※シスくんとグラサイに乗っている女

 やたらムラムラする日ってある。いつもなら夜寝る前に布団に入ってするのに、今日はどうにも我慢出来なくて、任務が終わって夕飯に行く前に部屋で発散しようと考えていた。終わらなくて夕飯を食いっぱぐれるフラグもあったけど、私は自分の性欲を取った。
 上半身は全て脱いで、下は下着だけ。胸に手を伸ばした時だった。

「#なまえ#、今、」
「!?」
「!?」

 急に扉が開いた。鍵をかけ忘れるなんて私はどれだけ余裕が無かったんだ。ものすごく恥ずかしい。でもシスくん、こちらが返事する前に扉を開けるのはやめてほしい。私の姿を見て固まったシスくんは「……す、すまない、着替え中だったとは」と言って顔をそらしながら後ずさった。
 シスくんは私が着替えていたと思ったのだろうか。自分の乳首を思いっきり触ってたんだけど。もしかして気を遣ってくれた? いや、シスくんのことだから本当に着替え中だと思っているんだろうな。着替え中だと思っているならそのままそう思ってもらえばいいのに混乱した私は訳の分からないことを口走っていた。

「大丈夫、乳首鍛えてただけだから」
「……?」

 仮面で表情はよくわからないけどシスくんが首を傾げた。私も首を傾げたい。何を言ってるんだ私は。と思っていたらシスくんが思いっきり顔をそらした。

「ふ、服を着ないのか」
「ごめんなさい、着ます」

 そうだった。私はほぼ全裸なのだった。私より動揺したシスくんを見てぼんやりしている場合ではない。急いで服をかき集めて後ろを向きながら服に腕を通した。

「……なんかごめんね」

 何故私が謝っているのか分からないがとりあえずシスくんに謝罪した。シスくんも「いや、勝手に扉を開けた俺が悪い」と頭を下げた。

「こういうこともあるから人の部屋に入るときはノックして返事を待った方がいいよ」
「そ、そうだな。すまなかった」

 シスくんはカルムの郷で一人で生きてきたそうだ。この船に乗ったのも最近のことだから、人との暮らし方に慣れていないと言っていた。部屋が近い関係で割と話すけれど、こうして部屋に訪ねられるのは初めてだった。私がそれで、どうしたの? と聞く前に大真面目な顔でシスくんが言った。

「あの、さっきの……」
「うん?」
「乳首を鍛えるとはどういうことだ……?」

 そこは蒸し返さないで欲しかった。自分で言ってて何言ってんの? って思ったから。多分シスくんは本気で疑問に思っているので下手なことは言えない。早く何か返さなければ、と焦った私は更にドツボにハマることになる。

「……乳首を鍛えると感度が高まって強くなれるんだよ」
「どういうことだ……?」
「えーと……シスくんもやってみたら分かるよ!」

 今日の私はもう駄目だ。何を口走るか分からない。
 そう思いさっさとこの話題を切り上げようとしたのにシスくんは「そうなのか?」と首を傾げた後「鍛えるにはどうしたらいい?」と聞いてきた。まさかすぎる。この純粋すぎる男の子にこれ以上適当なことを言うのは心苦しい私は更にテンパった。

「とりあえず上半身裸になってくれるかな?」
「!? わ、わかった」

 わかったじゃねえよ!何ほいほい脱ごうとしてんだ!
 自分で脱げと言った癖にキレそうになっている間にシスくんは防具を外し終えていた。背中がバックリ開いたエルーン特有の中着姿を見て、これ別に全部脱がなくてもいけるな、と思った。何で私はシスくんの乳首を触るのに乗り気なの? ムラムラしてるから人肌が恋しいのかな。怖い。

