黄色い髪の毛に触れてパラパラ遊ぶ。
赤司征十郎
緑間真太郎
紫原敦
青峰大輝
黒子テツヤ
誰もがみな違う髪色と瞳の色で、違う才能。

やっと見つけた夢中になれるものだったはずなのに
俺は今、練習を欠席してこうして撮影に来ている。つまらない。
でも部活に出たって青峰っちはいないだろうし、黒子っちはいつも通り辛そうにメニューこなして、緑間っちもひたすらシュート練して──


「…っ」


不意に吐き気が込み上げてきて口元を押さえてトイレへ駆け込む。出るものなんてない。嘔吐も出来なければ声をあげることもできない。
スタジオについてるトイレはきれいにデザインされていて、不潔そうに見えないことをいいことに、へたり込んでひたすら嗚咽と唾液の排出を繰り返す。


「涼太」


アレ
俺、個室入る時鍵閉めなかったっけ?
夢中だったから覚えてない、ふらつく視界を遮るために片手で目を覆って、声をかける


「……ここ男子トイレだよ、名前」
「知ってる」


さっきまで弄んでいた髪の毛をやさしく名前が触れて、言う。


「こことは違うところに行こう涼太。海にはたくさんの鳥が飛んでいるよ」


視界の端にパサついた黄色が過ぎって、クリアに視野が広がる。名前が前髪を退けてくれた。
そして汚れた口元をやわらかい手の平で拭われる。


「一緒に行くから大丈夫」


汚いよと言いたいのに心地よくてそれが出来ない。
みんな違う方向を向いてる。
互いが互いを置いてけぼりにし合って、どっかに飛んでく。
それなら俺は、名前についてくよ


「もう泣かなくていいんだよ」


おでこにされたキスに涙が出た。




カナリア


ALICE+