誠凛との練習試合で負けてから泣く俺に名前はニコニコ笑って寄り添った。
やっぱり何度も勝手に頭の中で再三と再生される、追い越せなかった青を思わせる真っ赤な炎が、チラついて悔しくて公園の隅で泣く。
そうすればいつもの如く名前が現れて、カーディガンにスカートという簡単な格好で、俺の隣にしゃがみこむ。
「ほらね」
俺には顔を向けないで彼女はつぶやく。
埋めた膝からチラリと覗いてみれば、その横顔はニコニコと笑っていた。
でもそれは馬鹿にするものではなく、優しいものだった。
「ね、ほら。涼太が今までに見たことない世界が今出来て、そこに生きてるでしょ?」
名前がふわっと両手を広げて、沈みかけてる夕日を抱え込むような仕草をする。
ああ、本当だ
そう思ったらまた何だか泣けてきて、でも今度は悔しくてもっとやりたいっていう熱望を持った涙じゃなくて、スッと流れるだけの、人肌のような温度だった。
「……本当、だ。こんなの、見たことないっス」
「でしょ?」
「すごいね、名前は」
「そんなことないよ」
ただ一人ひとり見える景色が違って気づくものがちがうだけだよ
そうやって名前は簡単に言うけど、きっと俺は名前が手を差し伸べてくれなかったら一生気づかないままだった。
キセキのみんなと違う高校行きたいなって思いながらダラダラと関係ないとこ行って、黒子っちを傷つけたまま、先輩たちやバスケにだって真摯に向き合えないままだったと思うんだ。
「ありがと、名前」
「んー?」
ふにっと笑う彼女の髪を、いつも名前が俺にしてくれるように撫でる。するとびっくりしたように目を見開いてから頬を赤くして彼女は俺に笑いかけた。
いつもされてばかりだったから、こんな反応をされるなんて。
いつも名前は俺を撫でる時こんな思いだったのかなんて。
たくさん今更名前に対して気付くことが多すぎて、処理できなくてこっちまで真っ赤になってきた。
どうしよう、どうしたら…
慣れてるはずの女の子たちとは違う、たった一人のオンナノコである名前。
名前の髪の毛が俺の指から離れて、でもそれが名残惜しくて、初めて彼女のなだらかな輪郭を作る頬に触れてみた。
俺がモデルをするときみたいにファンデ塗ったり粉を叩いたりしてないはずの名前の肌は、それなのにサラサラしていてしっとり指先を熱くして。
「涼太」
小鳥のような声で名前が呼んで、俺の指先を握りまた俺のおでこに口付けた。
「私は好きだよ、黄瀬涼太」
「…っ」
情けなくも名前から告白させてしまった上に、それに対してまともに受け返すことも出来ない。
ぐるぐる回る頭と感情を置き去りにして、結局口を継いで出てきたのは。
「俺も。俺も名前が好き。名前の見せてくれた世界が、好き」
何の捻りもない本音。
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