「えっ、シスくん全部脱いでる」
「なっ、お前が脱げと言ったんだろう!」
「そうだった、ごめん」

 全部脱がなくても、と声をかけようとシスくんを見たら既に全部脱ぎ終わっていて思わずそう言ってしまった。当然シスくんは怒った。ごめん。

「シスくん乳首小さいね」
「そうか?人と比べたことが無いから分からない」

 いや、男の子だってこともあるけど私に比べたら全然小さいよ、と言いそうになって踏み止まった。さっき見られているけどわざわざ自分から言うのはおかしい。分かっていたけれど未だに動揺しているな、私。

「……触るよ?」
「ああ」

 後ろからの方が良いかな、と思って立ったままのシスくんの後ろに回って胸のあたりをまさぐる。

「くすぐったい」
「ご、ごめんね」

 すぐに見つけた乳首をそっと摘んだ。男の人の乳首ってどうすればいいんだろう。ひたすら触ってれば良いのかな。それとも……、と更に考えたところで我に返った。だから、なんでこんなに乗り気なんだ私は。

「本当でこんなことで強くなるのか?」
「なれるなれる」

 男の子も女の子も、乳首で感じるってだけで恋人を魅了出来るからね。多分。シスくんが追い求めてる強さとは全く違う系統だけども。
 でももうこの嘘を突き通すしかない。後でシスくんに他の人には秘密だよって念押ししておかなければ。
 私の返事を聞いたシスくんは「そうなのか……」と納得したようだった。ちょっとチョロすぎないか?
 罪悪感を誤魔化そうとした結果、更に大きな罪悪感を生むようなことをしてしまっている私が思うことでは無いが本当にそう思う。

***

 シスくんの乳首を触り続けて数分。シスくんは相変わらずくすぐったいようだった。
 でもシスくんより私の方が正直困っている。何故なら彼のくすぐったいのを我慢する声を聞いて私はシスくんが部屋に来る前、自分が何をしようとしていたか思い出したからだ。
 端的に言うと、今、猛烈にセックスがしたい。シスくんを帰した後に一人でするのを再開すれば良い話だけど、それを待っていられる余裕なんてない!

「シスくん、立ったままだと疲れちゃうでしょ。ベッドに行こっか」
「いや、別に大丈夫だ」
「ええと、私が疲れちゃった」
「む、そうなのか。気が利かなくてすまない」

 罪悪感がすごい。すごいけど、それ以上にセックスがしたい。シスくんはどんなセックスをするんだろう。仮面を外された時の反応からして、もしかしたら一度もしたことが無い、なんて可能性もある。もしそうだったのなら本当にごめん。
 ベッドに腰掛けたシスくんに、今度は前から触るね、と言ってシスくんの膝の上に乗り上げた。

「お、おい!?」
「これは後ろからだと出来ないから……」

 そう言ってシスくんの乳首を口に含んだ。色の薄い小さな乳輪を舌でなぞって、もう片方は指で摘む。

「今はくすぐったいけど、そのうち慣れるからね」
「うっ……、ああ」

 そう言いながら、体勢を直すふりをしてシスくんの股間付近に手を付いた。そのまま開いた脚の内腿を撫でる。シスくんがぴくりと身体を揺らしたが、私がわざとやっていることに気付かないのか何も言わない。それを見た私は徐々に付け根へと掌を進めて行く。

「!」
「どうかした?」

 それに気付いたシスくんがピン、と耳を立てた。私は何も分からないような顔でシスくんに問いかける。

「手、が……」
「手?」

 わざとらしく首を傾げながら、乳首を触っている指で乳頭を突いた。

「んっ……、そっちじゃなくて……!」

 シスくんが、内腿を撫でていた手を掴んだ。ここでやめておけば良かったのに、私にはもう我慢するって選択肢は無くなっていた。本当にごめん、シスくん。
 手を掴まれたまま、指を伸ばして恐らくシスくんが触られたくなかった場所に触れた。

