿がいっぱいだったので後で、と言う前に差し出されたので「あ」と口を開けるとチキンが放り込まれる。美味しい。

「……そんなに物欲しそうな顔してた?」
「うん、飢えた獣のようだった。サバナクローでもやって行けるだろうね」
「寮長に聞かれたらはっ倒されそうなこと言わないでよ……」
「ふふ、冗談だ」
「君も冗談とか言えるようになったんだね……」

 この友人は出会った時からクソ真面目で、冗談なんて言うタイプでは無かったのに。

「今なら君の……なんと言うんだアレは」
「面倒なカップルごっこ?」
「そう、それにもノッてやれるかもしれないぞ」
「え〜、嬉しいなあ、じゃあ今日は部屋まで行くからいっぱい相手してね♡」
「は?」
「ダメじゃん!」
「ダメだったね、君みたいに咄嗟に出てこない」

 二人でゲラゲラ笑っていると視線を感じた。なんだろ、と視線の方を向くとジェイドくんで、俺と目が合うとにっこり笑うので俺も笑い返しておいた。


200530


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