「っ……!」
「ごめんね、ここ、なんとかしてあげたいなって思って」

 自分がセックスしたいだけなのに、シスくんに軽蔑されたくなくてこんな恩着せがましい言い方をしてしまう私は最低だ。仮面で顔が見えないが、シスくんが動揺したのが分かった。

「触っていい……?」
「駄目だ……!」
「触られるのやだ?」
「や、嫌だ……」
「でも、もうおっきくなっちゃってるから」
「あ、あぁ……っ!」

 シスくんは嫌だと言ったのに、私は止まれなかった。腕の拘束が緩んだ隙にジッパーを下げて下着の中に手を入れた。急所を掴まれたシスくんは流石に動けないようだった。それを良いことにまだ少し柔らかかったものを握って上下に扱く。
 気持ちいいことと一緒にしたら、気持ちいいって錯覚するかもという期待を込めて乳首を触る指にも力が篭る。今の私の頭にはシスくんとセックスしたい、それだけしかなかった。

「シスくん、ごめんね」
「何故謝る……?」

 もう我慢出来ない。シスくんの問いに答えることもなく服と下着を脱ぎ捨てた。ついでに仕舞ってあったスキンも取ってきた。私の突然の行動にシスくんは驚いている、ように見える。

「な、何故脱いだ!?」
「シスくん、ちょっと、しー」

 表情が見えた方が良い、と思ってシスくんの仮面を許可無く持ち上げた。

「えっ!? あっ……!」

 シスくんは目を見開いていた。と、思ったらすぐに目を逸らす。その隙にすっかり硬くなったシスくんのものにスキンを被せて、その上に腰を下ろした。

「な、な、な……!?」

 シスくんは自分と私の結合部を見て目を白黒させている、ということだけは辛うじて分かった。正直、挿れただけで気持ちよくって私の余裕も全く無い。今すぐ動かしたい、と思った時にはもう腰は動いていた。

「あっ、ぁ、あっ、気持ちい……っ!」
「な、なんで……っ、んぅっ!?」

 シスくんの首に腕を回して、腰を動かしながらシスくんの唇に自分の唇を押し付けた。シスくんの開いた口に勝手に舌を入れる。

「ん、んうぅ!」

 シスくんを押し倒す勢いでキスをした。こんなにかわいい反応をするのに、シスくんは全く後ろに倒れる気配無く私を支えてくれている。最初は逃げていたのに、途中でシスくんが自分の舌で私の舌に触れてくれたのが嬉しかった。びっくりしたみたいですぐに引っ込んでしまったけど。

「シスくん、かわいい……」
「かわいいって言うな……!」
「中の、びくびくしてる」
「あ、だって……っ!」

 ぎゅ、と中を締めるとシスくんが耐えるようにぎゅっと目を閉じた。耳もぴくぴくしている。かわいい。

「シスくん、もっかい動くよ……?」

 シスくんは少しだけおろおろとした動作を見せたけど、結局首を縦に振った。それだけで、随分と罪の意識が軽くなる。いや、シスくんに悪いことしてるのは全く変わらないんだけども。

「それでね、シスくん」

 ゆっくり、腰を動かしながらシスくんと目を合わせようとしたけど全く合わない。私が追いかけるとシスくんは逃げる。

「……シスくん、私がさっき触ったみたいに私のおっぱい触って……?」

 あ、やっと目が合った。すぐ逸らされたけど。
 シスくんはちょっとだけ戸惑うような素振りを見せたあと、恐る恐る私の乳首に触れた。力加減が分からないのだろう。シスくんは伺うように私を見つめた。

「もうちょっと強くても大丈夫だよ」

 そう言うと、ほんのすこしだけ強く摘む。

「あんっ……」

 思わず喘いでしまったら私にシスくんがびくりと震えた。

「い、痛かったか?」
「ううん、大丈夫だよ。シスくん、もっと触って……?」

 シスくんはこくりと頷いて再び私の乳首を触り始めた。私の言葉通り、私がシスくんにやったのと同じような触れ方をするのがたまらなくかわいい。たったこれだけのことなのに、イきそうになっちゃうくらいかわいい。きゅんきゅん中を締め付けてしまって、シスくんが呻いた。

「あ、で、出ちゃう……っ」
「いぁっ!?」

 その拍子にぎゅう、と乳首を摘む指に力がこもった。痛かったけど、気持ちよくって、そのまま私も達してしまった。

***

 繋がったまま息を整えているとき、シスくんの勃ち上がった乳頭が肌に触れたことで、ようやく本来の目的を思い出した。ふと思い立って、自分の乳頭をシスくんの乳頭に擦り付けてみる。自分のと比べてやっぱりシスくんの乳首は色もかわいいし小さい、なんて思っているとシスくんがとんでもないことを言った。

「お、俺も、鍛えれば、#なまえ#のように、なる……?」

 仮面を取ってしまったのでいつもより大分弱々しい声だ。でも待って、私のようになるってもしかして乳首の話……?
 衝撃すぎて、しばらく返答が出来なかった。

「む、無理か?」
「もしかしてなんだけど、私の乳首の大きさの話してる?」

 シスくんがこくりと頷いた。
 ……シスくん。そもそも男と女なら大概の男の方が乳首は小さい。あと、私が最初に言った乳首を鍛えると強くなる、っていう話を信じてくれているんだと思うんだけど、別に乳首が大きいから強いとか、そういう話でもない。
 そもそも、シスくんと私なら比べ物にならないほどシスくんの方が圧倒的に強い。私にシスくんの追い求める強さがあるとは思えないのだけど、どうしてここまで付き合ってくれるんだろう。セックスまでさせられて何故怒らない。
 罪悪感と愛しさと疑問と、シスくんの信じやすさを心配する気持ち。その四つがぐるぐる頭を回って、私が出した回答は、このままシスくんを離したくないという打算にまみれたものだった。

「毎日触り続けて入れば……なるかも」

 嘘は言ってない。触り続けてれば実際ちょっと大きくなるし。

「実は今やったことも強くなるために必要なんだよ」
「なっ……!? そうなのか!?」
「…………うん」
「そうなのか……」

 これも信じちゃうのかあ……。私はうな垂れた。いつのまにか仮面を取り戻したシスくんが「どうした」と言うので「ううん、何でも……」と首を振る。
 シスくんが居心地悪そうにそわそわし始めたのを見て、そういえば繋がったままだと気付いた。ごめんね、と謝ってシスくんの上から退く。
 せめてもの罪滅ぼしでシスくんの方のスキンやら何やらの処理をさせて貰った。
 まあ今更かな、と思ってそのまま全裸で居たら「……服を着ろ」と怒られた。怠惰でごめん。

「……お前は明日も触るのか?」
「えっ? それは私の乳首の話?」
「そうだ」
「えっ、うーん……。どうかな」

 ムラムラしてたら触るしそうじゃなかったら触らないし。

「なるほど、お前はもう毎日触らなくても良いだけの強さを身につけているということか……」

 違うよ!? 思わず声が出そうになったが踏み止まった。なんかもう、正直にぶちまけた方が良い気がする。土下座もするし何でも言うことを聞くから許して欲しい。純真なシスくんに酷い嘘を付いて流れに任せてしまった私が全面的に悪い。

「し、シスくん、あの……」

 だが私が話を切り出す前にシスくんが言った。

「明日も触ってくれ、と言ったら迷惑か……?」
「……全然迷惑じゃないです」

 気付いたら明日もシスくんの乳首を触ることになっていた。
 だれか私を殴ってくれ。

190202

シスくんはヒロインの色んな人と上手くコミュニケーションが取れるところに憧れていて、感度が高まる=周囲の人間の心の機微が分かるようになるのかもしれないって思っているし乳首が大きい程その力が強いと思い込んでいるのではないかな……というとこまで書くか分からないのでここにメモしておく



Lilca